結婚を望んだばかりに……

作者:なちゅい

●もう伴侶なんていらない……
 そこは、薄暗い場所。
 部屋の中央に備え付けられた実験台に、1人の成人女性が横たわっている。
「喜びなさい、我が娘」
 その傍らに立っていたのは、仮面を被ったドラグナーだ。
「お前は、ドラゴン因子を植えつけられた事でドラグナーの力を得た」
 彼の名は、竜技師アウル。たった今、人間をドラグナー化する実験を完了させたところだ。
 それを耳にした実験体の女性がゆっくりと目を覚ます。
「しかし、未だにドラグナーとしては不完全な状態であり、いずれ死亡するだろう」
 ドラゴン因子を身体に埋め込まれ、自らの体の所々がドラゴンの鱗に覆われていることを、女性は自覚する。
 だが、その力は安定しているわけではなさそうだ。女性の体にはドラゴン因子が完全には馴染んでおらず、肉体が崩壊する可能性も高いとアウルは言う。
「与えられたドラグナーの力を振るい、多くの人間を殺してグラビティ・チェインを奪うこと。お前が生き延びるにはそれしか道は残されていない」
 虚ろな瞳で実験台を降りる女性。彼女はふと、職場の人間達を思い出して顔をしかめる。
「よかよ。まずは、あいつらから始末しちゃる……」
 歩き出して部屋を出て行く女性の姿に、アウルは満足そうに頷いていたのだった。

 ヘリポートにて。
 すでに、数人のケルベロスが集まり、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が説明を始めようとしているところだ。
「結婚願望から全てが狂った者を狙う影があると聞いた」
「うん、すでにその女性はドラグナー『竜技師アウル』によって、ドラゴン因子を移植されてしまったようだね……」
 そんなアイン・オルキス(誇りの帆を上げて・e00841)を受け、リーゼリットが口を開く。この女性が破壊活動を始める前に止めねばならない、と。
 事件を起こそうとしている新たなドラグナーは、未完成とでも言うべき状態だ。
 その人間は完全なドラグナーとなるべく必要な大量のグラビティ・チェインを得る為、また、ドラグナー化する前に惨めな思いをさせられた復讐と称して、人々を無差別に殺戮しようとしている。
「皆に、この未完成のドラグナーを撃破してほしいんだ」
 現れるドラグナーは、柏原・奈月。元OLの女性だ。
 彼女は職場で結婚願望を口にしており、実際に婚活にも励んでいた。
 ただ、それによって彼女は職場で上昇志向がなく、仕事のやる気がなしと判断されて転属。窓際に追いやられて退職せざるをえなくなった。
 上司や同僚の心無い言葉に、柏原はかなり精神を病んでしまったようだ。ただ、結婚を望んだだけで退職に追いやった職場の人々を、会社を、彼女は恨んでいる。
「ドラグナーとなりかけた彼女は、2本のファミリアロッドを使って攻撃してくるよ」
 戦いにおいて使用するグラビティは、ケルベロスが使用するものと同じことが確認されている。
 また、柏原はドラグナーとして未完成な状態の為、ドラゴンに変身する能力はないようだ。
 このドラグナーが現れるのは、福岡県博多駅周辺のオフィス街だ。彼女はこの周辺の人々を殺戮しようと動く為、出来るだけ早く止めたい。
 説明を終え、リーゼリットはヘリオンの離陸準備へと向かう。
「もうこの人を救うことはできない。完全にドラグナーとなってしまう前に……」
 放置すれば、新たな被害を生んでしまう。……だから。
 彼女はそうして、その未完成のドラグナーの討伐をケルベロス達に願うのだった。


参加者
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)
アイン・オルキス(誇りの帆を上げて・e00841)
凪沢・悠李(想いと共に消えた泡沫の夢・e01425)
ヴォイド・フェイス(ロストパラダイム・e05857)
姫宮・楓(異形抱えし裏表の少女・e14089)
龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)
鞍馬・橘花(超火力愛好家な鎧装騎兵・e34066)
ルシウス・サルヴァ(悪喰・e37003)

■リプレイ

●ドラグナーと成り果てた女性
 福岡県博多駅周辺へとやってきたケルベロス達。
 今のところ、ドラグナーとなった女性が現われた様子はない。
「これまた難儀な話だね」
 中性的な顔の凪沢・悠李(想いと共に消えた泡沫の夢・e01425)が徐に呟く。
「結婚したくて頑張った所為で、仕事や生活が駄目になった。……本当にそう思ってるのかな」
 今回の相手について、精悍な肉体を持つ人派ドラゴニアンのルシウス・サルヴァ(悪喰・e37003)は、やや緩い雰囲気を出しながらそんな疑問を口にした。
 後悔する理由など、探そうと思えばいくらでも出てくる。
「きっと、不器用な人なのだろうね」
 他人のことは言えたものじゃないけどと言葉を飲み込みつつ、ルシウスは語った。
「仕事に手ェ抜いてりゃ、爪弾き……どこでも一緒だよネ。だから、俺様は手ェ抜かずにヨ~」
 赤いドクロの覆面を被ったヴォイド・フェイス(ロストパラダイム・e05857)が、飄々とした態度で語る。ちなみに、手は抜かないとは言ったが、彼は真面目でやるとは言っていない。
「そうだね。同情したところで、やる事は変わらないんだけどさ」
 せめて、人は殺させないように。悠李の呟きに、気の弱い姫宮・楓(異形抱えし裏表の少女・e14089)がおどおどしながらも頷く。
「衝動の儘に誰かを殺していい筈はない……、止めなきゃ……被害が大きくなる前に……」
「奴に同情の言葉など火に油……。さすれば、戯言なぞ語らずして止めてみせよう」
 目から頬にかけて左右対称に黒い線の入ったレプリカント、アイン・オルキス(誇りの帆を上げて・e00841)が静かに語る。
 ――際限のない殺戮など、させるものか。
 メンバー達は皆、それに同意していたのだった。

 ドラグナーの出現まで、メンバー達は博多の街に潜伏しながら待つことになる。
「警察は誰かが連絡すんだろ。任せた!」
 ヴォイドに言われたからというわけではないだろうが、中性的な雰囲気の少年、ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)が警察へと連絡を行い、街の近辺に待機を依頼していた。
 人派ドラゴニアンの龍造寺・隆也(邪神の器・e34017)も警察へと働きかけを考えていたが、下手な介入はヘリオライダーの予測が歪む恐れがある。ベルンハルトもそれを承知しており、いざというときに動いてもらうよう依頼するに留めていた。
 それを確認した隆也自身は用心深く隠密気流を使いつつ、討伐対象が働いていた職場の周囲で人ごみに紛れていた。
(「会社や同僚等を恨んでいると聞くから……、出来れば雰囲気が怖い人……」)
 その女性が他の人を手にかけないように。楓は町を歩きつつ、ビジネス街を見張る。
 他のメンバー達も、一般人に扮する。
 女子高生の学生服を着用して眼鏡を掛けたアインはオフィス街を堂々と歩いていたし、ルシウスは飲食店の屋外ブースで軽食を口にしている。もちろん、対象の出現に警戒は怠らない。
 鞍馬・橘花(超火力愛好家な鎧装騎兵・e34066)も動物に変身して街中で息を潜めていた。
「きゃあああああああっ!!」
 突然、街中で上がる悲鳴。
 ケルベロス達はすぐにメンバー同士で連絡を取り合う。
 現場は、駅から程近い場所。アイズフォンでそれを聞きつけたアインや、携帯端末でそれを知った悠李は思ったより遠くだったこともあり、急いでそちらへと走り始める。
「見慣れた道を来てくれりゃ、ラッキー程度に考えていたけどネ!」
 対象が元々使っていたと思われる通勤ルートを探っていたことで、運良くそれを真っ先に発見する形となったヴォイド。
「ぱんぴーは逃げて、超逃げて!」
 ヴォイドは周辺にいた人々へと避難を促しながら、自身は早速そいつへ、携帯していた爆薬にグラビティで破壊力を与えて体当たりを繰り出す。
「余所見はダメだぜ、お嬢さん?」
「ぐっ……」
 奇襲の一撃。それを、人々に襲い掛かろうとしていたドラグナー、柏原・奈月はもろに食らうこととなる。
 ドラゴニアンらしく、竜の角、翼、尻尾を現したルシウスを現したルシウスも、静かな闘志を燃やす瞳の上からゴーグルを装着して続く。ただ、素早く繰り出す蹴りは、残念ながら敵に避けられてしまう。
 だが、牽制は十分。ドラグナー柏原は現われたケルベロスを睨みつけていた。
 ほぼ同時に、警官隊が人々の避難誘導に当たり始める。
 それを横目で見ながら、ベルンハルトは御霊転遷式・赫灼を使って光の刃を具現化した。
「その凶行、見過ごすわけにはいかないな」
 クールに装うベルンハルトは、一般人にすらグラビティを繰り出すのをいとわぬドラグナーへと刃を繰り出す。
 続けざまに、隆也はドラグナーの正面で黄金色のオーラで自らを包む。
「憐れではあるが、死んで貰う」
 それは、隆也の本心からの言葉。命を奪うしかない以上、彼は躊躇なく割り切って降魔の拳で殴りかかる。
「早くここから離れて……」
 悠李は割り込みヴォイスで人々に避難を促しながら、現場へと駆けつけていく。
 現場では、ケルベロス達がすでにドラグナーを抑えていた。
 橘花は人間の姿に戻り、仲間へと敵の出現地点を仲間達の持つ情報端末に送信しつつ、愛用のバスターライフルを手にして狙撃のタイミングをはかっていた。
「飛べ、鴉たち」
 敵に気づかれぬ場所を意識しながら、橘花はグラビティによる鴉の模倣体を10羽ほど生成して、ドラグナーへとけしかけていく。
 だが、ある程度近づかなければ、グラビティを命中させることはできない。橘花はドラグナーに気づかれてしまったようだ。
「あそこやね……」
 赤く瞳を輝かせたドラグナーは、握った杖を構える。
「やめて……! 人を殺しても何も解決しない……、解決なんてしないの……!」
 無駄だとは判っている。それでも、楓はその女性へと言葉をかけずにはいられなかった。
「邪魔すんのなら、皆、黙らせちゃる……」
 握った杖の先から魔法の矢を飛ばす。それを、楓はまともに食らってしまう。
 すると、楓の中の別人格『カエデ』が目覚める。オウガメタルで防ごうとしたが、残念ながら間に合わなかったようだ。
『……すまんの。お人好しには荷が重すぎる故、わらわが相手しよう』
 カエデは身構えると、避難勧告しながらやってきたアインも敵を見据えて。
「誰でもいいから殺したい、という顔だな。ならば相手になってやろう」
 エアシューズで疾走し始めるアイン。他メンバー達も眼前の敵の討伐に動く。
 ドラグナーになりかけた柏原はファミリアロッドを前方に突き出し、本格的な交戦態勢に入るのだった。

●人を辞めた女性へ……
 相手は完全にデウスエクスとなったわけではないが、もはや人間には戻れぬ哀れなドラグナーの女性だ。
(「戻りようが無いのなら、せめて怨念を残させずに撃破する」)
 飛び込むアインはそう割り切り、眼前の敵へと電光石火の蹴りを食らわせる。
「後悔などさせてなるものか。未練など持たせてやるものか」
 思いを口にするアイン。されど、それはドラグナーには届かない。
「正々堂々、行かせてもらう」
 次に、長い三つ網の髪を揺らしたベルンハルトが後方から飛び出し、未だ竜の鱗に包まれていない関節部を狙い、御霊転遷式・赫灼から発した光の輪を飛ばして斬りかかる。
「さて、それじゃあ始めようかな……!」
 遅れて到着した悠李は大きく口を開けて微笑む。精神状態を昂ぶらせた彼は、斬霊刀「神気狼」を抜く。
「……ま、同情はしても、手加減はしないからね?」
 悠李は軽やかにビル街を舞い、頭上から強襲した敵へと的確に刃を刻み込み、傷口をグラビティで凍りつかせていく。
「なんで、結婚したかだけで、責められんばいかんとね!」
「……人を殺していい理由ではないな」
『婿を求める気持ちが急いて事を欠く等、職に身が入っておらぬ証拠。それを竜の残滓に絆されて逆恨み……、救えぬな』
 隆也は柏原に言い捨て、みぞおちへと思い蹴りを浴びせかけた。カエデも「異形武装(槍ノ型)・黒穿螺旋」に稲妻を帯びさせ、高速でその切っ先を突き出していく。
「せからしか!」
 ケルベロスの攻撃を受け、なかなか攻勢に出られなかった柏原もまた、握ったファミリアロッドの先から燃え盛る火の玉を発射する。狙うは、近場で邪魔するヴォイドだ。
 ヴォイドは炎を浴びても軽薄な態度を崩さず、相手に問いかける。
「で、奈月ちゃんに聞きたいんだけっどもサ。なんで、そこまで結婚したかったんダ?」
 惚れた相手がいた様子はない。彼女は単に、ステータスが欲しかっただけなのか。
「なら、俺様が結婚してやろーか?」
「……!?」
 思わぬ発言。しかも、ヴォイドはタイミングよく、婚姻届を出して見せた為にドラグナーは身を竦ませかける。
 その間にも、ケルベロスの攻撃は続く。
「君を悪く言わないよ。……俺も良い人生じゃなかったから」
 敵を抑えようと前に立つルシウス。彼は両親を亡くし、姉が行方知れずになっているという。
 その寂しさを埋めようとして、ルシウスは様々な料理を食べ続けた。そんな自分を変えようとして、彼は今こうして戦っている。
「周りを変えるんじゃなくて、俺が変わりたいんだ」
 敵の隙を見て、ルシウスは鋭く戦籠手を嵌めた指を突き出す。
 そして、橘花。彼女は「魔筒・山嵐」を構え、射撃を行うが、さほど効果的な牽制を行うことができない。
 やはり、グラビティをもってしか、効率的な攻めはできない。うまく狙撃を行うことができぬことで、彼女の中の何かが目覚める。
「まどろっこしいんや」
 それまでと打って変わり、橘花は近場へと寄って獣の拳でドラグナーに殴りかかる。
「こいつら、どかんなっとっと……?」
 二面性を持つケルベロスを見て、ドラグナーは驚きを隠せずにいた。
 ミシッ……。
 それでも己の身体に違和感を覚えた彼女は、グラビティ・チェインを奪う為、コウモリに変えたロッドをケルベロスへとけしかけて来るのだった。

 その後も、ドラグナーとなった柏原はファミリアロッドを行使して、ケルベロスへと応戦を繰り返す。
 だが、それでケルベロスも臆することはなく。
「人から外れた身となった事、それ自体が既に後悔足り得よう」
 アインは機械の指を鳴らすと、光が彼女の指に宿る。そして、もう一度鳴らせば、別の色の光が灯った。
「極光の果ては遥か先。貴様にはこの光で十分だ、精々見惚れていろ」
 その光を散弾のようにアインは撃ち出し、ドラグナーの体を射抜いていく。
 敵の傷が深まれば、それが弱点にもなる。そう判断したベルンハルトは素早く光輪を飛ばし、敵の持つファミリアロッドを砕かんとする。
「あはっ、甘いよ!」
 その杖を使おうと振り上げたドラグナーだが、先んじて悠李が敵の死角となる頭上後ろから飛び込む。
 緩やかな弧を描く日本刀「魔天狼」。それが狙い通りにドラグナーの膝を断ち切らんとした。
「ドラグナーになりきる前に、人間として死ぬがいい」
 さらに、隆也が再び、黄金のオーラで包まれた拳で降魔の一撃を叩きこむ。
「くっ……!」
 隆也の渾身の一撃にもドラグナーは耐え、2本のファミリアロッドをそれぞれコウモリと変化させた後、一時融合させる。
 半透明の幻影合成獣となったそのコウモリは、ルシウスに飛び掛り、食らいつき、爪で引き裂く。
 その合成獣に翻弄され、精神を乱されるルシウス。彼はその感覚をなんとか制し、如意棒に降魔の力を纏わせつつ相手へと殴りかかっていく。
「ええ的や!」
 先程までとは変わり、陽気に「魔筒・山嵐」と「17式試製超高速概念射出機構ハ-B3モデル」から同時に魔力の奔流を放ち、敵を殲滅しようとする。そのダメージは決して小さくはない。
「叩っ斬る」
 ここぞと、ベルンハルトは光を剣に変え、剣術を披露する。
 彼の剣技は示現流の流れを汲み、蜻蛉の構えから、一気に燕返しで襲い掛かる。如何にして相手よりも速く、相手の防御よりも素早く攻撃をと突き詰めた技だ。
「まずかね……」
 全身に傷を負い、グラビティ・チェインの減少によって、ドラグナーは自身の体の崩壊を強く自覚した。
 さらにカエデが「異形武装(剣ノ型)・斬魔黒刀」で切りかかる。その刀身は非物質化し、相手の霊体のみを斬りつけていった。
「ああぅぅぅっ……!」
 苦しみに喘ぐドラグナー柏原へ、ヴォイドは再び婚姻届を差し出す。
「な、なんね、これ……」
「……あぁ、嘘じゃネェぜ? ドラグナーだから結局殺すってだけで。やったねなっつん、夢が叶うヨ!」
 折角だから、望んでいたことを叶えてあげてから殺ろうという彼なりの優しさ。もっとも、その方向性はあらぬ方向を向いていたが……。
「願いが叶ったナ。よしよし、じゃあ死のうか」
 そうして、ヴォイドもブラックスライムを操り、相手の体を強く縛り付けていく。
 逃げに転じるべく周囲を見回すドラグナーだが、ルシウスがそれを許さない。
「畳み掛けよう」
 ルシウスが再び回し蹴りを浴びせて敵に痺れを与えると、笑いを湛えた悠李がアクロバティックに宙返りして襲い来る。
「彼岸に没せよ――然して、其の魂に安らぎと安寧を」
 日本刀「魔天狼」の刀身に真紅の魔力を纏わせた悠李。不気味なほどに澄んだその魔力は、斬りつけた者に安らかな死を与える。
「――さよなら、できれば辛い事は忘れて、もう休みなよ」
「幸せに、なりたかった……ばい」
 事切れ、消え行く柏原。その最後は、悠李が言うように安らかなものだっただろうか。

●割り切れぬ者、割り切る者
「……ふぅ、みんなお疲れ様」
 ドラグナーの消滅を見て、悠李は大きく深呼吸して元に戻る。
「……せめて……手向けの花を……、旅立つ前の貴方に……」
 同じく、元の人格に戻っていた楓。すでに旅立った女性のいた跡に花を手向けて。
「私に出来る事……、其れしかできない私を……ゆるして……」
 一筋の涙を流し、楓は女性にしばし懺悔していた。

 街に少しずつ人は戻ってきていたが、戦場の爪跡は残る。アインは混乱する人々の鎮圧対応と、修復作業の手伝いに動く。
 ただ、かなり淡白な対応のメンバーの姿もある。
「仕事だもの。帰って寝るサ」
 感傷に浸ることもなく、ヴォイドはこの場から去っていく。
 橘花も戦場に転がっていた薬莢を拾い上げて。
「……土産は博多カステラやろ」
 そう告げた彼女はのんびりと、博多観光に向かうのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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