素敵な水着で泳ぎたい!

作者:青葉桂都

●綺麗な水着が着たい
 北海道の海辺にある、とある町。
 少女は、ベッドに寝そべってファッション雑誌をながめていた。
 紙面には水着を着た綺麗なモデルがたくさん並んでいる。
「もう高校生なんだし、今年こそ大人っぽい水着で海に行きたいなあ……」
 大きく息を吐いてから、カレンダーを横目で眺める。
 今日は、本州よりも遅めの海開きが近くの海水浴場で行われているはずだった。
 カレンダーには、この日までに水着を買うと丸文字で書いてあるが、部屋の中にそれらしいものはない。
「まあ、二週間くらいは開いてるはずだし、それまでに買えばいいよね」
 呟いた彼女は、次の瞬間長い鍵で背中から心臓のあたりを突き刺されて、もう永遠に水着を買いに行くことはできなくなった。
「お前の夢はわかった。私が、その夢を代わりに奪ってきてやろう」
 いつの間にか部屋に入り込んでいたのは、この暑いのにロングコートを着てフードで顔を隠した女だった。
 コートの裾から覗くモザイクが、ドリームイーターであることを示している。
「大人っぽい水着を着て、海に行きたいんだったな……」
 窓から外を見る。それほど遠くない場所に海が見えるのを確かめて、ドリームイーターは音もなく部屋を出て行った。

●水着は夢?
 ドリームイーターが事件を起こすのだと、リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)はケルベロスたちに告げた。
「綺麗な水着を着たい。そう思ってもできないもいるよな。ドリームイーターはそんな女の子に成り代わって、夢を奪おうとしているようなんだ」
 成り代わられた女性はまだ若者だったようで、大人っぽい水着に憧れていたらしい。
 ドリームイーターは海開きイベントが行われている海水浴場に現れて、大人っぽい水着を着た女性を次々に殺していくのだという。
「今のところ成り代わられた女性以外に犠牲者は出ていない。急いで海に行けば、これ以上の犠牲が出る前にドリームイーターを倒すことができるはずだ」
 リーファリナは力強くそう告げた。
 後ろに控えていたドラゴニアンのヘリオライダーが、ドリームイーターの戦力について説明を始める。
「ドリームイーターは心を抉る鍵を持っており、近接攻撃を行ってきます。物理的なダメージを受けるだけでなく、トラウマを呼び起こす効果があるようです」
 また、モザイクを飛ばして敵を包み込む攻撃が2種類。精神を侵食して悪夢を呼び起こし、催眠状態にする攻撃と、冷静さを奪って挑発する攻撃だ。
「敵は北海道のとある海水浴場に現れます。街から海までの移動経路は不明ですが、水着の女性を狙うので道中で被害が起こることはありません」
 ケルベロスたちは海水浴場で待っていればいい。
「なお、ケルベロスの皆さんは一般人よりも夢の力が大きいようです」
 もしも水着を着ていれば、一般人の女性よりも優先的にケルベロスを狙ってくるはずだ。
 下手に海水浴場から人を避難させると、水着の女性がいないと判断して敵が別の場所に向かうかもしれない。
 それよりは誘き寄せることを考えたほうがいいだろう。
 ヘリオライダーは説明を終えた。
「被害を出さずに撃退すれば、戦闘の後で少し泳いでいくこともできるかもしれないな」
 海に行きたかったのに行けなかった女性の分まで、泳いだりイケメンを探したりするのもいいかもしれない。
 リーファリナは最後に、ケルベロスたちにそう告げた。


参加者
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)
ルイ・コルディエ(菫青石・e08642)
メーリス・サタリングデイ(希望の歌・e10499)
遠野・葛葉(ウェアライダーの降魔拳士・e15429)
ソフィア・フィアリス(黄鮫を刻め・e16957)

■リプレイ

●ドリームイーターを誘き出せ
 北国とはいえ、夏の日差しは変わらない。
 陽光の降り注ぐ海水浴場に、ケルベロスたちは集まっていた。
「海だー! ドリームイーターとかどうでも良いから遊びたいな!」
 欲望全開で叫んだのは、遠野・葛葉(ウェアライダーの降魔拳士・e15429)だった。
 狐耳をはやした少女は巫女服を脱ぎ捨てて虹色のビキニを着ている。下は前を大胆に開けたショートデニムから虹色が覗いていた。
「夏! 海! 海水浴! さっさとドリームイーターを倒していっぱい遊びましょ!」
 青い水着にやはりデニムのショートパンツをはいたルイ・コルディエ(菫青石・e08642)は、ハイタッチを交わしつつ友人に同意する。
「みずぎー! あんまり着る機会ないからいわかん! かんかんかん!」
 テンション高く叫ぶメーリス・サタリングデイ(希望の歌・e10499)も、子供用の可愛らしい水着を着ていた。
「遊びたいけど、その前に物騒なのをとっちめないと! 覚悟ー!」
 こちらに近づいているはずの敵に向かって、メーリスは叫んだ。
 ドリームイーターは水着の女性を狙うという。だから、みんな水着を着ていた。
 アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)が着ているのは、モノキニと呼ばれるタイプの水着だった。
 前から見るとワンピースタイプのようだが、後ろに回るとビキニに見える。つまりは身体の前側だけでつながった水着。
 前は大胆にカットされているのでかなり露出度が高い。大人の水着である。
「ふふん、これが余の大人の魅力というやつじゃな」
 そりかえるほどに胸をはる。ピンと立った頭のひまわりと同様に、アーティラリィはすっくと立っていた。
 ただ、幼児体形である彼女の胸は決して揺れない。
「大人の魅力……? はっはっは」
 笑ったのはリーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)だった。
 白い清楚なビキニだが、布の面積はとても狭い。
 そして、中身はまるではち切れそうなほど詰まっている。
「私の方が大人、だなぁ?」
 目を吊り上げたアーティラリィの横に並び、まるで比較するように胸を突き出す。
「この駄肉がぁぁぁ!? 使うアテもないくせに!?」
 拳がうなりを上げた。
 今日初めて振るわれる一撃は、もうすぐ現れるはずの敵ではなく味方を貫いたのだ。
 とはいえ、果たしてアーティラリィを攻められる者がいるだろうか。
「ぎゃあああ!? イタイイタイ!? つ、使う予定あるし!! まだまだチャンスはあるからぁ!?」
 色白の拳が、水着に覆われていない無防備な腹部をとらえた。
 もっとも、2人がじゃれあっていられる時間はさほど長くはなかった。
「管理人や監視員とかには話を通してきたぜ……って、なにやってんだ?」
 騒動を見やって、神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)が呆れ声を出した。
 いちおう彼も『大漁』の文字が力強く記された水着を着ている。
「友情を確かめ合っているんじゃないかしらねえ」
 赤い翼や、髪の赤い花に合わせたのだろう赤いビキニを着た、ソフィア・フィアリス(黄鮫を刻め・e16957)が言った。
「連絡お疲れさま。……ところでレンくんは誰の水着が気になっちゃうかしら? やっぱりお姉ちゃんかしら?」
「は!? だ、誰も気になんねーよ! 仕事の前だぞ!」
「あらあら、そうなの。せっかく男の子がいるのに、見てもらえないなんて寂しいわね」
 笑うソフィアに背を向けて、煉は足早に同じ色の髪を持つ少女に近づく。
「目立つように、ここでもケルベロスの水着コンテストの体裁を取った方がいいかな? 相変わらず、少し恥ずかしいですけど……」
 フリルのついたビキニに、ふわりと広がるパレオを巻きつけた神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)は思案顔をしている。
 だが、コンテストを装う時間はさすがになかったし、またそれをする必要もなかった。
 夏の海に不似合いな、フードをかぶった女がケルベロスたちに近づいてきていた。
「こういうのって、大人っぽい水着を着たら満たされるってものじゃないのね?」
 敵を発見してソフィアは呟く。
「うーん……水着そのものを着ることより、大人っぽい水着を買ったという行動力みたいのを狙ってるってことなのかしら? めんどくさい種族ね」
 ため息をつくうちに敵は近づいてきた。
 強い夢の力に引き寄せられるようにケルベロスたちに近づいてきた女は、フードに隠れている顔で水着を着た彼女たちを見回す。
「大人っぽい水着を着ているのが5人も……さあ、それを私によこしなさい?」
 強い口調で告げると、ドリームイーターは鍵型の武器をケルベロスたちに向けた。

●ドリームイーターを倒せ
 モザイクが前衛のケルベロスたちを包み込む。
 ソフィアはミミックのヒガシバに用意してきた手紙を持たせる。
 監視員やライフセーバーたちへデウスエクスの出現を知らせる手紙を乗せて、ミミックは移動していった。
「流れ弾とかあったら面倒だからねえ。さて、おばちゃんも参加しないと」
 すでに仲間たちは攻撃を開始している。
 流星の輝きを纏った鈴と、虹の輝きを纏ったメーリスが、立て続けに飛び蹴りを叩き込む。2人が離脱する瞬間に踏み込んだ煉の鋭い蹴りも敵を捉えていた。
 メーリスのテレビウムであるホッピーもフラッシュを放って敵を挑発している。
 戦いに加わるべく、ソフィアは人々の祈りを御霊化して宿した縛霊手を構え直す。
「まずは、確実に攻撃を当てていきましょうか」
 中距離に位置どって、彼女も攻撃を仕掛けるタイミングをうかがい始めた。
 先ほどまでケンカをしていたリーファリナとアーティラリィも、敵が現れればすぐにその矛先を敵に変える。
 リーファリナはハンマーを手にドリームイーターへと接近した。
「くぅう、色々ととんでもない目に遭った! すべてキサマのせいだ!!」
 拳を突き付けられて、敵がちょっとだけ戸惑ったしぐさを見せた。
「まぁ、その水着、似合ってはおるがの……」
 後ろから聞こえたアーティラリィの呟きに、リーファリナは思わず振り返りそうになったが自重する。
 言葉に続いて、紙兵の群れが彼女を含む前衛たちを守るように展開される。
 紙兵の動きに合わせて電光石火の速度でドリームイーターに接近した。
 少しだけ怒りが鈍ってしまった気がするが、それでもこの敵は許せる相手ではない。
「海! 素敵な水着!! 素敵な出会い!!! これはもうどうしようもなく、心ときめく物事だよな! そんな夢を奪おうとは許されないわけだ」
 リーファリナの蹴りは急所であるはずの場所を的確にとらえていた。
 炎を纏ったルイの攻撃こそかわされたものの、続く葛葉の蹴りも敵を切り裂く。
 8人に、サーヴァントも加えた攻撃をものともせず、心を抉る鍵が、放たれるモザイクがケルベロスたちの体力を削り取る。
「リューちゃん、アーティラリィさんと一緒にみんなを治してね」
 鈴はボクスドラゴンのリュガに声をかけた。
 自分自身は後衛から敵に狙いをつける。
 ドリームイーターは時折ケルベロスたちの攻撃をかわしてみせたが、狙撃役である彼女の攻撃をかわすほどの動きではない。
「確実に体力を奪ってあげますから!」
 半透明の『御業』が炎を放つ。
 コートについた火が、動くたびに敵の体力を削り取っていった。
「ああ、やってやろうぜ、姉ちゃん!」
 炎を纏った狼頭の巨大ハンマーを煉が叩き込む。
 敵に狙われているのは主にメーリスとホッピーだ。
 ルイは葛葉と共に、彼女たちをかばって攻撃を散らしていた。
 守りを固めている者が多い分、今はまだ攻撃に回る余裕がある。
 監視員たちが避難活動を行ってくれたらしく、周囲にもう一般人の姿はない。
 ヒガシバももう戻ってきて、後衛から攻撃に加わっている。
「なら、遠慮なく全力を出させてもらうね。ぶち抜くわ」
 ゾディアックソードが地獄の炎で加熱する。
 透明化するほど熱した刃でルイはドリームイーターを薙ぎ払った。
「ほう……我も、ルイに負けてはおられんな!」
 葛葉が続き、オウガメタルの拳を敵に叩き込んだ。

●夢の終焉
 ドリームイーターの攻撃は弱まることなくケルベロスたちを傷つけ続けていた。
 メーリスは鍵の一撃を体で受け止める。
 ドリームイーターの鍵は心を抉る。まっすぐで、純真なメーリスの心の中から無理やり傷を引っ張り出してくる。
「負けないよ! こんなの、またすぐ忘れるし!」
 現れたトラウマを、アーティラリィの作り出した紙兵が砕いてくれた。
 さらに心霊手術で傷も癒してくれる。
 それでも、蓄積したダメージはもう十分に回復しきれないほどになっていた。
「外も内もしっかりキレイに癒しちゃうよっ!」
 叫ぶと心が軽くなった。
 自分自身に掌底を叩き込むと、痛みが吹き飛んでいくように感じた。
「さあ、まだまだがんばるよ! 行こう、ホッピー!」
 得物を強く握り、メーリスはドリームイーターと対峙する。
「捕まえた。さあ、ひしゃげて潰れなさい」
 ソフィアの縛霊手が巨大化して、敵を押し潰す。
 防御が崩れたところに仲間たちは攻撃を加えていく。
 守りを固めた分戦いは長引いていた。
 とはいえ被害があるのは所詮砂浜。長期戦になったところでさして問題はない。
 葛葉はルイを包み込もうとしたモザイクをかわりに受ける。
「助かる!」
「ルイに大ケガでもされたら、この後1人で遊ぶことになるからな!」
「そうね。さっさと片付けて海を楽しみましょ」
 ダメージは蓄積していっている。
 楽ではないが、同時に倒れるほどでもない。
 ドリームイーターの動きは最初と変わりないが、十分ダメージは与えているはずだ。
「よこせ……水着……!」
 再びモザイクを飛ばそうとした敵の動きが突然止まった。
 幾度も蹴られた急所を押えてうめき声をあげる。
 アーティラリィは隙を逃さず、夏の陽光を集めた。
「至天に煌く陽光よ、余の元に集え。森羅万象一切の区別無く、その光の中へと還るがよい!」
 向日葵は陽光のもとでこそ輝く。
 集まった光は熱球となった。それを手に取り、大きく振りかぶって敵へ投げつける。
「やるな、アティ! 私も行くぞ! 全てを打ち砕く界の怒りよ。力の猛り、轟きをもって我が敵を討ち滅ぼさん」
 リーファリナが呼び出した炎が地を這いずり敵を焼き尽くす。
 炎の中でドリームイーターはなおも手を伸ばすが、限界であることがケルベロスたちにははっきりと分かった。
「そろそろ終いにしてやるぜ! 姉ちゃん、行くぞ!」
 煉は姉に声をかけると、烈火の闘気で体を包み込む。
「うん! わたしだって……お父さんの娘なんだからっ!」
 応じた鈴の拳が、眩い光を放つ狼型のエネルギーに包まれる。動きを回復したドリームイーターが攻撃を回避しようとするが、彼女の動きは敵を確実に追いかける。
 ソフィアが破損させたコートの破れ目を拳が打った。
 姉の背を追いかけるように、煉もすでに敵へ接近していた。
「これが俺達の絆っ! 姉弟連牙『双星狼牙』!」
 わずかに遅れて砂の上を駆け抜けた蒼い炎が、ドリームイーターを焼き尽くしていた。

●楽しい海水浴
 戦闘の後片付けを終えた海水浴場には、再び楽しげな人々の声が響いていた。
「待て、葛葉!」
「ふふふ、追いつけるものなら追いついてみるがいい!」
 一般人をはるかに超えた速度で泳ぎながら、ルイと葛葉が追いかけっこをしている。
 戦闘を終えた後だとはとても思えぬ速度で競い合っている彼女たちは、海水浴客たちの注目を集めていた。
「楽しそうだねー! ねえ、ボクたちも混ぜてもらおうか!」
 サーヴァントのホッピーに声をかけて、メーリスもまた海へと飛び込んでいく。
 元気に遊ぶ彼女たちとは対照的に、煉はサングラスをかけて浜辺に寝転がっていた。
 この海水浴場では犠牲は1人も出ていない。
 けれど、助けられなかった人がいることを少年は思い出さずにはいられなかった。
(「……助けてやれなくてすまねぇ……。せめて安らかに……」)
 サングラスの下で瞑目する……。
 ……と、いきなり海水を浴びせられ、煉は跳ね起きた。
「っ……! 何すんだよ、姉ちゃん!」
 目を瞬かせると、こちらを見ている鈴の姿が見える。
 手には大きなビーチボールを持っていた。
「一緒にやろ?」
 近づいてきた姉が、煉へとボールを手渡してくる。
 きっと、鈴は煉がなにを考えているか、察している。それでも渡してきたボールを、煉は受け取った。
「しょうがねぇ、つきあってやるよ」
 小さく息を吐き、煉は立ち上がった。
 鈴は弟に背を向けて、まだ張り合い続けている2人を向いた。
 抱えている想いは、鈴も弟と同じだった。でも、ケルベロスは人々の希望なのだ。だから、今は笑顔でいようと、彼女はそう思った。
「ルイさん、葛葉さん、メーリスさん! よかったら、ビーチバレー、しませんか?」
 泳いでいた3人が声を聞きつけて浜辺を向く。
「あ、やるやるー!」
「ビーチバレーか。楽しそうね」
「いいのか、ルイ? ケルベロスの身体能力で激しい運動をすると、ポロリとか起きてしまいそうだぞ」
 応じるルイの背後から、葛葉がビキニのブラを引っ張って胸を強調させる。
「葛葉っ! こら、待てっ!」
「ふん、追いつけるものなら追いついてみるがよーい!」
 先ほどよりも激しい水音と共に、彼女たちは浜辺へ戻っていった。
 そんな彼ら彼女らの姿を、ソフィアは離れた場所で見ていた。
「若い人たちはいいわねえ。楽しそうで」
 焼きそばで一杯やりながら、ソフィアは微笑ましげな眼を仲間たちに向ける。
 ゆっくりと視線を動かしていくと、リーファリナが楽しく泳いでいる……ように見せかけつつナンパ待ちをしているのも目に入る。
「あら……まだいいお相手には巡り会えていないのね」
 呟いて、ソフィアはジョッキの中身を一口飲んだ。
 今のところ、リーファリナのそばにいるのはアーティラリィだけだった。
「……なあ、アティ」
 見られているとも知らず、リーファリナはゆっくりと口を開いた。
「なんじゃ、リーファ」
「大人っぽい水着姿で、カッコよく戦う私……もてないかな?」
「まあ、もててもおかしくないんじゃないかの」
 今のところ、ナンパ待ちの成果は小さな……少なくとも明らかにまだ結婚できそうにない歳の……男の子にサインを求められたことだけだった。
「そうだよな……もうちょっと遠くの方まで泳ぎに行ってみようかな」
「使う予定ができるといいのう」
 ビーチバレーを楽しむ若者たちから離れて、2人は泳ぎ始めた。
 結局のところ、仲がいいのだろう。
 まだまだ日は高い。自分たちが守った人々の楽しげな声を聞きながら、ケルベロスたちは海を楽しんだ。
 ……リーファリナがナンパされたかどうか、本人とアーティラリィだけが知っている。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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