●竜牙兵もホタテが食べたいのか?
北海道某所の繁華街。
日本の最北端に位置するこの地は、海の幸が豊富だ。
カニ、ウニ、サケ、いくら……などなど。
この地を訪れる者は、海産物といえばこれらの品に注目して食べて行くことも多いが、通年食べられて美味しい食材として、ホタテも捨てがたい。
ホタテの旬は冬だが、養殖物も出回っている。魚市場には先に述べた海の幸に負けじと新鮮なホタテが並べられており、夏でも美味しく食べることができる。
「らっしゃいらっしゃい!」
「やすいよやすいよー!!」
魚市場内からは、店主の声が外まで聞こえてくる。近辺に住む人だけでなく、車を利用して買いに来る道民の姿も多数見受けられる。
そんな活気ある魚市場の周辺に突然、鋭い牙が3本降り注ぐ。
「グラビティ・チェインンンンン……!!」
その牙はすぐに人の形を取り、低く、やや不明瞭な声で叫ぶ。竜牙兵と呼ばれるドラゴンの尖兵達だ。
鎧兜を身につけた3体の竜牙兵は、すぐさま手近な人から大鎌で切り裂いていく。別の竜牙兵はバトルオーラを全身に纏い、人々を撲殺してグラビティ・チェインを奪い取ってしまう。
「モットだ、ワレらにゾウオとキョゼツをムケルがイイ!!」
逃げ惑う人の背から襲いかかった竜牙兵。星辰を宿した剣でその人を真っ二つに両断してしまう。
気づけば、町は真っ赤に染まって。人々だった残骸を竜牙兵は踏みしめて歩く。
「「「グァァァハハハ、グァァァハハハハハハ!!」」」
大量のグラビティ・チェインを得た事で気分が高じたのか、竜牙兵達は気分よさげに高笑いする。その声は、人がいなくなった街にこだましていたのだった。
ヘリポートにて。
快晴の空に光るは、ギラギラと輝く太陽。夏真っ盛りという陽気に、ケルベロス達は汗を流す。
「早く、ヘリオン内に」
リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がそんなケルベロス達を気にかけ、冷房の効いた自身のヘリオン内へとメンバー達を招き入れる。
涼しい空気を浴びて、一息つくケルベロス達。そんな中で、神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)が早速依頼について口を開く。
「魚市場を狙って、竜牙兵が出現するって聞いたぜ」
「たまたまだろうけれど、出現場所はその周辺のようだね」
竜牙兵も、海産物が欲しいのかと考えた雅。本来の動力源がグラビティ・チェインなのは間違いないだろうが、ホタテを食べる竜牙兵を想像するとなんとも滑稽だ。
だが、事態はそんなに笑えるものではない。北海道某所の繁華街の魚市場周辺に現われた『竜牙竜星雨』と呼ばれる竜牙兵達は、この市場利用者らの命を次々に奪ってしまうという。
「この後、すぐに現場へ急行する予定だよ」
また、敵が出現する前に周囲へと避難勧告をすると、竜牙兵は他の場所に出現してしまう。こうなると事件を阻止できず、被害が大きくなってしまう。
「でも、皆が戦場に駆けつければ、避難誘導は警察などに任せられるはずだよ」
この為、ケルベロスは率先して竜牙兵撃破に全力を尽くしたいところだ。
現れる3体の竜牙兵は、それぞれ異なる武器を所持する。
「敵が所持しているのはそれぞれ、ゾディアックソード、簒奪者の鎌、バトルオーラだね」
使用するグラビティは、ケルベロスが使うものと変わらない。また、竜牙兵はそれぞれ武器を1つのみ所持しており、両手に武器を持つことはない。
「あと、面倒なことに、敵は気分で初期配置を変えるようだね」
この為、相手の布陣が如何なる状態であっても対応できるよう備えられれば、効率よく戦えるだろう。
現場は、北海道某所の繁華街にある魚市場周辺だ。主にこの利用者を、竜牙兵は手にかけようと動く。
「あと、ケルベロスとの戦闘が始まれば、竜牙兵は撤退することはないようだよ」
だからこそ、到着次第すぐに竜牙兵を迎撃し、積極的に攻撃して討伐したい。
説明を終え、リーゼリットはメンバー達に冷たい飲み物を差し出しつつ、続ける。
「北海道なら、幾分かこちらよりは涼しいはずだね」
暑さを凌げるのはありがたいが、合わせて魚市場周辺の戦いとあって、戦闘後に海の幸を食べて原を満たすこともできそうだ。
カニなども美味しいが、ホタテなどは焼くことですぐに美味しくいただける。新鮮なホタテで作ったバター焼きなどはぷりぷりとしながらも、香ばしい味を堪能できるのだとか。
「頑張って戦ったご褒美はあるからね。人々を護る為にも、気合入れて竜牙兵の討伐を。……よろしく頼んだよ」
参加者 | |
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稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734) |
御子神・宵一(御先稲荷・e02829) |
紫藤・リューズベルト(メカフェチ娘・e03796) |
アイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107) |
エドワウ・ユールルウェン(夢路の此方・e22765) |
神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167) |
レヴィア・リヴァイア(海星の守護龍・e30000) |
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762) |
●ホタテを狙う……んなわけない
北へと向かうヘリオン内にて。
「海の幸! 素晴らしいデスよね……! 嗚呼、モウ字面からシテ愛おしい!」
叫ぶレヴィア・リヴァイア(海星の守護龍・e30000)は海を愛し、海に育まれた全てを愛する人派ドラゴニアンだ。ホタテとて例外ではない。
「……其れで、妾の最愛を穢す牙が降るとは、本当か?」
「竜牙竜星雨、か。……残党かな?」
レヴィアの問いかけに、ぼんやりした子供のレプリカント、エドワウ・ユールルウェン(夢路の此方・e22765)が首を傾げる。
「本当に、竜牙兵がホタテを狙うですの?」
頭のゴーグルがトレードマークの紫藤・リューズベルト(メカフェチ娘・e03796)。問いかけてくる彼女は、かなりトロそうな雰囲気をかもし出す。
「ホタテは美味い。竜牙兵もホタテを……いや、奴らの狙いは違うな」
「ま、知ってたけど、彼らの狙いは魚介類じゃなく人類よね。彼ら、別に食事しないでしょうし」
中性的な顔立ちの魔女医、神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)は頷きかけて首を振る。それに氷のような冷静さを見せる、アイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107)が同意した。
「竜牙兵に限りませんが、好ましい物に惹かれる人々を狙って来るんですよね……」
狐の耳を動かす御子神・宵一(御先稲荷・e02829)が嘆息する。なんとも厄介な相手だ。
「この暑い季節だからこそ、涼しい土地で美味しいものを食べられる幸せ……。そんな幸せを壊す連中をのさばらせる理由はないよね」
腕を鳴らすのは、真っ赤なリングコスチューム姿ですでに臨戦態勢にある稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)だ。
「あんなやつらに、みんなの日常を荒らさせたくないです。がんばりましょう、雅さん」
「惨劇は防ぐぞ、エド。治療は私に任せてくれ、これでも医者だからな」
雅に懐くエドワウへ、雅は胸を張る。
間もなく、ヘリオンは現地へと差しかかろうとしていた。
現場は北海道某所の繁華街、魚市場周辺。
日常を過ごす人々のそばへ、3本の巨大な牙が突き刺さる。
「ゾウオを、キョゼツを、ワレらにアタエよ……!」
牙は鎧兜を纏った竜牙兵の姿をとり、周囲を見回す。
「待つのです!」
現地民の叫び声の中から大声で割り込んできたのは、ライドキャリバーに乗ったリューズベルトだった。
「憎悪と拒絶を集めに来たのだと宣っていたな。成程、小賢しい」
続いて姿を現したレヴィアはすぐに、手近な敵へとエクスカリバールを叩きつける。しかしながら、そいつは大鎌でその一撃を防いで見せた。
続々と、この場に駆けつけるケルベロス。事前に宵一が開戦直後からの一般人の避難誘導を警察へと依頼していたことで、そちらも動き始めてくれていたようだ。
「我らは民を守る盾にして剣――神殺しの番犬なり。此処は私達が引き受ける!」
魚市場の利用者や通行人へと雅が叫び、警察の指示に従った避難を呼びかける。
「すぐに終わらせるから、安全なところで観ていてね!」
晴香はダイナマイト変身によって、近隣の人々を激励する。ケルベロスであり、有名女子プロレスラーの晴香の来訪は、人々にこの上なく勇気と希望を与えていく。
その様子に竜牙兵は歯軋りし、邪魔するケルベロスを睨みつけてくる。
「どうして、こういうところにも来るのかな。ここに、キミたちの求めるものは何一つないよ」
避難を警察に任せ、歩み寄ってくるのは、少女の人形を抱くアンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)だ。彼は極力被害がないようにと立ち回る。
「解体されて市場に並べられたくなかったら、さっさと帰ってくれないかしら?」
「竜牙兵に差し上げるグラビティ・チェインもホタテもないので、ここは大人しくお引き取り願うのです」
クールに敵を挑発するアイオーニオン。リューベルトもライドキャリバーから降りつつ呼びかけるが、敵がそれに応じる素振りは微塵もない。
「ナラバ、キサマラから、キョゼツにミタシテヤル……!」
それぞれ、三者三様の武器を構える敵。早く海の幸を口にしたいと考えるレヴィアは、武器を日本刀に持ち替えて。
「こんな輩を相手取って憎まず拒まずとはな。……ならば、純然たる憤怒をぶつけてやろう」
「プロレスラーは夢を売り、そして夢を守る者」
さらに、仲間の前に出て身体を張る晴香が両手を広げた。
「鍛えた美ボディで、人々も仲間も守って魅せるよ!」
ケルベロスに向け、叫びながら襲い来る竜牙兵。程なく、剣戟音や破壊音がこの場で起こり始めるのである。
●牙に与える『生物』はない
攻め来る竜牙兵の精鋭部隊を、宵一は身構えつつ迎え撃つ。
「体力と火力共に優れた敵のようですが」
ポジションがまだ分からぬこともあり、宵一は地面に守護星座を描こうとするゾディアックソードを持つ敵目掛けて音速の拳を叩きこみ、大きく吹き飛ばす。
「ウェアライダーの長所であるスピードと剣士として培った技術で、勝負と行きましょうか」
前線に立つ宵一は攻撃を行うことで、敵の気を引きながらもダメージディーラーとしての役割に専念し始める。
すると、後方にいたオーラに包まれた竜牙兵が溜めた気力で回復に動く。
「プロレスラーが接近戦しかできないと思ったら、大間違いよ!」
晴香は振り下ろされてきた大鎌の一撃を受け止め、叫ぶ。反撃を直接叩き込みたいところだが、今は仲間に合わせてメディックとなるバトルオーラ持ち目掛けて、食らいつくオーラを発していく。
竜牙兵のポジションを探る為、アンセルムはじっと敵の動きを見つめる。
まず、気になるのは剣、大鎌のポジションだが、大鎌の一撃を晴香が気合を入れて受け止めていたところを見ると、クラッシャーだろうか。
「今宵語りしは勇猛たる戦人の譚――さぁ、今こそ牙を剥け! 刃を突き立てよ! 我らが掲げしは戦旗では非ず……自らの誇りなり!」
雅は前に立つ仲間の為に、己の体へと英雄の魂を降ろす。
「勇猛なる風よ! 勝利の凱歌を謳え!」
その力を雅が解放すると、戦場に風を吹き荒れ、真紅の旗が棚引く。それによって、彼女は前線の仲間に力を与える。
優しい雅に力をもらったエドワウ。彼は献身的に仲間の前に出て盾を突き出し、敵の攻撃に備える。
「とつげき」
防御しているだけではない。彼はUFO型のドローンミサイルを発して、敵の前衛……大鎌持ちに浴びせかけていく。それによって痺れを覚えたのか、敵は動きがぎこちなくなっていた。
同タイミングで、テディベア型ぬいぐるみの姿をした箱竜のメルがエドワウの要望に応えて、ケルベロスの為に自らの属性を注入していたようだ。
「あまり暴れないで、食べ物は粗末にする物じゃないわ」
魚市場で売られる食品を気にするアイオーニオンは高く跳躍し、流星の蹴りを大鎌持ちに浴びせかける。彼女は竜牙兵の攻撃を受けながら、敵の足止めに動く。
攻撃手段が近距離のみのレヴィアも、近場の敵の抑えに専念する。
食物連鎖の外で殺す事、食べずに捨てる事を嫌うレヴィア。
ただ、それを憎悪として竜牙兵に向けぬ為、日本刀に雷の霊力を纏わせた彼女は半ば八つ当たり気味にその切っ先を突き出し、竜牙兵の体を痺れさせていく。
アンセルムは未だポジションの確定せぬ剣持ちへ、精霊魔法を唱えた。呼び寄せた氷の精霊が剣持ちの体を氷へと閉ざそうとしていくが、そいつは抵抗してみせる。
「守るのです」
敵が再び攻撃をしてくるところで、リューズベルトの呼びかけに応じたライドキャリバーが立ち塞がり、全身を燃え上がらせて突撃していく。
リューズベルトも、リボルビングバスターボウガンで応戦する。
狙うは、仲間が攻撃を集中させる回復役のバトルオーラ持ち。グラビティの込められた矢は的確にそいつの腹を貫き、氷に包む。
立ち上がりは双方、出方を見ていた形。戦いは本格化し、ケルベロスは攻勢を強めて、竜牙兵の撃破を狙う。
回復役はいたものの、比較的メンバーが攻めやすい布陣をしていた竜牙兵。
面倒な回復役をターゲットとして見定め、ケルベロス達は攻撃を集中させていく。盾役もいない布陣ということもあり、比較的楽に攻める事が出来ていた。
それでも、その間は敵の高火力に耐えねばならない。
剣持ちはジャマーらしく、星座のオーラを飛ばしてケルベロスを氷付けにしてくる。さらに、大鎌持ちが武器を投げ飛ばし、メンバーに大ダメージを与えてきた。
エドワウは箱竜のメルから癒しを受けながら、構えたバスターライフルからビームを撃ち出し、敵を威圧する。
「深海より御出でませ。慈愛の刃、海竜の背鰭よ、愚にも付かぬ者共を千々に千切りて散り散らし給え」
大鎌持ちを相手にしていたレヴィアは、深海水で出来た巨大な海竜を作り出す。それを高圧縮することで極細の刃となし、彼女は竜牙兵へと解き放つ。鋭い刃は竜牙兵の纏う鎧兜を切り裂き、穴を穿っていく。
その間に、他メンバーが回復役を攻め続ける。
宵一は半透明の御業を放ち、後方の竜牙兵の体を鷲掴みにすると、アンセルムがライトニングロッドを振るう。
そこから発せられる鮮烈なる雷。被害が及ばぬようにと態度では見せていたアンセルムだが、流れ弾は被害が出るよう立ち回る敵が悪いと割り切り、全力で撃ち出す。
「グゥオオォォッ……!」
全身に雷を走らせた竜牙兵。その体からオーラが消え失せ、ボロボロとその身を崩していった。
メンバーが回復役を倒す間、雅は前線を支えるべく深手を負うメンバーへと緊急手術を施していく。
「私が立つ限り……犠牲者は出さん! それが私の戦いだ!」
それは、医者である雅としての矜持なのだろう。
「新鮮で活きがいい竜牙兵だわ。食べられたものじゃないけどね」
今度は、前線で火力となる大鎌持ちを狙い、手術で持ち直したアイオーニオンが古代語を紡ぎ、魔法の交戦を発射して鎌持ちの腕の一部を石と化していく。
「守るのです」
仲間が傷つくのを見て、リューズベルトがライドキャリバーに指示を出し、小型拳銃を取り出す。
「この日のために用意しておいた新兵器の出番なのです」
それは、パラボラアンテナの尖端のようなものが付いた、リューズベルトの自作品。そこから発する怪光線が敵の持つトラウマを呼び起こす。
それもあって、大鎌持ちは明後日の方向へと鎌を振るっていた。
「……捉えました」
好機と見た宵一は相手の大鎌をいなし、斬霊刀「若宮」で一気に斬りかかる。
「どんだけやられても、倒れたりしないわよ!」
晴香も一時は追い込まれていたが、彼女は敵へと突撃し、近接戦を仕掛ける。彼女は敵の左後方からその体を抱え込み、相手の重心を崩す。
「だって私は、『プロレスラー』稲垣晴香、なんだからっ!!」
鍛え上げた足腰、背筋を活かし、彼女は勢いをつけて敵を後方へと反り投げる。それは、プロレスラーたる晴香のフィニッシュホールドだ。
「ガアアァァッ!!」
脳天から強烈な衝撃を受けた竜牙兵は、頭に亀裂を走らせ、ボロボロと崩れ落ちていった。
残るは、剣持ち1体。そいつは仲間がやられても戦意を失わず、ジャマーから前線へと移動してきた。
レヴィアはその隙を突き、エクスカリバールで竜牙兵の装甲を突き破る。
さらに、リューズベルトが穴の開いた鎧の合間を狙ってボウガンの矢を撃ち込み、続けて晴香が重力を宿した一蹴で敵を足止めする。
正面に立っていたエドワウも、もう一踏ん張りと砲撃形態としたドラゴニックハンマーから砲弾を撃ち出す。
それをもろに食らった敵は地面に守護星座を描こうとするが、追い込まれた敵を見下ろすアイオーニオンが氷のメスを手にして。
「余り動かないでね。余計なところまで斬っちゃうわよ」
彼女は的確に、竜牙兵の関節部のみを切り裂く。
「ま、最後まで引かないその忠義だけは買ってあげる。不利になっても逃げださない根性は大したものだわ」
完全に、アイオーニオンは身体を断ち切る。
「グ、グオオォォ……」
次の瞬間、竜牙兵の体は崩れ落ちて地面に転がり、灰塵に帰していったのだった。
●焼きホタテをご堪能あれ
竜牙兵を倒し、ケルベロス達は修復作業を始める。
アイオーニオンは戦場跡に薬液の雨を降らせて行く。
晴香、エドワウは気になる場所へとオーラを打ち出し、片付け作業をレヴィアが手伝う。
そばでは、アンセルムが魔術切開とショック打撃を繰り返し、活力を与えて大きく抉れた地面を塞ぐ。
雅も戦闘時と同様に英雄の魂を自らに降ろし、吹き荒れる風で瞬く間に破壊した街を幻想交じりに戻していった。
「さて、海の幸を楽しもうか」
「海の幸……御馳走になれマスか?」
晴香の言葉に、レヴィアはうきうきとしている。
彼女は海産物の香りのする魚市場へと飛び込んでいき、ケルベロスカードを配りつつ、お勧めの品を口にし、購入していた。その表情は至福の笑みを湛えている。
他のメンバー達は声を掛けられた店主から、新鮮なホタテを頂いていた。
「豪快に網焼き、新鮮な刺身も捨てがたい……どれも美味そうだ!」
雅はエドワウと一緒に、どうやって食べようかと考える。
そばでは、宵一が醤油のバター焼きを依頼していた。早速、店主がそれを焼いてくれたことで周囲に食欲をそそる香りが漂う。
メンバー達は焼き上がったホタテを一口。アイオーニオンはそのしっかりとした触感にも表情を変えなかったが。
「やっぱり、何事も新鮮さが大事だわ。一番おいしいものね」
彼女なりにその味を噛み締め、味わっていたようだ。
「美味いかー?」
「あちち」
問いかける雅に応えようと、エドワウは熱々のホタテを口の中で転がして火傷しそうになってしまう。
「おいしいです、雅さん」
「一杯食って、大きくなるんだぞ!」
ようやく、ホタテをはむはむと噛むエドワウ。少し焦げた醤油とこんがりとバターで焼いたホタテを、雅に促されてじっくりと味わっていた。
その味は皆からも好評で、アンセルムは自宅の配送を、リューズベルトはお持ち帰りを考えていたようだ。
ニコニコと笑う仲間達の姿に、エドワウも表情を綻ばせて。
「がんばってよかった」
彼はもう一つこんがりと焼けたホタテを口に入れ、頬張っていたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年8月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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