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「部活に塾に……えらいわぁ」
すっかり暗くなった路地を少年は、疲れを見てとれる覚束ない足取りで歩いていた。
蒸れる暑さに汗ばんだ制服を扇いで微かな風を送り込む。
その耳に声が聞こえた。
耳を澄ますと、それは暗い闇に満ちた林から聞こえていた。
「……」
渇いた喉が更に灼けつく。その声は、巧みに情欲を煽る色を帯びて、少年のまだ未熟な煩悩を刺激していた。
少年は、懐疑を胸にそれでも、迷うことなく森へと踏みいっていった。
木が立っていた。
少し開けた場所に月明かりに照らされて、年齢を窺えぬ容貌の女性の裸体を腰ほどから埋め込んだような形の木。
静かに艶然として佇む姿に少年は目を背けることすらできず、吸い込まれるようにその木に近づく。鮮やかな実が実った木の異様さに目もくれず、胴に突き出た、蔦に押し上げられその柔らかさを強調する樹こぶに手を這わす。
「……ぁ」
僅かな抵抗を返しながらも少年の指を受け入れたそれにもう一歩近づくと、少年は顔から二つの膨らみの間に突っ込んでいた。言葉を出す暇もなく、少年の体を抱えた樹木はその背をゆっくりと撫でる。その細い指が腰を擦りあげると、柔らかな膨らみに挟まれた少年の理性は、腐り落ちた果実のような甘みに弾けた。
狂う本能のままに体を押し付け、木を揺らす。青い蕾は生気を枯らすまで搾り取られ、力無く頭を垂れた。ズボンを脱ぎ捨て、下半身を露出した少年は体液の滴り落ちた地面から這い出る無数の根に包まれ、地へと潜っていく。
若々しい果実を実らせる樹木は未だに不満足な声を漏らして、次の獲物を待つ。
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「バナナイーターが出現しているようです」
ダンド・エリオン(オラトリオのヘリオライダー・en0145)の言葉に対し玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)が、腕を組み頷く。
「大阪城近くの小さな林。そこに美魔女が若い精気を求めて現れる」
「……そうです」
心なしか、低く声を発した陣内の言葉をダンドは居づらそうに肯定した。
「ええっと。少しお年召いた女性の姿をしているバナナイーターですが、美魔女、という通称、が似合うような個体のようです」
恐らくいまいち理解できていないだろう判然としない語り口調に、要らぬ知識を植え付けたか、と一瞬考える陣内だが、すぐに人生万事が勉強と僅かな反省を投棄する。
「幸いにも、今回の被害者、学生の方が被害に遭う前にその場所へ先回りする事ができるようです」
だが、バナナイーターが出現するには、対象となる男性が必要だ。襲われる学生を危険から遠ざける為には、男性のケルベロスが囮になる必要がある。とダンドは告げた。
「数は囮の数と同じだけ地下茎から送られてくるようですが、近くに送り込める戦力は決まっているのか、一体目以降の戦闘力自体は、少しずつ劣っていくみたいですね」
また、バナナイーターは出現から三分ほどは地下茎との繋がりが強く、攻撃を行うとすぐに地下茎を通じて逃げられてしまう、と彼はつづけた。
「つまり、囮となる者は三分間、バナナイーターの気を引く必要がある」
「はい、ですので、囮となる方は、バナナイーターの誘惑に耐えていただかなくてはいけません」
「ふむ、だがこちらが攻勢に出てもいいのだろう?」
「え、いえ、攻撃は」
「あー、つまり――」
陣内はダンドに自分の言葉を説明しようとして、口を閉ざす。
ダメな気がした。
「……続けてくれ」
「……はい、このバナナイーターですが、攻撃は果実を使ったものを多く使用することが分かっています」
また香りによる強い誘惑も行ってくる、という。
「囮の方には辛い役目かもしれませんが、被害を最小限に抑えるために、頑張ってください」
「ああ」
ダンドの言葉に陣内は髭を立てながら、神妙に頷いた。
参加者 | |
---|---|
結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032) |
花凪・颯音(欺花の竜医・e00599) |
アニエス・ジケル(銀青仙花・e01341) |
琴宮・淡雪(淫蕩サキュバス・e02774) |
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753) |
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456) |
フェイト・テトラ(飯マズ属性持ち美少年高校生・e17946) |
君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801) |
●
月明りが薄緑の肌を青く照らして、裸体の凹凸に影を落とす。丸みを帯びた外殻は、肉体の柔らかさを再現するように緩やかな陰影を描いている。
膨らんだ胸部は、蓄えた蜜を物語る様に張りを見せ、木と同化した下肢までの曲線は、腰骨の広さを主張する。
僅かに骨ばったような細い肉体には、しかし若々しさは感じさせず、代わりに何か目を引き付ける様な艶かしさを醸し出していた。
「くっ、何て魅力的なたわわな果実……!」
白い毛並みを淀んだ風に揺らし、ライオンのウェアライダーがその樹を見つめていた。結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)はこくりと乾いた喉を鳴らすと、呆けたような足取りで一歩、歩み寄る。
その視線は、身じろぐ動きに頼りなく揺れる乳房へと向けられている。
「美、魔女と言うだけに、熟された食べ頃な感じが俺を誘惑する……もう我慢ができません……っ」
口から言葉を走らせて、レオナルドは上半身を包む布を自ら放り出すと、硬く鍛えられた胸胴を暗い空気に晒した。
「……」
腕を伸ばせば肌に触れる距離。僅かに甘く苦い香が感じられる。彼の高い身長にバナナイーターは見上げる形になる。背を反らし、細い両腕をレオナルドの頬へと伸ばせば、必然無防備な肢体が彼の眼前に詳らかにされる。
艶めいた笑み、細い肩と首、体に沿うように寝る乳房、僅かに浮いた肋骨から、まるで息をする様に上下する柔らかな腹部、丸く膨らんだ腰。
暗い視界の中で、朧げな輪郭に目を凝らそうとすれば、それらが認識を強要し意識を埋め尽くそうとする。
指がレオナルドの頬に触れた。気づけば、その目はじっと彼を覗き込んでいた。
「大丈夫……こわくないわよ」
その距離でしか聞こえない小さな声に思わず息を飲んだ。
「……ふっ」と、震えた高い声が笑む厚い唇から漏れた。
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)の短い毛に覆われた指が顎をなぞる。悪戯に唇に触れた指を軽く口に含んだ攻性植物はその指に蜜を絡ませていた。
ダンスを踊る様に腰を手で支え、緑の腕に掌を滑らせると、細く見える体に蓄えられた皮下脂肪の柔らかさを返してくる。互いに視線を合わせ、目を細め。
彼が掴んだ枝と逆の腕でバナナイーターは陣内の後頭に手を当て、首元へと誘導する。
筋ばった首の溝に舌を這わす。甘い香りと掠れた声が耳朶を打つ。
陣内が支える腕、その腰から下へと視線を落とせば、攻性植物の指が彼の後ろ首を擽った。
「これがいい?」と言葉と共に、腰から下の樹皮にしか見えなかった部分がうねり、大腿へと変貌していく。脹脛まで柔らかな皮膚を纏った脚に、少し目を瞬かせた陣内の背を手が下る。
陣内は布越しに触れるその擽ったい感覚に微かに身を震わせる。脚を見せたお返しと言う様に腰を経て、締まった小ぶりな臀部へと伸びた手を、黒い尾がしなやかに絡めとった。
「まだ、お預けだよ……ねえ、お姉さま」
太ももと膝の窪みから視線を上げ、遊び足りないだろう、と問うと樹木はその唇を彼の首に触れさせる。
「ワタシの精が欲しイのか。ならばもっと近くへ来ルのだな」
歩み寄った男性、君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)は、口元に笑みを見せて指を折り誘う。
その誘いに、バナナイーターは上身を彼へと伸ばし、その胸へとしな垂れた。それを受け止めた眸は、見上げてくるその視線に優しく微笑みかけると、細い顎に手を当てて、喉元を開かせるとゆっくりとそこに唇を落とした。
眸の頬を撫で首を抱くように回されるその手をそのままに、彼は凭れかかってきている攻性植物の体へと指を這わす。
「ん……」
漏れる息。眸はくびれたわき腹をつと撫で上げ、首に僅かに歯を立てる。乳房を撫でて脇のすぐ下を這わせて、下部へと流す。
指先は肌の上を滑らせるように、明確に触れていると感じさせないように緑の肌を蠢いて、舌は鎖骨の間から双丘の隙間に粘液を伝わせながら舐っていく。
「……上手ね」
「ソうか? 存分ニ味わうとイい」
返しつつ、離した口を戻そうとした時、眸の唇に柔い指が添えられる。
「でもね、ボク」
ボク、と呼ぶ声は幼子を窘める様な色さえ含み、眸に向けられた視線は熱に浮いたものでは無く、どこか冷めた視線だった。
「ボクの相手は楽しくないわ」
レオナルドの言葉に反応したのか、攻性植物の手が誘導した彼の手は、乳房を掴んでいた。その指は生きた温度に沈んで、柔らかな膨らみは中に詰まる蜜の重みを掌に返していた。
「ぁ……」
彼は喉を鳴らし、その体を樹木に擦りつけるように寄り添って、着た服を煩わし気に腰を揺らす。
甘露な感触は、喉の奥に苦みを溢れさせ、脳髄を快感の蜜で浸していく。
僅かな風と月の光が揺れて、彼は背後に人の気配を感じ取った。
「素敵な物を見せて貰いました」
隠密気流を纏って隠れていたサキュバスの女性、琴宮・淡雪(淫蕩サキュバス・e02774)が姿を見せていた。
それに決めていた時間が経ったとレオナルドが密着したままの攻性植物に服と一緒に放り捨てた様に見せかけ、転がしたドラゴニックハンマーを突き付ける。
「次は俺のこいつを味わってもらうぞ……!」
言うや否や、言葉をかき消す爆音。
巨大な砲塔から竜砲弾が轟音と共に吐き出された。
●
「というわけで、こっちは危険なのですよ」
フェイト・テトラ(飯マズ属性持ち美少年高校生・e17946)が同年代の少年に、もう少しで彼が遭遇していた事態を説明する。
あまりオブラートに包まない説明を、軽い魅了状態と礼節を気にする状態で聞き入れるしかなかった少年は、目を泳がせながらもフェイトに頷く。
「若い子の方がいいわよ!」と随行していた淡雪が少年に投げかけた。
「さて、まだ間に合うはずですね」
と、少年が迂回する道に去ったのを見たフェイトは踵を返し、林の中へと戻ると。
「あわぁー、あだると」
一、二分過ぎた状態の囮の面々があった。
「え、えっちなのは……いけないとおもいます……っ」と彼が小声で漏らした感想にテレビウムのポチくんを視界の盾にしたアニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)が言う。赤らめた頬を見るに、耐え切れなくなりバナナイーターを見ずに警戒する方法を模索したのだろう。
彼女に反し、他のケルベロスは熱意に満ちた視線を攻性植物に向けていた。
サキュバスの男性、花凪・颯音(欺花の竜医・e00599)は、瞳に悦楽の色を灯している。
「あの生命力は素晴らしい……薬にならないものか……内はどうなっている? 内臓があればそちらが……」
などと、解剖の必要性を見出した彼に、囮の光景を見せないよう体で遮ったボクスドラゴン、ロゼがきゅきゅ、と怯えた目で見ている。
「……挙動が変わりつつありますね」
とカメラを周囲に設置したオラトリオの女性は、また違った目線で考えを巡らせていた。彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)は、大阪城を中心とした一連の事件に思慮をこらす。
その横でフェイトと共に戻ってきた淡雪は、少し焦った様子で彼らを、もとい陣内を見つめていた。
「……そろそろ、いいですわよね」
目の前の光景があまり続くのは、とある密命を受けている彼女には毒でしかなかった。なにせ彼女には個人的な報告義務がある。その時に「きらい」などと言われれば立ち直る自信は、皆無だったのである。
十分だ、と判断した彼女はためらいも無く木陰から飛び出すと隠密気流を霧散させる。
その直後、レオナルドの砲塔が轟音を散らした。
同時に眸が流星の煌めきを纏う蹴りを撃ち放つ。が、地面からあふれ出した木の根がそれを邪魔し、その隙にそのバナナイーターは既に距離を取っていた。
「やハり、移動能力がナいわけではないカ」
地面へと潜る事は無いが、蠢く根で地面を耕し本体ごと移動するようだ。
「さあ、お前もこっちを向いてもらおうか」
と、攻性植物の腕を抜け出した陣内が、眸の相手をしていた攻性植物にグラビティを向ける。
「ね、待って」
その視界に菊の花弁を舞わせて意識を誘導し、陣内を再び胸中に抱こうと擦り寄るバナナイーターに眸がその胴へと鋭い蹴撃を放つ。直後、彼のビハインド、キリノが追撃を放ち、眸の体に幻影が纏わりつく。
「お助けなのですよ」
「あア、助かる」
ミミックがエクトプラズムの矢を発射する傍ら、フェイトが扇を振るい補助を施したのだ。
第一射、レオナルドが放った砲弾は、存分な威力を発揮することなく攻性植物の表皮を軽く焼く程度に収まっていた。
「まるで、火傷みたいだね」
と灼けた皮膚が膨らんでいる事に注視した颯音がレオナルドへと桃色の霧を漂わせて、受けたであろう魔女の呪いを解きにかかる。あわせて、悠乃が彼の力を増幅させる幻影を用いて補助する。
悠乃の視線は、その動作、変化、偏向その全てを逃さないという様にバナナイーターに定まって動かない。
「……内臓もちゃんと再現されてるのかな?」
バナナイーターの一体が樹上に宿る実を捥いで投げると、中空で蔓の群れがそれを食い破り現れ、颯音の言葉にレオナルドが一瞬引いた視線を向けた事に彼は気付かず、ロゼへと攻撃指示を出していた。
吐き出された光のブレスが蔓を裂いて本体へと直撃するが、蔓は止まらず颯音を飲み込む。その寸前で傘を振り上げ飛び出したポチくんが爛れる粘液を纏う触手を体を張って留める。
「まずは、あなたですわね」
淡雪が、眸の指し示した個体へと視線を送る。魔力、と憎念めいたなにかを込めた視線に射止められたバナナイーターは胸をかばう様に隠す。
彼女の心情は定かではないが、
「若作りして必死過ぎwww」
と彼女のテレビウム、アップルが明々と映し出す言葉がそれを物語っていた。が、攻性植物は彼女を一瞥するだけで、陣内へと抱擁の根を伸ばしていた。
「はな、れて……っ」
だが、そこにアニエスがアムドフォートを盾に割りこんだ。邪魔者を払いのける様に振るわれた木の根を砲塔でいなし、衝撃に息を飲みながらも照準を定める。
「……っ!」
打ち出された砲弾は、アニエスの小さな体を反動で浮かせながら、攻性植物の腹部に大きな風穴を開けて吹き飛ばした。
●
「ふう」
指についていた媚薬のような蜜がウイングキャット、猫のヒールの光にかき消えたのを見て、陣内は手袋をはめる。淡雪がそれを見て、少し安心したように見つめる。
「次ダ」と眸がレオナルドの相手であったバナナイーターを示す。それに反応した颯音が淡雪へと電気による活性化を行いつつ、斃れた攻性植物の骸へ視線を向けた。
「……内臓に似たような構造、だけど」
云わば、デフォルメされた形の中身が見え、内面の再現は殆どされていないようだ。
「部位による薬効の違いは期待できないかな……」
「あんなもの、きっと毒にも薬にもなりませんわ」と淡雪が補助を受けてオウガメタルを鞭のように振るってバナナイーターへと肉薄する。
「誰でも見境なくなんて、美魔女だなんて調子に乗ってますけど」
空を裂く魔力を纏う銀の鞭が、勢いよくバナナイーターの胸部を打ち据えた。肉を打つような生々しい音を響かせながら、手を返し何度も打ち付ける。
樹皮細胞が衝撃に耐えられなかったのか、張りを見せていた体が歪にゆがんだ所で鞭を止めた淡雪は、振るわれた根を避けて退く。
果実を捥いでその口へと運ぶバナナイーターに彼女は言葉を突き付ける。
「正直、微魔女の方よ」
「片を付けましょうっ!」
憐れむ淡雪と入れ替わる様に、レオナルドが疾駆する。握る鎚に空の剣気を滾らせ、攻性植物に付けられた傷へと容赦なく叩きこんだ。
骨と肉がひしゃげるような歪な音を響かせて人型が腰から下を樹木に残して千切れ飛ぶ。残った樹は、人型が無くなると直ぐに、生気を失い枯れ朽ちた。
「つぎ、……えいっ!」
アニエスがポチくんの傘による撲打と同時に雷の如き槍の刺突を行う。次いで眸がモーター音を響かせて回転する拳を叩き込んだ。
「お前デ最後だ」
「なのですよ!」と彼の言葉にフェイトが追随し、扇の羽を伸ばして鞭の様に振るう。
仲間への補助を専任していたフェイトだが、既にその役目を完全に果たしきっていた。
自らの治癒能力を高めようと、悠乃が施した破剣の力に補強を砕かれ着実に追い詰められている。
彼女の脳内では、今まで多くのバナナイーターとの交戦情報が比較され、整理され続けている。
「もう、限界のはずです」
その言葉は、彼女の主観は介さず客観的事実でしかない宣告だった。悠乃は観察を継続しながら、フェイトを庇い蔓の攻撃に打たれたアニエスへとヒールを飛ばす。
キリノの金縛りに、陣内が二振りの日本刀を振るい、空間ごと切り飛ばした。
だが、明らかに疲弊するバナナイーターはまだ動いて、回復の果実を口に含もうとする。まだ耐えるのか、と思った瞬間に口を開いた頭部へと小さな影が舞い降りた。
アップルの持つ凶器がその喉奥へと深々と突き刺さり、回復をすることも出来ず、限界を超え朽ちた。
●
「魔女……ですか」
レオナルドが心を乱す言葉を呟き、勝利の余韻を感じながらも己の因縁に思いを馳せる。
「……はあ」
「どうした?」
ため息は淡雪のもの。彼女の前にはいつも通りに見えて、少し艶めく表情の陣内がいた。
彼女の心労も知らず、楽しんでいたようだ。
「いえ、陣内様は少しぐらい怒られればいいのです」と彼女は細やかな仕返し、という選択肢を考える事にした。
「楽しクない、か。難シいな」
眸は、事前に学習していた手の動きを再現し、思案する。すると悠乃がお疲れ様です、と歩み寄ってきた。
「あア、良いデータは取れたカ?」
「はい、これを再現して更に細かく観ていこうかと」
彼女の腕には回収した記録機材がある。彼女は無意識に夜闇にそびえる大阪城を見上げていた。
「いつか、あそこを攻略するために」
「これは使えないな」
と颯音は朽ちた木片を拾い、煤のように消えていく事を確認し呟く。
「……生きたままが欲しいな」
ぼそりと呟いた言葉に、ロゼが主人からまた一歩引いた。
「あ、怯えないでロゼ!」
「熱意がすごいのです、颯音さん」
と、狂気じみた言葉に臆することなく言ってのけるフェイトは、囮となった面々を思い出した。
「すごいといえば、大人の世界でしたねえ」
それに頬を赤らめ反応したのはアニエスだ。
「バナナイーターさんははれんち、だけど、それに演技できるみんなも、すごいのです……!」
自分は恥ずかしくて平静を保てない、と尊敬の視線を向けたアニエスに当のレオナルドは、視線を泳がせた。
「そ、そうですか? ありがとう、ございます」
少し語尾が消え入りそうになりながら、彼は曇りのない純真な尊敬の視線を痛く感じていた。
彼は、おっぱいが結構好きだ。と公言した依頼の報告書が彼女の目に触れないことを、祈らずにはいられなかった。
作者:雨屋鳥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年8月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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