●憧れの仮装
「はぁ……」
青年は壁に掛けられたタキシードとシルクハットを眺めながら、憂いを帯びた溜め息を吐き出した。
付けっ放しのテレビからは、デパートのハロウィンイベントや人気レストランのハロウィン限定メニュー、地域で行われるハロウィンパレードの特集などが行われ、楽しそうな雰囲気を、魔女の帽子をかぶった女性レポーターが伝えている。
「僕もハロウィンパーティーに行きたいな……」
青年は小道具に用意したオモチャの牙と、赤く塗られたプラスチックのワイングラスを手にして項垂れていた。
彼はどちらかと言えば内気な方で、何人かの友人も同じような、学校のクラスでも大人しい奴と分類されるような者ばかりだった。中にはパーティーに誘われている者も居たが、それは青年とは面識のないグループのパーティーだ。友人はとても『新しい友達を連れてきた!』と紹介できるタイプではないし、彼自身も知らない者たちの中にひとりで飛び込んでいけるほど、社交的な性格をしていない。
その結果、どこにも参加する予定がないのである。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか」
不意に聴こえたその声に、青年は顔を上げて絶句した。
赤い頭巾をかぶった少女が、いつの間にか目の前に立っていたのである。
「――その夢、かなえてあげましょう」
赤い頭巾の少女はそう言って、驚き立ち尽くす青年の胸に、手にした鍵を突き立てた。
鍵は青年の心臓を正確に穿つが、血は一滴も流れ出ず、傷口もない様子である。
青年は知る由も無いが……それはドリームイーターが、人間の夢を得るためにする行為だった。
「世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を、埋めるのです……」
少女が呟くと同時に、青年の体からモザイクが噴き出し……ばさりと漆黒のタキシードを纏った姿に変じてゆく。
「うっ……」
青年は意識を失って崩れ落ちるが、替わってモザイクがシルクハットを、手袋を、オモチャの牙とワイングラスを生み出してゆく。それは青年が夢見ていた、吸血鬼の仮装だった。
ただひとつ憧れと違ったのは、その衣装を着ているのは彼ではなく、モザイクで形作られたドリームイーターだということだろう。
そして吸血鬼の仮装をしたドリームイーターは、倒れた青年には構わずに、その場から姿を消してしまうのだった。
●ハロウィンドリームイーター
「日本各地でドリームイーターが暗躍しているという情報が入りました」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はそう言って、事件の内容を説明し始めた。
「これは藤咲・うるる(サニーガール・e00086)さんが調査してくれたのですが……。ハロウィンのお祭りに対して憧れや劣等感を持っていた人から発生したドリームイーターが、ハロウィンパーティーの当日に、一斉に動き出すようなんです」
これは放置してはおけないと、ケルベロスたちも真剣な表情で頷く。
「ハロウィンドリームイーターが現れるのは、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場……つまり、鎌倉で実施される『ケルベロスハロウィン』の会場です。皆さんには、実際のパーティーが開始する直前までに、ハロウィンドリームイーターの撃破をお願いします」
セリカはそう言ってから、敵の特徴についての説明を始めた。
「ハロウィンドリームイーターは、ハロウィンパーティーが始まると同時に現れます。それを逆手に取り、実際のパーティーが始まるより早く、『ハロウィンパーティーが始まったように見せかける』ことが出来れば、ドリームイーターを誘き出すことができるでしょう」
本物のパーティーのように、大人数で楽しそうに振る舞えば良いと思います。と、セリカは付け加える。
「……幸いにも、鎌倉市のとある公民館をお借りすることができました。こちらから指定した日時に、周辺の避難を済ませた状態にして下さるそうなので、そこでパーティーのふりをすればいいと思います。パーティーと言えば、仮装してゲームをしたり、お料理やお菓子を持ち込んだり、飾りつけをしたり……その振る舞いでハロウィンらしさが出れば、より良いでしょうね」
セリカの言葉に、ケルベロスたちはハロウィンらしい料理や遊び等を、各々思い浮かべる。
「ハロウィンドリームイーターはいわゆる吸血鬼の仮装をしていて、シルクハットにタキシード、手にはワイングラスと、ドリームイーターの鍵を持っています、ただ、それを着ているのはモザイク……という姿ですね。戦闘では鍵で相手を抉ったり、モザイクを牙にして噛みついたりしてくるようです。あと、ワイングラスにモザイクを満たして飲み干し、傷を癒す能力もありますね」
セリカはそこまで説明すると、一瞬だけ息を吐いて言葉を切った。
「人々の不安を払い、戦いの傷跡を残す鎌倉を一気に復興させるための『ケルベロスハロウィン』を楽しむためにも、無粋なドリームイーターの討伐をお願いします。それと……公民館は付近の町内会の皆さんがハロウィンパーティーで使用するそうなので、戦闘後はお礼を兼ねてヒールしたり、飾りつけをしてあげてもいいかもしれませんね」
セリカはそう言ってケルベロスたちを激励し、話を終えるのだった。
参加者 | |
---|---|
ルネシュテリ・メネルランテネ(月歌・e00721) |
篁・メノウ(浄風の巫女修行中・e00903) |
セシル・ソルシオン(修羅秘めし陽光の剣士・e01673) |
大御堂・千鶴(幻想胡蝶・e02496) |
武田・由美(風の拳客・e02934) |
ララミー・フェイ(ダンシングウォーター・e03877) |
板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179) |
レンカ・ブライトナー(アインザームカイトハーゼ・e09465) |
「さて……急がねば」
板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)が、手にした懐中時計をチラチラ気にしている感じにしながら、少しだけ首を傾げている。
「……それっぽいかしら? 他にどんな小道具が必要だったかしら?」
えにかは言いながら、ウェアライダーの耳と尻尾を隠して、代わりにウサギ耳の飾りを付けていた。
「仮装もして、お菓子も並べて、楽しいパーティーをはじめましょう」
ララミー・フェイ(ダンシングウォーター・e03877)は赤黒のドレスでハートの女王風の仮装をしている。
プリンセスモードでその煌びやかさも一段と際立っていた。
「ララミーもハートの女王かなァ? キャハ、双子みたいでイイネェ!」
大御堂・千鶴(幻想胡蝶・e02496)はそう言って、ララミーの隣に並んでひらひらと手を振る。
ララミーが赤と黒を基調としたシックなプリンセスなら、千鶴は白地に幾つもの大きなハートをあしらった、ポップなデザインだ。黒の手袋と靴がアクセントになり、全体を引き締めている。
「……ドリームイーターが来るまでですけど」
ララミーは静かに息を吐き、公民館をハロウィン風に飾り付け始めた。
「仮装して飾り付けしてパーティーだ!」
そこにレンカ・ブライトナー(アインザームカイトハーゼ・e09465)が、ステッカーなどの飾りを手にやってくる。
「やっぱりオレってば何着ても似合うな」
レンカは軽くスカートを翻し、満足げに微笑む。その服装は青と白を使ったエプロンドレスで、頭にはリボンのついた黒いカチューシャが乗せられていた。
「ハロウィンには、これがなくっちゃね」
篁・メノウ(浄風の巫女修行中・e00903)は大きなカボチャをくり抜いて作ったジャック・オー・ランタンなどを飾ってから、持参したクッキーをテーブルへと広げ始める。
メノウは紫色の猫耳パーカーに手袋、尻尾付きズボンでチェシャ猫の仮装だ。
「よし、お菓子の盛り付け、準備完了!」
セシル・ソルシオン(修羅秘めし陽光の剣士・e01673)もテーブルにカボチャのプリンにエッグタルト、アップルパイにサツマイモパイ、パンプキンパイの三種隠しパイを並べていた。
「セシルのお菓子チョーオイシソー! ボクってば食べる専門だからさァ、遠慮なく、いっただっきまァす!」
千鶴がそのお菓子の見事な出来栄えに、すぐさま飛び付いた。
「やっぱパーティーにはとびっきりの菓子がねーとな! Lecker!」
レンカも、見た目にも口にも嬉しいお菓子たちを前にして、目を輝かせている。
セシルは軽く口元に笑みだけ浮かべて、大きなシルクハットを手にして一礼した。
仰々しい蝶ネクタイにタキシード、杖と合わせて帽子屋の仮装だ。
「敵がくるまではお菓子作りですな!」
えにかもクッキーを次々焼いては配ってゆく。でかい南瓜プリン、通称デカプリンを、冷蔵庫にしまって冷やしておくことも忘れない。
「自家製南瓜を使って、それらしくタルトも作ってきました。……独り占めしたら裁判にかけますよ」
ララミーはカボチャのタルトを並べてから、ちらりと横で手を伸ばしていた人影に向けて呟いた。
「なーに言ってるのララミーちゃん。ほら、衣装も合わせだよーアリスも観たよねー」
ルネシュテリ・メネルランテネ(月歌・e00721)は伸ばしていた手を引っ込めて、白と黒を大胆に合わせた騎士服を軽く引っ張り、ハートのジャックの仮装だよーと言い放つ。
じゃらじゃらと無数の鎖が揺れて、自己を主張する鳴き声のように細かく鳴った。
「ねーちゃんに作ってもらってー……ああコレ、持ってきたお菓子ねー」
全部買ったやつだけどーと言いながら、ルネシュテリもお菓子を広げていった。それで注意を引きながら、ルネシュテリは素早くタルトの方へと回り込む。
「食べかす? いやいや気のせいっすー」
ルネシュテリは視線を逸らしながら口をもぐもぐさせて何かを呑み込んでいた。ララミーはそれをジト目で見つめ……。
「……有罪ですね」
ララミーはルネシュテリを見据え、静かに冷たく言い放つ。
「にゃはは、パーティーパーティー」
武田・由美(風の拳客・e02934)はそんな中、キョンシーの仮装をして作ってきたクッキーを並べていった。
「こんな格好でお茶会ってオッシャレー! 腹が減っては戦は出来ぬって言うしネェ」
千鶴が笑いながら、おもむろにパイの一つを手に取る。
「パーティーだからさァ……パイ投げいっきまァーす!」
千鶴が思い切り投げたそのパイが、吸血鬼仮装の参加者に命中した!
「トリックオアトリート! 愉快なパーティにようこそ!」
同時にえにかが、クラッカーを打ち鳴らした。それからケルベロスコートをばさりと脱ぎ捨て、吸血鬼から大きく間合いを取る。
「ケルベロスハロウィンを台無しにされるわけにはいきません。……ていうか寂しいなら来ればいいのに」
ララミーは二刀のゾディアックソードを抜き放ち、吸血鬼の姿を改めて見据えた。
黒のタキシードにシルクハット、しかしその顔は紛れもなく、ドリームイーターのモザイクで隠されている。
「ドリームイータ―とやるのは初めてだなぁ。ま、ちゃっちゃと倒してパーティを楽しみましょうー」
由美がキョンシーの服を脱ぎ捨てて、そのままダッシュで吸血鬼に詰め寄っていた。
「はーい。待ってましたー。早くパーティ楽しみたいからちゃっちゃと倒されてね」
陽気に語りかけながら、由美は引いた手甲『天衝輪廻』の中で拳を握り締める。
「さて、この一撃に耐えられる?」
呼吸をするように左右の肩口に拳を突き立て、由美は素早く間合いを取り直した。
「あはは。どうしたの、その程度? もっと楽しもうよ」
まるでそれが当り前であるかのように、余裕の笑みで由美は呟く。
「ハロウィンは日本ではそれほど特別なイベントでもないし、堂々と参加すればいいのにねー」
メノウはパーカーを脱ぎ捨てて、日本刀を手に吸血鬼に向かう。
「さ、がんばってこー!」
マントを揺らしながら走るその姿を牽制しつつ、弧を描くように近づいて刃を振るった。
吸血鬼は胸部を浅く掠められて、僅かではあるが後退る。
「Kette!」
その一瞬にレンカから、黒き鎖が解き放たれた。それは一瞬で床に守護の陣を敷き、仲間に星の加護を与えてゆく。
「耳と尻尾が出せないとは……解せぬ」
えにかは口の中だけで小さく呟きながら、公民館の出入り口付近に陣取っていた。
そこで素早くガトリングガンを構え、一連射。相手の手にした巨大な鍵を、がきんと撃つ。
「そんじゃーイイ音出しちゃってよねー!」
ルネシュテリがバイオレンスギターを掻き鳴らす……と思いきや、ネックを掴んで思い切り振り上げている。
ばごん!
物理的音楽にモザイク状の頬を殴られ、吸血鬼が堪らず吹っ飛んで倒れた。
「稲妻となり、轟き奔れ」
ララミーの体から解き放たれた御業が稲妻に変化し、青白く迸る。それは次第にララミーが手にした二刀の刃に収束し、パチパチと鋭い音を響かせ始めた。
首から下げた銀のアミュレットが輝き、破邪の力を刻み付けるように、思い切り一撃を打ち下ろす!
どんっ!
落雷の如き衝撃に、後退る吸血鬼。
「ハロウィーン、ハロウィーン! ドリームイーターもイベント楽しみに来たのかなァ?」
千鶴がその姿を細めた目で捕らえ、黒い手袋を嵌めた左手を突き出していた。
「でもキミたちはお呼びじゃないんだよネェ、キャハハ! 徹底的にぶちのめすよゥ」
千鶴の微笑みと共に放たれたのは、ドラゴンの幻影。紡がれる竜語から現れた殺意ある影が、夢の力を帯びた吸血鬼を燃やしてゆく。
「……おー来た来た。よっしゃ戦闘開始!」
セシルが杖を投げ捨てて、剣を手に駆け出した。
「あとはとにかくぶちのめせばいいんだろ? 楽勝楽勝!」
余裕で踏み込むセシルから逃れるように下がる吸血鬼だが、セシルは更に踏み込んで逃さない。
「楽しいイベントを邪魔しようなんて無粋な輩は、みじん切りにしてやらねぇとな! はっはっはっ!」
セシルは剣に霊力を纏わせ、至極楽しそうに振り降ろす。ざくざくと斬撃が吸血鬼を攻め立てるが……。
どんっ。
相手の手にした鍵がセシルの胸を突き、その肉体を裂いていた。
「……高くつくぜ?」
セシルは痛みの中で吐き捨てて、修羅の激情にその身を投げ入れる。それを象徴するように、瞳と剣が真紅に輝いた。
「陽は陰り、蝕となる――報いを受けてもらおうか。紅の洗礼を受けるがいい!」
執拗に繰り出されるセシルの斬撃から、吸血鬼は巨大な鍵を立てて何とか受けつつ下がってゆく。
「一撃粉砕! 鉄拳制裁!」
そこに由美も駆けつけ、ジェット噴射の剛拳を繰り出した!
だが吸血鬼がドンピシャのタイミングで自分のマントを踏みつけて転び、由美の急加速した拳はセシルに当りそうになる。
「あ、ごめん」
何とか間一髪でかわすセシルだったが、同時に瞳と剣の色が元に戻っていた
「……っと! 危ねぇじゃねーか! 絶対わざとだろ今の!」
聞こえないフリをしながら由美は戦い続けている。
「あいつ大丈夫かなー……俺もひとのこと言えねぇけど、あいつ戦うときは見境ねぇからなー……」
セシルは心配そうに、やれやれと呟くのだった。
「急げや急げ……って感じでしょうか」
えにかがルナティックヒールの光球を放ち、セシルの傷を癒してゆく。だが次の瞬間、吸血鬼はモザイクから牙を生やし、セシルに噛みつこうとしていた。
「吸血鬼が狙うのは、可憐な美少女って相場が決まってんだろ?」
レンカが割り込んで庇い、ケルベロスチェインで牙を強引に振り払う。
「Jagdhund!」
ぶちぶちと肉が裂かれるが、レンカは構わず精神を振り絞り、鎖を伸ばした。
「楽しむ気さえありゃ、どんな奴だって受け入れるんだぜ。……祭りってやつはな」
猟犬の如く喰らいついたレンカの鎖が、吸血鬼の体を捕らえて締め始める。
「この美少女を放置とは何事だ!」
メノウが踏み込み、斬霊刀を抜き放つ。牽制に回された相手の鍵を日本刀で捌き、その間に斬霊刀の刃を光へと変える。
「おにーさんには悪いけど、害がある以上は倒しちゃわないとね!」
非物質化された斬霊斬が、がら空きになった吸血鬼の胸元を深々薙いだ。
「本当のハロウィンパーティーはこの後ですよ」
ララミーの一言に、一瞬相手の動きが止まる。ハロウィンパーティーに出る夢のエネルギーから生まれたドリームイーターにとって、それはかなりショックだったのかもしれない。
だがその一瞬にララミーは舞うように踏み込んで、二刀の刃を重ねていた。星の力が重力となって合わさり、超重力を帯びた十字の斬撃が叩きつけられる!
強烈な一撃に吸血鬼ドリームイーターも腹部を押さえ、がくりと膝を突いた。
「鎌倉なんて浮かれたケルベロスと一般人だらけだってー! 祭りなんだからさー、飛び入りしちゃえばいーんだよー!」
ルネシュテリは励ますように言いながら、身にまとうブラックスライムを派手に散らした。
飛び散るかと思われた黒い粘液は細く鋭い牙となり、吸血鬼の体に喰らい付いてゆく。
「キミの首は獲ってイイ首だからネェ、首を刎ねよ―なァんて、キャハハ!」
千鶴が笑いながら、忌まわしき大鎌と共に跳び上がる。振り上げられた刃に『死』が濃縮されて、ぬらりとドリームイーターの姿を映す。
断罪の刃――ギロチンが、夢想の吸血鬼を断ち斬って絶命させる。
「もうオシマイ? つまんないなァ」
千鶴は口元にだけ笑みを浮かべ、くるりと大鎌を肩に担ぐのだった。
「改めて飾りつけをしましょうか……。あ、プリン固まったかしら?」
えにかは戦いの痕跡をチェックしつつ、冷蔵庫に入れておいたバケツプリンのことを思いだした。
「これなら十分ですかね。さ、気を取り直してお菓子配りますよー」
えにかは沢山の取り皿とスプーンを手に、皆に配ってあげようと笑みを浮かべる。
「二度手間ですけど……。まあ、楽しいハロウィンになるといいですね」
ララミーも軽く息を吐いてから破損部分をチェックし、ヒールと飾り付けを再開していた。
「折角だからハロウィン仕様にヒールしてやるぜ! 今度は壊される心配もねーしな」
レンカは気合いを込めて修復してゆくが、うまくハロウィンぽくなるとは限らない。
「……キュートなオブジェとかも置いちゃうぜ。メルヒェンみたいな世界にご招待だ!」
その辺は大きなカボチャにローソクや飾りを付けて、上手く誤魔化してしまうのであった。
「せっかくなのでお菓子も貰って、飾り付けだ!」
メノウはクッキーをかじりながら、消えゆく吸血鬼に視線を落とす。
「今度こそよいハロウィンをね、おにーさん?」
その手にそっとクッキーを渡し、メノウは呟いた。
「でけー祭りなら他の人も仮装してんだからー、みんな浮かれてるしそんな深く気にしないってー!」
ルネシュテリも気さくな雰囲気で、気にするなということを何とか上手く伝えようとする。
「もし会えたら、ボクたちと一緒にお茶会しなァい? オイシー物を食べたら、笑顔が止まらないよォ!」
千鶴はそう言って、にっこりと微笑む。そんなケルベロスたちの声に応えるように、吸血鬼の亡骸はキラキラと細かな光の粒へと変わり始め……。
ぽんっ、と小さなコウモリの飾り付けに変化した。
それはハロウィンの日に起きた、不思議な魔法。
誰かがどこかで、この日を楽しく迎えられるように――。
ケルベロスたちは片付けた公民館に、たっぷりのお菓子を用意して、住民の皆さんを呼びに行こうと歩き出すのだった。
作者:零風堂 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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