夏を冷やす巨大かき氷

作者:天木一

「赤いイチゴに緑のメロン、黄色いレモンに青のブルーハワイー」
 テーブルを前にした少年の前には巨大なガラスの器。その上に雪のように氷の削れたものが降り注ぎ、巨大なかき氷の山となる。
「あ、コーラもおいしーんだよーあとコンデンスミルクもー」
 テーブルの上に並ぶシロップを次々と手にして、山のようなかき氷のあっちこっちに色付けしていく。
「こっちはイチゴでーこっちはコーラ!」
 カラフルになったかき氷を前に満足そうに少年は腕を組んで頷く。
「これでかんせーい! じゃあいただきまーす」
 スプーンを手にして山に差し込み、こんもりと取ったかき氷を頬張る。
「んーおいしー!」
 パクパクと少年が食べ続けると、不意に手が止まり頭を抱える。
「キーンッってきたー!」
 それが収まるとまた食べだしあっという間にかき氷を食べ尽くした。
「夏はかき氷だよなー。いくらだって食べられるもん。キーンってしなければだけど!」
 満足そうに少年が笑うと、頭上から氷の削ったものが降り注ぐ。
「冷たっなに?」
 上を見上げると天井が無く、そこには数メートルはある巨大なかき氷があった。それが少年の頭上へと落下してくる。
「うわーーーーー!!」
 かき氷に埋もれ、少年は身動きできずに全身を凍らせた。
「かき氷になっちゃう!」
 ばっとタオルケットを撥ねのけると、そこは見慣れた部屋の光景。
「かき氷にはならないよね……夢だったのかー夢ならあの大きなかき氷もなっとくだよ」
 ふーっと息をついて少年はごろんとまたベッドに倒れ込む。するとその胸に鍵が突き立てられた。少年は意識を失いそのまま眠りにつく。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 部屋に突然現れた魔女は鍵を引き抜き、幻であったように姿を消す。そして入れ替わるように巨大な皿に乗った5mにもなるかき氷が現れた。
『おいしーおいしーぃかき氷だよー。冷たくておいしーよー』
 窓を凍らせ砕くと、かき氷は暗い外へと飛んでいった。

「またドリームイーターが事件を起こすようですね。次の相手は夏らしいかき氷の姿をしているようです」
 修月・雫(秋空から落ちる蒼き涙・e01754)が新たな事件の発生をケルベロス達に伝える。
「第三の魔女・ケリュネイアが『驚き』を奪い、ドリームイーターを生み出して人々を襲わせるようとしています」
 その隣でセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が資料を手に説明を始めた。
「人が襲われグラビティ・チェインを奪われる前に、敵を撃破するのが今回の作戦目標です」
 まだ敵は活発に動いてはいない。少年の家の近くに行けば被害が出る前に遭遇できる。
「ドリームイーターは巨大なかき氷の姿をしています。周囲のものを凍らせたり、食べた者の頭をキーンとさせたり、更に氷を増やして大きくなったりするようです」
 かき氷らしく周辺の気温がような氷雪を撒き散らす。
「現れる場所は東京の住宅地です。少年の家を出てすぐのところで人が通るのを待ち構えているようです」
 既に夜遅くに人通りは無い。到着してから人が来ないようにすれば巻き込まれる心配もないだろう。
「『驚き』から生まれた所為か、相手を驚かせようとして、驚かなかった対象を執拗に狙うようです」
 驚けば敵の標的になり難くなる事が可能だ。
「もう夏らしく暑くてたまりませんね。そんな日にはかき氷が食べたくなりますが、かき氷に氷漬けにされては大変です。そんな被害が出ないようよろしくお願いします」
 セリカが一礼しヘリオンの準備を始める。
「こう暑いとかき氷を食べたくなりますが、ドリームイーターを食べる訳にもいきません。さっさと退治して普通のかき氷でも食べにいきましょう」
 雫の言葉に返事をすると、ケルベロス達も一斉に動き出した。


参加者
修月・雫(秋空から落ちる蒼き涙・e01754)
志藤・巌(壊し屋・e10136)
アニマリア・スノーフレーク(十二歳所謂二十歳・e16108)
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
英桃・亮(竜却・e26826)
リリー・デザイア(耽美なりし幻像・e27385)
比良坂・陸也(化け狸・e28489)
寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840)

■リプレイ

●巨大かき氷
 静まり返った暗い夜道をケルベロス達が歩き出す。
「今度はかき氷ですか……。冷たくて今の時期にはぴったりですけど、ドリームイーターの悪事には使われるわけにはいきません」
 日が落ちてもまだ地面から熱を放っているようなむっとした空気に、修月・雫(秋空から落ちる蒼き涙・e01754)は流れる汗を拭う。
「かき氷型のドリームイーターねー。シロップはいちごがいいわね」
 リリー・デザイア(耽美なりし幻像・e27385)はシンプルなイチゴのかき氷を食べたいと、巨大なかき氷を食べ尽くす勢いで頬張るイメージを思い浮かべる。
「かき氷が襲ってくるとはな」
 その光景を想像した志藤・巌(壊し屋・e10136)は何ともシュールだと肩を竦めた。
「食べ物系ドリームイーターマジ癒しだよな」
 狸の獣人の姿をした比良坂・陸也(化け狸・e28489)は、二回続けて変態ドリームイーターと戦った事を思い出して毛を逆立て顔をしかめる。
「最近あっついですねぇ……」
 朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)が息の詰まるような暑さに溜息をつく。
「ちょっとうんざりしちゃいますけど、暑い日に食べるかき氷ってすっごくおいしいんですよねー。さくっとドリームイーターを倒して、美味しいかき氷で涼んじゃいましょー」
 これから相手をするのがかき氷の姿だと思うと少しだけ元気が戻った。
「夜になっても蒸し暑いですね」
 湿度の高いじっとりと汗ばむ暑さに、アニマリア・スノーフレーク(十二歳所謂二十歳・e16108)は早くかき氷と出会いたいと周囲を探す。
「少し風に冷気が混じってきたな」
 熱の籠っていた風に冷たさが混じったのを感じ、英桃・亮(竜却・e26826)は風上へと足を向ける。
「あっあれじゃないかな!」
 寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840)が指差した先には5mにもなる巨大な山があった。それは大きなガラスの器に盛られた様々なシロップの掛かった色鮮やかなかき氷。聖星樹は急ぎ立入禁止テープを張って道を封じる。
『かきごーおりー、冷たいおいしーかき氷だよー』
 声を響かせケルベロスに気付いた山が動き出した。

●涼やかな夏
「うわっ、この大きさでカラフルなかき氷なんて初めて見た! 写真撮んなきゃ!」
 ライトを相手に向けた聖星樹は、アングルを変えながらパシャパシャッと写真を撮る。
「まるで雪山みたいですね……」
 その大きなかき氷を雫は唖然とした様子で見上げる。
「ほう。こいつは、デカいな? 随分と食いで……じゃなくて、壊し甲斐がありそうだな」
 平然とした顔を向け、巌は声にグラビティチェインを乗せて相手の心を傷つける。
『おどろけーおーきなかき氷だよー!』
 かき氷がずずんと迫って来る。
「そんなもんで驚くわけねーよ。ここんとこ、2回続けて変態ばっか続けて遭遇してんだからなぁ!!」
 八つ当たりするような勢いで、駆けた陸也は跳躍してかき氷に飛び蹴りを浴びせ足跡をつける。
「なるほど、かき氷……冷たいのでしょうね。ですが、人の口に入れる為に調理されたもの……雪すら退く凍気の一撃、凍てつきなさい!」
 ノーリアクションでかき氷に返したアニマリアは、返事の代わりに白銀のパイルバンカーをかき氷に突き刺し、その周辺の削れた氷を放つ冷気によって一塊の氷に固めてしまう。
『かき氷なんだからこれ以上凍らないよー』
 反撃しようとかき氷がずずっと器を動かして近づいてくる。
「大きなかき氷……しっかり退治して、お口直しに行かなくちゃ」
 美味しそうとリリーは敵を見上げ、するりと踏み込むと同時に打突を器に叩き込み、浸透する衝撃が中の霊体に響いて敵の動きを鈍らせた。
「何ともカラフルな……コーラって珍しい。氷にかけてもシュワシュワすんの?」
 その姿に一瞬だけ目を奪われながら銀の薙刀を後ろに引くと、亮は駆け出し横一文字に薙いで器に大きな線を刻みつける。遅れて炎が走り中のかき氷を溶かし始めた。
「あー、すごく涼しいですー」
 心地よさそうに環は冷気を浴びながら近づき、回し蹴りを器に叩き込んだ。ピキッとガラスにひびが入る。
『コラ―! 食べるならともかくー攻撃するとは何事だー!』
 イチゴシロップで怒りマークを作り、かき氷が飛び散り氷雪の嵐となってケルベロス達を襲う。ボクスドラゴンのロールは前に飛んで攻撃を受け止め、シロップのカラフルな氷に包まれて雪だるまのようにポトリと地面に落ちた。
「まずは冷たさに耐性をつけましょうか」
 雫は植物を広げ、黄金の実を生らして仲間に光を浴びせて耐性を高める。
「ぶっ壊してやるぜデカ氷!」
 両手に篭手を纏った巌が両腕をクロスして氷の渦を突破し、左右の拳で連続で殴りつけ山盛りの氷を吹き飛ばしていく。
「涼しくて丁度いいくらいです。この国は暑すぎます」
 アニマリアが刀を振るうと、刀身に雪の如く舞う紅い花弁の模様が浮かび、ガラスの器を深く斬り裂いた。割れ目からかき氷が漏れ落ちる。
「その魂、おいしくいただきます!」
 跳躍した環は振り上げた剣に降魔の力を込め、振り下ろすとかき氷を削ぎ取りながら魂を喰らう。
「攻撃しても氷が減ってる気がしないな、ならこれはどうだ?」
 踏み込んだ亮は薙刀を非物質化させ、振り下ろす斬撃がかき氷の精神を斬り裂いた。
『ダメだよー、お客さん乱暴は困っちゃうよー!』
 かき氷の器が地を滑り、近くのケルベロス達を撥ねのけ氷の嵐を更に強くする。
「器は足みたいなものかしら? なら最初に叩いておくとするわ」
 飛び込んだリリーは器を思い切り蹴りつけ、ひびを割れさせて敵の動きを止めた。
「氷だから凍らない? 器が凍るし、食いもん部分もシャクシャク感がなくなるだろーよ。カチンコチンに固めちまえ――急急如律令」
 陸也は氷の騎士を召喚し、手にしたランスを突き入れ穴からかき氷を一塊の氷へ変えると、ゴロリと転がり器から落下して地面で砕けた。
「涼しーい……倒すと消えちゃうんだよね、もったいないなあ」
 でも仕方ないかと、聖星樹は明日から本気を出すという決意を熱に変え、敵の足元から炎を噴出させた。
『あつーい。溶けちゃうよー』
 かき氷から緑の氷が雪崩落ちるように飛び出し降り掛かってくる。
 それを受け止めようと環が前に出ると、抹茶味のかき氷が口に入り込み、口の中を抹茶色に染め上げ冷たい刺激が脳へと届く。
「あうぅ……、この感覚はやっぱり嫌いですー、でも美味しいですー」
 キーンと来た環は頭を抱えて悶え、そして抹茶氷を味わった。
「涼しいのは大歓迎ですが、冷えすぎるのは問題です」
 雫はオーロラのような輝きで環を包み込み、その身に巣食う負を浄化する。
「所詮デカいだけのかき氷だ。俺達の敵じゃねェ!」
 挑発する巌の言葉が相手の精神を削り、狙いを自分に向けさせた。
『大きいと、かき氷もいっぱい食べ放題だよー』
 次は巌に向かって青いかき氷が降り注ぐ。ブルーハワイの味で巌は包み込まれた。
「食べる気は無いからな、溶かし尽くしてやるよ」
 間合いを詰めた亮は薙刀に炎を纏わせて斬り上げる。刃が逆袈裟に走り炎が氷を溶かし傷を広げる。
『溶けるとただの水になっちゃうよー』
 氷を噴き出し吹雪を巻き起こして周辺温度を一気に下げる。
「味はちゃんと違うのかな? シロップは全部同じ味っていうよね」
 聖星樹はペロリと氷を舐め、その舌にレモンの味わいが広がる。
「ちゃんとフルーツの味がするかも?」
 そして槍を突くと穂先が器を砕きかき氷に刺さり、電撃を流し込んだ。
「涼しいですね、もう少し温度を下げてもいいくらいです」
 続けてパイルバンカーを構えたアニマリアが吹雪を突破し、器に穴を空け底のかき氷を凍結させかち割り氷に変えた。
「冷たくて美味しいけど、氷漬けにされるのは遠慮するわ」
 リリーが九尾扇を振るうと、羽が多節鞭のように伸びて舞飛ぶ氷の嵐を打ち払った。
「暴れるにはちょうどいい気温だな」
 陸也は地を駆けて敵の器に跳び乗り、更に駆け上ってかき氷を掻き出すように蹴りまくる。

●キンキン
『氷が随分減っちゃったなー追加しなくっちゃ!』
 ガリガリガリと削れた氷が雪のように空から降り注ぎ、凸凹に減っていた器の上の山が増え始める。
「増量しようが無駄だ、すぐに削り取ってやるぜ!」
 巌は篭手から炎を噴き出させ、その勢いで加速して拳を打ち出し、かき氷にめり込ませて氷の山を崩した。
「さーあ、どんどん削っちゃえ!」
 敵に跳びついた聖星樹は、腕をドリルにすると氷をガリガリと削り始めて穴を空けていく。
「涼しくていいなって思ったけどだんだん寒くなってきた……早く倒そう!」
 さらにもう片方の手もドリルにして両腕で大きな穴を穿つ。
『コラ―! 今増やしたところだぞー!』
 ぐらりと足元が崩れ雪崩のように聖星樹が放り出され上からかき氷が積もる。攻撃しようと間合いを詰めていたアニマリアもそれに巻き込まれた。
「凍りつきそうな冷たさですね……」
 その冷たさに震えたアニマリアは凍った川の割れ目に投げ込まれた訓練を思い出す。
「子供たちの命、取らせるわけにはいきません。終いにしましょう」
 死ぬほど辛かった訓練に比べれば恐れる必要もないと、アニマリアはジェット噴射で積もった氷を吹き飛ばしパイルバンカーを撃ち出す。パイルが器を割りかき氷を大きく吹き飛ばした。
「キーンとなっているのもこれで治るといいのですが」
 雫はオーラを氷の下から出てきた聖星樹に分け与え、傷を癒し凍傷を癒してしまう。
『みんなかき氷になっちゃえー!』
 色とりどりの氷が吹き荒れ、周囲を猛吹雪が覆う。迫る氷の嵐に亮は薙刀を薙ぎ払い空間に切れ目を作る。だが続けて雪崩のように氷が崩れてきてその身をかき氷に埋めた。すると口にシュワシュワしたコーラ味のかき氷が流れ入り、脳にキーンと刺激を与えた。
「キーンってきた……これ苦手なんだよ。これ以上味わうのは勘弁、っと」
 亮は薙刀に炎を宿し、氷を溶かしてその場を脱出する。その間もロールがブレスを吐いて氷を吹き飛ばし仲間への被害を減らしていた。
「かき氷は食べるものでしょ、頭から浴びるものじゃないわ」
 低く突っ込んだリリーは吹き荒れる氷雪を掻い潜り、雷を帯びた刀を突き入れかき氷に電流を流す。
『だ・だ・だ・大丈夫だよよよ』
 痺れながらかき氷は吹雪を放ってリリーを吹き飛ばす。
「みんなの冷え切った体に、温かな幸運をお届けです!」
 環は白い小型治療無人機を幾つも飛ばし、薬液を霧状に散布して仲間の冷えを治療する。
「赤き月光を集めて弓を成し、青白き月光を束ねて一矢と成す。弦を鳴らし、狂気を導け――」
 陸也の左手の赤い月光を貯めこんだ符が光弓となり、右手の青白い月光を貯めこんだ符が呪矢と成る。その矢を射れば、2つの月光が心惑わし突き刺さった敵の意識を引き付けた。
『何味がお好みかなー?』
 器が傾き陸也にメロン味の緑のかき氷が降り注いで体を丸々埋めてしまう。
「そろそろ冷たくなってきたので、倒しちゃいますねー」
 環は星座の重力を宿した剣で斬り裂き、積もったかき氷を吹き飛ばし、更に接近して振り抜き重い一撃がかき氷の山を削り取った。
「そんなに食われたいなら、食い散らかしてやるよ」
 亮の心臓が燃え上がると、腕に黒文様が絡みつき白い竜が牙を剥く、腕を掲げれば竜が食らい尽くさんと襲い掛かりかき氷を噛み千切った。かき氷の中ほどに大きな穴が生まれる。
「夜だからあんまり鳥はいないけど……えーい」
 聖星樹が可憐な声で歌い始めると、さえずりと共に無数の鳥が現われ、歌にリズムを合わせてかき氷をついばんでどんどん体積を減らしていく。
『また氷が減ってきたよ、動物はお客さんじゃないからねー』
 ガリガリと氷が空から降り始める。だがそうはさせないとアニマリアは地獄化した翼の炎を燃え上がらせ、飛ぶように接近するとパイルバンカーを撃ち出す。
「穿つ! 悪夢を切り拓く!!」
 突き刺さった真っ白な冷気の光を帯びたパイルが器を砕き、凍気を切り裂くようにかき氷に風穴を空けた。
「食いもんでもドリームイーターなら始末しちまわねーと、そこらの子供が甘ったるいシロップ漬けになっちまうぜ」
 陸也は氷の騎士を前に呼び出して壁にすると、その体を蹴って跳躍し敵の頭上から流星のように蹴りを打ち下した。かき氷がその体を取り込もうとすると、足場の氷を削って滑り落ちて間合いから離れる。
「色んなシロップたっぷりのカラフルなかき氷……夢があって大変良い。だが、お前には足りないものがある。それは、練乳だ。甘さマシマシになってから、出直して来いやァ! デカ氷ィ!」
『練乳は別料金だー!』
 罵倒する巌の声が響き、かき氷が怒りに任せて襲い掛かってくる。
「隙あり!」
 完全に注意が逸れたところへ、横から懐に飛び込んだリリーは拳を器に当てる。
「もう十分涼しくなったわ、これ以上は冷えすぎよ」
 地を強く踏みしめ拳を打ち込み、衝撃を内部に伝えて敵の霊体を震わせる。ずずっと歩みが遅くなりかき氷た止まった。
「氷なら雷はよく伝わるでしょう!」
 雫が敵の頭上に雷雲を生み出し、そこから雷が落ちてかき氷を貫く。ボロボロになり弱っていた器ごと粉々にかき氷を撃ち砕いた。
『ただの甘い水になっちゃう~』
 器から零れたかき氷は、溶けて色の付いた水となり、地面に吸い込まれるように消えてしまった。

●冷たいかき氷
 少年の住まう部屋に明りが灯る。無事である事を確認して任務の成功に皆は喜び緊張を解いた。
「涼しさはひと時だけでしたね」
 巨大かき氷が居なくなるとすぐにむっとする夏の気温に戻り、アニマリアの額に汗が流れる。
「よーっす、アニマリア、折角だしかき氷食ってかね」
「いいですね、普通のかき氷が食べたいです」
 陸也の誘いに乗ってアニマリアがどこに食べに行こうかと考える。
「……戦って暑くなったのでかき氷でも食べたいですね」
 せっかく涼しくなっても、その分運動で汗を流したら同じだと雫は喉の渇きを覚える。
「そりゃいいな、練乳のかかったのを食うかな」
「賛成よ、いちご味が食べたいわ」
 巌は敵に力説してる間にかき氷を食べたくなったと何味に練乳を掛けようか考え、リリーもいちごのかき氷をちゃんと食べたいと手を上げた。
「この時期ならコンビニアイスにかき氷もあるよね」
 聖星樹がコンビニに向かおうと言うと、皆も賛成だと頷いた。
「帰りにコンビニでかき氷を買っていきましょー」
 また暑くなってきたと環は仲間の前を歩いてコンビニに向かう。
「さて、と。本物のカキ氷でも、食べて帰るかね」
 それに続いて亮も歩き出す。夏らしい汗の流れる暑さに喉を乾かせながら、ケルベロス達は暑さを忘れようとかき氷を食べに去っていった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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