「そーめんといったらこれだよね!」
少年の座るテーブルの上には、青いウォータースライダーのような物がある。
「こうやって上にそーめんを入れるとー」
箸を使ってざるに山盛りにされた素麺を一つかみ持ち上げ、ウォータースライダーの天辺に置いた。すると水の流れに従って滑り落ちていく。
「ここで!」
クルクル回る素麺が直線に入ったところで箸をさっと伸ばし、見事素麺を挟み取る。
「そしてーずずっと食べちゃう!」
反対の手に持ったつゆに潜らせずずーっと一口で食べてしまう。
「うまーー! やっぱ夏はそーめんだよー!」
次々に素麺を流しては掬い上げて美味しそうに食べる。
「はぁ~。流しそーめんの機械買ってもらったのせーかいだったなー!」
ウォータースライダーを流れる様を見ているだけでも楽しいと少年は素麺を流す。
「本物のウォータースライダーでそーめん流したらどうなるのかな?」
一度やってみたら面白そうと想像した少年が笑う。
『なら流してやるぜ!』
「だれ!?」
声はすれど誰も居ない。すると机の上の流し素麺機が突然巨大化して少年を乗せて上へ上へと持ち上げる。
「うわっ」
『流し素麺を始めるぜ!』
プールにあるような高さ6mはある巨大なウォータースライダーとなり、上から自動で水と素麺が流れ出す。そこに少年も一緒に乗せられ勢いよく滑り出した。
『気をつけろよ! 箸で掬われたら食われちまうぜ!』
巨大な箸が宙に浮き、流れる少年を串刺しにするように勢いよく上から落ちてきた。
「うわーーーーー! 食べないでーー!」
がばっとベッドの上で少年が跳ね起きる。
「部屋? 夢……か。そーだよな。ウォータースライダーが部屋にあるわけないよ」
はぁっと溜息をついて少年は寝汗を拭う。するとその胸に鍵が突き立った。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
突如現れた魔女が鍵を引き抜くと、少年の胸には傷一つない。だがその意識は失われベッドに倒れた。
魔女は忽然と姿を消し、代わりにそこに現れたのは、青いウォータースライダー。
『みんな素麺と一緒に流してやるぜ!』
まるで蛇のように可動して窓から外へと出ていった。
「夏といえばそうめんとか定番よね。そのそうめんから新たなドリームイーターが現れるみたいね」
新たな事件の情報を掴んだと、ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)がケルベロス達に向き合う。
「少年から第三の魔女・ケリュネイアが『驚き』を奪い、ドリームイーターを生み出して人々を襲わせる事件が起きてしまうようです」
説明をセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が引き継ぐ。
「ドリームイーターの目的はグラビティ・チェインを集める事。その為に人々を襲い始める前に撃破して犠牲者を出さないようにしてほしいのです」
今はまだ犠牲者は出ていない。人が襲われる前に敵と接触する事が可能だ。
「敵が現れるのは奈良県にある住宅街。深夜の道で待ち伏せして人を襲うようです」
人気の減っている時間なので、戦いになっても人を巻き込まずに戦えるだろう。
「ドリームイーターは6m程の高さのあるウォータースライダーの姿をしています。素麺や人を流して吹き飛ばしたり、流れ着いた底で溺れさせたり、箸での攻撃を行うようです」
流麗な箸遣いで人を持ち上げ、凄まじい水流に流されて途中で吹き飛ぶか、底の深い受け皿へと押し込んでしまう。
「驚きから生まれたせいか、敵はまず出会った対象を驚かせようとするようです。そして驚かなかった人物を優先的に攻撃してくるようです」
この習性を利用できれば敵の攻撃対象をある程度選択できるだろう。
「流しそうめんは夏らしい遊び心のある食べ方ですね。それに人が流されて殺されるなんて放っては置けません。誰も犠牲にならないよう敵を撃破し、少年を救ってあげてください」
よろしくお願いしますとセリカが一礼してヘリオンの準備に向かう。
「流しそうめんって涼しげで楽しそうよね、ウォータースライダーも楽しいけど、その両方を合体させたら楽しいとは思えないわね。食べもので遊んじゃダメって教えてあげるわ!」
気合を入れるユーロに頷き返し、ケルベロス達も出発の準備に取り掛かった。
参加者 | |
---|---|
クロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651) |
楚・思江(楽都在爾生中・e01131) |
木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634) |
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479) |
霧島・絶奈(暗き獣・e04612) |
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365) |
ウェンディ・ジェローム(輝盾の策者・e24549) |
猫夜敷・千舞輝(地球人のウェアライダー・e25868) |
●ウォータースライダー
夜といえどもまだまだむっとする熱気が残って汗が流れる。
「……また出やがったか、食い物で攻撃する奴がよ」
苛立ったような声を楚・思江(楽都在爾生中・e01131)は溢しながら立入禁止テープを張り巡らす。
「料理人のサガっつうか、思わず憮然としちまうぜぇ」
「山のようなでかいプリンとかみたいに子供は実際に食えるかとかそういうの度外視しますからね~。夢はありますけど、現実は非情である」
夢は夢のままにしておいた方がいいと、霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)は残念そうに肩を竦める。
「流し素麺かー、家族のイベントだったりするんだよな」
木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634)が最初に思い浮かんだのが家族でしているような光景だった。
「俺はそういうの全然なかったから羨ましくもある……かな? ちょっとだけな」
「ウォータースライダーは滑って遊ぶから楽しいのであって、あれで流しそうめんなんてやったら絶対取れなくて食べられませんよねー……」
激流に箸まで流されてしまう姿を想像しウェンディ・ジェローム(輝盾の策者・e24549)は無理だと首を傾げた。
「楽しそうではありますがー……めんつゆも、ちゃんと持ってきましたからこれで挑戦は出来ますねー」
実際どうなるのだろうと口元を緩める。
「ウォータースライダーも、流しそうめんも涼しげでいいし、食べても害は無いらしいから食べたいけど、人が滑り終わった後でするのは嫌よね」
ならば誰かが滑る前に食べるしかないと、ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)はつゆと薬味におかずまで準備万端でこの場に来ていた。
「うぅ、ウォータースライダーに流しそうめん……両方夏に人がごった返しそうなイベントなので一生縁がないと思ってましたけど……ま、まさか実物より先にドリームイーターを拝むことになるなんて……はぅ」
不安そうにキョロキョロ周囲を窺いながら、クロコ・ダイナスト(牙の折れし龍王・e00651)はランタンの明りで周囲を照らす。
「そうめん、ええやんなぁそうめん。夏のものぐさメシ日本代表選手。結構もっちゃり作れるから、一回ゆでたらそれでしばらく食べられるし。具入れるにしても、ハムとかきゅうり切るぐらいやし」
ロングパーカーを着込んだ猫夜敷・千舞輝(地球人のウェアライダー・e25868)は素麺から連想する。
「ところでウチは、めんつゆちょい濃い目が好きです。ゆえに若干薄まりそうで流しそうめんはやった事ありません! えっ聞いてへん?」
一人でボケツッコミをして皆の表情を緩めた。
「食べ物を粗末にするのは好きではありませんが……」
霧島・絶奈(暗き獣・e04612)は軽く溜息を吐く。
「今回の場合は、食べ物で攻撃してくる敵が悪いのか、それともそれを受けきれない此方が悪いのか……判断に苦しみますね」
何であれ敵ならばすべき事は一つだけと、その視線の先に家の陰から街並みに似合わぬ水色の滑り台を見つける。近づけばそれが家よりも大きなウォータースライダーであることが確認できた。
●流し素麺
『いよう! 流し素麺をしないか!』
気さくな呼びかけと共に、スライダーの天辺から箸が素麺を流していく。
「なんだこれ、公園の滑り台……じゃねえな! ウォータースライダーだとぉッ!?」
後ずさりながらケイは大袈裟に驚いてみせる。隣のボクスドラゴンのポヨンも一緒にビクッと口から火を漏らしながら驚いていた。
「おおっ!? なんというダイナミック流し素麺! 実在するとは……!」
「んやこれ! 動く流れるプールやん!」
食べる事を一切考慮していない流し素麺に裁一は驚き、目を丸くした千舞輝は手を上げ大袈裟にリアクションする。
「こんな大きなそうめん流し機初めて見た、本当に人が滑れそう。しかも、巨大なお箸までついてるなんて」
つゆが無いのはサービスが悪いと思いつつ、ユーロは口には出さずに驚きの表情だけ表に見せる。
「ひぃぃぃ!? アインヘリアルさんとかドラゴンとかでかい敵と戦ってきましたけど……こ、これは説明不要なデカさですね!?」
本気で怯えたクロコは敵から顔を逸らす。
「ひょ、ひょっとして、ヤバいやつじゃ……いえなんでもありません!? が、がんばりますよお」
敵に視線を戻し震える手で巨大ハンマーを握った。
「美味しそうですねー、これならみんなでお腹いっぱい食べられますー」
のほほんとした様子でウェンディが楽し気に微笑む。
『ヘイ! 俺っちをただの流し素麺だと侮ってやがるな!? 見せてやるぜ、ジェット流しってヤツをよ!』
水流が増し上流から凄まじい勢いで素麺が流れ出し、勢いで素麺が飛び出しウェンディを巻き込んで地面に叩きつけた。
「……驚くっつうかよ……どうにもシュールで、反応に困るっつうべきか……」
頬をポリポリと掻いた思江は呆れたような目を向けながら、手にした杖から雷を放ち敵を撃ち抜く。
「……某ゲームの一千万キャンペーンのCMみたいな敵ですね。とまれ、敵対するなら排除するまでです」
敵を見上げながら絶奈は鎖を地面に広げて魔法陣を描き、仲間達を守護する力で場を満たした。
「こ、怖くない怖くない……た、ただのウォータースライダーなんです!」
自分に言い聞かせたクロコはハンマーの噴射で加速し、振り回してスライダーに叩き込んだ。だが流れる素麺がクロコを押し流し吹っ飛ばした。
「流し素麺っつーか、激流素麺だろこれ!」
素麺と一緒に流されるクロコを目で追いながら、ケイは大太刀を抜刀し桜吹雪を舞わせスライダーを一閃する。傷口に舞散った桜が燃え炎上させた。
「侵略者は数あれど、どうしてもこの手の連中だけは許せねえな!」
地面に落ちた素麺を見た思江は鼻息荒く、料理人としての怒りを込めて蹴り飛ばしコースを歪ませた。
『おいおい、勝手にコースを変えられたら困るなー!』
水飛沫を上げて素麺が飛んでくると、ボクスドラゴンのクリスチーナはブレスを吐いて弾き飛ばす。
「これは流し素麺というより飛ばし素麺です……!」
飛んでくる素麺を避けて電柱を駆け上がった裁一は蹴りを叩き込み水を零させる。
「そうめんは食べるものですからー、こんな勢いじゃ食べられませんよー」
素麺を剣で打ち払ったウェンディは剣を掲げ、光で星座を描いて守護の力を仲間に与える。
「食べ物を粗末にしないよう、素麺が流れなくしてしまいましょうか」
絶奈は多重魔方陣を展開し巨大な槍のような光を生み出す。その閃光はスライダーを貫き大きな穴を空けた。そこにテレビウムが凶器で殴りつけ傷を広げる。
『ヘイヘイ! 素麺は流れてこそだぜ!』
するとスライダーは損傷部を切り捨てて接続し、コースを変えて流れ始める。
「なんでこんなノリノリやねん! そんな速かったら食べられへんやろ!」
猫のように俊敏に地を蹴った千舞輝は跳躍し、飛び蹴りを叩き込んでコースを歪ませた。そこを流れる素麺が曲がり切れずに飛び出していく。
「こんな派手な流しそうめんは初めてだわ、やっぱり1度は食べてみたいよね」
激しい素麺の流れを見ながらユーロはオウガ粒子を放ち、仲間達を超感覚に目覚めさせて神経を鋭敏化させた。
『パーティといこうぜ!』
一気に素麺が流れコースの途中で出口が出来て頭上から降り注ぎ、ケルベロス達に降り注いだ。
「よくもやってくれたな……砕いて粗大ゴミに出してやる!」
髪についた素麺を振り払い、人が変わったようにクロコは好戦的になって蹴りつけひびを入れる。
「だから! 食い物を! 攻撃に使うんじゃねえよ!」
雷鳴が轟かせながら怒鳴りつけた思江の声は、衝撃波となって空気を震わせ敵の全身にひびを入れた。
「だいぶ水漏れが激しくなってきたみたいね」
メタルで腕を覆ったユーロは、突っ込みながら拳を打ち込みスライダーの側面を砕いた。すると水と共に流れきれなかった素麺が飛び出してユーロの体を濡らす。
「濡れてもいいようにちゃんと準備しておいたわ」
ユーロが服を脱ぎビキニの水着姿を露わにした。
『水漏れしたら滑り悪くなっちまうぜ!』
「自分の箸は用意してますから、結構ですー」
大きな箸が頭上から迫ると、跳んだウェンディは箸を蹴り飛ばしスライダーにぶつけた。だがコースが変更して落下するウェンディを捕え、そのままコース下まで滑って深い受け皿に流し込まれた。ポヨンがそれを羨ましそうに見上げる。
「……ん、ウォータースライダー乗りたいのか? あれは危険だからやめとけ」
ケイは大太刀を斬り上げ受け皿を斬りながらポヨンを止める。
「今度ちゃんとしたプールに連れてってやるから、それより俺と一緒に素麺食べような」
そう言って箸と麺つゆを取り出し、激流を流れる素麺を何とか掬って口に持っていく。するとポヨンは美味しそうに食べ始めた。
「素麺が絡みついて溺れるなんて、笑い話にもなりません」
絶奈は薬液を受け皿に放り込み、素麺の拘束が解けたウェンディが這い出てきた。
「恐るべし強敵! 箸が勝手に! ……うむ、どこから調達したか知りませんが素麺は案外美味いです」
言葉とは裏腹に嬉々として箸で素麺を掬った裁一は、準備しておいたつゆに入れて食べる。それと同時にプールで遊ぶリア充を想像して嫉妬し、八つ当たりするように薬液を流しスライダーを痺れさせ流れを遅くした。
「ウチもお腹空いてもうたな」
千舞輝は縛霊手でスライダーを殴りつけ、霊糸を巻き付かせて素麺を絡め取った。
「そうめんゲットやで!」
それを箸ですくいつゆに入れて勢いよく食べ始める。そんな様子に程々にとウイングキャットの火詩羽が窘めながら翼を羽ばたかせ仲間達を支援する。
●流れる人間
『もっと色々流してやるぜ!』
箸が掬い上げようと降りてくる。
「ポヨンがまだ食ってる途中でしょうが!」
ケイは自分が食べる暇もない程夢中で食べるポヨンに素麺を食べさせながら、視線を箸に向けてグラビティで爆発を起こし箸をへし折った。
「流れが速いので、もうちょい緩やかになる祈りを込めて!」
裁一は作り出した弾丸を撃ち出し上流を凍りつかせた。流れが一度そこで弱まり流れる速度が落ちる。
「食べやすくする為に流れを緩やかにするわ!」
ユーロは黒い魔力弾を撃ち込み敵の脳裏に悪夢を浮かび上がらせる。
『素麺が詰まっちゃう!』
幻に怯えるように水の流れは更に弱まった。その隙にユーロは箸で素麺を掬い、ずるずると美味しそうに食べ始めた。
「みんな美味しそうですー……」
腕を鋼で覆ったウェンディは、素麺を引き千切り振り下ろす拳でスライダーを叩き割り穴を空けた。
「あたしもちょっとくらい食べてもいいですよねー」
みんなが楽しそうに食べているのに釣られ、ウェンディもつゆに浸して素麺をすする。隣ではクリスチーナもご相伴に与かっていた。
『流れろ! 全部流れちまえ!』
水量が一気に増して素麺と一緒に飛び散り、バケツを引っくり返したように周辺を水浸しにした。
「これでは素麺を食べるどころではありませんね」
絶奈は静かに黒い液体を広げ、敵に気付かれぬ内に足元から這わせて包み込んでいく。
「濡れるんは最初から覚悟してたで」
びしょ濡れになった千舞輝はパーカーの前を開けると中には水着を着こんでいた。
「夏らしく水遊びといくでー! 『猫心あれば水心』。ヒャッハー水だー!」
千舞輝が50円玉を空に弾くと猫っぽい大波が押し寄せてスライダーを覆う。その流れに乗って千舞輝は滑り降り、やれやれと首を振りながら火詩羽は爪で敵を引っ掻いた。
「それ以上食い物で遊べなくしてやるぁ!」
思江が雷を放ち水を伝って電流が広く流れスライダーを黒く焼き付けた。
「水が無ければ素麺も流せんだろう?」
クロコはオーラの塊を撃ち出し深い受け皿に穴を空け素麺と水が地に溢れる。
「流し素麺は立派な文化の一つなんだ! それをぶち壊しにしやがって!」
食文化への拘りを思江が大音量で語る。その声は轟雷のように響きスライダーのあちこちから水漏れが発生した。
「これ以上食べ物を玩具にするのは見ていられません。消えてもらいます」
狂的な深い笑みを浮かべた絶奈は、光の槍を撃ち出し津波のように流れる大量の素麺を消し飛ばした。
「誰も犠牲にならない様に撃破しろとは言われたが、このままだと回収しきれない素麺が犠牲になっちまう!」
スライダーに跳び乗ったケイは傷の入った場所に大太刀を振り下ろし、深く刃を斬り込み穴を大きく広げた。だがそこで素麺の波に流された。
「うおっ危な……ごばっ」
「美味しくいただいたのでー、後は倒すだけですー」
ケイを飛び越えて大きく跳躍したウェンディは、星のオーラを纏う足で素麺ごと踏みつけ素麺の流れを止めた。
「ではでは水に直接麺つゆ流しましょう。毒と共に」
裁一は残ったつゆに混ぜた薬をスライダーに流す。すると悶え苦しむようにスライダーはくねくねと動き出した。
『やめろ! 食べられなくなっちまう!』
水量を多くして薬を流し出そうとする。
「龍王と呼ばれし我が闘気、おぬしには過ぎたものだが、とくと味わえ!」
クロコの地獄化した右腕に龍王の闘気の渦が混じり、まるで龍の顎の如き形となって中央を殴りつけた。噛み砕かれるように大穴を開けて砕け散り水の流れが途切れる。
「ふう、たっぷり遊べたで、遊び終わったら玩具はちゃんと片付けんとな」
千舞輝は猫のように跳んでくるっと回転して蹴りを浴びせスライダーを地面に倒す。
「フルボッコにするぞー!」
そこへ4人に分身したユーロは杖をハンマー代わりにボッコボコに殴りつけ、粉々になるまで打ち砕いた。
「Smash and Bleak Out!!」
砕け散ったスライダーはそのまま水のように消えていった。
●流れるままに
「お、終わりました……ウォータースライダーって全然楽しくないですよお」
まだ髪についていた素麺が気になるのか、クロコは手櫛で髪を撫でつける。
「夏らしくて美味しい敵でしたね~」
「美味しかったですー。でももう少し落ち着いて食べたかったですねー」
裁一とウェンディが満足そうに笑みを浮かべた。
「結局食べられなかった……しかしポヨンは今日は食べてばかりだったような……」
ケイの視線の先でお腹を膨らませたポヨンは寝ころんでいた。
「まったく、しょうがねえなぁ」
そんな仲間達を見て思江は苦笑いを浮かべた。
「あれだけ水を撒いた所為か、少し涼しくなりましたね」
絶奈は涼し気な顔で濡れた服を払う。
「デザート食べたいわね、帰りにどこか寄って帰えろうかしら」
「それはええな! みんなでどっか寄ってこか」
ユーロの提案に千舞輝が賛成するとゲームの話をしながら歩き出す。それに皆も続き濡れた足跡がスライダーの流れのように地面に描かれた。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年8月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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