縁日屋台の売り上げ勝負

作者:質種剰


「大阪府にて、神社の境内がデウスエクスの襲撃を受けたでありますよ」
 小檻・かけら(藍宝石ヘリオライダー・en0031)が、毎度の如く説明を始める。
「幸い、神主さんも社務所の巫女さんも全員出払っていてご無事でしたが、神社の敷地がズタボロにされて、縁日の屋台を設置できなくなったのであります」
 折しも、来月の縁日までもう猶予がなく、神社側としても夏場の書き入れ時をみすみす逃すのは惜しいとがっかりしているらしい。
 地元の人々も——殊に毎月欠かさずに参拝していた信心深い人からすれば、神社が再建されるまでの間お参りできないのは寂しい事だろう。
「そこで、皆さんには大阪府の神社へお出まし頂いて、ヒールグラビティによる修復をお願いしたいのでありますよ」
 かけらが言うには、境内が無事に直ったらすぐにでも縁日の市を行う予定らしい。
「ヒールして下さるお礼がわりに、幾つかの屋台をケルベロスの皆さんへ貸し出してくださるそうであります。屋台の出店にご興味おありの方は、是非是非、お気軽にご参加くださいませね♪」
 もちろん、客側として縁日を満喫し、様々な屋台を冷やかすのも大歓迎である。
「屋台を出すとなると、お仲間内で売り上げ勝負をして、勝った方が両方のお店の売り上げをせしめる、なんて楽しみ方もありますよね~♪」
 ただの商売に飽き足らず売り上げ勝負へ走るか、恋人や友人と楽しく買い物や食べ歩きに励むか、自分に合った縁日の楽しみ方を見つけて欲しい。
「うふふ、縁日かぁ、折角だからかけらは浴衣を着ていきましょかねぇ。きっと風情が出て気分も盛り上がるでありますよ~♪」
 と、ファッションに拘る楽しみ方もあるようだ。
「それでは、皆さんのご参加、お待ち致しておりますね♪」
 禁止事項は、未成年者の飲酒喫煙のみである。


■リプレイ


「こんな面だが俺自身甘い物大好きだしな」
 吏緒は、くるくると器用な手つきでクレープ生地を鉄板に焼いていく。
 メニューはチョコ、チョコバナナ、ストロベリー、ブルーベリー、キャラメルと種類豊富。
 焼き立てでしっとりもっちりかつ大きめの生地へ沢山の生クリームと具を巻き、綺麗にソースをかけた様は旨そうだ。
「はいよ、キャラメルとチョコ。毎度あり!」
 更には、食べ歩き用に厚紙を用いた包み紙と、テイクアウト用のナイロン袋を使い分ける気配りを見せ、かなりの数を売り上げた。

「話には聞いていたが賑やかなのじゃなぁ」
 縁日が初めてというミミが店主に収まるのは、金平糖の屋台。
「この見た目と甘さが気に入ったのじゃ」
 詰めるビンの形にも工夫を凝らし、可愛くしたお陰で売り上げは上々。
「食べ歩きにもお土産にもいいはずなのじゃ。何よりわらわが売ってるのじゃ、間違いあるまい」
 自信満々に胸を張る通り、子どもから大人まで大人気となった。
「わらわもいろいろ見てみたいのぅ。見た事がないものがいっぱいなのじゃ」
 その後、ミミは小檻に浴衣の着方を教わり、屋台巡りへ繰り出した。

「おっと……大丈夫ですか?」
 人波に流されかけたトウコを引き寄せて助けるのはトリスタン。
「有難うございます」
 トウコは頬を染めて、そのまま手を取って歩き出す彼へついていく。
 トリスタンは紺地に白の流水柄の浴衣、トウコは白地に浅葱色の流水紋で裾だけ金魚が泳いでいる。
 揃いの金魚の柄の巾着とミミの所で買った色とりどりの金平糖の袋を提げた様が可愛らしい。
「縁日の屋台はどれも美味しいしあれこれ楽しいものですけれど、何より楽しいのはこちらですわね♪」
 と、トウコが案内したのはスーパーボール掬い。
「では、これで一勝負はいかがですか?」
「子どもの頃に兄弟と競いましたからね、負けませんわよ?」
 トリスタンの提案に、ポイを買ったトウコがにっこり微笑む。
「さて、勝負ですね」
 大物狙いのトリスタンと、きらきら綺麗に照り返す物を狙う見た目重視なトウコ。
 結果、重さではトリスタンに、数ではトウコに軍配が上がるも、勝負関係なく楽しそうな2人だった。

「……にいさんに、出店とか面白そうだし、やってみたいって言ったら、生物災害を起こしたくないからやめてくれって言われた……納得できない……」
 ぷぅと膨れるリーナだが、アップの髪と黒百合の浴衣が可愛い。
「リーナの料理は冗談抜きで死人が出かねないからな……」
 何故か既に疲労困憊なのはセイヤだ。
「縁日か……知り合いと射的で争ったのを思い出すな……」
 粋な着流し姿の彼がまず興味を持ったのは射的の屋台。
「……俺は銃は苦手なんだが……気弾とか拳圧とかではダメだろうか……? ……ダメか……」
 すると、
「……そうだ……かけら、折角だし、一緒ににいさんにおねだりして、色々買って貰おう……」
 余程屋台を却下されたのを根に持ってるのか、小檻へこそこそ耳打ちするリーナ。
「あ、じゃあスーパーボール掬いしたいであります♪」
「……ん? ……何故、俺の奢りに……? 2人共……??」
「うん、にいさん、大丈夫だよね……」
 彼の財布が心配である。

「小檻さんお祭り好きですよねー。パンケーキ大食い競争とか、下着の負荷で七夕の笹を折るお祭りとか」
 盛大に勘違いしたミリアの屋台は飴細工。
「ウィッチオペレーションで、手早く細かい作業は慣れてますからねー」
 その割に素人レベルの鶴や亀、蛇にしか見えぬ龍が居るのは気のせいか。
「どの猫さんにします? 丸まって寝るサバトラさんです? 仰向けで遊んで欲しいぶちさんにします?」
 ただ、喋る間にも増える猫飴だけは、本気なのか精巧である。
「爪とぎする三毛猫さんにします、かわい〜♪」

「まあ、子どもにせよ大きいお友達にせよ有名な方や美男美女の物の方が良いに決まってるよな……」
 密かに自分のお面が売れないのを寂しく思うのは蒼眞。
 親しい仲間やサーヴァントのお面に、セットでケルベロスカードを模したカードも並べている。
「ん? ああ、ありがとさん」
 ふと気配に振り向けば、蒼眞のお面を被った小檻。
「……言っておくけど妙な事には使うんじゃないぞ」
「『俺は下着の中身にしか興味ない……なんてな』」
「……おい、俺はそんな台詞は言わな……え? 結構言ってる?」

 レテイシャの射的屋台。
「……何だか妙に視線感じるような?」
 お揃いの法被とさらしで接客する夕璃は、ふにっと柔らかそうな胸元が自然と覗ける為、客の視線を釘づけ。
「おーい! 射的やってみねーかー?」
 ガイバーンを見つけて呼びかけるレテイシャもまた、法被の間から飛び出すサラシ爆乳がどたぷんと揺れて男性客を惹きつけるが、本人まるで気づかず。
「ひゃんっ!? こら、いたずら小僧ども!」
 その為か、悪ガキに胸目掛けて弾を撃たれ、我知らず変な声を出した。
「わわ、だいじょぶ? もぅ、コルク銃は人に向けて撃っちゃ、めっです……ぴゃ!?」
 慌てて子どもを諌める夕璃だが、別の子からお尻や胸に弾を当てられ、思わず飛び上がる。
「かたじけないのう。この豚さん貯金箱貰ってくのじゃ」
 と、獲物を射止めたガイバーンの次に現れたのは、ニルス達4人。
「海晴さまが、奢ってくださると聞いて……!」
 言子がきらきら瞳を輝かせる。
「際限なく食い漁りそうだから一つ二つまでね!?」
「むっ、ミハル様が出し渋りするなら射的勝負ですっ」
「いいよ。負けた方が4人分の支払いを引き受ける。どう?」
(「めちゃくちゃ食べるのが2人いる……必ず勝って、この経済的危機を回避する!」)
 まるで背水の陣の緊張感に晒されながら、海晴は射的用のコルク砲を構える。
「良い物、当たりますように♪」
 弾詰めを手伝う夕璃。
「カムブランさん頑張ってね♪ 勝てばいいのよ、勝てば……!」
 ぐっと拳を握るかぐら。いつの間にか焼きそばとラムネを4人分調達済みだ。当然焼きそば2つは大盛り。
 結局。
「クマさんとシロクマさんとツキノワグマさん、アナグマさんゲットですっ♪」
 ニルスが狙撃手の如き真剣さでぬいぐるみを落としまくり、海晴の破産は決定。
「懐が寂しいのは格好がつきませんよね」
 と思われたが、彼の白い夕顔柄の紺地の浴衣へ、ニルスが密かにケルベロスカードを挟んでくれた。
「何れ近いうちに返して貰いますから」
 彼女の浴衣は白地に赤や青の朝顔柄が華やかだ。
「流石に、わたくしが本気を出したら……ご迷惑でしょうから……」
 言子は遠慮しつつも、フレッシュのアナゴ串、アイビスのチョコバナナを始め、たこ焼き、お好み焼き、カステラを買い食い。
「待って待って、それでまだ本気じゃないの!?」
「……あっ、珍しい……カレーの屋台なども……あるのですね……」
 まだ食べようと屋台へ向かう彼女を見送り、海晴は天を仰いだ。
「ははは……有難うニルスちゃん」

「ンじゃまァ、昔取った杵柄ってヤツだ。ガッツリ稼ぐか」
 秘伝のタレを使いどんどん海鮮串焼きを拵えるのはフレッシュ。
 頭に巻いたタオルと甚兵衛がハマり過ぎるぐらいハマっている。
「わーったよ、ガキはおまけナ。あとは本数買うならちっとぐれェまけてやる」
 大阪人の値切り攻勢に気圧されつつ応じていると、見知った顔が。
「はいかけら、フランクフルトですよ。あーん♪」
「あむっ、熱々でおっきくて咥えるのが大変〜」
 小檻の口へ太い物を突っ込む宴である。
「妹島さんステイ、って言っとくべきよね」
 焼きそばを抱えたかぐらがツッコむ。もはや師団の日常だ。
「ぼく、イカ焼きの匂い大好き……♪」
「かけらも大好き〜」
 フレッシュの屋台で宴は飯蛸串を購入。
「しかしハコ貸してくれるとかマジか……アガリがキツいとかじゃねぇよナ……?」
「ないない」
「流石にかけらからは金取れねぇなァ、ほれ、持ってけよ」
「タレの色がリアル! ありがとフレッシュ♪」
 アナゴ串にはしゃぐ恋人を撫でつつ宴が首を巡らせれば、海晴達の射的対決が見えた。
「あらあら……何やら大変な事に?」

「浴衣のかわええ彼女連れた兄ちゃん!」
 威勢良く声かけに励むのはアイビス。
「わしと変顔勝負かジャンケン勝負で勝利、それか琴線に触れるバナナの食い方しよった子にゃあ一本サービスするでえ、けっけっけ」
 そうゲス顔で笑ったかと思えば、
「こん暑い中家族サービスちゃあパパンにもママンにも頭下がるけえ」
 子連れの大人を爽やかな笑顔で気遣えるのが彼だ。
「アイビスさんらしい売り方ですね。ぼくもご相伴に与ります♪」
「……んっんっ、ふぐぅ」
「菊池さん、小檻さんに何させてるの……?」
 妙にツッコミが板についたかぐら。
「フレッシュちゃん一太ちゃん売れ行きはどうかいね」
 休憩がてら冷やかす屋台は、売り上げ対決中の仲間の所。
「売り上げを賭けろだァ……?」
 稼ぎの使い道は決めたと渋るフレッシュも、半分だけならと承諾。
「そりゃお前、うちが敗ける訳が――やべぇ、最初の引換券代計算に入れてなかった」
 思わず一太は頭を抱え、がっくり項垂れた。
 引換券とは、風船釣りの参加賞として1枚渡せるよう、一太が予め飲食屋台へ金を払って作ったもの。
 2人の他、小梢丸も協賛していた。
「……まぁ負けよってもわしゃそれなりに成果あったけえ上出来や」
 その後、浴衣お姉ちゃんの連絡先をゲットして喜ぶアイビスだった。

「押し寄せろカレー、立ち上れいい香り、ターメリック!」
 一晩煮込んだめちゃくちゃ美味しいカレーで境内を直したカレーな勢いのまま、カレーライス屋台を営むのは小梢丸。
「美味しいカレーを食べてみんな元気になーれ」
 スパイシーな香りに空腹を誘発された客が押し寄せ、勝負に参加せずとも黄鮫の中では一番の売り上げを叩き出した。
「ああ、カレーが食べたい」

「こういう時はやっぱりゲームが一番だろっつーことで」
 こちらは一太の風船釣り屋台。
 水風船をこよりを付けた針金で釣る遊びだ。
「ほらお客さん、そいつはルール違反だぜ?」
 針金の方を持って釣る客がいないか監視の目を光らせていると、宴と壮輔が来た。
「折角ですから壮輔さん、勝負です!」
「俺としても悪くないな。勿論、わざと負けるなんて絶対にしないがな」
 勝負は白熱したが、天は壮輔に味方してくれず、僅差で宴に負けてしまう。
「勝負ありだな。ありがとう。月見里と妹島」
 ちなみに、黄鮫男衆の売り上げ対決は、一太が先行投資で脱落、客にサービスし過ぎたアイビスも利益が振るわず、フレッシュが勝った。

(「……昔、子どもにねだられてくじ引きや射的をやったものだな……」)
 知り合いの姿を遠巻きに眺め、一人しんみりするのは隆治。
 隠密気流を纏って人の波を縫うように歩く彼は、誰にも会うつもりがなく焼きそばや吏緒のクレープを楽しんでいる。
「このにぎやかな場所を、これからも守っていかないといけないな」
 ただ帰り際、境内の端まで来た時に一度だけ、喧騒の方へ振り返った。

「こんばんは、カケラ。ユカタ似合ってるね! 落ち着いた色のユカタに可愛い帯のギャップがいい!」
 そう屈託なく褒めるマヒナ自身は髪を結い上げ、白地にピンクのハイビスカス柄の浴衣を着ていた。
 濃いピンクの帯と赤い帯締め、中央の白いガラスの花を模した帯留め飾りのコントラストが綺麗だ。
「こんばんは、お褒めに与りまして♪」
「ガイバーンは鯉柄の浴衣か」
「うむ、理弥の甚平は男らしいのう」
「甚平涼しくていいよな、後はこれさえなきゃな……」
 旅団長手縫いの甚平を着た理弥はマヒナに貰った水風船を見て苦笑い。
 アロアロは蒼眞の屋台のお面を着けている。
「え~全然飛ばない……」
 射的に苦戦するマヒナだが、
「レバー引いてからコルク詰めた方が飛ぶんだよ」
 理弥の助言でどうにか景品をゲット。
「ガキの頃は射的荒らしと恐れられたもんだぜ……」
 その間にも、理弥は山のように景品を撃ち落として出禁寸前。
「小さいのにすごいね……」
「小さいは余計だ!」
 目を丸くするマヒナへ下からツッコミが飛んだ。

「せっかくですし、かけらさんもお一ついかがですか?」
 奏星が商売に選んだのはカキ氷の屋台。
 イチゴ、メロン、マンゴーの他にオレンジや抹茶といった変わり種もあり品揃えが豊富だ。
「オレンジを頂くであります♪」
「どうぞ。浴衣に零さないように注意してくださいね?」
 にこりと笑った奏星自身は、水色の涼しそうな浴衣がよく似合う。
「気をつけま……あ」
 ぼたっ。
「ゆ、浴衣じゃないしせーふ!」
「……虫が来ないよう拭いてあげますよ」
「ひゃんっ、素手で拭かないで恥ずかしい!」


 屋台『奇跡の型抜き恋占い』。
 客をビーズソファーへ導いて、上手にハートを型抜けたら恋愛成就とご利益をでっち上げる寸法だ。
「残念な結果になっても大丈夫、村長様の所で救済グッズ売ってます!」
 そう薦める法華。連続成功数に応じ微妙な景品も貰えると言う。
「やった、トゲつき肩パッドであります♪」
「って、気付けば皆に抜きまくられているッ?!」
 側に参加賞であるキンキンに冷やした奇跡の水を設置したせいで、型抜きが湿気て楽勝になっていた。
「お疲れ様です。差し入れ持って来ました」
 そこへ、更に冷たい飲み物を運んできたのはリエラ。
「いかがですか~? カップルさんにおすすめですよ~?」
 法華が感謝に咽び泣く傍ら、懸命に客を呼び込んで店の手伝いに励んだ。

 珍しくアクセサリー、しかも恋愛のお守りを屋台で売るのは日出武。
「これは恋愛成就させるものじゃあない。その逆」
 興味深そうに眺める客へ、日出武の弁舌が冴える。
「これを持って憎いバカップルどもに別れろ別れろと強く念じれば、あら不思議。ふたりはたちまちケンカ別れする事間違いなし!」
 実はワイドショーで話題になったあの破局も、このお守りでみんなが別れるように念じたからだという噂もありましてねえ。
 決して効果があると断言せず、それっぽくボカすだけだが、
「面白いのう。巫術士の友人の土産にひとつ貰おう」
 信じる者はいるもので、ガイバーンが嬉しそうに買っていった。
「あ、あはは……よし、行きましょう……」
 尤も、日出武をよく知るリエラなどは、もはや何も言うまいとスルーするのだが。

「くじはヒガシバの中に入っているので、そこから引いてねー」
 ソフィアが開いた屋台はくじ引き。
 口へ手を突っ込みゴソゴソやれば、
「10、9、8……」
 ソフィアの謎のカウントダウンと共にブルブル震え出すヒガシバ。
 しかもくじを引く度にヒガシバが『毎度あり!』の文字の形をした垂れ幕を吐き出していた。
 その演出が受けて、くじ引きでよくある景品やダンジョンでの戦利品にも拘らず、千客万来。
 密かに売り上げ上位となった。

「我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・オリュンポス! ククク、縁日に訪れた諸君。君たちは実に運がいい。なにせ、この天才科学者の発明品の数々を買うことができるのだからな!」
 自らの発明品を並べた屋台を開くのはドクター?
「ふん、アンドロメダは、こんなガラクタは売れないとか言っていたな。いいだろう。アンドロメダの店よりも売上を上げて、吠え面をかかせてやろう!」
 しかし、数時間経っても発明品は片手で数える程しか売れなかった。
「仕方ない。気晴らしに屋台でも巡るとするか」

「縁日の屋台といえば、悪の秘密結社の資金源!」
 意気込むアンドロメダはお面屋の店主だ。
「オリュンポスでお面屋といったら、勿論あの方の仮面です!」
 ヒーローのお面に紛れさせてそれとなく置き、子どもにお面をねだられた親が間違って買うのを期待するらしい。
「我ながら、なんて酷い悪事でしょうか。自分の悪事の才能が恐ろしいですね!」
 売れ行きは、ヒーローもあの方のお面も双方好調であった。

「この浴衣っていうのも涼しくていいね」
 紫陽花柄の浴衣にご満悦のピアディーナだが、見事な巨乳と慣れない着付けのせいでガードは甘々。
 一方フィレアも、翼を出す為に二の腕まではだけた様が色っぽい遊女風の着こなしだ。
 流石に勝は、普通の甚平と下駄姿である。
「へぇ、射撃の屋台もあるんだ……Ms.フィレアも興味、おありで?」
「ええ。ピアディーナ様も真月のおじ様も射撃得意ですし、ぜひ射的の腕前を拝見したいです」
「ならMr.勝、少し付き合ってくれる?」
「あぁ? 俺もか」
 コルク銃を渡され、勝は一瞬複雑そうな表情になるも、すぐ取り繕って射的に興じる。
 ピアディーナ自身もコルク銃を構え、お菓子を幾つか落とした。
 危なげなく命中させる2人に刺激されたのか、次はフィレアも射的をやりたくなったらしい。
「では……どうぞ、Ms.フィレア」
 少しでも銃口を的に近づけるべくフィレアは身を乗り出すも、台に巨乳の重みが加わってぐらぐらと不安定。
「こう……でしょうか?」
「そう、両手でしっかり構えて……うわッ!?」
「きゃぁっ!?」
 ついには台が倒れて、2人が折り重なるように転倒。
「いつつ……大丈夫かい……って……」
 下敷きのフィレアを気遣うピアディーナだが、互いの胸が露わな上密着しているのに気づいて大慌て。
「おいおい、大丈夫か?」
「Mr.マサル、すまない……」
 勝が手を引っ張って助け起こしてくれたのへは、頬を赤くして礼を述べた。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月2日
難度:易しい
参加:33人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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