ケルベロス大運動会~これが僕らのアフリカン!

作者:つじ

●大運動会開催!!
 度重なる「全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)」の発動。必要な事であるとは言え、これにより世界経済は大きく疲弊してしまった。そこで、この状況の改善を期して、あるイベントが企画された。それが、ケルベロス大運動会である。
 ケルベロス等に通常のダメージが通らないのは周知の通り。そこで、世界中のプロモーター達が、危険過ぎる故に使用できなかった「ハイパーエクストリームスポーツ・アトラクション」の数々を持ち寄り、開催国である『ケニア』の各地に、巨大で危険なスポーツ要塞を造り上げたという。

 ――そう、栄えある第2回ケルベロス大運動会の開催地には、『ケニア』だ!
 ケニア各地を巡り、アトラクションに挑戦しよう!!

●手作りの味
 驚天動地でエクストリームな競技が渦巻くこのイベントではあるが、時には休息も必要だ。
 特にこの競技間の昼食は、体力の補給に重要な位置付けとなるはず。
「せっかくケニアまで来たんですから、お昼ごはんにはアフリカ料理が食べたいですよね!」
 晴天の空に大きな声が響き渡る。
「ということで、皆さんのお昼ごはんのために、特設キッチンスタジオを用意しました!!」
 ハンドスピーカーを手にした白鳥沢・慧斗(オラトリオのヘリオライダー・en0250)は、高らかにそう宣言した。
 『シェフ』や『料理店』ではなく『キッチンスタジオ』。つまりこれは――。
「そう、料理は自分達で作っちゃおうということです!!!」
 調理器具の揃ったここを使えば、アフリカっぽい料理のお弁当を自作して食べたり、大量に作って皆に振舞ったり、友人の作った創作アフリカ料理を堪能したりできるだろう。
 食材は地元のマーケットで揃える事ができるほか、巨大冷凍コンテナで日本から馴染みのあるものを、新鮮なまま運び込む事ができる。モノによっては自分で狩ってくるのもありだ。
 現地ではコーンミールやキャッサバの粉から作った餅のような『ウガリ』を、野菜や豆の煮込み料理と共に食べることが多いというが……。
「……え、そうは言ってもアフリカ料理に馴染みがない? 大丈夫、僕もです!!」
 近くに居た一人の表情を読み取り、慧斗は堂々と宣言してみせる。
「でも安心してください。ここでは料理するのが僕達ならば、食べるのもまた僕達です! 多少のアレンジや大幅なアドリブも問題無し! なんだったら終始オリジナルの創作アフリカ料理を生み出したっておっけーですよ!!」
 ケルベロス流アフリカ料理、といった形になるだろうか。
 一通りの説明を終えて、ハンドスピーカーを手にした少年は高く拳を突き上げた。
「ケルベロスの皆さんでしたら、本場のアフリカ料理に負けないものも目指せるはず! 張り切っていきましょう!!」


■リプレイ

●手作りキッチンスタジオ
 午前の競技も終了し、訪れるのは昼食の時間。貸切となったキッチンスタジオにもケルベロス達が集まってきていた。
「――ここは雄大なアフリカの大地。料理もまたワイルドに、自由であるべきなのでは! と、僕は思います!」
 皆を先導するようにキッチン入りした大成・朝希(朝露の一滴・e06698)が、【o ha yo -*】のメンバーにそう宣言する。
「現地に来てまで料理するとは、流石に想像してなかったね……」
 それに頷いて返しつつ、ミルラ・コンミフォラ(翠の魔女・e03579)が髪をまとめ直し、拳を握る。そう、これより始まるのはケルベロス達自身による手料理。テーマに沿って選んだメニューはシシケバブ、そしてムキモの二種類だ。
「ししけばぶー、ムキムキまっしゅまっしゅー」
「焼くやつと、潰して混ぜる奴だったな」
 感覚派なのかざっくりとした理解を示し、キース・クレイノア(送り屋・e01393)と水留・縫(つぎはぎ夜空・e34243)が頷く。
「では、切るのは私達にお任せを」
「僕も腕によりをかけてお手伝いしよう!」
 包丁を手にしたシィラ・シェルヴィー(白銀令嬢・e03490)、ブラン・バニ(トリストラム・e33797)に、ミルラも並ぶ。
「ムキモはアフリカ風のマッシュポテト、らしいよ」
「なるほど、それでジャガイモがこんなに!」
 色々と野菜も揃っているが、メインは肉とジャガイモである。ここでの作業自体は非常にシンプルだが。
「串焼きとなるとこのくらいの大きさで良いのだよね」
「えっ」
 呻いたシィラの手元、不揃いに切られたジャガイモ達を目にしてブランは何かを察した。
「大丈夫、ポテトはマッシュするから何も問題ないはずだよ!」
「そ、そうですよね!」
 そう、まだまだ勝負はここからである。大きな肉の塊を、ぶつ切りに――。
「そういえばシシケバブは下味を付けると良いと聞いたよ」
 ミルラの声に、シィラが顔を上げる。そこには、彼女の理想とする形ができていた。
「……奥が深いのです」
 色々なものに感嘆した彼女に首を傾げつつ、ミルラは調味料の中から見知ったものを探し当てた。
「クミンにコリアンダーに……うん、これなら分かる」
 そうしてスパイスの振られた肉は、シィラとブランの手で豪快に串刺しに。
「既に美味しそう……」
「焼きのキースさん、続きはよろしく!」
 良い感じの形になった食材達は、次の工程へと委ねられた。
「任せろ、これを焼いて行けば良いのだな」
「上手く焼いてくれよ、キースならできる!」
「ああ、まっしゅまっしゅーはそちらに任せた」
 纏とキースが拳を交わす。串にささった肉はキースの手に、そしてジャガイモは朝希と纏へ。
「では、豪快に、ワイルドにいきましょう!」
 朝希達の手元で、調理と言う名の体力勝負が幕を開けた。
「ムキモって名前からしてムキムキになれそうだよな」
「こう、ムキムキになった自分を想像すれば上手くやれるんじゃないか」
「ムキムキに……?」
 纏とキースのやり取りに、朝希とミルラが自分の細腕に目を落とした。
「いや、それはどうだろ……あ、これ味付けどうすりゃいいんだ?」
「シンプルに塩胡椒でどうでしょう?」
 纏の問いにシィラが答える。火にかけた肉も良い香りを上げ始め、賑やかな共同作業はあっという間に過ぎていく。
「さぁ皆、冷えたチャイが入ったよ!」
「さすが、仕事の出来るいけめんですね!」
 飲み物を手にしたブランとノワさんを朝希が迎え入れる。食べ頃はきっとすぐそこだろう。


 ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)とコンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)は現地食材でのBBQに取り掛かっていた。
 米国出身の二人にしてみれば、BBQは馴染み深いものだろう。
「スタン、串焼きは任せて良い?」
「シシケバブっスね! 任せておくっスよ!」
 定番の具材は勿論、だが今回の主役はワニにダチョウ。コンスタンツァはケニアの味を次々と串に通していく。
「これがダチョウ……牛肉みたいに赤身の色が濃くて美味しそうだ」
 一方、ファルケは別料理のためにダチョウ肉と向き合っていた。ヒレはタタキに、ドラムはチーズと一緒にハンバーガーに。
「やっぱ手馴れてるっスね~」
 負けじとデキる女ぶりを見せつけるべく、彼女は鉄串をぐるぐる回し始めた。
「ラブラブファイヤーでこんがり焼いてやるっスよ~」
「焼き上がったら、一緒に食べよう」
 少し離れて、【カラクレ】の陣取った調理台。こちらも選んだメニューはシシケバブだった。
「へぇ、手際いいじゃねえか」
 自らも野菜を切りつつ、真柴・勲(空蝉・e00162)が鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)に声をかける。
「へへっ、料理は普段からしてるんだ」
 モニール・トゥーヴァー(砂冠・e26933)も、肉の下拵えをするヒノトを感心したように見ていたが。
「……ニルは食べるほうが得意かな」
「はは、それは俺も同じだな」
「でも! 串に刺すのはまかせて……!」
「よーし、その役目はニルに任せた!」
「こっちは肉の間に刺していってくれ、彩りが良くなるぞ」
「ほんとだ……勲はおしゃれね」
 完成した串は火の上に乗り、後は焼き上がりを待つばかり。そこから漂う香りに、モニールが鼻を寄せる。
「ヒノト、勲、これもういい?」
「んー……もういいように見えるけど」
「まあ待て、待ちきれないのは分かるがもう暫くの辛抱な」
 じっとそれらを眺めるヒノトとモニールの尾が、火の灯の前で並んで揺れた。
「いただきます!」
「火傷には気を付けろよー……熱ッ」
「お前もな、ヒノト」
 照れたように笑うヒノトに、トニックウォーターが差し出された。
 齧り付いた肉の味は上々。だが、それは素材の良さに因るものだけではないだろう。この味は、きっと皆で一緒に作ったからだと、彼等は言わずともわかっていた。

「つまみが、足りないわね……」
 そんな言葉を放ちつつ現れたのはソフィア・フィアリス(黄鮫を刻め・e16957)だ。料理に関しては下調べ済み、ミミックのヒガシバと分担しつつ、彼女はカンバサモの調理にかかる。
 刻んだ具材を挟んで揚げて、完成品した物から順にソフィアの口へ。
「あー、スパイスの風味でお酒が進むわ」
 舞阪・瑠奈(ヤンデレ美人・e17956)は愛する人のため、現地の料理をマスターすべく腕を振るう。
「お土産は、私の手料理が一番よね」
 馴染みのない品目にも、『似た料理』は何かしら存在している。料理が得意な彼女なら、習得するのはそう難しくないだろう。
「日本人向けにアレンジもしたいわね……」
 そんな瑠奈の隣の厨房、そこでは花藤・ニコル(書香・e39323)も現地の料理に挑戦していた。
「なるほど、ウガリの材料が煮立ったら、木べらで……」
 こねる。一言で言えばそれだけなのだが。
「な、なかなか力いりますねこれ……」
 多少息は上がってしまったが、とりあえずふわふわした餅のようなものが完成した。
「これで正解、なのでしょうか……?」
 献立としては、一緒に肉と豆のトマト煮込み、そして焼きバナナが仕上がっている。
「何だか良い匂いが……」
 答え合わせを求めるニコルの元に、匂いにつられた淡雪・言子(ひらり言の葉・e33835)が流れ着いた。
「よろしければ、ご一緒にいかがです?」
「良いんですか……?」
 驚愕の表情を浮かべた言子は、結局厚意に甘える事にしたようだ。
「すばらしいです、このもちもち感……」
「なるほど、ウガリの固さも千差万別なのですね……」
 有益な情報を互いに得つつ、彼等の昼食はもう少し続く。


「そう……」
 調理場の一角にて、水無月・一華(華冽・e11665)はしばし遠くを見つめる。暁・万里(レプリカ・e15680)からの料理のリクエストはワニだった。つまり。
「わたし、とうとうワニ捌きまで……」
「待って一華! 材料はあるから! 売ってたから!」
 修業はしなくてよくなったらしい。
「万里くんワニ串打ちするわに」
「はいはい、任せろわにー」
 謎の語尾を交わしつつ、万里はシシケバブの準備に入る。その間に、一華はもう一品の方に取り掛かった。
「それではきまぐれ一華シェフ、今日のお味は?」
「生トマトと牛肉です! ワニの串焼きと一緒にお召し上がりくださいわに」
 仕上がったピラウにワニ肉を添えて。賑やかに、わにわにと調理を終えた二人は、笑顔を絶やさぬまま共に食卓を囲んだ。
「どう? 初めてのワニの味は?」
「うーん、鳥のような魚のような……」
 ここまで姿を見せていない魚料理だが、そちらに挑戦する者も勿論居る。
「これから作るのは、チェブジェン。魚の煮汁で炊いたピラフに似た料理です」
 頭にスカーフ、そしてエプロンを身に着けた朝倉・ほのか(ホーリィグレイル・e01107)が、ルヴィル・コールディ(黒翼の祓刀・e00824)の前で指を立てた。
「アフリカ料理はお肉が主流みたいですが、お魚もちゃんと食べられているんですよ」
「へ、へ~」
 目を泳がせながらの回答。いつもなら「楽しみだな~」と続くところだが。
「じゃあ俺は……魚にしよう! でっかい魚!」
 せっかくだから、一緒に。隣で大きな魚を選び始めたルヴィルの様子に、ほのかが口元を綻ばせた。
 共に調理場に立つというのも悪くないもの。早々に焼き上がり待ちになってしまったルヴィルの横で、ほのかが指先からスパイスを踊らせる。
「良い匂いがしてきましたね」
「そろそろ完成かな~」
 実はここからが少し長いのだけど、きっと、それはそれで。
 蓋をした鍋から視線を上げると、目が合って。二人は自然と微笑みを交わした。
 そんな和やかな様子が続く一方、ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)は窮地に陥っていた。
「そういえばユナって料理するの?」
「あら、私とてひとかどの女子力は持ち合わせているわよ?」
 そんな風に挑発気味に返したのが発端で、気が付けば、料理で生計を立てているメリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)に手料理を披露する事になってしまっている。
「これならやれるわッ! 私だってできるという所を、メリルにたたきつけてあげるッ!」
 レシピを表示したスマホを隠し、メリルディの待つキッチンへ。
「あ、カランガ作ってくれるんだ? ちょうど食べたいと思ってたの」
 にこにことメリルディが見守る中、ユスティーナは調理を開始した。
「そうそう、そのロイコって、こっちではコンソメみたいな扱いなんだって」
「知ってるわよ! 使い方だって分かるわっ」
 遠回しな助言を受けながらも完成した料理は……。
「うん、これならきっと将来困らないよ」
 無事、彼女のお墨付きを得たようだ。
「シャルフィンはアフリカ料理、事前に調べてきた?」
 キッチン入りしたマサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)は、先に到着していたシャルフィン・レヴェルス(モノフォビア・e27856)に右手を上げて見せた。が。
「俺は、なんてものを生み出してしまったんだ……」
「もう調理済みなの!?」
 しかも失敗というか大事故的なものが出来上がっている。
「やはり素人がインスピレーションで料理なんてするもんじゃないな」
「ええ……じゃあ気を取り直して選びなおそうか」
 そして、調理台にガイドブックが広げられる。
「北アフリカで代表的なのがクスクスと、あとはシシケバブかな!」
「豆料理もあるな……ん? ワニ肉?」
「ワニ肉は一回食べてみたいなー」
「マサムネは中々ワイルドな物を作るんだな。しかし、住む場所が変わると食もこんなに違うのか……」
 勉強会の結果が出るのは、もう少し先になるか。


 キッチンスタジオの一角、そこにはトリスタン・ブラッグ(ラスティウェッジ・e01246)によるステーキハウス「ビッグホーン」のケニア支店がオープンしていた。
「さぁさぁ、アフリカンステーキだよ!」
「美味しい焼肉だよー、是非うちに来て食べてみてねー」
 先程から客引きをしているのは、アフリカらしく毛皮のミニで固めたエルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)だ。
 取扱うのは現地風ステーキ。ここでは、牛やヤギが丸ごと火にかけられていた。
「おじちゃん、今度はキリンを焼いてみよう?」
「……そのサイズはさすがに難しいですね」
 豪快な調理風景に引かれるように、一人目の客が訪れる。
「店主。牛をひと皿」
「わたくしにも……とりあえず三皿ほど……」
 八ツ音、そしてまだ食べ足りないと言った様子の言子が席に着く。
「ごゆっくりどうぞー」
 運ばれてきた分厚いステーキに、二人は同時に挑みかかっていった。
 キッチンスタジオと言えば料理対決、という事でこちらでは【Raven's Nest】の面々が鎬を削っていた。
 まずはアラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)、繰空・千歳(すずあめ・e00639)チームの皿が、審査員の前に並べられる。
「これが完成品、ジョロフライスだ」
「召し上がれ!」
 芳しいトマト色の下地は野菜で彩られ、その上には飴細工の動物達が踊る。
「ちょっと遊びすぎかしら?」
「いや、確たる調理技法と飴屋技術のハーモニー。これは素晴らしい……!」
 千歳の言葉に目を細め、ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)が感嘆を口にする。そしてそこへ、最初の一口目を――。
「美味あああああい!!」
 慧斗が歓声を上げる横で、ゆっくりと味わっていた白石・翌桧(追い縋る者・e20838)の瞳に火が灯った。
「ほう……これは魚醤か?」
「その通り!」
 不敵な笑みで応えるアラタに、翌桧も口元を綻ばせる。
「スパイスを利かせつつも、皿全体を調える……これがお前の本分か」
「しかし魚醤とは……アフリカのみならず全土を喰らう勢いですね」
「これおいしーい」
「でもサヤ達も負けませんよう」
 いつの間にか審査員席に混ざっていたチーム『メイド服』、フェクト・シュローダー(レッツゴッド・e00357)と平坂・サヤ(こととい・e01301)が気勢を上げる。そうして差し出されたのは……。
「これぞ神様(ゴッド)のジョロフライス……ゴョロフライス!」
「ほう、同じ料理か。これは面白くなってきた」
 その翌桧の笑みが、次の瞬間凍り付く。運ばれてきた皿の上はとにかく茶色い。荒廃した大地を思わせる大量のウガリの上に、神の怒りにでも触れたのか、様々な動物の死肉が転がっていた。
「どう? 今回は特に野菜に力を入れてみたよ!」
「えっ、どこにそんなものが……?」
「ふふふ……千歳はこれを見落としているのですよ」
 サヤが摘み上げたそれは、どう見ても肉だが。
「サヤ達二人で狩ってきました」
「そう、これはサバンナを駆ける草食動物、シマウマ!」
 衝撃の一言。これによってシマウマ=野菜という図式が完成。
「どう足掻いてもシマウマは野菜じゃねえよ。アホか」
「……いやしかし、この斬新な発想は捨て置けません」
 翌桧とダリルの見解が割れ、審査員達は審議に入った。
「豚肉と牛肉、そしてシマウマか……」
「先生、行くのね……?」
「ああ、骨は拾ってくれ」
 料理人のサガだろうか、千歳に後を任せ、アラタがそれを口にする。舌に広がる、よく知った甘辛さは……。
「味噌だと……?」
「その通りですよう!」
 斬新すぎた。だがその風味のせいか意外といけてしまうのも事実。そんなアラタの困惑が収まる前に、ついに決着の時が訪れた。
「さて、それじゃ判定を行う」
 評定は30点満点とし、審査員ごとに勝敗を決め、白星の数を競う形式だ。
「まあ、こんなとこだな」
 30対24で翌桧はアラタ・千歳チームを推し、テーマ性を評価したダリルは26対27で、チーム『メイド服』に一票を投じる。だが互角の戦いの行方を追う前に、慧斗がダリルに何事か耳打ち、ハンドスピーカーが手渡された。
「……えー、記録からドーピング(おいしくなあれ)が確認されました。よって私の評定を変更します」
「えーっ!?」
 26対18に数値が書き換えられ、アラタ・千歳チームの勝利が決まった。
「おめでとうございまーす!」
 勝負が終われば和やかに、彼等は共に食卓を囲んだ。
 エルトベーレ・スプリンガー(朽ちた鍵束・e01207)と華輪・灯(幻灯の鳥・e04881)の二人はブリックの作成に取り掛かっていた。
「私からはこれ! 自家製ポテサラに半熟卵入りですよ!」
「自家製……? そんな、遠いアフリカと寛ぎの自宅が融合を……!?」
 ということで交換会である。エルトベーレの差し出したそれに、灯は苦心の末に導き出したお返しを渡す。
「こちらはアレンジ系で! 刻み野菜に挽肉を入れてみました!」
 卵の焼き加減も丁度良いはず、ベーレをお手本に頑張ったのだと灯が胸を張るが。
「ひゃー! 油が跳ねたー!」
「きゃー! 何するんですか油さん!」
 一波乱あったものの、交換会は恙なく完了した。
「ところで灯ちゃん。これ……チョコとかバナナを包んでも美味しいのでは?」
「そんな、ベーレ……」
 僅かな沈黙。だが。
「最高です! アイスも入れましょう!!」
「えっ、アイスとか天才……? 作りましょう今すぐに!」
 こちらはまだまだ続くようだ。

 栄養補給を終えればいよいよ午後の部。さらなる戦いが、ケルベロス達を待っている。

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月12日
難度:易しい
参加:33人
結果:成功!
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