突如現れる落ち武者の怪

作者:なちゅい

●驚きは落ち武者の姿へ
 夢というのは、本当に不思議なもので。
 無意識な中で見て、思わぬ体験をすることも多々ある。
 それは、子供のときだとなお強く、びっくりする夢を見るものだ。

 気づけば、その少年は夜中にどこかを歩いていた。
 それは、どこかのお寺に隣接した墓場。両親はおらず、一人で出口を求めて彷徨う。
「うぅ、こわいよ……」
 少年は歩きながらぼそぼそと呟くのは、寝る前に母親が見ていたテレビの怪奇特番の映像。それに、映っていた落ち武者が彼にとってあまりに衝撃的だったらしい。
 もし、あんなのが出てきたら。ビクビクしながら少年が歩いていると……。
 突然、物陰からテレビで見たのと同じ、薄くなった頭部に鎧を纏った色白の落ち武者の姿が!
「うわあああああああっ!!」
 叫び声を上げて目覚めた少年。彼はそれまで見ていたのが夢だと理解して、ホッと安堵していたのだが……。
 彼の背に現われたのは、ウェアライダーの姿をした少女だった。白い鹿のような生物に跨ったこの少女は、それは無言で少年の背に大きな鍵のようなものを突き刺す。
「えっ……?」
 何が起こったのか分からずに崩れ落ちる少年。
 それを見下ろす少女の胸部とその鹿は、うっすらとモザイクに包まれている。彼女は、第三の魔女・ケリュネイアと呼ばれる「パッチワーク」の魔女の一人だ。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 ケリュネイアは少年の体から鍵を引き抜くが、その体には傷一つ付いてはいない。
 代わり……というべきか。隣に、新たなドリームイーターが姿を成す。
 その夢喰いは、少年が夢で見た落ち武者と同じ姿をしていた。大きさは人間大なのは変わらず。ただ、その下半身はモザイクに包まれている。少年がテレビ画面で落ち武者の上半身しか見ていなかった為だろう。
 生気のないそのドリームイーターは少年の部屋から飛び出し、いずこともなく姿を消していったのだった。

 暑い日が続く中、涼を取る為にと怪談話をするのは珍しいことではないが。
 集まるケルベロス達の話を、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はできるだけ聞かないようにしていた。
「ごめんね。怪談は少し苦手で……」
 それでも、ケルベロスから依頼の話と持ち上がれば、そうも言っていられない。
「落ち武者の亡霊のようなドリームイーターが現れると聞いたが」
「そのようだね。……説明、初めてもいいかな」
 竜峨・一刀(龍顔禅者・e07436)の言葉に、リーゼリットは気持ちを切り替えて状況説明を始める。
「ドリームイーターに襲われた少年が、夢で見た『驚き』の感情を奪われるようだね」
 その夢の内容は、少年の呟きによると、落ち武者が突然現われたというものだったらしい。
 『驚き』を奪ったドリームイーターは姿を消してしまったが、奪われた『驚き』を元にして現実化した新たなドリームイーターが事件を起こそうとしている。
「被害が発生してしまう前に、この夢喰いを撃破してほしい」
 このドリームイーターを倒す事ができれば、『驚き』を奪われてしまった少年は目を覚ますはずだ。無事、事件が解決したならば、自室の布団で眠る少年へフォローを行うとよいだろう。
 現れるドリームイーターは1体のみ。配下などを従えてはいない。
「その夢喰いは、落ち武者と呼ばれる姿をしているそうだね」
 色白の肌をしたその落ち武者は頭部の髪が抜け落ちており、戦国時代の武者を思わせる鎧を纏っている。また、下半身はモザイクに包まれて不明瞭となっているようだ。
「戦闘になれば、主に日本刀を使って攻撃してくるようだね」
 グラビティはケルベロスが使う月光斬と流水斬。さらに、真空斬という技も使ってくるようだ。
 ドリームイーターが出現するのは夜中。岐阜県某所の住宅街で、被害者となる少年、原岡・和真の自宅近辺だ。
「敵は出会った相手を驚かせようとするから、現場周辺を歩いているだけで、向こうから驚かせにやってくるはずだよ」
 また、このドリームイーターは驚かない相手を優先的に狙う習性がある。それを踏まえて戦略に組み込むと良いだろう。
 説明を終え、リーゼリットは少しだけ顔をしかめる。
「怪談って、ボクには楽しさがよく分からないんだけれど……」
 ケルベロスの中には、目を輝かせている者もいる。ある意味で、羨ましいと彼女は本音を漏らす。
「楽しむのは良いけれど、あくまでデウスエクスを……ドリームイーターの討伐が目的だということを忘れないようにね」
 一言、嗜めるように告げたリーゼリットは最後に、早く驚きを奪われた少年を助けてあげて欲しいとケルベロス達へと願うのだった。


参加者
睦沢・文香(ブレイクスルービート・e01161)
館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)
竜峨・一刀(龍顔禅者・e07436)
鏑木・郁(傷だらけのヒーロー・e15512)
グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)
峰雪・六花(ホワイトアウト・e33170)
蒼桐・景継(月下の放浪者・e36559)

■リプレイ

●亡霊として、剣客として
 岐阜県某所の住宅街。
 夜中、この地に降り立ったケルベロス達は、討伐対象のドリームイーターの姿を求めて歩く。
 暗がりの中を歩くことになる為、メンバー達は予め、ランタン、LEDランプにワークライトといった灯りを準備していた。
「どんなふうに出てくるかねぇ」
 グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)などはハンズフリーのライトを用意している。夜も更けていたが、この近辺を歩く人のことを気にかけていた彼は周囲を気にして歩く。
「怪談話か。……僕はちょっと苦手だな」
 無表情な館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)だが、リモーネ・アプリコット(銀閃・e14900)が光源として持つ提灯を眺めながら、僅かに眉を顰める。
 それに同意する、鏑木・郁(傷だらけのヒーロー・e15512)もまた怪談の類は苦手らしく、詩月に、そして夢喰いに襲われた少年にも共感を覚えていたようだ。
「落ち武者……無念を抱えた侍様……。物悲しい存在ですが、デウスエクスなら……別です」
 右目の下のホクロがチャーミングな峰雪・六花(ホワイトアウト・e33170)はぼんやりしながらも、しっかりとした自身の考えを語ると、青い鱗の竜派ドラゴニアンの竜峨・一刀(龍顔禅者・e07436)が唸る。
「日本刀を持った落ち武者の亡霊か。いったいどんな剣を使うのじゃろうな」
 剣を極めようとする剣法家である一刀は相手を亡霊としてよりも武者として捉え、その剣術に興味を抱いているらしい。
 同じく、レプリカントの蒼桐・景継(月下の放浪者・e36559)も剣士として、相手の剣技を見極めたいと考えていたようだ。
「相手が武者であるなら、私も本気で挑むのが筋ですね」
 サムライを自称するリモーネもまた、敵に関心を抱く様子。とはいえ、彼女は被害に遭った少年のことも気遣っており、敵の討伐も念頭において捜索に当たっている。
 さて、メンバー達は被害者少年宅近辺を歩く。敵は驚かせる為にと突然現れる可能性が高い。六花もいつ出現してもいいようにと、周囲を警戒しながら進む。
 話によれば、ドリームイーターである落ち武者は色白の肌に頭部の髪が抜け落ち、さらに鎧を纏った体は下半身がモザイクになっているという。
(「夜中に急に出てこられると、結構きついビジュアルですが……」)
 黒髪おさげの睦沢・文香(ブレイクスルービート・e01161)の想像は決して、遠くはないだろう。
 郁は若干落ち着かない様子で、装飾ランプで周囲を照らしつつ様子を窺う。
 そんな彼の前に突然、物陰から不気味な鎧武者が現れようものなら……。
「うあああああああっ!!」
 大声を上げて後方へと飛びのく郁は、そいつの姿を改めて確認する。
 確かに事前に聞いた通り、落ち武者の姿をしたドリームイーターだ。実際に目の当たりにすると、詩月も率直に驚いていた。
「うぉぉっ!?」
「面妖な! 戦国の大丈夫が今も迷うとは……!」
 景継がぎこちなくもビックリとしたリアクションを見せると、一刀も声を荒げて驚く振りをする。
 彼らが敢えてそういった反応を示すのは、ドリームイーターは驚かない者を優先的に狙うという情報があるからだ。
 夢喰いの攻撃を引きつける為、盾役を担うメンバーは逆に平然としたリアクションを行うこととなる。
(「怖いですけど、出てくるのは……わかって、ましたから」)
 毅然と敵に対する六花。そばのグレイシアは素なのだろうが、ほとんど顔に出さずにぬる~っとした態度で敵を見つめる。
「落ち武者だ……。落ち武者……生で初めて見たかも……」
 生という言葉や、相手はドリームイーターであることなど、グレイシアの言葉に引っかかる点はあれど、彼が驚いていないのは確かだ。
「ふむ、脚が無いとは、また古風な幽霊さんですね」
 文香もまた、驚くわけには行かないと努めて冷静に振舞う。
「お盆なのですから、子孫の方の元へ帰られてはいかがですか?」
 囮となるメンバー達は、仲間と共にじりじりと後退する。選んだ戦場は少し遠かったこともあり、やむを得ず近場の交差点で妥協し、そちらへと敵を誘導していく。
 ただ、敵はそれを待つことなく、すらりと日本刀を抜いた。その形相たるや、子供であれば驚きを通り越して泣き出してしまいそうだ。
 ケルベロス達もまた、タイミングをはかりつつ構えを取る。
 一行に対し、武者は早速刃を振り上げた。刀剣愛好家のリモーネは、それがさほど手入れもされておらぬ無銘の刀と瞬時に見定める。
「どうか守って、あげて……ください」
 六花の呼びかけに答え、彼女のテレビウム、スノーノイズが緩やかな弧を描く武者の刃を受け止めて見せた。
 上手く夢喰いを交差点へと引きずり込み、メンバー達は攻勢態勢を整えて。
「一刀正傳無刀流、竜峨一刀。参る!」
 敵に対して名乗りを上げた一刀は刀に手を掛けながらも、仲間と共に交戦を開始したのだった。

●落ち武者の剣技とは
 相手はドリームイーターではあるが、その見た目は武者の出で立ちだ。
 ケルベロス達はすでに襲いかかってきていた敵を撃破すべく構えを取り、グラビティを放つ。
 手にする凶器で早速殴りかかっていくスノーノイズの直後に、雪の名を持つ六花は滑らかな氷騎の白砲から敵の鎧の隙間を狙い、砲弾を撃ち込んでいく。
 こちらも、氷の名前を持つグレイシア。
「動けなくしてあげるねぇ」
 敵前で腕を突き出したグレイシアは、全てを凍てつかせる冷気を発して敵の動きを抑えながらも、着実にダメージを与えていく。
 LEDライトを身体に固定させた文香は敵の刃を浴びたメンバーへと気力を撃ち出し、仲間の壁となり支援に動く。
 とにかく、驚いてしまっては囮にならない。文香はそれを念頭に置きながら、仲間のカバーを行っていた。
 その間に後方から、他のメンバー達が一気に夢喰いを叩く。
 刃を振るう敵の剣筋を見極めた一刀は刀から手を離し、徒手空拳のままで相手の懐へと入り込む。
「打ち合わす 劔の下に 迷いなく―― 身を捨ててこそ 生きる道あれ!」
 一刀は敵の体を持つ手を掴み、気で相手を崩す。
「――見たか、奥義無刀取り」
 かなりの力を持つ落ち武者から刀を取ることまでは叶わなかったが、敵の牽制は十分。刃にも刃こぼれを起こしていたようだ。
「続かせてもらう」
 さらに、郁が飛び込む。
 戦闘前は挙動不審な態度でそわそわしていた郁だが、いざ戦闘となれば意識を戦いに集中させ、敵の後頭部へと鮮烈なる蹴りを食らわせる。
 そして、リモーネが躍り込み、仲間が与えた傷口目掛けて空の霊力を帯びた斬霊刀「鬼斬」で斬りかかっていく。
 自称サムライのリモーネ。彼女はそれを名乗るだけの剣技も持ち合わせている。
 目の前の相手の刀を捌き、リモーネは敵の鎧に突いた疵を大きくし、本体ごと刃で切り伏せようとする。その傷口からは僅かにモザイクが零れ落ちていた。
「………………」
 虚ろな表情をした敵は、今度は手にする日本刀を流れるような所作で操り、前線メンバーを次々に薙ぎ払っていく。
 仲間が傷つけば、回復役として位置取る詩月が癒しに当たる。
 メンバーの体力の減少具合を気に掛けながら、彼女は半透明の御業を鎧に変形させ、仲間を1人ずつ包み込んで敵を打ち砕く力を与えていく。
「今だ、斬り込む!」
 やや、仲間からは出遅れた形だが、景継はゲシュタルトグレイブを左手、日本刀を右手に持ち、武者然としたスタイルで敵に立ち向かう。
 右手の日本刀で一筋の光を走らせた景継もまた、敵の右腕の腱を切り裂こうとする。その剣術は、彼が開祖である月下抜刀術。見事に落ち武者へと一刀を浴びせた。
 景継の愛機であるライドキャリバーも後方から疾走し、激しくスピンをしてみせる。敵の下半身はモザイクで不明瞭に放っていたが、しっかりとダメージを与えていた様子だ。
「…………」
 やや顔を引きつらせていた落ち武者は一度、刀を鞘に収める。
 気を溜めていたそいつは気合と共に、居合いで手前にいたグレイシアの体を切り裂いてきた。
 服を斬られてなおぬらっとした態度を崩さぬ彼は、斬撃痕に視線を落とした後で口元を吊り上げる。
 チェーンソー剣にも似た外見をした「氷河」の名を冠する槍に稲妻を帯びさせた彼は、超高速の突きで夢喰いを攻め立てるのだった。

 相手は、子供の抱いた「驚き」の感情でしかなかったはず。
 しかし、ドリームイーターという形を得たことで、その落ち武者は日本刀を使いこなし、ケルベロス達に斬撃をまみえていく。
 文香は敵の猛攻の中で冷静に振舞いつつ身を張り、回復を繰り返す。
 事前に敵が月光斬を使うと情報を得ていたことで、文香は耐性のある防具を着用してこの依頼に臨む。
 驚異というよりも、脅威を感じる敵の攻撃に耐える彼女は時に、歌を口ずさんでいた。
「ガラクタの海にある十字架は……♪」
 それは、生きる事の罪を肯定するメッセージ。それによって力を得たメンバーは、グラビティで服を塞ぎ、敵に斬られた箇所をも塞いで攻勢を強める。
 それによって癒しを受けたリモーネ。彼女はサムライの剣捌きによって、達人の剣技を直接落ち武者に叩き込む。
 間髪入れず、後方の景継がゲシュタルトグレイブを操る。
 今回、初めて槍を行使する彼はややぎこちない手つきで振るうが、その回転斬撃はうまく敵の体に傷を増やし、進撃を止める。
 景継のライドキャリバーも立て続けにガトリングガンを浴びせかけ、敵を威圧していたようだ。
 しかし、武者は不気味な眼差しを向け、流れるように居合いを繰り出し、さらに急所へと刃を突き入れてくる。
「我が心は花なり。花が心は祝ぎなり。なれば祝ぎに相応しからぬものを遠ざけ給え」
 敵の刃で動きを鈍られる仲間へ、詩月は鈴を鳴らしながら詩歌を吟じる。
 それは、咲杜式巫術が一つ、詩歌の儀。彼女の言葉は結界を発生させ、仲間を包み込んでいく。
 グレイシアも詩月をフォローする形で、ステップを踏みつつ戦場を舞い踊り、花弁のオーラで仲間を苛む傷を癒す。
「しっかり、ケアしていきたい所だよねぇ」
 しばし状況を見守り、彼は回復、攻撃の判断をしながら、前線に立ち続ける。
「貫き、通す!」
 その後ろから一刀が自らの日本刀に雷の霊力を纏わせ、鋭く突き出す。
「……っ」
 破壊される武者鎧に、夢喰いが嗚咽を漏らすと、郁が体内のグラビティ・チェインを使って黒煙を纏う大型獣を具現化して。
「ここで確実に仕留める……喰らい尽くせ!」
 少年を救うことこそ、己の騎士道。郁は一気に獣をけしかけ、その鋭い牙と爪で敵を食らおうとしていく。
 それでも、敵はしぶとくこちらを睨みつけ、真空の刃による衝撃波を飛ばす。それを受け止めたのは、スノーノイズだ。
 時折顔面の画面から閃光を発し、夢喰いの気を引いていたこともあり、攻撃の的ともなっていたが、仲間の回復がギリギリ間に合っている。
 そして、盾役が多いことでカバーし合える環境があったことも大きい。六花もオラトリオの翼を広げ、オーロラの如き光で仲間を包みこんで治療していく。
「…………」
 攻め落とせぬ相手に、夢喰いが刹那怯む。
 そこを見て、回復の手を止めた文香が重力を乗せた蹴りを食らわし、リモーネが敵の正面へと躍り込んで。
「雷鳴や、一人軒端で、雨宿り……お粗末さまです」
 時に無銘の刀を握る彼女は再び「鬼斬」を手に取り、雷の如きスピードで三度突きを打ち込む。
 詩月もオーラの弾丸で援護するが、なおも武者は動きを止めず。
「…………っ!」
 振り上げた刃が緩やかに弧を描く。
 そこで、一刀が飛び出し、敵の刃と同じ軌跡を刀で描いた。
 夜道で輝く2つの月。刹那、それに詩月が見とれた次の瞬間、その剣閃は赤く染まる。
 だが、それは一刀の体の鱗と薄皮を切り裂いたに過ぎない。
 対する一刀の刃は確実に夢喰いの体に食い込み、その傷跡からとめどなくモザイクが流れ出す。
 その流出は止まらず、夢喰いはそこから体が崩壊し、モザイクとなって消え失せていく。
「真空斬か……、中々に興味深い剣技であった」
 敵の消滅を確認し、景継は刃を収める。
「強力な使い手じゃった。いずれは一対一で倒せるよう精進せねば」
 一刀もまた刀を鞘に収め、消え行く敵を仰ぎ見て更なる研鑽を誓うのである。

●安心して眠りに……
 戦場となった住宅地の交差点へと、ケルベロス達は修復作業を始める。
「もし願うのなら 願うのなら 引き金を引いてみせてよ……♪」
 笑顔でブラッドスターを歌う文香の声が、夜中の住宅街に響く。さらに、グレイシアが周辺を舞い踊り、花びらのオーラで破壊された壁やアスファルトを幻想交じりに直していく。
 戦いによって目を覚ました近隣住民が、歌声とオーラによって表情を和ませていたようだ。

 その後、メンバー達は被害者の少年、原岡・和真の自宅へと向かう。
 両親に事情を説明し、少年の部屋へと向かうケルベロス達。文香が和真を介抱する。
「もう大丈夫。怖い幽霊は私達がやっつけちゃいましたよ」
「戻って良かったねぇ?」
 ケルベロスカードを渡す文香に続き、グレイシアも少年の目覚めを確認し、一言声を掛けた。このまま目覚めぬ可能性もあっただけに、和真もうんと小さく頷く。
「怖いのは、もう……六花たちが追い払いました。だから、安心して……お外で、遊べますよ」
「折角ですし、肝試しでもしてきませんか?」
 六花はゆっくりと和真に語りかける。続けてリモーネが提案をするが、彼は大きく首を横にぶんぶんと振っていた。
「また現れたとしても、俺達が駆けつけて助けるから大丈夫だ」
 郁の言葉にリモーネも頷く。ケルベロスに頼もしさを覚える和真だが、しばらくそういった類のものとは距離を置きたいようだ。
 人間、苦手なモノは誰しもある。詩月はそう前置きして、少しまどろみかけていた和真を寝かしつける。
「ちゃんと解決したんだから、気にしないでね」
「うん……」
 詩月に励まされながら、和真はまた眠りへと落ちていくのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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