わかいおんなのことはそれほど

作者:刑部

「ふふふ……」
 酸いも甘いも経験し尽くした。そんな表現がぴったり来る様な熟れ熟れ豊満の熟女。
 10人が居れば8人はその評価に納得するであろう熟女系バナナイーターが、ジョギング中の老人に蠱惑的な笑みを向け、上に向けた掌の指を1つずつ折って誘う。
「ふ、ふおおおおおぉおおおお……」
 老人は警戒もせず、目に前に突如降って沸いたラッキーチャンス! とばかりにふらふらとバナナイーターに近付くと、3分ほどのいい思いと引き換えに、色んなものを吸い取られて絶命してしまったのだった。

「爆殖核爆砕戦後、大阪城に残った攻性植物の調査を行っていた悠乃達から、新たな情報が得られました」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)が、彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)達の地道な調査によって、攻性植物に動きがあった事を告げる。
「報告によると大阪城付近の雑木林などで、男性を魅了するたわわに実った果実を持つ攻性植物『バナナイーター』が現れている様なのです。
 バナナイーターは、15歳以上の男性が近寄ると現れて、その果実の魅力で魅了し、いろいろ絞りつくして殺害する事で、グラビティ・チェインを奪うとの事……怖いですね」
 イマジネイターは事件の概要を伝えて微かに震えると、
「攻性植物は、こうして奪ったグラビティ・チェインを使って、新たな作戦を行うつもりなのかもしれません。皆さんには、このバナナイーターを撃破して、誘惑されてしまう犠牲者を救ってもらえるようにお願いします」
 と軽く頭を下げる。

「今回はジョギング中の老人が熟女系バナナイーターに襲われるのですが、この方がバナナイーターに出会う場所に先回りする事が出来ます。
 バナナイーターを出現させる為には、そのままこの老人を誘惑させるか、或いは、この老人を避難させた上で、赴く皆さんケルベロスの内、15歳以上の男性が囮となる必要があるでしょう。
 そしてバナナイーターは、攻性植物の拠点となっている大阪城から地下茎を通じて送られているようで、囮となった人数に応じて数が増えるみたいです。
 1体目のバナナイーター以外は、戦闘力が低い様なので、なるべく誘き出して一気に叩く事も可能ですね」
 と、イマジネイターが戦術について説明し、
「注意すべき点は、バナナイーターが出現してから3分以内に攻撃を仕掛けると、出現した地下茎を通ってすぐに撤退してしまう事です。
 つまり、囮となった者は3分程度、バナナイーターと戦闘せずに接触する必要があるのです。
 幸い、バナナイーターもその3分間は攻撃などはせず、対象の男性を誘惑する行動を行う為、囮が一般人であってもすぐに死んでしまうという事はありません」
 と、最大の注意事項を説明し、
「バナナイーターは、ケルベロスであっても男性であれば獲物として区別しない様で、その誘惑は皆さんケルベロスには効果はありませんが、囮となる場合は、誘惑されているような振りをする事も必要かもしれません」
 とあくまで真面目に淡々と説明を続けるイマジネイター。

「バナナイーターは果実を投げたり、抱き付く様にしてグラビティ・チェインを絞り取る攻撃をして来る様です。また果実を食べて回復する事も出来るみたいですね。戦闘になれば一気呵成に行けると思いますので、3分の間、逃がさない様にする事の方が大事だと思います。……宜しくお願いしますね」
「熟女系とは……色々嗜好に合わせて来てくれるじゃん。面白い」
 話を聞いたエロ狸、分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036) が垂れた目を細める。

「あ、囮対象になる男性が多く行った方が、多く倒せますので、その辺りもご配慮頂ければと思います。宜しくお願いします」
 楽雲の笑みに微笑で返したイマジネイターは、そう締めくくって皆を送り出したのだった。


参加者
難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032)
分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036)
リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)
笠屋・狂子郎(ライナーアップ・e14241)
エルトナ・シュピルーイン(スタンドアロン・e15368)
天照・葵依(蒼天の剣・e15383)
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)
三矢・彰彦(オラトリオの鎧装騎兵・e34073)

■リプレイ


「バナナイーターにも色んなタイプ居るんだな……熟女系とかマニアックな……!」
「他のデウスエクスを誘惑対象にしたバナナイーターも居るのかな?」
 出現地点に向っていく囮達の背を見送り、難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032)が嘆息すると、時々蓋を開け閉めしながら顔を覗かせるミミックを抱えたリュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)が、小首を傾げる。
「テープをくまなく張って来た。これで一般人が紛れ込む心配はないだろう。さぁ、一体どんな魅力を持っているのか! しかとこの目に焼き付けさせてもらうぞ!」
 周囲にキープアウトテープを張り巡らせ、その長い体をくねらせて宙を泳ぐボクスドラゴン『月詠』と共に、戻って来た天照・葵依(蒼天の剣・e15383)が、囮達の方を向いてカッと目を見開くと、
「件の老人にも会えたよ。ジョギングコースも変えてもらったし大丈夫だろう」
 ポケットに両手を突っ込んだまま、アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)も足早に戻ってくると、嬉々として向かって行く囮達の背に、ボクスドラゴンの『コキュートス』と一緒にゴミを見下ろす視線を向ける。

 その彼女達に見送られる形で、対象ポイントに歩を進める囮は4名。
「熟女と言ってもオレにとっては年相応だし、やっぱほら、娘たちより下になるとちょっとアレだよね?」
 嫌そうな顔をしたウイングキャットの『いわし』を女性陣の元に残した、三矢・彰彦(オラトリオの鎧装騎兵・e34073)が飄々とした調子で口を開くと、
「オレは見た目から年齢確認必須だからね。年相応、性別相応に扱ってくれるならうれしいねー」
 と、同じくテレビウム『ブラウン艦長』を女性陣の元に残し、ドワーフである事による背の低さと、性別不明な容姿をしたエルトナ・シュピルーイン(スタンドアロン・e15368)が肩を竦めて応じ、
「そうそう、そういうの嬉しいよな」
 と、宿敵に付け髭を奪われ、女装の呪いを掛けられたおっさん女装ショタドワーフらしい笠屋・狂子郎(ライナーアップ・e14241)も、女性にしか見えない顔でうんうんと頷いている。
「では、力無き者の未来の為、不本意ではあるが、喜んでこの身を囮として差し出しましょう!」
 囮陣の中では最年少となる分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036)の声に、小さく応と3人が応じた時、その前方の土が盛り上がり、
 熟れ熟れ豊満の熟女タイプの『木蓮』と、派手な化粧で、地方のスナックのママ『露草』、2体のバナナイーターが現れ、妖艶な笑みを浮かべて4人を手招きする。
「いやあこれは熟れきってますなー、落果する前に収穫しないといけないよね。これは! ね!」
 彰彦の口角が上がり、少しも逡巡や疑いを見せず自分達を男と認識して手招きする様に嬉しそうに笑顔で見合った狂子郎とエルトナもその歩を早める。
「おねーさーん!」
 その3人より速く、引き絞られた弓から放たれた矢の如く、楽雲が指をわきわきさせながら木蓮へと跳び付いた。


「くっくっく、合法的に揉めるチャンスだ、うっひゃほーいうぇーい!」
「どうやったらいいのかな? 色々教えて欲しいな?」
 楽雲を傍目に、テンション高く露草に踊り掛った狂子郎の後ろで、近づいたエルトナは、伏し目がちな視線を動かし、上目づかいで露草を見つめて小首を傾げる。
「うふふ、かわいいボウヤね」
 自分のおっぱいをまさぐる狂子郎を一瞥した露草が、エルトナに視線を向けて微笑み掛ける。
(「くっ、あざとい、あざといぜ。長期的展望ならそれが正解だ……だが、今は短期決戦。ここは巧遅より拙速で正解だぜ」)
 ちらりとエルトナを振り返った狂子郎は、心の中でそう評すると、
「右の乳にぶたれたら左の乳にもぶたれろ、むしろ挟め!」
 レッツパーリィ! とばかりに露草のおっぱいを堪能している。
「ふふふ、おいでボウヤ」
 と手招きする様に、露草の心(?)を捉えたのはエルトナの方だったのだが、両おっぱいの占拠に成功しているのは狂子郎の方だった。
「おねーさんが色々教えて、あ、げ、る♪」
 手招きに従っておずおずと近づいたエルトナを、体をよじって狂子郎の体をズラして抱き寄せる露草。その体をエルトナと狂子郎にまさぐられながら、笑顔を浮かべる露草。
 だが、二人の身長と風貌も相まって、傍から見るには母親が甘えている子供達をあやしている様にすら見えるという、奇妙なやり取りが続いていた。

「どんな魅力を見せてくれるのかと思いきやだたの露出狂じゃないかァ! できるかそんな恰好ッ!」
 葵依はバナナイーターから人を魅了できる術を学ぼうとしていた様なのだが、全てを曝け出して男の本能に訴えるだけというその手法に、失望と憤りを感じていた。
「どいつもこいつも熟女がいいのか! ケッ!」
 その隣で、手持ちのバナナを噛みちぎる様にして頬張ったナナコが、ちらりと自分の体型とバナナイーターの体型を見比べ悪態をつくと、
「どうどう。まだ2分も経ってませんよ。もう少し辛抱ですわ」
 腕時計を見て経過時間を確認したリュセフィーが、ナナコを宥める。
「……ねえ、この場でこの男たちごとまとめて倒したほうが世の中の為によくない?」
 囮達の精一杯の演技という建前の痴態を、眼鏡越しに冷ややかに……道端に落ちていた汚い物を見る様な瞳で見つめていたアビスが、真顔のまま言い放つ。確かにその意見は判らなくも無いのだが、建前がある以上独断で事を進めるのが難しいのもまた事実である。
 預けられた形になっているサーヴァントのいわしとブラウン艦長は、その発言と痴態を繰り広げる主を交互に見遣って溜息をつくのだった。

「包容力とか懐の深さ的なのはおっぱいの大きさに比例すると思う」
「至言だ。だが如何なる言葉より、この柔らかさが全てだ」
 木蓮の右のおっぱいに頬擦りしながら楽雲が言うと、左のおっぱいに頬擦りする彰彦が応じる。木蓮はその二人の肩に腕を回して優しく微笑んでいた。
「いやあこれは仕方ないのよ。不可抗力なのよ自己犠牲なのよ? だって人助けなんだもの……ケルベロスたるもの、体を張って一般の方々を守るのが義務なんだもの」
 と小声で自己弁護する彰彦がおっぱいもみもみすると、
「やはりムチムチ豊満はイイ、胸も尻も大好きだ。女性の魅力は30を過ぎてからだよな」
 と応じる楽雲も逆側のおっぱいをもみもみ。
 女性陣が身を潜めている辺りから、何か突き刺さる様な視線を感じるが、
「つまりこれは浮気じゃなくてお仕事なので問題ないのよ。今日もお父さんは頑張っています娘たちよ」
 天を見上げて娘たちに言い訳を尽くした彰彦が木蓮の後ろに回り、
「そーれ、おしくらまんじゅうだ。……大人のな……」
 薄ら笑いを浮かべた楽雲は、その彰彦と木蓮を挟み込む形で体を密着させ始めた。
 それは『嬲』という漢字をそのまま具現化させたかの様な光景。……それは、彰彦の娘たちが見ていたら、おそらくもう一生口をきいてはくれないであろう光景であり、それを見ていたアビスの視線が、ゴミを見る目から汚物を見る目へと変わっていくのだった。


「3、2、1、3分経過。行きますよ」
 時計を確認しカウントダウンしたリュセフィーが飛び出すと、ミミックも偽物の財宝をばら撒きながら追従し、
「あまり得るものは無かった様ね。なら後は粛々と片付けるまで……」
 葵依が紙兵を散布してその陣に厚みを持たせる。
「何? もう3分たっただと? く、短すぎる、だが、最後にこのケルベロスチェインで緊縛プレイをだな……あっ!」
 駆けて来る女性陣&サーヴァント達を見た狂子郎は、露草を捕縛しようとケルベロスチェインを展開させるが、それより早く露草の伸ばした手足に絡め取られた。
「おぉ、積極的だね、おねーさん。この包み込むような柔らかさは若い子には出せねぇってもんよ、なぁ? ま、俺の方が美脚だが、うぐっ!」
 余裕を見せて語る狂子郎の口が塞がれ、露草に何かを吸い取られる。
「すごいすごい」
 エルトナは、狂子郎の背に伸ばした足を絡めて何かを吸い取る露草の姿に目を見開くと、とりあえず何枚が写真を撮ってから、駆けつけたブラウン艦長に回復を指示しつつ助けに入る。
「その手を離しなさい」
 リュセフィーの投じた殺神ウイルスのカプセルが爆ぜ、その中身に晒された露草が、掛った部分を掻き毟る様にして狂子郎を離すと、すかさず距離を詰めた葵依が、
「おい、そういう格好をする以外に何かないか!? 人を魅了できるような仕草とか話し方とか、そういったのを教えてくれ!」
 と露草の襟首を掴むと、ガックンガックン揺らしながら問い掛けた。
「ちょ……ま……喋れ……ガフッ……」
 何か言おうとした露草は舌を噛んだらしく、口元から緑の液体がこぼれ、月詠はもうやめてー、露草のHPはもう0よー! と言わんばかりに葵依を引き離そうとしていた。
「ふう、酷い目に会った」
「え? いい目だよね?」
 回復した狂子郎のボヤきに、笑顔を向けて応じるエルトナ。
 その言葉に狂子郎は腕を組むと首を傾げて考え始める。
「こちらの方が弱いのでしたわね。葵依、畳み掛けましょう」
 全体的に受けたダメージがさほどではないと判断したリュセフィーは、小さな翼を羽ばたかせ、回復を捨て攻勢に出る。
「だから、男性しかダメなのか!? 老若男女問わず魅了できるようなアドバイスを1つ! な、冥途の土産として頼む!」
 その葵依は相変わらず露草の体をカックンカックン揺らしており、その様子にらちが開かないと判断したブラウン艦長が、露草の頭に凶器を振り下ろすと、露草はその活動を終えたのだった。

 一方木蓮の方には、
「くそぉ、熟れた身体を自慢しやがって、イヤミかおのれらァ!」
 八つ当たり気味に奮い立ったナナコが勇躍し、激しく斬り結んでいた。
「いやー堪能しましたな」
「またくですな」
 その後ろで楽雲と彰彦が、一仕事やり終えた感じで汗を拭い握手を交わしていると、
「草の塊の攻性植物に興奮するとか頭おかしいでしょ……」
 アビスが空前絶後で超絶怒涛の蔑み視線を向けてそう呟き、ナナコを援護して木蓮へと躍り掛かる。
「これでも、くらえっ!」
 その隙に跳び退さったナナコが、サイコフォースで木蓮の体を爆発させるが、何かで威力が相殺されたのか、その大きなおっぱいがばいんばいんと揺れただけであった。
「……チキショォォォォ! 絶対ブチのめすッ!」
 ピクピクとこめかみをひくつかせたナナコが、ドス黒いオーラに包まれて地面を蹴った。
「いやよいやよも好きのうち~はうっ!」
「あっ柔らかーいWHoooooooooooooo! ってうおっ!」
 お触りタイム延長戦の如く、ゆるいボディタッチ攻撃をしていた楽雲と彰彦がそのナナコに跳ね飛ばされ、いわしが慌てて彰彦を追う中、
「ひっ!」
「逃がさないよ」
 ナナコの放つ余りもの殺気にたじろぎ、地下茎を使って逃げようとする木蓮の足元から、アビスが氷縛結界・鎖牢封印によって生み出した氷の鎖が現れてその身を絡めると、間髪入れずコキュートスが吐き付けた極氷のブレスが、その氷を更に強固なものとし木蓮を縛る。
「これぞ悪を断つ一撃ッ! 芭ッ・即ッ・斬ッ!」
 新鮮なバナナのオーラを纏ったナナコの一撃。バナナイーターはその名の通り、バナナを喰らって崩れ落ち、ここにバナナイーター達は討伐されたのである。
 帰りのヘリオンの内部は、一部囮として奮戦した者達によると、針のむしろの様だったと述懐する様な空気であったとの事である。

作者:刑部 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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