決戦アウゲイアス~辛酸にさよならを告げるとき

作者:ほむらもやし

●明け方の廃寺
「ふーっびっくりした。苔で滑りやすくなっていたんだ」
 斜面を滑落した青年が、打ち付けた脚と尻の汚れを払うにようにしながら立ち上がった。
「……痛たた。それともこれも水子の祟りなのかな?」
 茨城県某所にある廃墟、ここは十数年前に水子供養に関わる詐欺事件の舞台となったと噂されている場所だ。ただ、青年に取っては犯罪への憤りよりも、祟りとか幽霊と言った興味の方が先に立っている。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』はとても素晴らしいです」
 青年が期待していた不思議な体験の代わりに、姿を現したのは、第五の魔女・アウゲイアスだった。
「ひいいっ?!」
 青年は跳び上がる程に驚いて、後ろを振り向く。その動きに合わせるようにして、アウゲイアスは巨大な鍵を突き出して、青年の胸を貫いた。
 鍵に貫かれたが血が出るわけでもなく痛みがある訳でもない。故に青年は何が起こったかを理解することも出来ないまま、意識を失って雑草の中に倒れ伏した。
「あら、かわいらしい」
 その脇に現れたのは、青緑の光を放つ、無表情な笑みを湛える地蔵のような姿のドリームイーターであった。
●未明の依頼
 アイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770)の調査により、パッチワークの魔女の尻尾をつかめそうだ。ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は、そう最初に告げてから、あなた方にこれから起こる事件について話し始める。
「現れるのは、第五の魔女アウゲイアス。廃寺の境内を散策する青年から興味を奪い、ドリームイーターを出現させようとしている」
 北関東の地図、茨城県の一点を指さしながら、今まで通りであれば、生み出されたドリームイータが徘徊を始めた後の到着となるが、今回は、アウゲイアスが被害者の青年に鍵を突き刺し、新たなドリームイーターを生み出そうとしているタイミングで到着出来ると告げた。
「敵は、第五の魔女アウゲイアスと、青年の興味から生み出されたドリームイーターの計2体になるだろう。戦場となるのは放置された廃寺の境内、雑草が茂ってはいる場所もあるが、早朝でもあり、戦闘に支障をきたすようなものは無いはずだ」
 アウゲイアスに取っては想定外の遭遇戦であり、積極的に戦う理由は無い。撤退のためなら生み出したドリームイーターを捨て石にすることも厭わないと思われる。戦いに勝利するには、こうしたことを想定し、阻む策を講じておくことも必要かも知れない。
「生み出されたドリームイーターを倒せば青年は意識を取り戻す。子どもでは無いのだから、自分で判断して避難するが、巻き添えを防ぎたいなら、頭の片隅には入れておいた方が良い」
 アウゲイアスの攻撃能力は鍵や黒い小屋、モザイクに因んだものとなっており遠列攻撃を重視した仕様、生み出されたドリームイーターの方は一撃の威力を重視した近単中心となっている。また両者とも強力な癒術を保有し耐久度も高い。
「数えるのが嫌になるくらいの事件を引き起こした、アウゲイアスだ。一筋縄では行かないはずだ。だけどこの事件に終止符を打つことは僕には出来ない。出来るのは、君らのような純真かつ勇敢で、気力に満ちたケルベロスだけなんだ」
 これから向かう場所は死と隣り合わせの戦場となる。それでも皆を連れて行くのは、もう二度とアウゲイアスに事件を起こさせない為、今こそあなた方の勇気、力、知恵が必要とされている。


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)
アイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770)
一式・要(狂咬突破・e01362)
シエラ・シルヴェッティ(春潤す雨・e01924)
レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)
佐久田・煉三(直情径行・e26915)
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)

■リプレイ

●暁の戦い
 蒼い風景が広がる夜明け間際、ヘリオンから降下した、レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)は目標地点付近にふたつの人影を認めた。それが第五の魔女アウゲイアスが被害者に向かって鍵を突き入れる瞬間だと判断した。早急に牽制して足止めしなければならない、逡巡の後、レベッカの構えるガトリングガンが唸りを上げた。
 橙色の光を放つ弾丸が、地上に向かって飛び行き、アウゲイアスの周囲に降り注いで爆ぜる。その光を目印にして、メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)は急降下の姿勢を取る。
「そこまでです、逃げ道は全て塞ぎました。あなたはもうここから生きて出ることはできません」
 運が良かったのか、弾丸は青年には当たらず、また運が悪かったのか、アウゲイアスにも当たらなかった。
 レベッカの声を耳にして、アウゲイアスは唇を噛みしめた。
 この日の最大の不運は狙いを定めた青年が斜面を滑落したこと。滞在時間が長くなったことは、アウゲイアスにとって痛恨の極みであった。
 作り出した水子地蔵のようなドリームイーターを残し、アウゲイアスは全力で逃げようとする。
 その進路を阻むように、メリルディが着地した。
「うー……じゃない。くー、りーーー!」
 どこか間の抜けたような声と共に、イガグリが雨霰の如くに降り注ぐ中、後続のケルベロスが次々と降下して来て、斜面という攻め手に有利な地形を生かした、包囲網を瞬く間に形成する。
「そういえば、あー、あたしも3度目だわ、これはこれは、本当に、仕事熱心な魔女さんで、いつもお世話になっております——」
 どこか呆れたような、それでいてオネエっぽい、一式・要(狂咬突破・e01362)の声が耳に届く同時、オーラの弾丸がアウゲイアスに命中する。
(「あ、ちなみに俺は、これで4度目ですが」)
 戦端が開かれる一方、北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)は心の中で呟きながら、アウゲイアスのすぐ近くに倒れている、被害者に駆け寄ると、避難を促すメッセージを書いたメモを手に握らせた。
「ん、俺の心は地獄化しているんだが」
 佐久田・煉三(直情径行・e26915)はアウゲイアスの関心を自分に向けようと話しかける。
 心を地獄化したケルベロスは多くは無い。故に煉三は魅力的な投げかけ足りうると想定したが、アウゲイアスは顔も向けないままに、倒れた被害者の青年を担ぎ出そうとしている、結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)の方に、水子地蔵のドリームイーターを差し向け、自身も同じ方向に退路を開こうとする。
「おっと、邪魔するわよ」
 水子地蔵に背後を狙われたレオナルドの危機を救ったのは、要であった。
 バトルオーラを広げるようにして、水子地蔵とレオナルドの間に割入って、その攻撃を肩代わり、レオナルドは震える足に渇を入れるように走る速度を上げた。だが続けて繰り出されたアウゲイアスの攻撃に心をかき乱される。
 それとほぼ同時、アウゲイアスは、レオナルドの進行方向と同じ方向に、一気に逃走を図る。
「そうはさせません」
 次の瞬間、アイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770)の投射したウイルスカプセルが、アウゲイアスの前方を遮るように落下してきて、次々と爆ぜる。
 機を合わせるようにして、シエラ・シルヴェッティ(春潤す雨・e01924)の蹴りに急所を貫かれた水子地蔵が地面に叩き付けられた。

●我慢比べ
 包囲の輪が閉じられ、戦闘は膠着状態に入った。被害者を担いだレオナルドの姿が茂る草木に隠れて行くなか、流星の煌めきを帯びたレベッカの蹴りが、狙い定めたアウゲイアスではなく、割り込んできた水子地蔵を強かに打ち据える。
「よーしここで勝って、ドリームイーター事件の被害を減らしちゃおう……みんなでガンバローね!」
 傷つき、催眠の効果にも囚われた前衛に向け、シエラは癒しの手を差し伸べる。蒼暗い風景の中に蛍のように光るオウガ粒子の光が溢れて、無数の粒子は傷ついた仲間たちの身体に吸い込まれるようにして消えて、超感覚を覚醒させる。
「招き入れたら逃がさないわよ。生憎、地球さんは嫉妬深いのよ」
 研ぎ澄まされた意識を注ぎ込んだ、要の重力鎖獄が高められたグラビティと共に水子地蔵を地面に縛り付ける。
 追い討ちとばかりに、鋭い感覚を注がれた計都は確りと地を踏み締め、破龍鎚赫灼――ドラゴニックハンマーを砲撃形態へと変えた。
 故郷、仲間、家族、師匠――愛するべき者を失った過去、表情は崩さずとも繰り返し胸の古傷に去来しては悪夢を呼び起こす。
「夢なら夢らしく……覚めろってんだよ!!」
 気合いと共に撃ち放った竜砲弾が宙を疾駆して、水子地蔵に命中すると同時に大爆発を起こした。
 広がる爆炎の中で地蔵は泣き叫ぶ。そこに、こがらす丸の激しいスピンが地蔵の小さな足を轢き潰す。
 拒絶された非情の中で母の気持ちを引こうと泣き叫ぶ、聞こえる筈の無い悲鳴が聞こえた気がした。
 それはあなたに向けられたものじゃない、愛する者から引き離されれば、誰だって悲しくなるものだ。
「もう終わらせるんだ。絶対ここで決着、つけるんだ」
 メリルディが握るCorneille noire――惨殺ナイフの刃がジグザグに変形する。容赦の無い斬撃と刃に生えた無数の凹凸が、アウゲイアスの肉を複雑に切り裂いて、赤黒い血と、無数のモザイクを飛び散らせる。
 かなりの痛打であったはず。だが、アウゲイアスは一顧だにせず自身の影に繋がる家畜小屋の戸を開け放つ。
 黒が閃き、牛の群れの気配が濁流の気配と共に溢れ出て、押し寄せて来る。しかし長い時間を掛けて蓄積された汚物を洗い流すが如き奔流にのみ込まれ、全ての加護を失いながらも、前衛の者は耐えた。そしてアウゲイアスを見逃すことも無かった。
 だが、このタイミングで青白い光を帯びた水子地蔵がメリルディに狙いを定める。収束した冷たい光の筋がメリルディ眉間を捉えて突き抜けた。身にはひとつの傷も付いていなかったが、視界が赤色に染まり、続けて罪の記憶がイメージとなって思考を塗り尽くした。
 次の瞬間、メリルディは破裂しそうな頭を留めるように両手で頭を掻き毟り悲鳴を上げながら、膝を付く。
 身動きも出来ず、今にも崩れ落ちそうなメリルディの頭上を金の装飾が施されたステッキ――エクスカリバールが回転しながら飛び抜け、直後アウゲイアスの足元の影に突き刺さる。
「これ以上、あなたの好きにはさせません!」
 裂帛の気合を声に乗せ、アイラノレが言い放った瞬間、頭上で鋭い光が煌き、煉三の繰り出した飛び蹴りがアウゲイアスを捉えた。
「俺の地獄であんたの興味を満たせないか、興味がある。一度試してみてくれないか?」
 再び持ちかける煉三であったが、アウゲイアスは気にも留めないし、興味の感情が欠落しているから興味を抱くことも無い。
 これまでアウゲイアスが奪った興味の対象は、全て人に危害を及ぼすものだ。グラビティ・チェインの略奪に役立たない興味など、何の利用価値も無いのだろう。

●攻勢
 戦闘は被害者を戦場の外へ運び終えたレオナルドが合流しても、決め手を欠く状態が続く。ただ、手数で勝るケルベロス側にやや分があるようだ。
「外した。済まない」
 加速したハンマーに引っ張られるようにして、姿勢を崩したレオナルドが渋面を作った。外しもするが当たった時は大きいのがクラッシャーの性と分かっていても、出遅れた分だけ、焦る気持ちが募る。
「だいじょうぶだよ、私たちが優勢だよ」
 アウゲイアスの攻撃にエフェクトが解除される毎に、シエラはメタリックバーストを繰り出して超感覚を呼び醒まさせる。癒えないダメージの蓄積は次第にアウゲイアスを追い詰めているし、水子地蔵が落ちるのも間近に見える。
「夢はいつか覚めるもの。あなたの夢も終わりの時です」
 アウゲイアスを狙ったはずの、アイラノレの攻撃が、割り込んできた水子地蔵を捉える。次の瞬間、手術台から伸びた革のベルトがその身体が軋む程に締め付けて拘束する。
「ですから、もう、これで終わりにしましょう」
「やあね、今のあなたとっても怖い顔しているわよ」
 青緑に煌めくモザイクの光を浴びながら、メスを駆使するアイラノレの方に軽く手を触れると、要は入れ替わるようにして、目にも止まらぬ早さの蹴りを叩き込んだ。
 瞬間、衝撃音と共に頭部から足元につながる大きな亀裂が走り、まるで血のような、だがとても鮮やかな青緑が吹き出て、薄暗い風景を幻想的な光で満たした。
 今にも崩れ落ちそうな水子地蔵の表情は生まれたばかりの赤子のようで、メリルディに戦い辛さを感じさせた。
 けれど。
「くー、りーーー!」
 自身に喝を入れ、メリルディが前に踏み込めば、一瞬、空気が揺れたような気配がして。この日何度目かの、イガグリが水子地蔵の上から降ってくる。直後、炸裂。仕込まれた毒液が解き放たれる。水子地蔵の身体は遂に耐えきれずに融け始め、すぐに元の形が分からないほどの塊と化した。そして命が果てたことを示すように、真っ二つに割れて、無数の光の粒と変わって散り果てた。
 その様子を目の当たりにした、アウゲイアスはモザイクの繭で自身を包み込んで、まずは傷を癒した。
「見事な戦いぶりです。なるほど、何百回やっても上手く行かないのも合点しました」
 そう穏やかに告げてから、逃走の為の取引を持ちかけて来る。
 だが。
「最初に申し上げたはずです。あなたはこの寺から生きて出ることはできません、と」
 ここでアウゲイアスを見逃せば、また同じ事件が繰り返される。凜とした声に妥協無き殺意を孕ませた、レベッカの輝く蹴りがアウゲイアスを打ち据える。
「ああ、そうだな、あんたは俺らに興味はないんだろう」
 利用価値のある興味にしか興味がないのだろう。煉三はドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させると、無造作に撃ち放った。炎が爆ぜて吹き抜けて行く爆風、心の奥で凍り付いていた感情がどろどろと溶け出て行く気がした。もう何の期待も無い。今はただ目の前の敵を討ち果たすことを願うだけだ。
「1発なら躱される弾丸でも、6発同時なら!」
 1発でも強い、6発ならもっと強い、計都はグラビティを込めた弾丸を放つ、それは黒いボロのような服を裂いて、若い女性の優美さからはほど遠い不健康な白い肌を露出させ、血に似たモザイクをどろどろと滴らせる。
 もはや万策尽きた。最後の強行突破しかないと、アウゲイアスの思考が止まりかけた、その時。
「いいや、やっぱり、俺は、お前たちに魔女について興味がある——」
「いいでしょう。あなたが、ここから私を助け出して下さるのなら、お教えしましょう」
 魔女は12人のはずだ。あとひとりはどうなったのだと、問いかけるレオナルドの方に顔を向けると、アウゲイアスは飲めるはずのない条件を示した。
「俺に……仲間を裏切れと、仰るのですか?」
 魔女の謎を知ることができるかもしれない。蜜の如き甘い誘惑がレオナルドの頭の中を巡る。
 しかし、仮に逃走を助け、成功させてもアウゲイアスが約束を守る保証は無いし、知りたい答えなど持ち合わせていない可能性だってある。

●終わりの始まり
「あまりにも見え透いていて、少々不愉快です」
 死角から現れて殺神ウイルスを含むカプセルを投げつけて、アイラノレは侮るな。と、ばかりに言い放った。朝日が姿を現して蒼みを帯びた風景が、本来の色味を取り戻し行く中、ウイルスを含む水の如きそれは、ボロボロに裂けたアウゲイアスの黒衣の黒を強めるようにして、肉体に染み入って行く。
「うんまあ、これは絶対悪だくみでしょう。そんな虫の良い話のために、やっと倒す機会を得た敵をみすみす逃がすわけありません」
 レベッカはアームドフォートを向けると一斉射。次の瞬間、敵を破壊する為だけに作られた主砲弾が爆ぜて、その悲しい役割を全うするかのように橙色の炎の花が咲く。
(「興味を持つ……好奇心って大切だと思うんだ」)
 炎の輝きから戦場の朱に染め変えられた刃を複雑なジグザグ形状に変形させると、メリルディはその柄を握り直し、炎の中に飛び込むと無造作に突き出してアウゲイアスの胸を貫き通し、その身に刻まれていたバッドステータスが一挙に花開いた。
 あと少しで勝てる。誰もがそう確信を抱いた刹那、アウゲイアスはメリルディを蹴り飛ばしてジグザグの刃を強引に引き抜くと地面を踏み込んで、斜面を一挙に跳び上がろうとする。
「絶対逃がさない、決着をつけるって、言ったはずだよ!!」
 だが、メリルディはそれを阻むようにアウゲイアスの足に組み付き、2人は折り重なるようにして斜面を転げ落ちる。その最中アウゲイアスの影と繋がる家畜小屋からどす黒い奔流が吹き出して、メリルディを飲み込んだ。
「咲き乱れ、歓びうたえ、春の花よ――」
 機を逃さずに、シエラは場違いなほどに明るく軽やかに踊る。
 もう戦えないメリルディに癒しを送ることはしない。シエラは決死の決意に応えるため、今は持てる全ての力を攻めに傾けて踊る。間も無く、見渡す限りの花の幻が咲き乱れり。そして穏やかに風に遊ぶかに見えた花びらが、数と勢いを増しながら、瞬く間にうねる花嵐と変わって、這って逃げようとするアウゲイアスを後ろから飲み込んだ。
「アウゲイアス……あなたの起こした、数え切れないほどの事件も、これでお終いです」
 まるで溢れる幻花の匂いに浮かされた様に、計都は言うと、轟竜砲を撃ち放つ。
 爆炎の輝きが花園を戦場の色に塗り替え、続けて激しいスピンで突っ込んで来た、こがらす丸がアウゲイアスの足を踏みつぶす。
 そこに煉三が一刀でアウゲイアスの胴を貫き通すと、続くレオナルドが高速の斬撃を乱舞させる。
 直後、アウゲイアスはもう一度、自分をモザイクで包み込んで癒した。
 だが、その効果は限定的で、もはや全ての攻撃を受け止めるだけの容量は無い。
「では撃ちますよ」
「そうね。最期まで危険な敵ということは、意識すべきよね」
 果たして、ここで終わらせる。決意を孕んだ7人の猛攻が乱舞する。
 最期、アウゲイアスは震える手を朝の空に向かって伸ばした。
 だが白蝋のような手は何を掴むこともできない。そしてアウゲイアスは喉奥から溜まったモザイクを吐き出すと破壊され尽くした身体を崩すようにして倒れ伏した。
 ——風景から戦いの音が消える。
 戦いが終わればもう、ここは訪れる者も居ない廃墟の寺。
 念のため、避難させた青年の無事は確認しよう。深傷を負ったメリルディも心配だ。
 疲労はしているが、帰る準備を始めたケルベロスたちの足取りは軽い。
 それは8人で掴んだ勝利によって、アウゲイアスの事件に終止符を打つことができたからだ。

作者:ほむらもやし 重傷:メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月5日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 19/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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