死神は影に躍る

作者:流水清風

 深夜、人気の無い空き地に不気味な影があった。
 夜闇に沈み込んでしまいそうな、影絵が立体となったかのような何者か。
 輪郭からウェアライダーであると連想でき、それと同じく影絵のような砂時計を引き摺っている。意思を感じさせない虚ろな動作で進みながら、砂時計からはぽろぽろと影の砂が零れ落ちていた。
「えーと。もしかしなくても、えにかさんですよね?」
 影絵のような何者かに話し掛ける少女が1人。こちらも、常人でないことは一目で分かる。
 海賊のような服装は、奇抜な衣装と考えるならあり得なくはない。けれど、左右の手に灯る不気味な炎は、まるで旅人を誘い死へと導くという伝承のウィルオ・ウィスプのようだ。
 その灯りに誘導され周囲の空中を泳ぐのは、死神と呼ばれるデウスエクスの中でも下位の存在たる怪魚達だ。
「もしもーし、えにかさん。チャイムさんの事、忘れちゃってますかー?」
 暢気な調子で話し掛けるチャイムと名乗った少女。彼女自身もまた、死神である。
 影絵のような存在は、先日ある戦いによって己の潜在能力を暴走させた、板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)の変わり果てた姿だ。
 えにかとチャイムは因縁のある間柄だが、チャイムがえにかの状況を知ったのは偶然だった。そして、それならばと今の彼女に死神の因子を埋め込んだらどうなるかという好奇心を抑えられず、こうして現れたのだった。
「ほーら、えにかさん。こっちですよー」
 手旗を振って見せるチャイムに、えにかは飛び付いた。全力で、チャイムを粉砕することを厭わない勢いで。それでいて、一切の物音は立っていない。
「いいですねー。それじゃ、私も相手しちゃいましょうか。てきとーに」
 野生の獣を彷彿とさせるえにかに対し、チャイムは怪魚達に応戦を命じ、自身もまた戦いを挑む。
 えにかは怪魚を引き裂き、砂時計を裏返し不可思議な力で怪魚を消滅させた。
 けれど、数の差を覆すには至らない。
「やっと大人しくなりましたか。まったく、おてんばさんですねー。危なくなったら逃げようかと思っちゃいましたよ♪」
 力尽き倒れ伏したえにかを見下ろすチャイムは、心から楽しんでいた。これから自分がする事が、えにかにどんな変化を齎すのか、想像するだけで胸が躍るようだ。
 先日慣行された螺旋忍軍への強襲作戦の中で、ダモクレスの軍勢と戦ったケルベロス達がいた。
 その中には力及ばず、仲間の為に暴走してしまった者がいる。その1人である板餅・えにかを発見したという静生・久穏の呼び掛けに、ケルベロス達が集っていた。
「先日の作戦中に、仲間の皆さんの退路を確保するために暴走してしまった板餅・えにかさんを発見することができました」
 ヘリオライダーである久穏は、予知によってえにかの存在を捉えた。
 しかし、それは同時に予知されるような事態が起こるという意味でもある。
「えにかさんは、強力なデウスエクスに因子を植え付ける活動を行う死神と遭遇し、交戦の後に倒されてしまいます。このままでは、えにかさんの境遇は絶望的です」
 殺されるのか、連れ去られるのか、死神の因子を植え付けられるのか。考えられるいずれの可能性も、看過できるものではない。
「急いで、えにかさんと死神が遭遇する場所へ向かいましょう。ギリギリになってしまいますが、えにかさんが死神に敗北するタイミングには間に合います」
 えにかが死神に敗北することを防げはしないが、ケルベロス達が死神を撃破すればえにかを保護することはできる。そうすれば、ケルベロスとして回復することも可能だろう。
「仲間のために自らを犠牲にしたえにかさんを助ける貴重な機会です。何としても死神を撃破し、えにかさんを救ってください」
 えにか救出を託されたケルベロス達。
 デウスエクス撃破のみならず、仲間を取り戻すという重責を担い、ヘリオンへと乗り込むのだった。


参加者
ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)
エリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)
百丸・千助(刃己合研・e05330)
シーリン・マルヤマ(夢見た阿呆の忘れ形見・e07575)
ピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106)
西院・玉緒(夢幻ノ獄・e15589)
アニマリア・スノーフレーク(十二歳所謂二十歳・e16108)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)

■リプレイ

●阻止
 それは目を疑うような光景であった。
 空中を浮遊する怪魚を従える海賊のような服装の少女らしき存在が、立体化した影とでも表現するしかない存在が倒れ伏したその前で、愉悦の表情を浮かべているのだ。
 それを死神と暴走したケルベロスの戦闘が決着した状況であると見抜ける者など、そうそういるものではない。
 もしそうと理解できるとして、進んで関わろうとする者となるとさらに少ないだろう。
 けれど、予め知っているというのであれば、話は別だ。
「残念だけど、お愉しみはそこまでよ」
 死神に対して制止の声が投げ掛けられる。
 それを発した西院・玉緒(夢幻ノ獄・e15589)は、過度な露出に白衣を纏うという、まさしく異様な出で立ちだ。その点では、死神以上だと言えるかも知れない。
 この時、邪魔者が現れたからと軽率に動かなかったのは、死神が相応の手練れである証左であったのだろう。
 死神と影との間に、立て続けに数人の闖入者が割って入る。
「やっと見つけましたわ、えにかさん。今度は、ワタクシが助ける番です」
「あの時助けてありがとな、えにか! 今度はオレが助ける番だぜ!」
 影となったケルベロス、板餅えにかを助ける。その強い意志でシーリン・マルヤマ(夢見た阿呆の忘れ形見・e07575)と百丸・千助(刃己合研・e05330)は、死神の前に立ち塞がった。ミミックのガジガジも主の意気込みを反映してか、歯を打ち鳴らしている。
「責任感も使命感も結構だけどね、思い詰め過ぎると視野も思考も狭くなるものだよ。肩の力を抜いていこう」
 えにかの現在の状況に少なからず責任を感じている千助とシーリンに、やんわりと助言するエリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)。彼女自身、えにかとの付き合いは長く並々ならぬ思いでこの場に立っている。それでも仲間の様子に目を向ける余裕は、生来の楽観的気質と用心深さによるものだ。
「……えにかさんには、指一本触れさせませんっ!」
 凛とした声音でえにかを守ると宣言したビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)もまた、えにかとは既知の間柄であり、この機に必ず助けると決意している。
「もう触るどころか散々殴ったりした後だけどね、ちょっと遅かったんじゃないかなー?」
 自身とえにかの間に立ち塞がったケルベロス達を値踏みするように見渡した死神は、ビスマスの発言に揚げ足取りを返す。
「分かりやすい挑発ですね。その程度で私達が隙を見せるとでも思いましたか?」
 至極端的に、アニマリア・スノーフレーク(十二歳所謂二十歳・e16108)は死神の発言を切って捨てた。知人を襲った相手を前にしたからといって激情に駆られるような未熟者はこの場にいないと、逆に見下してすらいる。
「アニマさんの言う通りです。友達が絶体絶命のピンチな時は、悲しいとか怖いとか差し置いて、まず動かすべきは体です!!」
 己の成すべきを成す。その信念に基づき、ピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106)はえにかの元に駆け寄った。仲間達と、桜色が特徴的なボクスドラゴンのプリムが敵から守っているため、死神も怪魚も迂闊に手出しはできずそれを放置するしかない。
「板餅さんは、私達が必ず助けます」
 死神の視線がえにかとケルベロス達とを移ろった事から逡巡を見て取り、その意識をえにかよりも自分達へと向けるべく、羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)は改めて宣言する。
 死神もえにかに執着が無い訳ではなかっただろうが、目の前の敵の撃破を優先するために怪魚をケルベロス達と対峙させた。
 互いに睨み合う均衡状態が生じたが、それが継続したのは束の間でしかなかった。

●救出
「えにかさんを安全な場所へ運びます! すたこらさっさー!!」
 ピリカがえにかを抱き上げ駆け出した事で、均衡は崩れた。怪魚達が、ケルベロスへと襲い掛り、ケルベロス達もそれに応戦する。
 戦闘状態で敵に背を向けるという危険な行為だが、仲間を信じて躊躇いは一切無い。
「任せた」
 すれ違いざまに、ピリカとハイタッチを交わし、アニマリアは十字架型のハンマーを砲撃形態に変形させ怪魚の一体を狙って竜砲弾を発射した。
「ピリカさんが戻るまでは、私が戦線を支えて見せます。それまでに終わってしまうかも知れませんが」
 前衛の仲間達を守護星座で護る紺の言葉の後半は強がりだが、それくらいの気概で臨んでいるのは確かだ。
「ピリカが戻るまでに終わらせるは言い過ぎだけどね、雑魚くらいは蹴散らしておくのは悪くないね」
 アニマリアが撃った怪魚に流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを命中させ、軽やかに着地したエリシエルは紺に同意を返す。
 それ程容易に勝てる戦いではないと分かっているが、だからこそ強気で戦うことは重要だ。
「えにかにナニをしようとしてたのかしら? 可愛い顔して良いシュミしてるわ。まぁ……わたしも、人の事は言えないんだけど……ね?」
 薄着のため大半が露わになっている乳房を殊更に強調しつつ、玉緒は死神の気を逸らすための言葉を発した。そして、それと同時に怪魚に対して目にも止まらない早業で銃撃する。
 言葉のみならず体型を強調した仕草も死神に対する挑発だが、当の死神は玉緒にさして関心を示していなかった。攻撃が自身に向いていなかったことから、牽制の一種だと見抜いたのだろう。
 死神の注意は、今まさに自身を狙っているビスマスへと向けられている。
「エネルギー充填……目標補足……想いを……なめろうの力をこの一撃に! なめろうスプラッシュランチャー……シュート!」
 余人には計り知れない情熱なのか何かの強い想いを込め、ビスマスの肩が変形したカタパルトランチャ―から、エネルギー光弾が射出された。
 そのエネルギー光弾は死神の身体を痺れさせる効果があり、死神の攻撃行動を阻害した。それでも、死神の不真面目な表情を曇らせてはいないけれど。
「焼き魚にしてやるぜ! 文字通り、煮ても焼いても食えそうにないけどな!」
 千助の炎を纏った蹴りを受け、怪魚が炎に包まれる。
 炎以上に、千助自身のこの戦いに懸ける情熱は熱く燃え盛っていた。自分を先の戦場から無事に帰還させてくれたえにかへ、借りを返すために。
「どうせ食べられないなら、焦げようが構いませんわね。――少しばかりシビれますわよぉ!」
 両腕部から全力で電撃を放つというシーリンの奥の手が、怪魚達に容赦なく浴びせられた。敵の動きを鈍らせてから攻めるのは趣味に合わないが、えにか救出のためならば出し惜しみはしない。
 怪魚達もケルベロスに応戦し、歯を突き立て、怨霊弾を放つ。
 さらにそれぞれが攻防を重ねた結果、一体の怪魚が力尽きた。
 これによってケルベロス達が優位に立ったかのように見えるが、実際にはそう単純な戦況ではなかった。

●善戦
 怪魚は死神の中では下位の存在だが、必ずしも戦力として低級であるとは限らない。今回ケルベロス達が戦っている怪魚は、この場のケルベロス達にやや劣るといったところだろうか。
「こいつら、調子に乗りやがって。この程度で倒れやしないぜ!」
「その通りですわ。ここでわたくし達が倒れては、えにかさんを連れて帰れませんもの!」
 千助、シーリンは裂帛の気合を込めた叫びを上げ、怪魚によって与えられた毒を打ち消し負傷を癒す。
「アニマリアさん、何とか持ち堪えてください。もうすぐコルテットさんが戻って来てくれるはずです」
 紺は溜めたオーラでアニマリアを回復し支えていた。
「助かります。やられる前にやってやりますよ。怪魚の叩きです」
 地獄の炎を纏った十字架型ハンマーを怪魚に振り下ろすアニマリアからは、鬼気迫る程の気迫が感じられる。
「魚の叩きってそんな料理だったけ? ま、どーでもいいけどね」
 すかさず、怪魚を叩き潰したアニマリアに、死神が手にしている手旗を武器に殴打を繰り出した。見た目とは裏腹に、それは立派な凶器であり、先の紺による回復を打ち消して余りある痛手を与えられてしまう。
「叩きよりもなめろう! なめろうこそが至高の料理なのです!」
 やはり本人以外には何だか分からないが、痺れや毒を打ち消してしまうくらいに、ビスマスにとっては凄まじい気迫が籠った叫びであった。
 唯一の回復支援担当であるピリカがえにか避難のために戦線を離脱しており、ケルベロス達は各々で治癒を行わなければならず、どうしても攻撃の手が減ってしまっている。
 千助と紺は前衛の仲間全員を同時に癒す手段を有しているが、サーヴァントも含めて人数が多すぎるため、効果が薄いのであまり意味がないのだ。
 特に攻撃に専念するため自己回復手段を用意していないアニマリアは、戦闘のための防具を装備していないため誰よりも倒れかねない状態だ。その補助を千助か紺が担わなければならない点も、手数が減る要因になっている。
「雑魚と侮れないね。こんなのをえにかは1人で潰してたのか。暴走した理由といい、やっぱ頼りになるいい女だね、ホント」
 死神に続こうと歯を剥いていた怪魚は、激痛を感じるまで接近する敵の存在に気付くことが出来なかった。
 怪魚の視界の外から接近し、最上位の等級を冠された斬霊刀を振るったエリシエルの動きは、仲間にすら察知されてはいなかった。
 ケルベロス達自身が立案し実行している作戦とは言え、状況は不利であると言わざるを得ない。それでも善戦し怪魚を2体撃破しつつも未だ誰も倒れていないのは地力の高さ故だろう。
「あらあら、身軽そうな身体つきなのに、動きは遅いのね。もっと動きも女の魅力も磨いた方がいいんじゃないかしら?」
 怪魚に飛び蹴りを加えた玉緒を狙った死神の攻撃は、直前で割って入ったガジガジによって庇われた。それに対し、玉緒は豊満な胸を突きだすように強調しながら挑発する。
 相変わらず死神は挑発に反応していないが、何らかの意味があるのかも知れないと思考の片隅に澱となって残っている。戦闘中にほんの少しであっても敵の思考を阻害しているという効果を発揮している以上は、無駄な行為ではないのかも知れない。
 しかし、ケルベロス達の奮闘にも限界はある。前衛のサーヴァントが順に倒れ、いよいよアニマリアも後が無くなってしまう。
「お待たせしました、癒し系ヒーラーこと、私帰還です! って、プリムがやられちゃってるじゃないですか!? 許せません!」
 ケルベロス達の戦線が崩壊しようとしていたこの時、遂にピリカが戻り参戦した。
 待ちに待っていたこの瞬間を迎え、ケルベロス達の士気が高揚する。ヒーラーに癒し系というのは如何なものかという指摘を忘れるくらいに。

●決着
 そこからは、一気にケルベロス達が攻勢に転じた。
 ケルベロス達もほぼ全員が倒れかねないくらいの傷を負っており、これ以上防戦に回ってもじり貧であることは明らかであったため、一斉に攻め立てたのだ。
 ボクスドラゴンのナメビスも倒されたが、残った怪魚2体を撃破し、残るは死神1体のみ。
「貴女のような危険な存在は、ここで確実に倒します。やりますよ、ソウエンさん!」
 オウガメタルに語り掛け、ビスマスは自身と同じ名の金属同様の形状に変化したオウガメタルで覆われた拳を死神に叩き込む。
「みんな頑張ってください。アニマちゃんは、この際だから無理じゃないくらいに無茶しちゃってね!」
 ピリカの癒しと独特な応援に背中を押され、前衛陣のケルベロスが立て続けに攻撃する。
「えにかちゃん欲しかったですか? ごめんなさい、私と一緒で相談室のお客様なんですよ。どうしてもと思ったら、どらごにあん相談室に相談してみては?」
 そのアニマリアの言葉は、おそらく死神には届いていない。無骨な銀十字刃の斧から撃ち込まれた赤光のグラビティが体内から炸裂した状態では、それどころではないのだから。
 もっとも、アニマリアもその機会は皆無だと思っているため、耳に入っていようといまいと関心はないけれど。
「この戦いは、全員が無事でこそ私達の勝利です。貴女には、誰1人やらせはしません」
 音速を超える拳に思いの丈を込め、紺は死神を吹き飛ばす。
 えにかを救出するために、この場の誰かが欠けてしまったのでは意味が無い。
 ピリカが戻るまで紺は仲間達を支え続け、仲間達もまた奮戦した。それが報われるまで、もうあと少しなのだ。
「今度こそ、誰も欠けることなく帰るんだ! それから、えにかにあの後全員無事に脱出できたって礼を言うんだ!」
「絶対に、絶対に連れて帰りますから! ワタクシ達が受けた恩義は、必ずお返ししますわ!」
 同じ経験を経て同じ想いを共有する友人同士である為か、千助とシーリンの連携は一糸乱れず流麗とすら形容できるものであった。死神にとっては、炎を纏った蹴りと気脈を断つ指突の痛みは、まるで一度の攻撃であったかのように感じられただろう。
 いかにこの死神が猛者であるとは言え、この数の差を覆すことは不可能であった。えにかとの戦いで負傷していなければ、結果は逆であっただろうけれど、慰めにもなりはしない。
「逆に、やられる側に回った気分はどう? えにかを一対多でやったんだし、文句は言えないわよね」
 銃口を突き付けられ凄まれた死神は、それでも不真面目な印象の表情を崩さず玉緒に応じる。
「特に何も。強いて言うなら、いつでも群れなきゃ戦えないケルベロスに言われてもなー、って感じかな」
 互いに笑い合い、玉緒の撃ち放った銃弾が死神を捉え、死神が燈した不気味な灯がケルベロス達の精神を蝕む。
 限界で踏み止まっていたアニマリアは、遂に崩れ落ちてしまった。
 だが、死神にとってもそれが最後の抵抗であった。
「悪いけど、菊も彼岸花もまだお呼びじゃないんだよ!」
 満身創痍の死神には、エリシエルの最速の斬撃に反応する力は残されていない。
 自分は死ぬのだと自覚しつつも、さしたる感慨もないといった風情で存在が消失していく。己の死すらその程度にしか感じない死神が強く抱いたえにかへの感情は、よほど特別なものだったのだろう。
 けれど、そんな歪んだ執着は、友や仲間を想う意志には勝れない。この戦いの結果はそう示しているかのようだ。
 死神の完全な消失を確認し、ケルベロス達はえにかの元へと急いだ。
 まだえにかは本来の状態に戻ってはおらず、治療が必要だ。伝えたい気持ち、掛けたい言葉、したい事など色々ある。だが、それには今暫くの時間を要する。
 けれど焦る必要はない。もうえにかはいなくなりはしないのだから。

作者:流水清風 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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