「もうっ、無理! これは、無理! いくら何でも、付き合いきれない!」
日はとうに暮れているが、深夜というには、まだ少し間のある時間。東京都世田谷区のマンションの一室で、二十代半ばぐらいの若い女性が、涙目になって叫んでいる。
彼女には、最近付き合い始めた彼氏がいる。資産家の息子で、某企業で研究者をしているという彼は、ちょっと世間知らずでオタクっぽいところはあれど、基本的には知的で優しい人だと彼女は思っていた。
そう、今日のデートで、某寄生虫博物館に連れていかれるまでは!
不意打ちくらって硬直する彼女を、彼は博物館に引きずり込み、嬉々として展示物の説明をした。全長八メートルを超えるサナダムシの標本を見せられて、彼女は本気で失神しそうになったが、彼は気づかず、得々とサナダムシについて語るのであった。
「ああ、もう、やだやだやだ! なんで寄生虫なんてもんが、この世に存在するのよ!」
百年の恋も一瞬にして醒めるというけど、そういう気分、と彼女は唸る。まあ、そんなに長いこと付き合っているわけではないが。
すると、不意に彼女の背後から胸へと、大きな鍵が突き通された。
「えっ!?」
驚愕する間もなく、心臓を貫かれた彼女は意識を失って崩れ倒れる。
その背後に立つ、鍵を手にした怪しい女……結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)の宿敵、12人のドリームイーターの魔女の集団「パッチワーク」の魔女の一人、第六の魔女・ステュムパロスが乾いた笑い声をあげる。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
そして、倒れた彼女の傍らに、彼女が嫌悪する寄生虫……昼間見せられた、全長八メートルを超えるサナダムシが蟠った身体の各所にモザイクを張り付け、なぜか白くて細い手足がテキトーに生えた怪物、サナダムシ型ドリームイーターが出現する。
「寄生虫が体内にいると、悪いことばかりじゃない。アレルギー反応の抑制効果があるというのがわかっている。最近では、ダイエットのためわざわざ寄生虫の卵を飲む人が、ハリウッドセレブなんかに多いんだよ」
彼女が昼間聞かされた寄生虫に関する彼氏の蘊蓄を、奇妙に歪んだ声で再生しながら、サナダムシ型ドリームイーターは、手に大きな鍵を構えてのそのそと動き出す。
ステュムパロスの姿は、既にどこにも見当たらなかった。
「寄生虫! やだー! 理屈抜きにやだー! あんなもの愛好する人がいるなんて、信じられなーい!」
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)が身も蓋もなく叫び、ヘリオライダーの高御倉・康が困惑した表情で告げる。
「えー、東京都世田谷区のマンションで、寄生虫を嫌悪する女性が、その『嫌悪』を結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)さんの宿敵、12人のドリームイーターの魔女の集団「パッチワーク」の魔女の一人、第六の魔女・ステュムパロスに奪われ、新たな寄生虫型ドリームイーターが生まれてしまう事件が起きます。今から急行してもステュムパロスを捕捉することはできませんが、新たなドリームイーターが人に危害を加える前に撃破していただくようお願いします。これまでの例からして、新たなドリームイーターの撃破に成功すれば、昏倒している被害者も意識を取り戻すと思われます」
そう言って、康はプロジェクターに地図を出す。
「現場はここです。被害者は、このマンションの四階404号室に一人住まいをしています。ドリームイーターはあまり活発に動き回るタイプではないようで、急行すれば、マンションの部屋の中にいるところを捕捉できるでしょう。部屋の鍵は、一階にいる管理人に言えば出してくれると思います。で、予知で見えたドリームイーターの姿なんですが……かなりグロテスクなので注意してください」
そう断ってから、康は画像を切り替える。うわ、と呻き声がして、思わず目をそらす者もいるようだ。
「基本的には、長大なサナダムシが蟠ったような姿ですが、これがほどけて紐状になって動くのかどうかはわかりません。ドリームイーターなので鍵を持っており、これを使って攻撃してくることが予想されます。また、全身の各所にモザイクがあり、これを使って攻撃、治癒をすると思われます。で……あんまり想像したくないのですが、もしかすると、このドリームイーター、出会った相手の体内にもぐりこんで寄生しようとする可能性があります。もぐりこまれると、いろいろな意味でものすごーく厄介と思われるので、どうかくれぐれもご用心ください」
康は努めて淡々と説明するが、その顔色は少々蒼い。説明を聞いている側からも、何か想像してしまったらしく、うげっとか、ぐげっとか、妙な声があがる。
「では……どうかよろしくお願いします。皆さまのご武運とご無事をお祈りします」
そう言って、康は深々と頭を下げた。
参加者 | |
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山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918) |
皇・絶華(影月・e04491) |
アイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107) |
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323) |
神居・雪(はぐれ狼・e22011) |
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685) |
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902) |
菊池・アイビス(スパイラルライフ・e37994) |
●さすがに……これは酷すぎる
「う、うちのマンションに、デウスエクスが!?」
東京都世田谷区某所。初老のマンション管理人は、ケルベロスにして警察官の獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)から、デウスエクスが出現したので404号室の鍵を出すように言われて、目を剥いた。
「どうして、そんなことに!? 404の入居者が、何かやらかしたのかね?」
「それはわかりません。デウスエクスは宇宙人ですから。ただ、事を大きくしたくはないので、合鍵を貸していただきさえすれば、我々ケルベロスが入ってすみやかに始末をつけてきます。ご協力をお願いします」
いかにもプロフェッショナル、という口調と態度で銀子は応じる。管理人は渋い表情のままではあったが、マスターキーを取り出して銀子に渡す。
そして一同はエレベーターで四階にあがり、問題の部屋の前に立つ。
「闇雲に突入して、いきなり鉢合わせになったらかなわん。まず『イペタム』を突っ込ませる」
少々部屋が荒れるかもしれんが、後でヒールしておけばいいだろ、と、無雑作に言いながら、神居・雪(はぐれ狼・e22011)が今回参加している唯一のサーヴァント、ライドキャリバーの『イペタム』をぽんと叩く。
「んでもって、敵の居所と被害者の居場所を掴んだら、アタシら前衛が入って敵を抑える。それから、救出役が飛び込んで被害者を運び出すって寸法だ」
「ああ、よろしく頼む」
救出役のマルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)が、短い口調で応じる。もともと口数の多い方ではないが、今回は少々顔色が悪い。
そうしてみると、特に動揺が見られないのは雪と皇・絶華(影月・e04491)、アイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107)ぐらいのもので、あとは全員、大なり小なり、嫌悪で顔を顰めていたり、異様に緊張していたり、顔色が悪かったり、チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)のように既に半べそをかいている者もいる。
「ううう、やだよう巨大寄生虫……見たくないよ、戦いたくないよ……でも、逃げちゃダメだよね……」
「まあねえ……とにかく、さっさとやっつけるしかないわね」
管理人の前では平静毅然を装っていた銀子ですら、かなり嫌悪が勝った、気の進まない様子で応じる。
「それじゃ、開けるわよ」
告げると、銀子はマスターキーで部屋の玄関ドアを開ける。幸い、即座に寄生虫型ドリームイーターが飛び出してくるようなことはなく、雪が『イペタム』をとんと押して先に立たせる。
「キープアウトテープを……」
「アカン。被害者運び出す邪魔になるわ」
玄関にキープアウトテープを貼ろうとした山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)を、菊池・アイビス(スパイラルライフ・e37994)が制する。
キープアウトテープの制止力はケルベロスには効かないが、それでも出入口を封じるようにテープが貼ってあったら物理的に邪魔だ。
「どのタイミングでどこにテープ貼るか、その前に野次馬が来たらどうするかは、後衛のワシが注意しとく。アンタは前衛じゃろ。とっとと行きぃな」
「は、はい……」
明らかに気の進まない様子ではあるが、涼子が他の前衛メンバーを追って奥に進もうとした時。
「きゃー! 出たー! 寄生虫、イヤー!」
チェリーの絶叫が響き渡り、涼子は慌てて奥へと走る。
そして、そこにいたのは、ヘリオライダーが予知で見て描いた画像そのままの、奇奇怪怪な姿をしたサナダムシ型ドリームイーター。しかも、画像ではわからなかったが、こいつ、異様に生臭い!
「ぐっ……」
「うえっ……」
百戦錬磨のケルベロスたちも、これには思わずたじたじと下がる。しかし、マルレーネはすぐに被害者の位置を確かめ……幸い、ドリームイーターとは少し離れた場所に倒れていた……走り寄って担ぎ上げる。
「すぐ戻る。援護よろしく」
「は、はいっ!」
既に涙目のチェリーが、ほとんどやけっぱち状態で、刃のような蹴りを放つ。
「イヤー! ぐちょっていったあー! 足が気持ち悪いー! 直接なんて触りたくないよー!」
そうは言っても、なぜかチェリーは、直接殴る蹴る触る近接系の戦闘グラビティしか持ってきていない。本人の配慮が足りなかったのか、それとも、彼女に悲鳴をあげさせたい何者かの陰謀か?
「くたばれっ!」
罵声とともに、雪が破鎧衝を打ち込む。……だけど、サナダムシの構造的弱点って、どこなんだろう?
それはともかく、続いて『イペタム』が炎をまとって果敢に突撃し、涼子が重力蹴りを叩き込む。
「う……た、確かにイヤな感触……」
「なんとも……微妙ですね」
涼子に続いて重力蹴りを放った絶華も、微妙な表情で呟く。
するとドリームイーターが、軋んだ声をべらべらと発する。
「寄生虫が体内にいると、悪いことばかりじゃない。アレルギー反応の抑制効果があるというのがわかっている。最近では、ダイエットのためわざわざ寄生虫の卵を飲む人が、ハリウッドセレブなんかに多いんだよ」
「いやいや、害のある寄生虫は恐ろしいぞ! 日本には殆どいないがウマバエ等瞼にまで寄生するものや、宿主の神経を支配して操る寄生虫も居る! 特に海外では、寄生虫による病気の被害は恐ろしい事になっている!」
どこで仕込んできたのか、絶華が負けじとばかりに寄生虫に関する知識を披露する。
そしてアイオーニオンは、幻影のドラゴンを召喚して火炎ブレスを放射する。
「それにしても……鍵を持ったサナダムシってなんだかシュール過ぎて嫌悪感が少し下がるわね」
「そ、そうですかぁ?」
涼子が唸った時、蟠った状態で動いていたドリームイーターが、不意にしゅるしゅると紐状にほどける。
そして意外なほどの速度で身を翻したかと思うと、紐状になった身体を涼子の口めがけて突っ込んでくる!
「ぎゃあああああああっ!」
き、寄生されるっ、と、涼子は完全にパニックを起こして叫ぶ。叫んで口を開けてしまったら、完全に相手の侵入を許すことになるが、そんなところまで気が回らない。
あわや、という瞬間、ディフェンダーのチェリーが飛び込んで庇う。
チェリーはしっかり口を閉じ、ついでに目も閉じていたのだが、涼子の口に飛び込み損ねたドリームイーターは、そのままチェリーの頭の回りをぐるぐると回る。
そしてチェリーは、不意にくわっと目を見開き絶叫する。
「イヤー! 入ってこないでー! 気持ち悪いよー! 死んじゃうよー! イヤ、イヤ、イヤー! そんな、ズルズル入ってこないでよーっ!」
「シッカリせい! ホンマにゃ入っとらん!」
アイビスが叫ぶが、チェリーの耳には入らない。実際、本当に口に入られていたら声が出せるはずがないが、そんな判断できる余裕などあるわけない。
(「……かばってもらわなかったら……ボクが、アレをくらってた……」)
ごめん、チェリーさん、ごめん、と、涼子がパニックの余波でがたがた震えながら呻く。
そして銀子が血相変えて、オウガメタルに覆われた鉄拳を叩き込む。
「チェリーさんから、離れなさぁい!」
ばしっ、と紐状に翻るドリームイーターが弾け、しゅるしゅると元の形状に蟠る。チェリーは自分の喉元を両手で抑え、はあはあと荒い息をついていたが、不意にぺたんと座り込んで叫ぶ。
「イヤー! 出てって! 出てってよ! あああああ、でもダメ! そこから出るのダメ! イヤ、イヤ、イヤー! ソコはダメー!」
「チェリー! しっかりしろ!」
雪が血を吐くような声で叫ぶが、やはりチェリーの耳に入った様子はない。
「……こ、こらアカン……」
ケツか、ケツ抜けか、と、アイビスが少々蒼ざめた顔で唸る。
「……傷は癒してあげられるけど、気持ち悪い感覚の記憶だけは流石に治せないのよね」
さすがに気の毒そうな口調でアイオーニオンが呟き、これほど後衛で良かったと思うことは無いわね、と声には出さずに続ける。
「イヤー! アッ、アッ、アッ、イヤ、イヤー! もうやめて、イヤー!」
「ったくもー、若いムスメに何すんねん!」
とはいえ、ワシに寄生してくるのも御免やけどな、と毒づきながら、アイビスがドリームイーターを蹴とばす。
そしてチェリーは、更に少しの間もだえ苦しんでいたが、やがてアーッ、と一声叫んでぐったりする。
「おいっ、大丈夫かっ!」
雪が駆けよってチェリーを助け起こし、オリジナルグラビティ『恵み分け与える豊河(ペトルンカムイ)』を使う。
「川の恵みよ。今、我らの身に宿れ。……力、借りるぜ」
豊かな恵みを与える川のカムイの力が肉体を活性化させ、悪しきものをその身から追い払う。強力な治癒を受けたチェリーは目を見開き、そしてはね起きると、鬼気迫る形相でドリームイーターを睨み据える。
「よくもよくもよくもーっ! 絶対ゆるさなーいっ!」
もはや嫌悪も何もあればこそ、あまりに酷い攻撃に激怒したチェリーは、オリジナルグラビティ『桜花拳聖の吸血捕植(オウカケンセイノヴァンパイアツリー)』を炸裂させる。
「一切合切! 全部奪う! ボクから奪ったもの……すべて三倍返しで取り返す!」
チェリーは躊躇なく、桜色の闘気で覆われた手でドリームイーターを殴り、闘気で作った桜の苗を植え付ける。桜は急速に根を張り、サナダムシと絡まるようにして相手の体力を容赦なく奪って満開の花を咲かせる。
……あまり室内使用に向いたグラビティとは思えないが、激怒が限界突破したチェリーはもちろん気にもしない。
「よ、よおしっ!」
びびってなんかいられない、と、気合を入れ直した涼子がバトルガントレットからジェットを噴射、ブーストナックルでドリームイーターを痛打する。
続く絶華は、炎を伴う蹴りを見舞ったが。
「最近は駆除が進んでいるが、以前は日本でも寄生虫の被害は深刻なものがあった。日本住血吸虫という寄生虫を知っているか? これは肝臓や脳を冒し……」
「やめて!」
ドリームイーターに攻撃しながら寄生虫の害を語る絶華に、チェリーがいつになくキツい口調で告げる。
「寄生虫の話なんて、どんなナカミだろうと聞きたくない! やめて!」
「え? でも、しかし……はい、わかりました」
絶華は一瞬抗弁しかかったが、チェリーに凄い目つきで睨まれておとなしく口をつぐむ。
そりゃあ、啓蒙のつもりだろうが何だろうが、人が嫌がる話をわざわざするのはよろしくないわね、と、言葉には出さずに呟いて、アイオーニオンはウィッチオペレーションでチェリーを治癒する。
するとドリームイーターはモザイクを結集させて、チェリーが植えつけた桜を砕く。
「自己ヒールとキュアか……まだやる気満々のようね」
とっとと潰れてほしいんだけど、と、銀子がうんざりした表情で唸り、日本刀ですくい斬りに斬りつけた。
●寄生虫死すべし、って、とっとと死ね!
「……どうしよう」
被害者を抱えて部屋の外に出たマルレーネは、いささか当惑した表情で周囲を見回す。
当初の予定では『安全な場所』に被害者を置いたら、すぐ現場に戻るつもりだったが、夜の賃貸マンション共用廊下は、気を失った若い女性を寝かせておいていい場所とは、ちょっと思えない。
「……あ、そうだ」
少し考えると、マルレーネはエレベーターを呼んで一階に降りると、管理人室に被害者を担ぎ込む。
「こ、これは!?」
「404号室の居住者。気を失ってるだけで命には別状ないと思うけど、心配だったら救急車を呼んで」
驚愕する管理人に一方的に告げると、マルレーネは被害者を下して身を翻す。
「デウスエクスとの戦いは、現在続行中。私も戻らないと」
「わ、わかった。救急車は呼んでおく。どうか、頑張ってください」
可憐な少女とはいえ相手は歴としたケルベロス、その気迫に押されたか、管理人は案外素直に応じる。マルレーネは珍しくもというべきか、小さく笑みを返し、エレベーターに飛び乗って四階に戻る。
そして現場に戻ってみると、そこは修羅を極めた戦場だった。
「我が身……唯一つの凶獣なり……四凶門……「窮奇」……開門……! ……ぐ……ガァアアアアアア!!!!」
オリジナルグラビティ『四門「窮奇」(シモンキュウキ)』を発動させた絶華が、凄い勢いでドリームイーターに躍り掛かり、カタール『三重臨界』を猛然と振るう。
続いて、アイオーニオンもオリジナルグラビティ『氷葬執刀(ヒョウソウシットウ)』を駆使する。
「どこ斬っても同じ気もするけど、ねえ、いい加減潰れてくれない?」
もう、これ以上見ていたくないのよ、と、珍しくも苛立ちを露わにし、氷の女医は凄まじい速度でメスを振るう。
しかし、ドリームイーターはいくら斬られても切断されることなく、すぐさま絡まり、紐状に連なってしゅるしゅると伸びる。
「危ない!」
「えっ?!」
狙われている、と、マルレーネが気づいた瞬間、ドリームイーターが襲い掛かってきたが、間一髪、『イペタム』が飛び込んで庇う。
身代わりになった一輪バイクは、ばたんと倒れて黒煙を噴き出すが、いったいどんな感覚に襲われているのかは知りようもない。
「おのれ……!」
危ういところを逃れたマルレーネは、まなじりを決してドリームイーターを見据え、心底気色の悪い敵にオリジナルグラビティ『焼霧嵐舞陣(アシッドストーム・ピンク)』を叩きつける。
「霧に焼かれて踊れ」
強酸性のピンクの霧がドリームイーターの全身を灼き、凄まじい悪臭が漂う。
「うげっ、勘弁してぇな!」
効いとるようやけど、こらアカン、と、辟易した声を出し、アイビスがオリジナルグラビティ『辰(タツ)』を放つ。
「ド外道が! えーかげんに、失せさらせ!」
罵声とともに放たれた帯状の螺旋力が、サナダムシ状の敵を縦に斬り裂く。真っ二つに裂かれたドリームイーターは、一瞬、二体に分裂して動き出すかのように見えたが、すぐさま両方とも弾けて消える。
「やったか!」
「やったようですね……」
「やったー! やったー! やっつけたー!」
興奮した様子で、チェリーがぴょんぴょんと跳ねる。
「もういない、どこにもいない! 気持ち悪いヤツは、やっつけたー!」
「……でも、これ、ヒールが大変よ」
凄まじいまでに滅茶苦茶になった室内を見回して、アイオーニオンが軽く溜息をつく。
そしてアイビスが、神妙な表情で呟く。
「恐ろしい敵じゃった……ほんま、番犬ちゃあ寄生虫駆除まで引き受けよるなん聞いとらんわい!」
作者:秋津透 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年8月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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