素敵に不気味な海の家

作者:深淵どっと


 さざ波の音色が心地良い、ある海沿いの小さな和風の屋敷。
 外から見ると廃墟にしか見えないが、辛うじて掛けられている『海の家~怨念~』と言う看板が……いや、傾いているせいで余計に廃墟感を醸し出していた。
「……ぅぅぅ……何で……どうして……」
 そんな不気味な海の家の中から響く、女性の悍ましい悔恨の声。これだけで夏の怪談としては上出来すぎる。
「ぅぅぅぅ……悲しい……悔しい……夏……始まったばかりなのに……」
 彼女は倉田・一葉。先日、この海の家のオーナーとして営業を始めたばかりであった。
 長い髪を項垂らせ、すすり泣く姿は……見る人が見れば卒倒しそうな程には寒々しい。
「……強い『後悔』ね。私のモザイクは晴れないけど、あなたの『後悔』は奪わせてもらいましょう」
「え――」
 そんな彼女の声に誘われるように、不意に声が響く。
 月明かりの差し込む薄闇の中、現れた女性は手にした鍵を一葉の胸に突き立てた。
 それは一瞬の出来事。不思議な事に血は一滴も流れず、彼女はふらりと座っていた椅子ごと地面に倒れる。
 代わりにゆらりと立ち上がったのは、一葉によく似た黒い長髪の女性。
 髪の隙間から覗く瞳は、ただただ昏く、怨念そのものを孕んでいるようだった……。


「暑いな……確かにこういう暑い日には、怪談の一つでもすれば涼しくなるかもな」
「ふ、フレデリックさんはもっと涼しい格好をすれば解決だと思うのっ!」
 どうやらルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208)は怖い話が聞きたくないらしく、フレデリック・ロックス(蒼森のヘリオライダー・en0057)に抗議する。
「……まぁ、全くもってその通りだな。いや、それはさて置き、キミたちに集まってもらったのは何も怪談話をしてもらうためではないのだ。ドリームイーターの活動を確認した」
 改めてヘリポートに集まったケルベロスたちを見渡し、フレデリックは話を続ける。
「事件はお化け屋敷風の海の家『海の家~怨念~』で発生した」
 悍ましい風貌の店内、お化けや妖怪に扮した従業員に驚かされながら出される料理、そしてその外観そのもの、色々と凝りすぎた結果、近隣住民から多大なクレームを貰ってしまったらしい。
 結果、夏本番に差し掛かったところだと言うのに閉店。と言う顛末である。
「ドリームイーターはこの店のオーナーであった倉田・一葉さんの『後悔』の感情を使って新たなドリームイーターを生み出したようだ。キミたちには、このドリームイーターの撃退をお願いしたい」
 事件の原因となった方のドリームイーターは、この事件の中で行方を追うのは難しいだろう。まずは目の前の事態に対処しなくてはならない。
「あの……そのドリームイーターさんは、お化け屋敷みたいな海の家にいるんだよね?」
「あぁ、いる。訪れる者を呪い殺すために……ただただじっと、待ち続け……不用意に足を踏み入れた者を――」
「い、いいよっ! そういうのはいいからっ!」
 と言う設定の海の家らしい。とフレデリックは付け加えつつ、状況の説明を続ける。
「このドリームイーターの特徴として、本来の店同様のサービスを受け、心から満喫する事で『後悔』の念を和らげ、弱らせる事ができるようだ」
 ただし、相手はドリームイーターだ。お化け屋敷のように、ただ驚かされるばかりではなく、実害が無いとも言い切れないだろう。
 無論、『後悔』を和らげる前に相手にこちらが攻撃を加えてしまえば、この作戦は効果が無くなってしまう。
 そんな話を聞いたルリナの表情が、明らかに強張っていた。
「……まぁ、最初から全力で戦って倒す事も不可能ではないだろう。だが、この『後悔』は被害者である一葉さんにも影響を及ぼす、彼女のためにも一考してみてくれ」


参加者
猿・平助(申忍・e00107)
アウィス・ノクテ(ルスキニア・e03311)
クレア・エインズワース(陽色の獣・e03680)
ルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208)
鷹野・慶(業障・e08354)
八上・真介(夜光・e09128)
エンヤ・レーガン(睡眠魔王・e14521)

■リプレイ


『――そうして裏切られた女は、今でもこの仄暗い廃屋で待ち続けているのです。……迷い込んだ貴方たちのような人を』
 スピーカーから響くのは、ノイズが混じった隙間風のような、女性の掠れ声。そして、カタリ、コトリと奇妙な物音に紛れ視界の隅で『何か』が揺れ動く。
 お化け屋敷風海の家『海の家~怨念~』を訪れたケルベロスたち9人と2体のサーヴァントは、座敷の一角でテーブルを囲んで正座しつつ、それを聞いていた。
 因みに目の前には人数分の焼きそばが並んでいる。何故って海の家だから。
「あ」
「何!?」
 不意に、何の脈絡も無くアウィス・ノクテ(ルスキニア・e03311)が戸棚の上に視線を泳がせつつ、小さく声を漏らした。そして音速で反応するのは、隣にぴったり寄り添って座る猿・平助(申忍・e00107)。
「……?」
 しかし、アウィスは不思議そうに首を傾げながら、何かを追うようにその視線を横へとスライドさせていくだけ。
「ちょっ、何が……何が見えてんだよ!? そういうのが一番――うぉぉ!?」
「ぉぉぉ!? ぉ……おう、いきなりデカい音立てんじゃねぇ!」
 アウィスに気を取られた瞬間、食器棚の皿がガラスを割って一斉に飛び出す。
 本来なら音だけの演出なのかもしれないが、ドリームイーターの影響を受けたせいか、その一つ一つがケルベロスたちへと襲いかかった。
 ……が、痛いとかそれ以上に、音にビックリしたのはシュリア・ハルツェンブッシュ(灰と骨・e01293)。そして、そのシュリアの驚く声にビックリしたのが桐山・優人(リッパー・en0171)であった。
「ユキ、しっかり俺の傍にいろよ? 危ないからな? いろよ?」
 いや、限りなく平静を装っていたが、明らかに驚いている者がもう一人いた。
 何度も自身のウイングキャットの居場所を確認しつつ、鷹野・慶(業障・e08354)は杖で床を何度も何度も何度も何度も、小突く。
「……なぁ慶。気のせいかもしれないんだけど、ここに座る直前まで、もう一人くらいいなかった?」
「何で、そういう事を今言いやがるかなぁ……?」
 そんな慶の恐怖をさらりと八上・真介(夜光・e09128)が煽る。
 一層激しくなる不可解な音や、おどろおどろしい女の語り口調。音から来る恐怖が苦手な慶は、ユキを腕の中に寄せながらゆっくりと瞼を閉じる。今できる可能な限り最大の自己防衛である。
「あ……それは別に――ぬわあああああ! やだこわいうわあああ……じゃなくて。その……」
 必死に言葉を紡ごうとするも、屋敷全体を覆う怨念の呻き声に妨げられ、その都度エンヤ・レーガン(睡眠魔王・e14521)はシャーマンズゴーストのおかんに隠れるように身を縮こまらせていた。
 怖がっているのを誤魔化すように、おかんの頭からエンヤが撒いた花びらのオーラが舞い散る。
 因みにエンヤが言いたかったのは、その座る直前までいた気がするもう一人。注意書きに書いてあった、10人以上の来店お断りに抵触する可能性を危惧して一旦店の外に出た恋人の絡繰屋・ノッチの事。
 思わぬ所で謎の怪奇現象を一つ生み出してしまったが、お店的には美味しかったかもしれない。
 と言うより、お店が演出を施さずとも、何故か勝手に恐怖に陥っている人が数名いる気がする。
「ルリナ――」
「ボク大丈夫だよ!」
 大丈夫じゃなさそうだ。
 そもそもルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208)は、店に入る前から大丈夫じゃなかった。皆に抱えられて、ようやく入店に至ったレベルだ。大丈夫なわけがない。紙兵も溢れんばかりに飛び出している。
 ふと、比較的メンバーの中でも冷静に対応できているクレア・エインズワース(陽色の獣・e03680)は、プルプル震える無防備な毛玉と化しているルリナをヒールで保護しながら、店の異変に気付いた。
「……平助。終わったみたいだよ、ほら、見てみなよ」
「ぇ? 本当か? いや、これはさっき揺れた感じしたから地震来たかなと思ってテーブルの下に避難しただけなんで別に怖いわけじゃな――」


 おわかり、いただけただろうか。
 誰もいなくなった筈の海の家。その奥、立て付けが悪くて開いたままになっている扉の隙間。
 その間から怨めしそうにこちらをじっと覗く、髪の長い女の姿を……。
 この海の家を経営していた女性の『後悔』が形になったとでも、言うのだろうか……。
「見た目めっちゃ怖いじゃねーか!」
 『後悔』が晴れたのか、唐突に現れたドリームイーターの姿に硬直する一同を我に返したのは、シュリアの率直な感想だった。
 一方、クレアに促され、心の準備も無くドリームイーターの姿を直視してしまった平助は……。
「――」
 一瞬気を失っていた。
「そ、そこまでビビらなくても。ほら、しっかり」
「びびびびビビってない、声上げたら逃げちゃうかもしれないだろ!? 何にしてもデウスエクスが相手なら……怖くない! いや最初から怖がってはないけどな!」
 最早、怖いより色々面白くなってきているクレアによくわからない言い訳を並べつつ、平助は戦闘態勢に入る。
 その敵意に反応するように、ドリームイーターもまたドアをすり抜け、こちらへと距離を詰め始めていた。
「そうだ、あいつは敵、敵なんだ。優人もビビってんじゃねーぞ! 敵だと思えばめっちゃ殴れる!」
「ぁ!? ビビってネェよ驚いただけだ!」
 飛んできた花瓶が余程痛かったのだろう。ヤンキー風にぶちギレつつ、優人はシュリアと共に先手を取る。
 投げ放たれた大鎌を追うような瞬足から、強く踏み込み、拳が放たれた。
 長い髪の合間から覗くモザイク顔へと叩き付けられる、拳の手応え。それは幽霊などではなく、確かにそこに存在する、現世に生きる者の感触だ。
「フフ……お化け屋敷、楽しいね」
「皆言ってる事メチャクチャだけどな。まぁ、やる気たっぷりっぽいし、いいか」
 怖いと言うより、すっかり楽しんでしまっているアウィスは満足げにとても純粋な微笑みを浮かべる。
 とは言え、第一目的は達成された。いつまでも遊んでいられない。後は倒して万事解決するのみだ。
 放たれた弾丸は時間の流れと共に熱を奪い、瞬間、鋭い雷光を纏う真介の白銀の槍撃が、ドリームイーターを闇中に縫い付ける。
『キ、ィィィィァァァァアアアアアアアア!』
「うわっ!? 何て声だ……」
 ケルベロスたちが決死の覚悟で恐怖を受け止めたお陰だろう、ドリームイーターからは普段のデウスエクス程の脅威は感じられない。
 だが、それでもただやられる程、容易い相手でもなかった。怨念の篭った金切り声が、ドリームイーターを起点に輪唱するようにスピーカーから溢れ出す――が。
「つっよいぞ♪ ぼっくらっはっ♪ けっるべっろすっ♪ じっごくっの♪ ばんけん♪ わんわんわーん!」
「もう平気? これで終わり? ……まだ? まだか、まだだな!?」
 時に、極限の恐怖と言うのは、強い信念や情念すら上回り、類稀なる力を発揮する事もある。
 無論、相手が弱体化していたと言うのもあるだろう。それでも、ドリームイーターの怨嗟は、確かにケルベロスたちの身体を蝕む程には強烈だった。……だったのだが。
 金切り声をかき消さんばかりの爆撃音、そして歌声。
 ルリナのヤケクソ気味の歌声は無尽蔵に羊を呼び出し、慶はユキで視界を塞ぎながら音が聞こえなくなるまで竜砲弾の豪雨を降り注がせる。
「な、何だか大変な事になってますね?」
「あ! の、ノッチー!」
 ただならぬ戦闘音を聞きつけ駆け付けたのはサポートの面々。戦闘が始まれば店のルールはもう関係無い筈だ。
 おかんの手をこっそり握りながら、何とか飛び交う霊障に攻性植物で応戦していたエンヤだったが、恋人の到着に色々と緊張の糸が切れたらしい。おかんを引っ張り回しながらノッチに飛び付く。
(……意外と駄目だったんですね、こういうの)
 隠せて、いないけど。一応戦えているし、名誉のためにも口には出さないでおく。
 そうこうしている間にも、戦い自体は順調に進んでいた。
「思ってた以上に効果があったみたいだ、『後悔』を晴らしてあげるの」
「ああ、そうだな。この調子なら、このまま行けそうだ」
 例の『後悔』が、そのまま原動力にでもなっていたのだろうか、攻撃を当てるのも、避けるのもそれ程難しくはない。
 元々この手の怖さには耐性があるクレアは飽くまで平常運行で、そしてその隣で平助もまるで平常運行のような雰囲気で戦いを続ける。
 尚、文字ではわかりづらいが大変声が上ずっているようだ。


「さぁガンガン行こう、お姉さんにお任せだ!」
 高らかに元気よく。そして、おかんとノッチからは絶対に離れる事なく、エンヤはドリームイーターを追い込んでいく。
 正確には、エンヤの攻性植物がガンガン行っているのだが。
 しかし、実際ドリームイーターは力尽きつつあるのか、その姿も霞がかってきているように見える。
「てめぇには随分と肝を冷やされたが……きっちりお返しはさせてもらうぜ!」
 こうなれば、倒し切ってしまうのが一番の心のケアにもなるとばかりに、平助は螺旋状に練り上げた冷気を解き放った。
 怖気から来る薄ら寒さを吹き飛ばす、極寒の氷撃。そして、それに合わせて慶がドリームイーターの頭上を取った。
「物飛ばすくらいなら、その辺のビハインドでもできるっての!」
 振り下ろされる鉄槌は恐鳥の嘴の如く鋭く、打ち砕いた地面ごとドリームイーターの足元を氷に閉ざす。
 敵は蘇った死者などではない。生きるために熱を必要とする生物だ。冷気は確実にその命を削り、戦いを有利に進めていく。
 だが、残る力を振り絞り、敵の抵抗は続く。
「最後まで焦らず、気を抜かないで行こう!」
 店内を無作為にオブジェが飛び交う様は、ちょっとしたアトラクションのようだ。
 しかし直撃する物によっては洒落にならない。
「おう、ビビらせ方が単純でいい加減ウンザリ――うぉぁ!?」
 氷塊ごと魂を喰らうクレアの拳打に優人が動きを合わせ、的確な連撃を与えたところで、不意に足元に転がる毛玉に躓きそうになる。
 ルリナであった。
「ビックリした……おい、大丈夫なのか、これ?」
 勿論大丈夫ではなさそうだ。
「ルリナ、もうすぐ本当に終わるから、もうちょっと頑張って」
「……うん」
 申し訳程度に球状にまとめたエネルギーをクレアに手渡しながら、できるだけ安全な隅っこへ移動。
 確かに、状況はケルベロスたちの優位であり、戦闘もそう長引きはしないだろう。
 ルリナだけでなく、木下・昇の放つ弾丸も宝石の煌めきと共に仲間たちを存分にサポートしていく。
『アタシ、ヲ、置イテ、行カナイ、デ……』
「こりゃ確かにやり過ぎだわ……子供にはトラウマものだぞ」
「そうだな……既に何人かヤバそうだけど、そろそろ終わりにしよう」
 ダメージの蓄積が影響しているのか、歪みつつあるドリームイーターの造形はまた新たな恐怖を生み出している。
 多少は見慣れたものの、ドン引きしているシュリアに真介は頷き、散開する。
「一葉も満足、できたかな? 私は……とっても、満足」
 先陣を切るのは、シュリアの放った気咬弾。そして、着弾と同時に背後に回り込んだアウィスがそっと嫉妬の哀歌を囁く。
 しっとりと響く歌声を紡ぐその儚げな様は、それこそ幽霊に見違うような姿だ。
「そうだね。俺も結構、楽しかったかもね」
 歌声から逃れるように、ふらりと漂うドリームイーターを、真介が捉えた。
 目にも留まらぬ銀閃が、終わりを穿つ。こうして、ある日の夏を凍てつかせた、恐怖の戦いは無事幕を降ろすのだった。


「ははは! 楽勝だったな! ……だったよな? ま、まぁとにかく、全然余裕だったな!」
「余裕、あったか? 結構怖がって――」
 海の家を出て、燦々と輝く陽光の下、エンヤ胸を張って勝利を噛み締めていた。
 視線を落とせば、がっくがく震えてる足。慶がつい口を開きかけた瞬間、ノッチが無言で肩を叩く。
 ――言わないであげてください。そんな優しさが垣間見えた。
「はー、でもちょっと物足りなかったかもな、全力のアイツともやりあってみたかったぜ」
「俺はパスだな。心臓に悪ぃし、何かスゲェ疲れた」
 夏空へ紫煙を吐き出しながらシュリアはため息をこぼす。
 確かに優人の言うようにやり辛い相手ではあったが、ああ言う戦い方の相手も、そういるものでもない。弱らせる前の状態とも、少し戦ってみたかった気はする。
「でも確かに疲れたな。こう……肩が重いと言うか、そんな感じだ」
 実際、楽勝ではあったと思う。しかし、真介の言うように、不思議と普段よりどっと疲れが押し寄せるのを感じていた。
 いやいやまさかそんな。霊障受けて肩が重いなんて、そんなベタな。平助はぎこちなく笑う。
「あ、はは! いや、あれだろ、普段とはちょっと違った戦いだったから、変に緊張しただけ――」
「いやぁ、どうだろうね? そういう話をすると『呼ぶ』って言うし……もしかしたら……」
 不敵な笑みを浮かべ、意味深に低めの角度からクレアが呟く。
 瞬間、平助の首筋にゾォっ、と走る悪寒。ゆらりと、背後から肩口に白い手が、伸びる。
「冷たい……ひんやり……」
 耳元に染み込む、透き通る囁き声。
 それは正しく、この世ならざる者の呼び声……などではなく、戦場に残っていた氷塊で手を冷やしてきたアウィスであった。
 楽しかったお化け屋敷、少しだけ持ち上がった悪戯心からの行動であったの、だが。
「――」
「平助? あれ、寝ちゃった?」
 立ったまま気を失っていた。本気で怖がる人に、やり過ぎは禁物である。
「……あれ、そういえば」
「え? どうしたの、真介さん」
 ふと、思い出したかのように真介が仲間たちを見渡す。
 もう全てが終わったと安心しきっていたルリナだったが、何となく不穏なその間に、ごくりと喉を鳴らす。
「戦闘中、やっぱりもう一人いなかったっけ?」
 おわかり、いただけただろうか。
 入り乱れての混戦。しかし、仲間の立ち位置はしっかりと把握している筈であった、にも関わらず、この場に一人足りないのである。
「――」
 実際には戦闘後、足早に昇が帰っただけだったのだが、それに気付く余裕は無かった。
 最後の最後に訪れた不意打ちに、遂にふらりと砂浜に倒れるルリナ。
 その姿は、綺麗な白浜に負けじと、真っ白に燃え尽きていたと言う。

作者:深淵どっと 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 8
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