ケルベロス大運動会~わくわく色々アニマル運動会!

作者:林雪

●ケルベロス大運動会!
 戦いは、いつでも疲労を伴うもの。戦いに参加した者たちは勿論、巻き込まれ避難を余儀なくされた人々の心身にも、そして世界経済にも。
 その疲弊を拭い去るべく、今年もやってきた熱いイベント!
 第2回ケルベロス大運動会イン、ケニア!
 ケルベロスのハイパーな肉体だからこそクリア可能なハイパーエクストリームスポーツ・アトラクションに挑戦して、プロモーター達の度肝を抜き、人々を笑顔にしていこう! さあ各地を巡って、様々なアトラクションに挑戦しよう!

●前夜祭で動物たちとオモシロ競技を楽しもう!
「今年もきたねケルベロス大運動会! 絶対熱いし暑い戦いになると思うんだけど、ケニアって言ったらやっぱり動物王国! というわけで、前夜祭的な意味も兼ねて『アニマルVSケルベロス』競技を開催することになったよ!
 ヘリオライダー、安齋・光弦が浮かれ気分を抑えきれない様子で説明し始めた。
「ケニアの人達に君たちの超人的な身体能力を見て貰うのと、運動会の宣伝も兼ねて『サバンナの動物達が得意な事』で競争しようって趣旨なんだ。このイベントは大運動会の前日、8月11日に行われるんだけど、勿論こっちに参加してからでも本番参加出来るから安心してね」
 各会場までの交通機関は整備されているので、この競技に参加した上での本番運動会参加、には全く影響は無い。
「色んな動物たちと交流出来るし、現地の人たちとの距離もぐっと縮まるよ。動物さんとの対決! とはしてるけど、ぶっちゃけ勝ち負けは重要じゃないからさ。競技も、オモシロ競技をいっぱい用意したよ。他にも、君たちのアドリブでバンバン増やしちゃっていいってさ」
 光弦が競技の書かれた紙を配りながら笑う。かなり自由な競技、ということらしい。
「動物さんとの触れ合いとか、ケニアの人々との交流とか。ケニアそのものを楽しみたいって人はどんどん参加してね!」


■リプレイ

「晴れたねぇ。それに動物さんがこんなに沢山」
『ケルベロス』と描かれた看板を背負って歩くアンゴラウサギ。ケニアに生息していないはずのウサギの正体は、風音。
 ここはアニマルVSケルベロス競技会場。地元ケニアの人々も皆観戦を楽しみに続々と集まっていた。
 ライブハウス『KB』のメンバーが楽器を持ち込み、会場を盛り上げる。
 これまたロープを張っただけの簡素なステージでも、ヴィヴィアンが白い衣装に白いギターで立つと一気に華やぐ。緋雨は普段のハードな演奏を封印し、なんと地元の楽器アサラトをジャグラーの様に華麗に操り、ヴィンセントのギター音が歌を奏でる如く多彩な表情で響き渡る。
「さあ、鳥さん達、会場のみんなも私の歌を聴いて! ケルベロスインザサマー♪」
 水着にTシャツ姿のララが明るく呼びかけると一際大きな歓声があがる。合間でアネリーが鈴を鳴らす姿も微笑ましい。
「わ、わ、みんなすごいすごいの……!」
 皆の姿に瞳をキラキラと輝かせるフィロヴェールが自分もと口を開けば、奏でられるのは架空の国の物語のような歌。ソロ、メドレーと続く曲を、鞠緒は応援歌として盛り上げる。
 歌姫たちの艶やかな姿、珍しい動物たちの声、祭りは始まった。
「見てみてアレくん! 青い鳥が沢山!」
 ロゼが両手を広げると、浮かれた小鳥たちがロゼの手や肩、胸元に一斉に群がった。その姿を夢見心地に見つめるアレクセイ。
「正しく貴女こそ、僕の愛しい青い鳥……」
 だがアレクセイはロゼの清らかな胸元にとまる鳥に睨みを利かせるのも忘れない。どこに止まってんです焼き鳥に……という気配を察知したか、そっと飛び去る青い鳥。
「素晴らしい! 何と鋭い作曲センスだ流石アフリカの鳥! ハッハッハ、話がわかるじゃないか」
 鳥達の鳴き声に触発されたか、サンシャインは早速作曲を始めている。
「きれいな子達……色は違うけれど、同じ羽もつ仲間としてよろしくね」
 そう鳥達に微笑むゼルダの傍らでは、ゼーが鳥の文様の入った笛を取り出し、澄んだ音色を奏で始める。
「まあ、おじ様……!」
 ゼーの知らなかった一面に驚き瞳を輝かせつつ、音に乗せてそっと、小鳥のようにゼルダは歌い始めた。
 続いて曲を奏でるのは『黄昏星』の仲間達。曲目は今日の為に練習してきたケルベロスのための運動会テーマ。
「……多分音痴ではないと思うんだけど…ちょっと不安だな」
 ケニアの人々の前で、少しだけ不安げなベラドンナを、シルが明るく励ます。
「聞いてる人に楽しんで貰うには、まず私達が楽しむのが一番だよ!」
「そう! 私達ならきっと、鳥さんとだって仲良くなれる」
 ね? と姉のさくらが青いワンピース姿で微笑めば、ベラドンナの不安は消えていく。
「高音なら天井なしじゃて。鳥には負けぬ、ふっふっふ」
 春迦がそう呟き、解放感いっぱいの高音で爽やかな風を巻き起こせば、アリッサムは低音を生かしてハーモニーを。コーラスには影晴がチーム唯一の男性ボイスで彩を添える。高い音、低い音、ちょっと緊張した声、伸びやかな声。流華はこの中で歌える事が本当に嬉しくて。
「皆、素敵な歌声……ワタシも、もうちょっと頑張っちゃおう」
 一方草原をロープで区切った簡単な二面コート、サバンナモンキー達との玉入れに挑むのはムギと紺、そしてマサムネとシャルフィンの2チーム。
「よっしゃ全力でいくぞ紺、さあ俺達のコンビネーションを見せてやろうぜ!」
「はい、ムギさん。私、頑張ります!」
 集めた玉を持った紺をムギが投げ、籠より上に大ジャンプ!
 マサムネは正攻法、でも婚約者の手前負けられないと黙々と玉を投げる。
「あーっ! 君ら結構素早いね? あと、その……大事な部分がすごい色だ!」
「どこ見てんだマサムネ」
 その婚約者シャルフィンは必殺堂々とサボる、を決行しコート内で観戦を決め込んでいた。勝負の行方やいかに?
 ハシビロコウとのにらめっこ競技も人気種目。
「すまん、睨めっことかやったことがないのだが……どうすればいいのだ?」
 一羽のハシビロコウの前に真顔で歩み寄ったシヲンの一言に、ルアが驚く。
「えっ? にらめっこ知らないの? ん~と、面白い顔したりして相手を笑わせ……あ~うん、そんな感じで」
 超真顔のシヲンにGOを出し、応援に回るルア。
「ぽらりん、一緒に応援だ。シヲン頑張れ! 俺が付いてるぞシヲン! シヲ……シヲ、ン……」
 一方、ガルフと凪の相棒コンビは別のハシビロコウと。
「嘴、でけぇな……」
「おおお本物のハシビロコウさん……! かっこいい……よ、よろしく、お願いします」
 ペコッとお辞儀し、先手の凪の戦いの行方を見守るガルフ。そのガルフの手前、策はなくとも負けられないと気迫で挑む凪。
 かだんは先からずっとハシビロコウと見つめ合っている。面白い顔をする必要はない、見つめ合っていれば……と、徐々に胸に何かこみ上げるものがかだんを包む。
「この風格、この鋭い目……こいつ、出来る……まるで……強き、賢人の目を、して……」
 澪は真っ向から、正統派のにらめっこ。ずいと歩み寄り殺気を籠める。
(「でっかい鳥だなぁ……焼いたら……いやいや子供の前でそれはないか」)
 さてどのハシビロコウも動じない。勝負の行方は一体。
 原っぱには、沢山のトビウサギ達。ここはマシュマロランのスタート付近。
「よし、頑張るか! 負けないぞ団長!」
 パトリックが張り切って宣言すれば、シルクが微笑んで返す。
「ふふ、私だって」
「シルクもパトリックも参加するのかい? 頑張ってね! そうだ、シエラも出場させようか」
「お、そうだな。ならうちのティターニアも……オレよりも小回りが利くだろうし」
 ルカの提案にパトリックが応じてサーヴァントを呼び寄せる間、シルクは隣の、あざらしの着ぐるみ姿の蓮華に話しかけていた。
「その格好、走りづらくないですか?」
「うん、今回はあざらし代表として参加するよ!」
 かなり動きづらそうなあざらし着ぐるみは、周囲の子供達の人気の的。
 続いて『流星』のメンバー。
「実は走るの超苦手なんだ! 皆、わたしに期待しないでね!」
 キリッとした顔で琥珀が宣言すると、ユーデッカが力強く返す。
「琥珀のためになんとかしてみせよう」
 本当は立派な尻尾と翼が角が邪魔をして小回りは全然利かないが、皆で楽しく頑張ろうの気持ち。
「これは多くマシュマロを拾った方が勝ちなのか、早くゴールをした方が勝ちなのか、どうなのかしらね……?」
 真尋の疑問の答えが出るより先に、足自慢の楓が飛び出した!
「楓さん、いくっすよー!」
「わー楓さん速い! でもうさぎさんもめっちゃ速い!」
「マシュマロを多く獲るのな、了解」
 うさぎは任せた、と、市邨はマシュマロ回収に。不思議なチーム戦だがこれもあり。
 一方パン喰い競技が行なわれるのは、大きな一本木。
「タダでご飯が食べられるとはわたしに相応しい競技! どんなパンなんでしょう。え? マンダジ、って言うんですか? 美味しそう……!」
 茜が係から説明を受けて目を輝かせる。同じくパン喰い参加のひなみくと郁も頷いて聞く。その間にタラポアン達はさっさと木に登り始めていた。
「あっフライング……郁くんほらほらケニヤ風揚げパンだって! さあさあ!」
 茜が追って木に登り、ひとつ食べてはエアライドで素早く次の枝に飛び移れば、ひなみくは翼飛行で郁の元へパンを運ぶ。
「う、うんちょっと待ってひな、さすがにペースが早……」
「これくらいじゃないと1位取れないよ! 弱音は禁止なんだよ! オラオラ!!」
「……!」
 そして木の上で行なわれる競技がもうひとつ。
「私の名は鉄・千! お相手願いまする! 吾連、お相手は百戦錬磨の熟練夫婦である。心してかかろう!」
「うん、頑張ろうね千。俺も気合いは十分だよ」
 と飛翔Tシャツを見せつつ吾連も名乗り、ケープミミズクの夫婦とネズミ捕り勝負開始! 木の高いところに結わえたネズミの玩具を先に取れた方の勝ち!
 あちこちで繰り広げられる競技と同じく歌は盛り上がる。いつの間にか鳥達ともお客さんともすっかりセッション状態。
「一人より皆と一緒だとやはり……」
「私も……いつもより伸び伸びと声が出ているような気がします!」
 アリッサムと春迦が顔を見合わせて笑いあう。
「はーい、会場の皆も一緒に手拍子して!」
 さくらの声で手拍子が大きくなる。思わず涙ぐみそうになるのを堪えてベラドンナは今日一番の微笑を。
「鳥さんたちも、入って入って!」
 シルが呼びかけて大合唱は次の曲に。
「このまま『スカイクリーパー』いくよー!」
 ヴィヴィアンが大空に舞い上がるように手を伸ばしてそう叫び、ララが感極まって叫ぶ。
「私この曲大好き♪」
「どうしたァ! テメェらのサバンナ魂そんなモンじゃネェだろ!」
 ヴィンセントのギターが熱狂を煽れば会場はひとつになる。
 太陽があなたを照らして 大空に願いを響かせ。
 いつしか口ずさんでいた緋雨に、鞠緒が笑顔で手を伸ばす。繋いだ手は暖かく力強く、ふたりの気持ちを受けて歌声は更に空へと響いていく。
 あるふれっどが叩くタンバリンに合わせ皆を鼓舞する歌を歌い切ったゼルダが微笑み、これこそが見たかったのだとゼーも笑顔に。ふたりで見上げるのはどこまでも広い空。
「些細なことなど全て包み込んでくれるようじゃのぅ」
 そっと狼の姿になった影晴が、高く美しい遠吠えで歌声に彩りを添える。合わせて鞠緒も虹色の翼を広げ、高音のフェイクを織り交ぜた。
 流れに身を投じるようにロゼも皆のコーラスに加わる。その様子を堪らなく愛しく思いながらも、独占欲に勝てずロゼを抱きしめるアレクセイ。この心に届くのは貴女の歌だけ、と。
 ケニアの空の下、歌はひとつになる。
 皆の声に感銘を受け、この感動を楽譜に残そうとしていたサンシャイン……だったが。
「ピピピ、チチチ…だと!? そこはピピチ、チチチだと言っているだろう! 音楽性の違いだ、解散させてもらう!」
 青い鳥とのユニット『太陽とブルーバーズ』歌詞の解釈違いであえなく解散に至るの巻。
 さて、気になる競技結果は?
「おいルア、寝るな。あとポラリス頭から降りろ、重い……」
「……あれ? 勝負どうなった?」
 いつの間にか応援疲れで寝ていたルアにそう聞かれ、はたとハシビロコウを見るシヲン。
「ぐぬぬ……もう一回だ!」
 どのチームも中々、ハシビロコウが爆笑はしない様子。
「知ってはいたけど負けずぎらいもここまでくると大変だな。大丈夫か?」
 ハシビロコウを睨みすぎて熱中症で倒れた凪は、ガルフの膝で目を覚ます。
「……なんか、敢闘賞貰った気分」
「え? と、とにかく水貰ってきたから、さあ……」
 二人の様子を見守るハシビロコウの目は、ちょっとだけ優しかった。
 かだんは、ハシビロコウとひしっと抱き合い……というかしっかりとハグしていた。
「お前……わたしが……こわくないんだな……」
 勝敗なんて関係ない。ケニアの空の下、無表情同士の新たな友情は確実に芽生えたのである!
「……勝てるかぁぁぁぁぁ!」
 遂に澪が吼えたので、とりあえず勝負あった? でもすぐに明るく爽やかに笑いかけ、微動だにしないハシビロコウの羽根をそっと撫でて健闘を称える澪だった。
「さすが、あたしのライバルだね!」
 どうやら勝負に関係なく、皆それぞれのハシビロコウと絆を結んだようだ。
 そして玉入れ場では。
 高ーく、飛び上がって玉を全部籠に入れた紺、落下したのはムギの腕の中。
「よいしょっと……お帰り紺、ナイスシュートだったぜ!」
「ありがとうございますムギさん……その、ただいま、戻りました」
 湧き上がるサバンナモンキー達の温かい拍手。
 もう一面では、マサムネがふと気づく。
「うん? シャルフィンサボってる?」
「サボってない、サボってないぞ」
 バレた、と漸く立ち上がったシャルフィンがヘロヘロの投擲を見せる。うんそんなところが好きだ! と延長戦の構えのマサムネ。
 茜は木の上で、両手にマンダジを持ってご満悦。
「百個目! 目標達成ふっふっふ。そろそろ肉が丸ごと入ったパンとか出てくると嬉しいんですがねー?」
 一方ひなみくのサポートを得た郁は満腹オブ満腹。
「……ごめん…タカラバコ……」
 いつの間にか、郁を手伝っていたはずのひなみくをタラポアンたちが手伝って、パンを手渡していた。楽しげなひなみくの様子に微笑む郁。ただしタカラバコからはパンが溢れかえっていた。
 勝敗は曖昧でも、皆大切な人と過ごす楽しい時間。
「吾連ー、たすけ、てって……アレ?」
「千、どうやらこれは……」
 お互いの顔がちゃんと見える。それもそのはず、吾連と千は仲良く木に突っ込み、二人して逆さづり状態になっていたのだ! 可笑しくてそのまま笑い転げる千の手元にミミズクからオモチャネズミのプレゼントがポトリ。
 パニックだったのはマシュマロラン。トビウサギの速さに皆振り回された様子。
「……きゃあ!?」
「団長! 大丈夫か……うぉ!」
 シルクに続いてパトリックも転倒、マイペースなシエラがキュルキュルと鳴き、ティターニアと仲良く二人を追い越していった。
「ふふ、あとでヒールが必要かな……」
 ルカはゴールで待ち構えながら、競技場を見渡す。ここにいる動物達の為にも、地球をしっかり守ろうと改めて誓う。ゴール後には花園みんなで記念撮影。泥だらけでも、笑顔の思い出となった。
 さて流星チームは。
「いったーい、噛まれたああ!」
 説明しよう、トビウサギの速さに焦った琥珀が人参による誘き寄せ作戦を決行、ポールにぶつかりつつゴールを目指す優勝候補楓、琥珀が噛まれたショックでユーデッカは。
「琥珀、その犠牲は忘れぬ! 皆行くぞ! マシュマロは持ったかー!」
「応!」
「私は置いてきた!」
「何故?!」
「おい、おい」
 結果トビウサギはその場でもぐもぐして走るのを止めてしまった為、真尋と市邨は山盛りマシュマロを集める事に成功! 市邨が火を起こし、拾ってきた枝の先にマシュマロを付けて焼く……アウトドアならではの楽しみに、メンバーはご満悦。レースが終わればのんびりなウサギ達を愛でつつ、おやつタイム。
「みんなもおいでー、アザラシ印のマシュマロ、一緒に食べよう!」
 蓮華の呼びかけに、動物を連れたケニアの子供たちが集まってくる。遠慮なくもふもふされても、何だかすごく楽しそうな蓮華である。
「いい陽射しに、いい歌……最高の昼寝日和だよ」
 背中にハイラックスの子供を乗せたまま、風音はウトウト舟を漕ぐ。
「みんなも、鳥さんたちも、すごく、綺麗な、唄、だったよ」
 流華がそう告げ、その後は皆それぞれ動物と遊んだり、競技にチャレンジしたり。
 国を越え、歌を通じて人々と繋がり、動物達とも絆を結んだ運動会。
 青い空の下、楽しい時間が穏やかに過ぎていったのだった。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月12日
難度:易しい
参加:43人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 11
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