鎌倉ハロウィンパーティー~キミの隣

作者:古伽寧々子

『碧、碧! ハロウィンパーティの仮装、おそろしよ!』
 帰り道、きらきら笑顔の親友の朗らかな声を、月島・碧は思い出していた。
『何がいーい? 王道は魔女さん? 猫耳とかもやってみたい!』
『茉莉亞が好きなので、いいよ』
 茉莉亞のことは大好きだ。
 誰にでも優しくて人懐っこく、ちょっとぶりっこだけど、ドジなところも可愛い。それに、容姿は抜群だ。テレビに出てくるようなアイドルに、勝るとも劣らない。
 でもどうして彼女が、何の取り柄もない容姿もフツーの自分と一緒にいてくれるのか? 時々不安になる。
『えー碧はやりたい仮装、ないの?』
 お揃いの仮装だなんて、見劣りするのは目に見えている。
 なのに、嫌とは言えない。いや、言わない。
 それは、茉莉亞と一緒なら自分も強くなれた気がするから。
 ――そんなのまやかしだって、わかってるのに。
 深く深く、ため息が漏れる。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか」
 その時、不意の声に顔を上げる。いつの間にか、目の前に立っていたのは赤い頭巾の少女。彼女が、手にした大きな金色の鍵を振るう。
「その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 衝撃。
 胸を貫かれ、碧はそのままどさりと倒れた。
 傷はない――けれど、小さな寝息を立てる彼女が目覚める様子も、ない。
 その隣にゆらり、影が立つ。だんだんと実態を現したのは、黒の三角帽子から覗くロップイヤーのウサギ耳に、黒いボア地のワンピース、カラフルなうずまきキャンディのステッキを手にした少女だった。
 全身にモザイクをまとったドリームイーターは、うずまきキャンディにキスすると、ふわりと姿を消した。
 
「ハロウィンですよー!」
 鎌倉のハロウィンパーティーですよー。
 笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)はわくわくが止められない、という様子で楽しげにそう言ったあと、でもですね、と眉をきりりと引き締める。
「このままじゃハロウィンパーティーが台無しになっちゃいます!」
 藤咲・うるる(サニーガール・e00086)の調査によれば、このハロウィンの時期に、ハロウィンのお祭りに対して劣等感を持っていた人がドリームイーターとなってしまい、ハロウィンの当日に一斉に動き出すらしい。
 そして、狙うのならば世界で一番盛り上がるであろう、鎌倉のハロウィンパーティの会場しかありえない。
「と、ゆーことで、皆さん、実際のハロウィンパーティが始まる前に! ハロウィンドリームイーターを倒してください!」
 テストに出ますよー、とばかりに『始まる前』を強調したねむは、ぴしり、と人差し指を突き立てた。
 とあるお屋敷の庭で開かれるガーデンパーティは、可愛らしいローズガーデンが煌めくようなイルミネーションに包まれて、色とりどりのサイダーがまるで輝くよう。
 そんな様子に誘われて、ハロウィンのドリームイーターはパーティが始まると同時に現れるようだ。
「つまりです」
 真剣な面持ちで、ねむは言う。
「先にパーティを始めちゃえばいいんです」
 ケルベロスたちだけで、まるでパーティが始まったかのように振舞うことができれば、ドリームイーターを誘き出すことができるだろう。
 そうして、パーティの前に倒すことができれば、パーティには支障が出ずに済む。
「現れるドリームイーターはウサ耳ワンピの女の子です」
 ウサ耳魔女っ娘は、カラフルな色紙に包まれたキャンディを飛ばしてくるので、攻撃には十分に気を付けて欲しい、とねむは説明を締めくくった。
「ねむもハロウィンパーティ楽しみなんです」
 ぐぐ、と拳を握る手に力を込め、ねむはそう言った。
「だからだから、絶対に守ってほしいです」
 その気持ちはいつも変わらないけれど、でもやっぱりいつもより少し強いかもしれない。
 ――だって、みんなの笑顔のモトだから。
 きっときっと、楽しいハロウィンにしましょう、とねむはケルベロスたちを会場へと誘うのだった。


参加者
カロン・カロン(フォーリング・e00628)
目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)
水瀬・久遠(黄竜の巫女・e04231)
天涯・獅龍(劫火咆哮・e05362)
風花・シアリ(千早ぶる風花・e05540)
四葩・ニコル(燈番・e10283)
鋼・業(サキュバスのウィッチドクター・e10509)
アニー・ヘイズフォッグ(動物擬き・e14507)

■リプレイ

●夕暮れに煌めきを添えて
「Happy Halloween!!」
 パン、パン、パーンッ!
 カラン、カラララン……♪
 クラッカーの弾ける賑やかな音。
 グラスの重なる涼しげな音。
「にゃあん、パーティーの始まりよぅ!」
 カロン・カロン(フォーリング・e00628)の弾むような声が告げて、楽しげな歓声と、キラキラのイルミネーションに包まれたケルベロスたちだけのハロウィンパーティが始まった。
 甘い甘い、薔薇の香り。
 甘い甘い、お菓子の香り。
 誰か、この日のために用意してくれたパーティ会場をお先に拝借してしまうのはちょっと気が引ける気もするけれど、これものちのちの楽しいハロウィンパーティのため。
 タキシード姿にふんわりウサ耳、大きな時計を手にしたきりり、目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)は気を引き締める。本当はちょっと、恥ずかしい。けれど、隣にはお揃いのナノナノ、煎兵衛が蝶ネクタイにご満悦な様子なので良しとしよう。
「いかがですか?」
 そっとソーダ水を差し出され、真は慌ててありがとう、とそれを受け取った。
 給仕をさらりとこなしながら微笑みを浮かべるのは、高い位置で結い上げた長い黒髪が印象的な執事、水瀬・久遠(黄竜の巫女・e04231)。普段は巫女服という女の子らしい格好だから、きっといつも一緒の友達の目には新鮮に映るだろう。けれど、もともと、佇まいや立ち居振る舞いが綺麗な久遠の執事は、ぺったんな胸も相まって男装もとてもカッコいい。
 今日ばかりは、ナイ胸に感謝してもいい、かもしれない。
「いやー、久遠ちゃんも可愛い!」
「あ……、ありがとうございます」
 ソーダ水を配る久遠の姿にテンション高めに笑う鋼・業(サキュバスのウィッチドクター・e10509)、ほい、とソーダ水と交換に蝙蝠チョコレートを手渡しながら大きく頷いた。
「はい、かんぱーい」
 カラン。
 大きなトランプで顔を隠しているのはビハインドのルルちゃんと、ソーダ水のグラスを重ね合わせれば、何だかちょっと酔ったような気分にもなる。
 ノンアルコールだけれども。
 トランプをモチーフにした衛兵の衣装に身を包み、頬にハートのペイントの業は皆の楽し気な表情に目を細める。
 その傍らで、おすまし顔をしている四葩・ニコル(燈番・e10283)の衣装は、深い深い赤を基調に、差し色の黒がビビットなドレス。――女王様を気取るけれど、その口元から笑みは無理矢理にだって消せそうにはない。
 衛兵の業とルルちゃんに守られて、本当は、女の子の格好はちょっぴり恥ずかしいけれど、今日だけは、いい。
「ふふん、気合を入れてきたよ!」
 ハリネズミの着ぐるみに身を包んだアニー・ヘイズフォッグ(動物擬き・e14507)はえっへんと胸を張る。
 頭だけは髪をつんつんにスタイリングして、茶色でばっちりメイクを決めて。大きな黒いお鼻に頬紅の赤は、ちょっと間抜けなハリネズミ、と言ったところだろうか。
 今日はヘイズフォッグじゃなくて、ヘッジホッグ。
 頭は着ぐるみでなくしたのは、戦闘時の動きやすさもポイントだ。
「皆の仮装可愛いわ!」
 ホッケーマスクに血塗れの作業着。スプラッタな外見の殺人鬼は、可愛らしい耳をぴこぴこ揺らしながら、スマホで写真を撮りまくっている。
 うん、なんだろう、その外見と動作の差は逆にホラー?
 色彩明るい、花や蔦を纏ったような魔女衣装に身を包んでいるのは、風花・シアリ(千早ぶる風花・e05540)。ローズガーデンにぴったりな衣装でくるくると駆けまわり――。
「トリックオアトリート! 誰かお菓子ー!」
「ええっ!? あ、と、トリート!」
 不意に投げられた、茶目っ気たっぷりのシアリの視線に、悪戯防止に忍ばせていてよかった、とポケットから可愛らしい包み紙のキャンディを取り出して、ニコルは笑む。
「……あっ、僕もお菓子欲しいな!」
「自分も! トリックオアトリート!」
 「可愛いキャンディ!」と喜ぶシアリに、お返し、とばかりに言うニコル。
 便乗して瞳を輝かせるアニー。
「え?」
 二人の顔を交互に見、シアリは首を傾げた。
 ちなみに貰う気満々で、お菓子は用意しておりません。
 ……と、いうことは。
「トリックだよ!」
「きゃー! いやー!」
 どうやら悪戯はくすぐりに決定したらしい。
 ハリネズミさんも、赤色の女王様も、お花の魔女さんも、きゃっきゃと笑って何だかとっても楽しげだ。
「菓子が欲しいかー?」
「おー!」
 その武骨な全身に包帯を巻きつけ、サンタクロースのように大きな袋を担ぐ天涯・獅龍(劫火咆哮・e05362)の問い掛けに、声が上がる。
「欲しいならやるぞ、ほら!」
 大盤振る舞いっとばかりに、ばっさばっさと投げ上げる、チョコにクッキーキャンディ、グミのシャワーのよう。
 女性陣のきゃあきゃあという歓声はそれはもう、賑やかで――。
 だから、
「わたしにもちょうだい」
 抑揚のない声がねだるのに、ケルベロスたちは視線を向けた。
 真っ黒な三角帽子に、ロップイヤーなウサギ耳。
 それだけなら、とても可愛らしいハロウィンのコスプレ。
 全身に纏ったモザイクが、チリチリと揺れさえしなければ。
「さてさて、ゲストのご到着かしら?」
 ちらり、視線を送ってカロンは肩を竦めて見せた。

●パーティのはじまり
「パーティに来たかったの? 良いのよ良いのよ、私達と存分に遊びましょ」
 カロンの口調はからからと楽しげ。
「にゃぁん♪ 兎ちゃんには刺激が強いかしらぁ?」
 ぶおんぶおん、と噴かすエンジン音はなんだか楽しげだ。
 なり切ったその姿は狂気すら感じて、ちょっと、けっこう怖いかもしれない。
「魔女勝負よ!」
 ふんわり、魔女服を揺らしたシアリが軽やかな足取りで躍り出る。
「ハロウィンの日に悩んでる暇があったらお菓子1個でも多くもらうのが子供の使命だってことを教えてあげるわ!」
 大きな籠を振り回したシアリは、もう片方の指先でスマホをタップする。
 弾むように言うシアリは、ドリームイーターには眩しく映った、ようだ。
「ずるい、ずるい、ずるい!」
 呻くように、呪うように、言葉にするウサ耳魔女っ娘。
 見た目に反してちょっと可愛くない。
 彼女の身体から伸びたモザイクが、シアリを狙った。
「危ないっ」
 それをニコルが、赤いドレスの裾を翻して庇う。
「煎兵衛! 頼んだぜ!」
 真が視線を送れば、煎兵衛は心得ましたとばかりに、ナノナノばりあでヒール。簡単なお仕事でも、あるとないとでは大違い。
「ウサ耳の風上にも置けない輩め。この時計ウサギが黙っちゃいないぜ!」
 真の楽しげな名乗りに、煎兵衛が応えるように、「ナノー」と鳴いた。
 さらに重ねられるのは、業のライトニングウォール。雷の壁はさながら、ハロウィンのイルミネーションのよう。
 ルルちゃんが起こすポルターガイストも相まって。
 ハロウィンらしいホラーな演出に磨きがかかる。
 短期決戦、前のめりに。
 執事服に斬霊刀『薙』を携えた久遠は、長い黒髪を揺らして、勢いよく地面を蹴った。後ろを守ってくれる仲間がいるからこそ、安心して戦える。
「ハッ!」
 気合の一声と共に、雷をまとった一閃を放つ――。
「せっかくのパーティ、めちゃくちゃにしたらダメなんだからね!」
 アニーのスパイラルアームが、重く、深く。
 ドリームイーターを寸分の狂い無く捉えて、逃がしはしない。
「まずは一手……砕け散れッ!」
 獅龍が放つ颶風旋嵐刃は、さながら暴風の如く。
 力任せの巨大な岩の十字手裏剣の一撃が――ドリームイーターを襲った。

●キミに届け
「キャンディーシュートッ!」
 魔法少女よろしく、ウサ耳魔女っ娘ドリームイーターがぶんっと大きなキャンディステッキを振るえば、可愛らしい色のまんまるキャンディが勢いよく跳ねる。
「いたた」
「いったーい!」
 勢い良いキャンディの攻撃は、可愛い見た目の割に思った以上に痛い。
 ビリビリ身体が痺れる感覚に、 
「ああっ俺の衣装は飛ばしちゃダメ!」
 当たったキャンディが割とすごい勢いで飛んで、衛兵の衣装を裂いたので業が妙に色っぽい声を上げる。
「中年男の色気が溢れ出ちゃう……!!」
 セクシーすぎるおっさんの色気が、皆さんを回復します。
「思いっきり発散していきなさいな。大丈夫、きっと楽しめるわ。あの子とも一緒に」
 鼻歌交じりに、問い掛けながら、
「私の全部、受け取ってみる?」
 スラリ、抜き放つのは、隠し持っていた研ぎ澄まされたナイフ。
 イルミネーションにきらり、煌めいて、カロンのしなやかな動きの連撃が、ドリームイーターに襲い掛かる。
 シアリの風花の氷雪領域が、きらりと光って辺り一面を、ドリームイーターの身体を氷漬けにする。とはいえ、お花への気配りはわすれません。
 エアシューズのアニーがぴょこんっと跳ねて、スターゲイザーが機動力を奪う。
「こういう楽しいことはな、一人だけじゃ、つまらねぇ、共有できる友がいてこそ心底楽しいって思えるもんだ」
 ドリームイーターのその先にきっといる、碧のために獅龍が告げる。
 その先を紡げないドリームイーターに、獅龍の言葉はぐさりと刺さったのだろうか。押し黙ったウサ耳魔女っ娘が、キャンディのステッキをぎゅっと握り締める。
「わたしだって」
 ウサ耳魔女っ娘ドリームイーターの声はどこか、震えている、ようで。
「わたしだって、」
「その友達は、お前と一緒だから楽しいんだと思うぞ。お前はどうなんだ?」
「わかってるっそんなの、わかってるッ」
 わかっていて、けれど、どうにもできない想いがドリームイーターを生み出してしまう。けれど、願わくば。
 碧にその先を見て欲しい。
「不安があるなら面と向かって話せばいい、それが親友ってもんだろ?」
 だからこそ、それをめちゃくちゃにするようなドリームイーターは絶対に許せない。
 獅龍は左手に掴んだ鉄塊剣を、豪快に振るった。
 その炎を纏った一撃が空気を切り裂き、ドリームイーターを叩き切る。
「さあ可愛いお顔を――基、その首を頂きに行こうか」
 カツン、とヒールの踵を鳴らし、赤のドレスを靡かせたニコルの手には、簒奪者の鎌が光る。――きりりと気を引き締めた女王様は、くるりと鎌を回し、畳みかけるようにギロチンフィニッシュを放つ。
 犯罪者には、死を。
 閃く斬撃は目も眩むほど、深く、突き刺さる。
「いくぞっ」
「ナノー!」
 すぅ、と息を吸い込んだ真の声に、煎兵衛が応えるように鳴き――。
「空隙拡散。氷弾よ、大気を斬り裂け!」
 真が打ち出した氷の弾丸が、空気を切り裂き、冷気の亀裂を生じさせる。
「きゃああっ」
 鋭く、突き刺さるような痛みがドリームイーターを襲い、もうだめ、とばかりにウサ耳魔女っ子はぺたん、と座り込んだ。
 どうやらもう、戦う力はないようだった。
「貴女に無いものを親友が持っているように……親友に無いものを、貴女は持っているんですよ」
 久遠は少し心配そうにその姿に視線を送り、そっと首を傾げて見せる。
「もし、自分が信じられないなら、貴女を大好きでいる親友を信じなさい、ね?」
 少し考え込むように視線を伏せたドリームイーターの身体が、キラキラと光りに包まれる。その姿は、空気に溶けるように消えて――残った輝きだけが、すぐ側の木へと、風に乗って運ばれるようにふわり、と跳ねた。
 光が消えた先、木の枝に腰掛けていたのは魔女っ娘ウサギのぬいぐるみ。
 その表情はそっと、優しく、会場を見守ってくれているようで――ケルベロスたちは顔を見合わせ、微笑み合う。
「きみにとって、そして僕たちにとっても、素敵なハロウィンパーティになりますように!」
 ニコルがそっと願いを口にして。
 ――本物のハロウィンパーティの時間が、近づいていた。

●年に一度の賑やかな夜
「お任せください」
 本物の執事よろしく、丁寧に微笑んだ久遠がぽんぽん、と仲間たちの身体を優しく叩けば、あっという間にクリーニング! ニコルが素早く会場の壊れかけた場所をヒールすれば、戦闘の後はすっかり消えて、ここからが本番だ。
 緩んだ包帯をきゅきゅっと巻き直して、獅龍も完璧にミイラ男に元通り。
「オツカレさん」
 ふぅと真がホッと息を付いた。
「さて、本番のパーティといきましょっ」
 参加していいのかな? と不安げな真の背中をカロンがぐいっと押して。
「誰が一番、お菓子集められるかしらね!」
 シアリの言葉に、ちょっとした競争が始まったのだった。

「トリックオアトリート!」
 ――本物のパーティが始まった会場はいつしか、賑やかな声に包まれていた。
 パンパンパーン♪
 カロンが余ったクラッカーをにぎやかに鳴らし、
「じゃーんっ」
「おおー」
 着ぐるみから手品のようにお菓子を取り出して見せるアニーは、子供たちの歓声に包まれている。オレンジ味のキャンディは可愛らしいハロウィンカラー。
「ハロウィンパーティって実は初めてだからとっても嬉しい!」
「こんなに楽しいなんて、思いませんでした」
 にこにこほんわか微笑みを浮かべるニコルも、あまり普段からはしゃいだりはしない久遠も、初めてのハロウィンパーティに少し頬が紅潮気味だ。
「皆、楽しまなくちゃな」
 せっかくの、年に一度のハロウィンの夜。
 賑やかな会場の様子を目を細めて眺め、獅龍はうんうんと頷いた。
 誰もが輝く笑顔でいられるこの瞬間、見劣りなんてする人間は一人もいない。
 碧もどこかの会場で笑っていてくれるだろうと、業は願う。
「ハロウィンは皆が主役なんだから」
 たくさんの甘い幸せでいっぱいになったバスケットを抱き締めて、シアリがきらきらと瞳を輝かせた。

 ハロウィンの夜はまだ、始まったばかり。

作者:古伽寧々子 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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