夜風のない静かすぎる山間の夜。昨日までの雨のせいか湿度は高く、少し歩けばすぐに結露するジュースの缶のように額から汗が溢れだす。
「よっし、ここだな」
そんな山道の車道を黙々と歩いていた一人の男は、言葉と共にその建物を見上げた。
生い茂る木々の間を切り開き、ひっそりとたたずむラブホテル。
しかし、既に潰れて久しいそのホテルには派手なネオンの光や、けばけばしい色合いは微塵も残ってはいない。
張り巡らされる立ち入り禁止のテープを潜り男はそんな建物の中へと迷いなく入っていく。その背からはさながら未開の洞窟へ挑む探検家のようであった。
「俺もついに長年守ってきたものを捨てる時が来るんだな」
感慨深そうに呟きながら、男は入り口にすぐのところにある見取り図に目をやる。
「えっと、何号室だったかな」
ライトがわりにしていた携帯端末の画面に指を滑らせて、男はここ最近熱心に読みふけっていたとある噂について纏められていたサイトを開く。
そこに踊る派手な見出しには、『童貞狩り!? 廃ホテルを根城に活動する現代の淫魔!!』と書かれていた。潰れたラブホテルを根城にどんな相手とでも行為に及び快楽エネルギーを貪る淫魔が噂になっているらしい。そのあまりの行為の激しさに腹上死したものまでいるのだという。
「ん、721号室か。へへ、まってろよぉ! 魔法使い見習いの俺が今からいくぜぇ!」
誰も人がいないのをいいことに男はそんな声を恥ずかしげもなく出しながらずんずんと廃墟の内部を歩いていく、その背から忍び寄る魔の手にも気づかずに。
「それがあなたの興味ですか」
その声に彼は喜悦の表情を浮かべ、振り返ったところで、胸を鍵に貫かれた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたのそれは、とても興味深いです」
倒れ行く彼は悔しさに唇を噛み締めつつ、そのまま意識を手放した。
「日本には童貞のまま三十歳を迎えると魔法使いになれる、という都市伝説があるらしいですが、中にはそれをきっかけにケルベロスの力に目覚めた人とかもいるんでしょうかね?」
この話っていったい何が元ネタなんでしょう? とニア・シャッテン(サキュバスのヘリオライダー・en0089)首をかしげながらも、誰かからその答えが返るより先に話を進める。
「まぁそんな童貞を卒業したいという一心で、どんな相手とも行為に及ぶサキュバスの噂に興味をもって、それをドリームイーターに奪われてしまった方がいるようです」
サキュバスとして、なんとも言いがたいのかニアはそれ以上ちゃかすようなこともなく、なんとも言えない微妙な表情で話を続ける。
「この興味から生まれたドリームイーターは、元となった噂の通り性欲旺盛なサキュバスのようですが、あまりまぁ、触れるべきではないのでしょうが、この被害者の方の欲望そのままの姿というか、際どい水着のような衣装に、膝丈のエナメルブーツに手袋といった、まぁどこからどう見ても痴女のような格好をしています」
攻撃方法に関しても実際のサキュバスのケルベロス達に通ずるものがありつつも、性的な方向へとかなり変化しているようだ。
「目標が出現するのは、数年前に潰れてしまったラブホテルで、立地的に人払いなどは必要なさそうですね。そのホテルの721号室で目標は待っており、そこに入室したものに対し、一緒に遊ばないかと声をかけ、同意してしまうと、何がとは言いませんが、死ぬまで搾り取られるみたいです」
男性の皆さんというのは、やはりこういうのが好きなんですかね? と、一人呟きながら、ニアは自分のまっ平らな平野を眺め、ため息を吐く。
「中にはそういう風に快楽エネルギーを得てる方もいるでしょうし否定はできませんが、かといって死ぬまでというのはさすがに度がすぎますからね、これ以上変な噂が流れる前にささっと片付けてしまいましょう」
参加者 | |
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シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892) |
露切・沙羅(赤錆の従者・e00921) |
夜刀神・罪剱(星視の葬送者・e02878) |
空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709) |
風戸・文香(エレクトリカ・e22917) |
リノン・パナケイア(保健室の先生・e25486) |
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624) |
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山中に聳え立つかつてはそれなりに賑わったことが伺えるそれなりの大きさを持つラブホテル。その派手な装飾と光を失い闇の中佇む城のような外観は訪れる者に必要以上の厚をかける。
そんな建物の中とある噂への興味から生まれたと言うそのドリームイーターを倒すべく集まったケルベロス達の表情は様々で苛立ちを露にする者や、どこか興味深そうな者と、一人として同じ表情はない。
「この場所一つとっても、それだけでネタとインスピレーションがわいてでマス……」
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)の言うこの場所が廃墟をさすのか、それともラブホテルをさしているのか、それは当人にしかわからぬことだが、彼女はこの場所に確かに何かを感じ取っているようだ。
「それにしてもこんな山奥にこんな大きな建物を作るなんて、なかななにロックデスネー?」
その建物の用途をよくわかっていないらしいシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)はこのような辺鄙な場所に建つホテルの事を不思議に思っているのか、しきりに首をかしげている。
既にその名残は外から伺えた外観しか残っていないのか、彼等の手にするライトに照らされ浮かび上がるのは灰色の壁と床ばかりで、それらしい設備は残っていない。
「まるで肝試しだな」
呟く空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)はシィカ同様、今一この建物について理解していなさそうな少女、露切・沙羅(赤錆の従者・e00921)の危なっかしい足取りに気を配りつつ歩を進めていく。
「見取り図の通りだと、そこの突き当たりか」
「だな、さっさと終わらせよう」
携帯端末を片手に自分達の位置を確認し、呟いたリノン・パナケイア(保健室の先生・e25486)の言葉を確認するように、夜刀神・罪剱(星視の葬送者・e02878)は一歩進み出て突き当たりの閉じられた扉、そこに書かれた721という番号に目を向けて、嘆息する。
ドアノブに手をかけたリノンは躊躇なくその扉を開けると、中へと一歩踏みいる前にライティングボールを投げ入れてから、扉を開いた。
「あら」
「うわっ……」
ボールの光に照らされ、部屋の中に浮かび上がった光景にミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)と風戸・文香(エレクトリカ・e22917)はそれぞれ違った反応を見せる。
部屋の隅、倒れた一人の男のパンツに手をかけ、いまにも下ろそうとしている一人の女性がそこにいた。
●
彼女のその奇行もさることながら、その服装もまた奇抜にすぎた。
殆ど布面積のない紐のような下着と、手足をピッチリと覆うエナメルの手袋とブーツ。小さく主張する角と尻尾、そして楽しげに揺れる尻尾が、それが人でないことを如実に語っていた。
それは余りにも古い淫魔と呼ばれる類いの姿をしたドリームイーター。
彼女余りにも破廉恥な格好に、沙羅は耳までもを真っ赤にして顔を伏せているのに対し、
「オー、ロックデース!」
シィカは常軌を逸した彼女の姿にある種間違っていない感想を漏らし、
「……少しは慎みというものを知ったらどうだ?」
罪剱は至極全うな意見を口にする。
そんな突然の乱入者達にその淫魔は驚いた素振りもなく。手をかけていたパンツのゴムを離してパチンと音を鳴らしつつ、感極まったようにケルベロス達を見つめた。
「団体様だなんて、なんて嬉しいんでしょうか」
パッと、笑顔を花咲かせた彼女は無防備にその胸を揺らしながらとたとたとケルベロスの前まで近寄り嬉しげに問いかける。
「お一人様ずつ私がお相手しますか? それともまさかまさかの、夢の9Pでしょうか!?」
一人盛り上がり黄色い悲鳴を上げる淫魔。しかし、その問いに答えるものはおらず、
「んんっー? マヨネーズがどうかしたのデスカー?」
相変わらずわかっていないらしいシィカの体を押し退け、淫魔の前へと進み出たリノンは、どこに視線を向けてよいものか、迷うような相手の瞳だけを見つめ、口を開く。
「では、私から楽しませて貰おうか」
色白に痩身、線の細い印象を受ける彼は身長こそやや低めであるものの、整った顔立ちであり、その顔をしげしげと眺めていた淫魔はニコニコと笑いながら、口を開く。
「お兄さんくらいイケメンなら相手には困らなさそうですけど……お腹いっぱいめぐんでくださいね?」
口許に伸ばした人指し指を舌先で舐め、その下腹部を撫でながら妖艶な笑みを浮かべる淫魔はその手をとろうと、手を伸ばし、目の前に突きつけられた銃口から放たれた一撃に部屋の端まで吹き飛ばされた。
●
「あら? もしかしてこういう激しいのがお好みでしたか?」
至近距離からリノンの放った攻撃を食らいながらも、平然と立ち上がる頑丈さはやはりデウスエクスとしての性質か、不意打ちを受け、それでも怒った様子もなく、彼女は各々の武器を手に自身を囲むケルベロス達に対し、笑みを向け、楽しげに呟く。
「乱暴なのもいいですよね、9pは始めてなので不慣れでもご容赦の程を」
言葉と共に放たれるのは黒色の魔力弾。狙われたリノンはこともなげにそれを避け、変わりに躍り出たシィカがギターをかき鳴らし声を上げる。
「さぁ、ここからはボクのロックなステージデスヨー! みんな、ノリノリで聞いてくださいデース! イェーイ!!」
クレイジーな相手に呑まれないように自らを鼓舞するように彼女は歌う。
さらに念を入れモカが仲間をの周囲に紙の兵士達を展開、そうして敵の攻撃への備えが整うと同時、罪剱が踏み込む。
彼の放った蹴りを背中の翼で受け止めた淫魔はそこを起点に発生した重力場にあっさりと捕らえられることになる。
「患者さんの苦しみを、貴方も味わいなさい……」
すかさずミリアの射出した弾丸が淫魔の体を貫き、その内側から病が体を蝕んでいく。
「緊縛にお薬なんてハードで素敵……」
それすらも前向きに快楽として受け止める敵。効果は確実に出ているはずなのに、その口から悦びの声が漏れるというちぐはぐな光景。
それでもかまわずモヱは手にしたバールのようなものを敵の頭めがけて振るう。
「っと、顔はダぁメですよ」
その一撃を腕で受け止め、逆の手をモヱに伸ばそうとした淫魔、その腕に噛みついて主人を文字通りの魔の手から守る、ミミックの収納ケース。それに彼女が驚く間もなく走る強い衝撃が、彼女の体を再び吹き飛ばす。
渾身の蹴りを見舞った文香が綺麗に着地し、見据えるなか、やはり悠然と余裕をもって立ち上がる淫魔。身動ぎする度に弾むその豊満な部位に、恨みがましい視線がじっと突き刺さっているのもに気づかない淫魔は重量感のあるそれを組んだ腕の上にのせながら、ぶるりと身を震わせる。
「ふふっ、たまらないですね。ゾクゾクしちゃいます。三大欲求に勝てるわけないのに、そうやって斜に構えて、気取ってる子達が欲求に素直になったらどうなるのでしょう?」
恍惚とした顔でケルベロス達がそれを聞いていようがいまいが関係ないとばかりにつらつらと喋るその姿はどこか狂気じみている。
思わず銃を抜き撃つ沙羅。発射された弾頭を魔力を集めた掌で受け止めた淫魔はにっこりとした笑みを沙羅へと向け、
「無垢な子が訳もわからない自分の欲求に翻弄されるのも、とっても素敵だと思うのですが? いかがでしょう?」
「え、遠慮するよ!」
背筋に感じた寒気に、思わず立て続けに引き金を引く沙羅。
「そうですか? 残念です」
襲い来る銃弾を事も無げに弾きながら彼女は肩を落とし、
「でもいやよいやよも好きの内、ですよね?」
そういって満面の笑みをケルベロス達に向けた。
遅かれ早かれそうすると彼女は言外に語り、舌舐めずりをした。
●
しかし言葉とは裏腹に淫魔防戦一方で戦いを進めていた。ケルベロス達の攻撃を一方的に受けるばかりで時おり放つ黒色の魔法弾も連続で使用すれば簡単にケルベロス達には見切られる。
どうにも不気味なその動きを警戒しつつもケルベロス達は攻撃の手を緩めない。
モカの放った凍てつく螺旋の力を受け、よろけるその体に罪剱の振るう刀が走り、露出した肌を切り裂く。
血の変わりに溢れるモザイクはすぐに霧散し、その体は傷一つない美しい豊満な体を保ち、彼女が喜悦の声を漏らす。
それはあくまで上部だけ、ダメージは確実に蓄積している筈だ。しかし視覚的な変化がないというのは自然と焦りを生む。
ミリアの起こす、局所的な暴風雪にとらわれた敵をめがけモヱが指先を伸ばし、狙いを定め、
「異常を確認、複製モードに入ります」
その内に魔術的なコードを流し込み、蓄積している不調を増幅する。
瞬間びくりと跳ねたその体をめがけ、文香が一気に迫る。
振り上げた拳に力を込め、速度を体重、それに渦巻く感情をものせて振り下ろす。
地すらも砕くその一撃を受け止めながら、彼女は腕を伸ばすと、文香の肩を抱いて強引に引き寄せた。
「えっ、ん――!?」
気づいたときには口内に舌が深く差し込まれ、その舌を、上顎を、頬の裏を、まるでなにか別の生き物のが蠢いているかのように、縦横無尽に舐めあげ、ねぶり、唾液を絡ませて、粘膜の内を犯している。
混乱の中にありながらも、なんとかまともに動く頭で力任せに淫魔を突き飛ばし、口許を拭う文香。
「あら……あまりよくなかったですか?」
「そ、そういう問題じゃないわよ!?」
起きた出来事を未だ整理できず、落ち着かない文香の様子にクスリと笑う淫魔。
「私を楽しませてくれるんじゃなかったのかな?」
淫魔は誘うようにそう言った、リノンのほうへと向き直り、文香の唾液に濡れる唇を舌で舐め言葉を返す。
「焦らないでくださいまだまだ夜は長いのです」
クスクスと笑いながらいいつつ、彼女は振り返り様ナイフを手に近づく沙羅の攻撃を避け、
「あなたもね、焦らなくても私はちゃぁんと、見てるから」
その視線にに見つめられた瞬間、沙羅は自分の体が突如、カッと熱くなったのを感じた。体が火照り、妙な疼きが押さえられず、両手で体を抱き締めて、ゾクゾクと震える体を止めようとしても、止めることができない。
リノンは沙羅に外傷がないことをさっと目で確認すると、彼女の事はミリアとモヱに任せると、短く呼気をきり素早く踏み込み、鋭い蹴りを放つ。
翼でその攻撃を防御した彼女に対し、その死角から迫ったシィカの鋼拳が、防御の上から彼女の体を強かに打ち付ける。
「さすがにこれ以上は厳しいようですね」
派手に地面を転がり、立ち上がった彼女の背中からは蝙蝠の翼が姿を消していた。蓄積したダメージに体が元の形を維持できなくなっているのだ。
「できればああいうお遊びは俺の知らないところでやっててほしいんだがな」
「お帰りはあちらですよ?」
扉を指差した彼女に容赦なく見回れる炎を纏った罪剱の蹴り。
尻餅をついた淫魔が可愛らしく悲鳴をあげたその顔のすぐ横を、文香の放った蹴りが通過する。ホテルの床に空いた穴から文香はゆっくりと足を抜き、すぐに距離をとっていた淫魔へと向き直る。
「お怒りのようですがもしかしてはじめてでしたか? それなら、悪いことをしてしまいましたね?」
そうして、すみません、と続ける彼女の顔には申し訳なさそうな色は微塵もなく、そのからかうような態度は、指摘された事が事実であるにしろそうでないにしろ、文香の苛立ちを加速させる。
蹴りに拳にだだっ子の如く繰り出される文香の攻撃。その一撃一撃は一般人が食らえばひとたまりもない一撃なのだが、もはや余裕のないはずの淫魔はそれを受けてもまだ楽しそうにキャッキャッと騒いでいる。
「熱いのいくよー! すっごく熱いよー!」
そこに容赦なく放たれるのはミリアとモヱの治療によって、復調した沙羅の放つ炎弾。未だに頬に刺す朱の熱を攻撃にすべて込めるかのような本気の一撃が淫魔の体を飲み込む。
それで勝負がついたかに思われた、しかしその炎の中から突如、黒色の魔法弾が放たれる。
所々体がモザイクに溶け消え、霞のように今にも消えそうな淫魔の体、その背に再び姿を表した羽は炎弾を防いだ結果、すでに燃え付きかけている。
リノン眼前に迫る瀕死の淫魔が放った魔法弾、不意打ちぎみに放たれたそれを、避けることかなわない。
とっさに防御の姿勢をとった彼の体が突き飛ばされ、変わりに横合いから飛び出したシィカがその魔法弾を受け、衝撃に小さな体と長い金髪がはねる。
「っ……すまん」
その体を助け起こそうと手を伸ばしたリノンの首ににシィカの腕が回り、ぐっとその体が抱き寄せられ、地面へと引き倒されたリノンの体とシィカの体がぴったりと密着し、二人分の服越しにも判るほどに彼女の体が熱い事にリノンは気づく。
「ボクの体すごくへん、なのデス……すっごく熱くて、切なくっ、て……」
互いの息もかかるほど近く、自分の体の不調の理由に気づけないシィカはただその切なさに従うように、ぎゅっと抱きついて柔らかな体を押し付ける。
無闇に振り払うこともできず、ただ慰めるようにその頭を撫でてやりながら、リノンは満面の笑みを浮かべる敵の顔を睨み付ける。
「ほんとは私がそうしたかったんですけど、あなたすぐ逃げちゃうから、これで我慢ですね」
「それが遺言でいいんだな?」
残念そうに消えかけの笑みを浮かべた淫魔の前には手刀を構えるモカの姿。返事が変えるよりも早くその身は翻り、淫魔の周囲を高速で旋回を始める。
「全力で切り刻む!」
獲物はその手の中に仕込まれた刃。手刀を構え彼女は旋回の最中、敵の体を目にも止まらぬ連撃で切り刻む。
その動きから巻き起こる風が止む頃には、 淫魔の体はすべてモザイクへと代わり、霧散してしていた。
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戦いとは言いがたいなんとも言えない時間が過ぎ、正気に戻った数人が顔を真っ赤にし、ただただ気まずく修復もほどほどにケルベロス達はホテルの外に出てきていた。
ミリアのストレス発散にどうですか、という提案にのり、その入り口を念入りに破壊し、封鎖する文香の姿を見ながら、モカは疲れたように呟く。
「結局あいつは何がしたかったんだろうか」
直接的な攻撃をするでもなく、ただひたすらにケルベロス達を弄ぶだけに留まったあの敵は、ある意味、その噂の元に忠実だったのかもしれない。
「ワタシにはわかりかねマス、タダ……」
モカと同じように、敵の思考を理解できなかったモヱは同意しつつも、その表情に疲れはなく、むしろ自信に満ち溢れていて、
「ただ?」
モカはその言葉の後を、首を捻って促す。
「冬が楽しみになりマシタ」
脈絡のないモヱの言葉に、モカはまた首を傾げる事しかできなかった。
日々の生活些細な事から薄い本が厚くなる。
未だ目覚めぬ男がもしも魔法使いになったのであれば、冬にまた彼女と出会うこともあるだろう。
作者:雨乃香 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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