●宝石加工職人の技術
薄暗い部屋の一室。
その中で、螺旋の仮面を装着した2人がひざまずく。その前にいるのは、色っぽい黒のハイレグ衣装を纏うミス・バタフライだ。
「あなた達に使命を与えます」
使命を受ける2人。1人はミス・バタフライと同様の衣装を纏った女性。もう1人は軽装で、サーカス団員を思わせる男性だ。
その2人へ、ミスバタフライはいくつかの宝石を見せ付ける。原石から加工され、綺麗な形となって煌く色とりどりの宝石。見る者を魅了するような輝きを放っていた。
このように宝石を加工する職人がこの街にいると、ミス・バタフライは告げる。
「その人間に接触して仕事内容を確認、可能ならば習得の上で殺害しなさい」
なお、対象となる者のグラビティ・チェインの奪取は問わず、技術習得を最優先にとのこと。
これに、女性配下は首を傾げながらも、かしこまりましたと返事をする。
「私にはミス・バタフライの意図は理解しかねますが……、これも地球の支配権を大きく揺るがす一手なのでしょう」
そうして、配下の女性は男性を従え、この場から去っていったのだった。
一方、こちらはとあるビル内。
宝石店の入ったテナントの前を通りがかったケルベロス達は、ウインドウショッピングをしているリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)を発見する。
「あっ、皆も買い物かな?」
ケルベロス達は依頼を求めにやってきたとのこと。ならばとリーゼリットもヘリオライダーとして、対する。
ヘリポートへと一行が移動すると、リュティス・ベルセリウス(イベリス・e16077)がこんな話を持ちかけた。
「宝石の加工職人がミス・バタフライのターゲットになると、うかがいましたが」
どうやら、リュティスの話は本当らしく、ヘリオンで予知を確認したリーゼリットが頷く。
螺旋忍軍ミス・バタフライが起こそうとしている事件は、直接的には大した事は無いが、巡り巡って大きな影響が出るかもしれないという厄介な事件だ。
「皆には、狙われた宝石加工職人の保護と、ミス・バタフライ配下の螺旋忍軍の討伐を依頼したいんだ」
この配下は宝石加工職人の所に現われ、仕事情報を取得、あるいは習得後に職人を殺害しようと動く。
ミス・バタフライの狙いは、まるで、風が吹けば桶屋が儲かるかのごとくバタフライ効果を引き起こすという話もある。巡り巡って、ケルベロスにとって不利な状況が発生する可能性が高い。
「もちろん、それはそれとして、デウスエクスに殺害される一般人を見逃すことはできないよ」
螺旋忍軍は宝石加工職人の元を昼間に訪問するが、ケルベロスは事件の3日前の朝に到着し、準備が可能だ。
ここで、職人を事前に避難させるわけにはいかないことを注意しておきたい。
「その場合、敵は別の職人を狙ってしまって、被害そのものを防ぐことが出来なくなってしまうからね」
基本的には、職人に事情を話して仕事を教えてもらい、螺旋忍軍の狙いを自分達に変えさせる……というのが最良だ。
だが、宝石に関する知識、加工の技術などを3日で取得するのはまず不可能と言える。
「職人に体験入門を提案して、見習いとして認めてもらうことができれば、螺旋忍軍を欺くことができるかもしれないね」
体験入門には貴重な宝石は使えず、銀細工の加工を行う形だ。
直径3、4センチほどの銀の塊を、糸鋸や研磨機で加工、形を調整して、ペンダントトップ、リング、キーホルダーなどを作ることができる。
最終日や事後なら、宝石加工をさせてもらえるかもしれないが、職人立会いの元で一発勝負となるので、土産品を考えるならば気合を入れて修行したい。
また、技術の習得が難しいと言うことであれば、事件当日は職人に囮となってもらう必要もある。それを踏まえて作戦は練っておきたい。
現れる螺旋忍軍は2人1組で現れ、いずれも螺旋の仮面を被っている。
「1人は道化師風の衣装を纏った女性、もう1人は、サーカス団員の姿をした男性だよ」
ミス・バタフライ配下の女性道化師は、仕込み杖での攻撃、カード投擲と幻覚を見せ付けて攻撃してくる。また、男性は身軽な身体を舞わせて殴りかかってくるほか、ナイフジャグリング、猛獣のオーラといった手段で攻撃を行う。
「現場は、東京都某所にある宝石加工職人の工房だね」
そこは、個人の工房で、自宅も併設されている。職人は宝石の研磨、彫金を生業としている。弟子を取る主義ではないようだが、ケルベロスに好意的なので、事情を話せば理解して協力してくれるだろう。
工房は小規模なものの為、敵と戦いを考えるならば相手を別の場所に誘導するか、職人にヒールグラビティでの修復を行うことについて予め説明した上で、工房内で戦うことになるだろう。
「基本的には、職人を護りながら戦うと思うのだけれど……」
状況によっては、戦況は大きく変わる。職人に認めてもらったことで自分達が囮となれるのならば、螺旋忍軍に技術を教える修行と称して、有利な状態で戦闘を始める事が可能となる。
「上手くいけば、2体の螺旋忍軍を分断するとか……、一方的に先制攻撃ができるかもしれないね」
囮となるのが難しければ、予め宝石加工職人を護る作戦を行う方が無難かもしれないので、どういった作戦をとるかは仲間内で作戦を詰めておきたい。
説明を終え、リーゼリットはヘリオンへと乗り込もうと動く。
「敵の……ミス・バタフライの狙いはバタフライエフェクトということだね」
それすらも自由に使いこなす敵は実に厄介極まりない。だが、最初の羽ばたきを……敵の初動さえ食い止めれば問題はないはずだ。
「この3日間、皆はどう過ごすのかな」
――綺麗な宝石細工ができたのなら、後で見せて欲しいな。
最後に、リーゼリットはケルベロス達へとそう願うのだった。
参加者 | |
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ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000) |
月海・汐音(紅心サクシード・e01276) |
雨之・いちる(月白一縷・e06146) |
クロード・リガルディ(行雲流水・e13438) |
リュティス・ベルセリウス(イベリス・e16077) |
シャウラ・メシエ(誰が為の聖歌・e24495) |
美津羽・光流(水妖・e29827) |
人首・ツグミ(絶対正義・e37943) |
●宝石加工職人の元へ
都内某所。
ケルベロス達は、とある職人の工房を目指す。
「またこいつらかいな」
露出高めの衣装を纏う美津羽・光流(水妖・e29827)がそんな悪態をつく。
ミス・バタフライ配下の螺旋忍軍は、地味に一大勢力だと彼は実感する。その螺旋忍軍から職人を守るのが今回の任務だ。
「これ以上被害が増えぬ様、しっかり撃破していかなければならないな……」
クロード・リガルディ(行雲流水・e13438)が無表情のままで少しだけ口を開く。眼鏡を吊り上げるクロードはほぼ喋らないが、彼なりに螺旋忍軍の活動を懸念していたらしい。
「とはいえ、ちょっと楽しみだな」
任務とはいえ、これから行うことになるのは、宝石加工の修行。雨之・いちる(月白一縷・e06146)は少し心を弾ませていたようだった。
宝石加工職人、古橋・慎治の工房を訪れたケルベロス一行。
「……話は分かった」
ピンクの髪のユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)が事情説明すると、職人はケルベロスの頼みならばと了承してくれた。
「こういう加工技術を学ぶのは、流石に初めてね……」
クールな態度の月海・汐音(紅心サクシード・e01276)だが、興味があるのか心を躍らせている。とはいえ、任務だからと自制もしていたようだ。
「前回、学んだ加工技術が応用できると良いのですが……」
メイド服姿のリュティス・ベルセリウス(イベリス・e16077)は前回、ガラス細工職人の元で指輪を作成している。今回もと、彼女は意気込んでいた様子だ。
「わたしたちをしんらいしてくれているあかしなので、しっかりこたえなきゃ、です」
自身のような子供にも、高価な宝石を触らせてくれる職人にシャウラ・メシエ(誰が為の聖歌・e24495)は感謝し、奮起する。
「さーて、修行に励みますよーぅ」
ややだらしなく強化軍服を纏う人首・ツグミ(絶対正義・e37943)。間延びした口調ではあったが、彼女も気合を入れようとしていたようだった。
●宝石加工の修行
「師匠、よろしくお願いします!」
いちるは職人を師匠と呼び、頭を下げる。
「まずは、知識の吸収からですねーぇ」
ツグミが言うように、一行は金属、宝石について学ぶ。数が多い為、職人が修行で使うものをピックアップしてくれている。
「宝石細工関係に関しては、流石に専門外なのよね」
アクセサリー造りは、体験教室で触った程度というユスティーナ。それでも、職人を危険から遠ざける為にやるべきだろうと、彼女はしっかりと1つずつ記憶していく。
それが終われば、器具の使い方だ。
職人が実際に加工を行う様子を、メンバー達は注視する。ツグミは注意点など、率先して尋ねていたようだ。
一行は銀を使い、見よう見まねで細工を始めることとなる。
「普段使い出来そうな、ペンダントトップを作りたいな」
器用な方ではなくとも、頑張ってみるといちるは意気込む。
「事件当日の朝に、見習いと認めてもらえるよう努めなくてはね」
汐音は任務を成功させる一環として、この修行に臨む。
(「……イルカの形、とか」)
挑戦するのはペンダントトップ。真面目に作業する汐音は、彼女なりにこの修行を楽しんでいた。
後はひたすら、実践あるのみ。クロードは極力自分達で囮になれるようにと努力を重ね、最善を尽くす。
ある程度慣れると、光流は幅を広げようと職人にデザインの基本も尋ねていたようだ。
3日間の修行の中、器具の台数が限られていることもあり、メンバーは螺旋忍軍の対応の為、職人の工房の周辺を探索する。
「そうだな……」
クロードは戦場に適した場所を求めて歩く。
代わる代わる外に出て、探索する。いちる、ツグミも外に出て、メンバー達の情報を合わせる形で、近所の空き地に目をつけていた。
また、リュティスの発案もあり、連絡先の交換、囮が成功した場合の合図など、ケルベロス達は螺旋忍軍対策も徐々に進めていたようだ。
襲撃前日。
ある程度、加工作業に慣れてきていたメンバー達。
「……まぁまぁ、かしら?」
ようやく、銀細工がうまくイルカの形になり、汐音はそれを見回す。
「わぁ、上手だね。ふふ、私も負けてられないなぁ」
いちるがそれを覗き込みつつ、自らも華奢なイーグルフェザーをモチーフとしたペンダントトップを造る。
「んんん……、薄く削るのって難しいね」
だが、うまくいかないようで、彼女は職人にそのコツを尋ねていたようだ。
シャウラも一生懸命、精密作業に当たる。
「なまえんそうと同じ。しっぱいはできないです、ね」
彼女は銀塊をプレート状にし、お気に入りの譜面を抜粋して刻む。
「音はいっしゅんですけど、がくふならのこります、から」
最終的には、音符の符頭を繰り抜き、小さな宝石をはめ込む予定だ。気を引き締めて慎重に。着実に最後までやりきるのが身の為になると、シャウラは作業を進める。
ただ、こつこつと作業するだけで認めてもらえるほど、甘くはないようで。
ユスティーナは思った以上の成果が出せぬこともあって、明日に迫った螺旋忍軍の対応に思考を切り替えていた。
ただ、諦めずに製作を続けるメンバーの姿も。
「本気の修行、ですからねーぇ」
やるからには徹底的にと、ツグミはひたすら真面目に作業に没頭する。その手元には、メビウスの輪の形をしたキーホルダーが。
「裏のない形が自分っぽいですよねーぇ」
……とは、本人談。表裏のなく不明瞭な飾りだが、入れた鍵を動かすとちょっと楽しい、らしい。
リュティス、光流は指輪にチャレンジしていた。
精密な加工を行えるようにと、リュティスは全力で頑張る。とはいえ、ガラス細工とは全く違う製造工程に彼女はやや戸惑いを見せていた。
光流は基本的な形のリングを丁寧に造る。その仕上がり具合に、職人も感嘆していたようだ。
●現われた螺旋忍軍
見習いとして職人が選んだのは、光流、ツグミの2人だった。職人曰く、諦めずに取り組む姿勢を主に評価したとのこと。
螺旋忍軍の来訪に備え、ケルベロス達は動き始める。
職人には自室に隠れてもらい、見習いとなった2人が工房に詰めていると。
「こちら、宝石加工職人の工房とうかがいましたが」
1人は道化師の女性、もう1人はサーカス団員風。いずれも螺旋の仮面を被った者達だ。
「入門希望かいな」
「はい、是非ともその宝石加工の業、ご教授いただきたいのです」
「いいですよぅ」
ツグミがそこで、応対した螺旋忍軍の2人の入門を了承する。
「ただ、ここには貴重なもんもあるさかいな」
「ちょっとついてきてほしいんですよーぅ」
螺旋忍軍2人はその業について知るべく、見習い2人に黙ってついていくこととなる。
修行場と称した人気のない空き地。
そこで、光流は手のひらに握っていた銀を螺旋忍軍2人へと見せ付けようとして。
「これが銀やで」
それに敵が気を向けた一瞬の隙を、ケルベロス2人も見逃さない。
光流がオウガメタルを纏わせた拳で、サーカス団員風の男、オリンドを殴りつけていく。同時に、ツグミもオリンドに流星の蹴りを繰り出していた。
「……何事ですか?」
何が起こっているのか把握の遅れた道化師女性、アヴェ。彼女の前に、近場へと潜伏していたメンバー達が現れる。
敵の分断がうまくいき、してやったりといちるは微笑む。
仲間の援護の為、リュティスは後方から構えを取る。彼女はこのまま仲間の回復支援に当たるようだ。
「…………」
無言で敵の背後に迫るクロード。彼はこの付近に一般人がいないかと、注意も払う。
対して、シャウラは工房に被害を及ぼさず、こうして戦うことができるのに安堵していたようだ。
螺旋忍軍が状況を察して構えを取るのを見て、ユスティーナも身構えてその攻撃に備える。
「貴方達の思惑通りには行かせないわよ」
そこで、近距離攻撃特化の汐音が敵へと仕掛けていく。
「舐められたものですね……!」
不意をつかれども、螺旋忍軍はすぐさま態勢を整えてケルベロスへと応戦してきたのだった。
●1人ずつ確実に
ケルベロスによって分断された螺旋忍軍、アヴェ、オリンド。
多少のハンデなど覆してしまおうと、その2人はそれぞれ手にするトランプやナイフを使って攻撃を仕掛けてくる。
対する、やや優勢なケルベロス達。
リュティスは前線メンバーにオウガ粒子を飛ばして、仲間の感覚を覚醒させる。ウイングキャットのシーリーも翼を羽ばたかせ、メンバーの邪気を振り払わせていた。
その支援を受け、ユスティーナは飛んで来るカードや宙を飛ぶナイフを受け止める。
「どんな暗闇でも、心に宿した光がある限り歩もう。魂が唄う限り」
心から歌声を上げた彼女は前に進む為の力を自らに与え、傷を塞いでいった。
そうして、ユスティーナが極力敵を抑える間に、メンバー達は敵を、特に前線で攻撃を仕掛けてくるオリンドから各個撃破をはかる。
「担い手よ此処へ……未来を紡ぐ、輝きの剣!」
己の魔力で、一振りの長剣を創造した汐音。自身の体に開かれた魔術回路とその長剣を金色に輝かせ、彼女はオリンドの身体を切り裂いていく。
身軽な身体を活かして戦場を飛び回る敵。しかし、いちるがそれに追いついて。
「身軽さでは負けないよ、っ」
彼女は照準をオリンドに合わせ、竜鎚から撃ち出した砲弾を叩き込んだ。
続けて、クロードもまた号砲を発し、敵の足止めを行う。
「女道化師の抑えを……」
クロードの声に応じ、シャウラのウイングキャット、オライオンがアヴェの抑えに向かう。
「ねこの目なんてよばれてる宝石もあるから、くりぬかれないように気をつけてね?」
カラフルな爆発によって仲間の士気を高めながら、シャウラは砕けた口調でオライオンに呼びかけていた。
それもあって、連携が取れずにいる螺旋忍軍2人にケルベロスはさらに攻勢を強めて。
「前ほど恨んでへんけど、倒すのは変わらへん」
囮となっていた光流はマインドリングから発した光の剣に空の魔力を帯びさせ、オリンドに付けられた仲間の傷を斬り広げる。
そして、ツグミが装着した戦籠手で敵の肩口を一突きした。
「まだまだ、これからよーぅ」
不適に笑う彼女に、オリンドは螺旋の仮面の下で呻き声を上げる。
「ここまでの腕を持つとは……」
周到な用意の相手に、アヴェは舌を巻いていたようだった。
螺旋忍軍の2人、アヴェ、オリンドは奇襲という状況から立て直すことが出来ずにいた。
盾となるユスティーナ、オライオンがその散発的な攻撃を防ぎ、連携させずにいたのだ。
「仮面の下は、どうなってるのかな?」
そんな中、いちるはオリンドに対し、ヌンチャク型とした如意棒で殴りかかっていく。
仮面をうまく剥ぎ取れないかと考えた彼女だったが、その一撃によってオリンドはついに崩れ落ち、煙と共に姿を消してしまった。
「くっ……」
劣勢なのは明らか。アヴェはイルージョンマジックを見せつけ、少しでも状況を覆そうと試みる。
「もしねがうのなら ねがうのなら 引き金を引いてみせてよ……♪」
だが、シャウラが生きる事の罪を肯定するメッセージを歌い上げ、すぐに光流を正気へと戻す。
「人体切断のイリュージョンの礼に、ほんまもんの切断見せたる。……去ね!」
彼は敵に向けて螺旋手裏剣を投げ飛ばし、アヴェの手にする仕込み杖に亀裂を走らせた。
「少しはお役に立てるでしょうか?」
さらに、リュティスが心地よい風を吹かせて、仲間に安らぎを与えた上で体の自浄作用を高める。
それまで、ユスティーナは仲間のカバーをメインに動いていたが、全身に纏う白炎を拳に集中させ、自信に満ち溢れた表情で敵の腹へと打ち込んでいく。
クロードも仲間は十分に戦える状態と判断し、簒奪者の鎌をアヴェへと投げ飛ばす。
道化師の衣装を破かれ、怯むアヴェは仕込み杖を抜いて切りかかってくる。
ディフェンダー勢のカバーが間に合わず、汐音が切り裂かれていたが、ケルベロスは息を荒くするアヴェに気づいて。
「あなたの全て。余さず残さず有効利用してあげますよーぅ♪」
アヴェへと躍りこんできたツグミは、敵の体に右手を突き立て、知識、技、魂を吸い尽くそうとした。
「く、これしき……」
「なら、これは耐えられるかしら?」
それでも抵抗しようとするアヴェへ、汐音が追い討ちをかける。
「裂けなさい……!」
汐音は赤く輝く鎌「Blood Adamas:Origin」を操り、敵の首筋へと振り下ろす。
「かっ……」
自身の頭と胴体が離れる感覚を感じながらも、アヴェは全身を煙と化し、その生命活動を完全に止めてしまったのだった。
●もう少しだけ修行を
任務自体は完了したが、メンバー達は工房に残っていた。
リュティスは自身で仕上げた綺麗な細工を入れた銀細工へ、宝石の取り付けに挑戦する。
シャウラも譜面のプレートに空けた穴へと小さな宝石を丁寧にはめ込み、仕上げを行う。
光流はというと、水蛇を纏った銀の指輪を完成させていた。
シンプルなデザインだが、その瞳にはカットされた小さなルビーが埋め込まれている。
(「綺麗な、似合う人が付けるんは良えな」)
自分でつけることはないが、自分が作った物で綺麗な人を飾ることが出来るのは浪漫だと考えて。
(「髪飾りとか、喜んでくれるやろか」)
思わず、彼はにやけ顔になってしまっていた。
その横で、いちるは自身のカット水晶を一粒、羽につけて。
「戻ったら、リーゼリットに見せに行こうっと!」
会心の首飾りの出来に、彼女は満面の笑顔を見せたのだった。
一通り宝石加工の作業も終え、ケルベロス達は工房を後にすることとなるのだが。
「一朝一夕でできることではないだろうから、また学ばせて貰ってもいいかしら」
「折角だから、師匠に続きを教えて貰いたいな」
こうして触れる機会があったのだからと、宝石加工に興味を抱くユスティーナ、いちるが職人へと願う。
「興味を持ち続けるのであれば、喜んで教えよう」
本気でその技術を会得するのは辛い道。されど、本気でやってくれるのならばと、職人は彼女達の申し出を受け入れてくれたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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