●シークレット・オーダー
水底を埋める小石、そこを泳ぐ魚や踊る水草。水中にあるもの全てをそのまま見せるような小川の傍、石橋の下にミス・バタフライはいた。
「マーク、ウィル。あなた達に指令を与えます」
「はっ!」
「……あっ、はい」
「お前な。ちゃんと出来ないのか?」
「『ちゃんと』って何だよ。ちゃんと『はい』って言ったろ」
「俺はミス・バタフライに対する態度の事を言ってるんだ」
「あーハイハイ。綺麗な水だなー美味そーって思ってて返事遅れたのは悪かったと思うよ? でもミス・バタフライに対してね」
本当すみませんでした、とウィルは心底申し訳ない顔をして両手を合わせた後、口を尖らせてマークを指差す。
「お前にはこれっぽっちも思ってねえから。わかるか? これっぽっちもだ」
「ジェスチャーは要らない、指も差すな!」
何だよお前がちゃんと解るようにしてやったんだどうだ解ったか、そんな事しなくても話の前後を聞いていれば解るだろ、何だとそっちこそ何だ――と続いていた口喧嘩がぴたりと止まった。
「終わりましたか」
「申し訳ありません、ミス・バタフライ」
「ええ、ほんと、ほんとに。続きお願いします」
「……よく聞きなさい。この橋の向こうで手作りジャムを販売している老婆がいます。その老婆に接触し、仕事内容を確認し可能ならば習得した後、殺害しなさい」
「ジャム? ワァ美味そ。俺はパンケーキと紅茶派。マーク、お前は?」
「俺はヨーグルト」
2人は真顔でジャムを何に使うか喋ると、静かに頭を垂れた。
これが一見意味の無さそうな指令だとしても、巡り巡れば、大きな地球の支配権を大きく揺るがす事になるに違いないのだから。
●ジェム・ジャム・ファクトリー
「フルーツジャム、今だったら、アイスクリームに使ったらとっても美味しそうだよねー」
アイスクリームはバニラがいいかな、ストロベリーがいいかな。
想像して微笑むホリィ・カトレー(シャドウロック・e21409)だが、自分の予感が当たった事を告げるとしょんぼり肩を落とす。隣にいた箱竜・サーキュラーの励まし――きゅーきゅー愛らしい鳴き声で、にこりと笑顔を取り戻した。
「吉永アレサさんっていう、とっても美味しいフルーツジャムを作るおばあちゃんが、螺旋忍軍に狙われちゃうんだ。えっと、場所は……」
「福島県だね。ちなみにこれが、そのお婆さんが作ったジャム」
ラシード・ファルカ(赫月のヘリオライダー・en0118)がくるりと向けたタブレット画面で、美しくカットされた硝子瓶が煌めいていた。中を満たす瑞々しい色は、赤や橙、色濃い紫等々。
男曰く、この事件にはミス・バタフライが関与している。放っておくといつか多大な影響をもたらす可能性があり、何よりも、螺旋忍軍による一般人殺害は無視出来ない。
事件を防ぐ為、まずすべき事は、事件の3日くらい前にアレサを訪ねる事。
彼女を囮として守りながら戦う事は可能だが、仕事のノウハウを教わって見習いレベルにまでなり、敵の狙いを自分達に向ける方がいいだろう。
「事前避難は出来ないしね。それと、彼女へのアポはすんなり行くと思うよ」
店舗にはフルーツジャム作りの体験スペースがある。
たまたま街を訪れた人が利用する事も多く、今回の事情とケルベロスである事を伝えれば、快く応じてくれる筈だ。
敵は2体。店を訪れる時刻は、開店して少し経った頃。
戦闘となれば螺旋手裏剣を手にし、回復を無視した苛烈な攻撃を仕掛けてくる。そのコンビネーションは、ラシードが予知で見たものとは別物になる筈だ。戦闘中も仲違いをするような配下に、ミス・バタフライが指令を下す可能性は低い。
「だけど、相手のコンビネーションを崩すチャンスはある」
店舗から少し行った所に立体駐車場があるので、納品を装って連れ出し、不意をついて先制攻撃を仕掛ければ、2体同時に相手取るという状態への不安要素はぐっと減る。
広い駐車場は戦うのに支障がない上に、その時間帯の利用者は皆無。
戦いに集中出来る。
「……という事で、大事な話はこれでお終いさ」
「ありがとーラシードさん。宝石みたいなジャムと、おばあちゃん……うん、螺旋忍軍を絶対に倒さないとねー」
ホリィは両手をぐーにして、ふんわりと気合いを入れる。
その隣で、サーキュラーもきゅー! と鳴いていた。
参加者 | |
---|---|
天矢・恵(武装花屋・e01330) |
木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634) |
土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093) |
サイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394) |
遠野・葛葉(ウェアライダーの降魔拳士・e15429) |
ホリィ・カトレー(シャドウロック・e21409) |
左潟・十郎(風落ちパーシモン・e25634) |
浅葱・マダラ(不死蝶・e37965) |
●テイスティング・パーティ
スコーンにクッキー、クレープ生地に薄くスライスしたバゲットが、紅茶や緑茶といった飲み物と共に、真っ白なテーブルの上で行儀良く並んでいる。そこに手を叩く音が響いた。
「それじゃあ美味しい楽しい試食会を始めましょ。さあ早く、早く♪」
体を左右に揺らして急かす吉永・アレサは、見た目はお婆ちゃんだが中身は10代のようだ。ホリィ・カトレー(シャドウロック・e21409)もえへへーと笑い、力作をテーブルに置く。
「ジャム作り、頑張ったよ」
「きゅっ!」
「おおっ、なんと見事な輝き……!」
「……へー」
思わず身を乗り出した遠野・葛葉(ウェアライダーの降魔拳士・e15429)と、静かに食い付いたサイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)の目に、鮮やかな色が映る。
テーブルの白にもその色は降り、ホリィの隣で何故だか誇らしげなサーキュラーに和んでいた左潟・十郎(風落ちパーシモン・e25634)は、じっくりとジャムを見た。
ブリリアントカットのダイヤに似た硝子瓶は、人参や蜜柑の色をぎゅっと集めたような橙色で満ちている。少し自分の髪色と似ているかもしれない。
「太陽の光があるからか、本当に宝石を見ているみたいだな。凄く綺麗だ」
「ありがとー。小さな太陽みたいだよね。味も美味しい筈だよ」
「大変だわ、スコーンクッキークレープバゲット、全部で堪能しなくっちゃ!」
ねえ貴方は?
アレサからキラキラ視線へ、葛葉は胸を張った。スッと懐に手を入れバッと出しシャッと置いてジャジャーンと見せたのは――。
「見よ、これが我の柚子ジャムだ!」
ホリィの物と同じ宝石瓶だが、そこを満たす色はより明るい陽色をしている。しげしげと見た浅葱・マダラ(不死蝶・e37965)は、修行中の事を思い出した。
「結構手間暇かけて作ってなかった?」
「うむ、苦味の多い柚子はしっかり下拵えせねばならんからの。砂糖は上白糖だ」
果汁を絞ってワタをちゃんと抜き、皮を細かく刻んだら茹でてザルに移す・を3回繰り返したら、皮に種と果汁、砂糖を入れて、お茶パックに入れた種を加えて強火か中火で煮込む。
土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093)も思い出していた。こまめに灰汁を取っていた時、確か彼女は。
「柚子茶にも使えるし、健康にも良いのだ! と、それは楽しそうに……」
「私も覚えてるわよー。あんな風に楽しんでもらえるなんて先生冥利に尽きるわね! きっと柚子も大喜びよ!」
貴方は確か青梅よねっ、と弾む声で問われ、十郎はくすりと笑ってテーブルにペリドット――ではなく、ステップ・カットのバケットを置いた。どこか控えめだが、心惹く輝きがテーブルに降る。
最初の一口は作者さんがと促され、一匙食べれば夏らしい薫りと酸味が広がった。
「これは美味い! なるほど、丁寧に茹でこぼすのが大事だったんだな……」
「前にも作った事があるのか?」
天矢・恵(武装花屋・e01330)の質問にああと頷く。家で作ったらえぐみが強くなってしまったのだが、アレサから基本に忠実なレシピを教わったおかげでリベンジは大成功。
「クリームチーズと一緒にクラッカーに塗ったら合いそうだ」
「すぐそこのコンビニ行ってくるわ!」
こんな事もあろうかとコンビに近くに店を構えて良かったーと声が遠ざかり、少しして戻ってくる。皆でクラッカーに青梅ジャムを乗せ、サクリと囓れば大好評。
その最中に置かれたのは、つぶつぶ果実が見える紫ダイヤモンド。砂糖不使用、ブルーベリーにカシスリキュール少々で甘過ぎない。そんなジャムの詰まった瓶をサイガは指で突き、考える。
作ったこれを入れて、次々色付く瓶を見た時はつい機嫌良くなり、超贅沢感に包まれたりしたが。
「なんたらティーにゃ合いそう」
「なんたらティーにするか、最高に楽しい会議が始まりそうじゃない……!」
持ってる紅茶全部ここに出さなきゃだわー、とはしゃぐアレサの視界に、今度は愛らしいハート――マダラ作のジャムが詰まったブリリアントカットの宝石瓶が映る。
「同じ苺でも瓶が変わると印象も違うな」
木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634)にマダラはだよねと返し、クッキーに艶めく赤を乗せる。一口食べ、思わず頬を押さえた。ミルクティーと合わせれば、また最高。
「ん、おーいし♪ 何にしようか迷ったけど、友達の好みに合わせて正解だったかな。ちゃんとお土産、持って帰らないと」
「あらっ、いいわねー」
「……このジャム、バイト先の和菓子に生かせないかなぁ……吉永のおばあちゃん、何か知らないかな」
「じゃあ、知り合いの和菓子職人にメールしときましょ。私は大福に合うんじゃないかと思うわ!」
アレサが手早くメールを送信した時、恵がブリリアントカットされた宝石を持ってきた。だが『華鳥』の菓子担当が用意したのはそれだけでなく。
「まあ! まあ! 確か貴方は桃ジャムよね!? そのジェラートは!」
「桃を丸ごと使った」
「紅茶は!」
「桃の紅茶だ」
「……すげ。店で食うやつみてぇ」
サイガの声に全員が同意した。
修行中に自分の考えを何度もアレサへ確認し、余す事無く技術を吸収し、寝る間を惜しんで誰よりも美味しいジャムをと励んだ恵のジャムは、食べる前から香りで魅せてくる。
「桃の風味が生きてるし、甘さも一層深みが出て……やだっ、強力なライバル登場ね?」
そう言いつつもアレサはジェラートを食べて笑顔、紅茶を飲んでまた笑顔と嬉しそうだ。
独学で菓子作りをしている恵としては、使う果物や気温・気候によって煮詰める火力が変わるジャム作りを教えて貰えたのが有り難い。
果物の声を聞く方法教えてくれ。そう言った時、アレサは煮ている時の香りと音が声よと笑い、桃の選び方も教えてくれた。この恩はアレサを、全て護る事で返そう。
漂う甘い香りに我慢出来なくなったか、箱竜ポヨンが宝石瓶へぐいぐい近付き――ケイに持ち上げられる。
「勝手に食べたらダメだぞ。皆で食べような」
そんな彼は、料理はそれなりにするが所謂男の料理、というやつでジャム作りの経験は皆無。だが、大人しいあの子と元気なあの子、好みが違う2人へ贈る為に『きっと出来るさ』で見事作ってみせた。
「自分用なら今の気分で決めちまうんだが、プレゼントを意識すると迷いまくったな。2人とも俺を見直さざるを得ないはずだ……!」
日頃の礼にと庭師からの渡される、苺色のオールドマイン。その煌めきは必ず大成功よと太鼓判を押したアレサが、あらっ、と呟いた。
「きらきらして綺麗だからかしら。ブリリアントカットの宝石瓶、普段から人気なのよー」
「……わかります」
呟く岳の目を独占するのはルビー色に輝くラウンド形。
「素晴らしく綺麗だわ!」
「皆のジャムも、岳さんのジャムも、すごく綺麗」
「ありがとうございます。我ながらとっても、と思いますね」
頷き一匙食べると、さくらんぼの味が一瞬で広がって。
「美味しいです!」
「味! 味はどんななの!?」
「酸味と甘さが程よくてこのままパクパク食べられちゃいます!」
「素敵!」
喜ぶアレサの明るさと老いを感じさせない愛らしさに、十郎は自然と表情を和らげた。アレサを見ていると、小さい頃、色々と面倒を見てくれた近所の優しい老婆を思い出す。
(「……テンションはこんな高くなかったけどさ」)
楽しい美味しい試食会はその後もつつがなく進行したが、目をきらきらさせ鼻の頭にジャムを付けていたサーキュラーが、主にいっぱい食べちゃダメと言われ目を丸くする場面も。
「そんな『えっ?』みたいな顔してもダメだよ」
「きゅー……」
●アプリカント・アンド
「貸切客が来るので悪ぃが帰ってくれ」
恵が事情も添えて一般人に伝えれば、じゃあまた今度来ますと笑顔で去っていき――それから少し経った頃、例の2人組はやって来た。
見た目はごく普通、ジャム作りを教えてほしいと言う姿勢もごく普通。応対した1人、ホリィの態度も同じだ。
「ジャムの作り方知りたい? いいよー教えてあげる。でも、今日は納品がたくさんあって……」
視線の先には大量の箱。幾つかは本物だが他は全て偽物だ。
「手伝ってくれたらすぐに終わる、かな」
「じゃあ手伝いますよ。こいつ体力馬鹿なんでこき使ってやってください」
「お前もだろウィル。頭使うより体動かす方がいいってなんべんも聞いたぞ」
「まあまあ。ジャム作りに取りかかれるよう、まずは納品を済ませようではないか」
納品先は複数ある。間に入った葛葉の声で2人は言い合いを止め、指示されるままに箱を車へ運び入れる。共に乗り込み着いた先は、広々と、そしてがらんとした立体駐車場。
「まずはどこに運ぶんです?」
「ああ、それはあっちだ」
偽の箱を抱えたケイに促され、2人が本物の箱を抱えて喋りながら歩き出す。どのジャムがいい、俺はやっぱり、という会話を後ろで聞くサイガの目が冷えていった。
(「コイツら俺よか食生活エンジョイしてんな」)
だからどうという事もない。
敵の会話に十郎と岳も加わり、響く声が増えていく。
「納品されているお店の方の声を直接聴いて、それをジャムに活かす。これもまたジャム作りの大事な修行の1つなんです」
「へー。キッチンで婆さんが作ってるイメージしかなかったけど、意外と深いもんだ」
「ただ作るだけじゃない、と……ふむ」
そんな風に2人の気が逸れた瞬間が好機。
サイガは降魔の魂刃と化した拳を、恵は流星の蹴りをマークの腹にめり込ませる。
「ッ!?」
「なっ!?」
ケルベロス達の動きは2体が状況を確認しようとするよりも早い。ケイが起こした季節外れの桜吹雪、見舞った鮮やかな一閃。納刀の瞬間巻き起こる風と桜焔が敵を蝕み、癒しと共に贈られる水のチカラを受けた葛葉が、鋼鬼の拳を叩き込む。
「ウィル、こいつら……!」
わかってる。それが音になる前に、十郎の放った雷がウィルを撃ち抜いた。
「向こうはみんなが相手をしてくれる。お前は、俺が相手だ」
「……お前らケルベロスか」
「教えるのは人目に付かないところじゃないとねっ」
マダラは愛らしい笑顔を浮かべ、ホリィもぐっと拳を握る。
「おばあちゃんも、ジャム作りの技も、絶対守るよ」
アスファルトを蹴り、マークにだけ流星の一撃を降らせた直後、封印箱に入ったサーキュラーが続けばマークの傷は増す。
「不意を突いた程度で」
「すぐにくたばる俺らじゃない」
構えてすぐ放たれた螺旋手裏剣は毒を孕みながらポヨンを斬るが、すぐさま駐車場を震わす衝撃が走り、マークを呑み込んだ。紅玉色の奔流の源で岳が声を響かせる。
「美味しいジャムを作る方、味わう方々の笑顔を絶対に守ります。日々の小さな幸せの先に! 地球の未来が必ずそこにある筈ですから!」
「吉永のおばあちゃんには指1本触れさせない!」
奔流の痕をマダラは飛ぶように駈け抜け、マークへ迫る。電光石火の蹴りは敵を捉え、淡色の髪と共にスカートの裾がふわりと舞った。
ケルベロス達は不意を突き、十郎を覗く全員でマークを攻撃しているといっていい。それは確かに敵の連携を崩し、動揺も与えていた。だからこそ2体が本調子しになっては困る。
十郎の放った小動物が弾丸のように宙を翔けてウィルを撃ち、サイガは音もなく繰り出した影刃をマークに突き立て――言った。
「オニーサンお好きな色は?」
訝しむ表情の後に聞こえたのは、赤。苺ジャムの赤もいいがお前等が流す赤の方がいい、と。返答にサイガは目を細めた。
「あぁ、そうだな。甘えばっかじゃ胸焼けしてな」
同時に突き立てた所を思いきり掻き斬った。漆黒の目が活き活きと光る。
「任せろ。アンタらの分も食っとく」
断ると言わせる暇は、灼熱の溶岩が認めない。恵の起こしたそれが灼け焦げる音を立てながらマークの全身を襲い、
「悪いが逃がさん」
ケイの繰り出した稲妻の如き突きが深く刺さる。
「おいマーク! さっさと片付けるぞ! それでウィル君ありがとうって感謝しろ!」
「片付けるのは賛成だが感謝すると思うのかお前!」
戦闘中でも言い合いは変わらず。2体の箱竜の力がポヨンを支える中、ホリィはサーキュラーに手を伸ばした。
「すごく……仲良いんだね」
でも、自分達も負けていない。オーラの弾丸を撃ち出し、そこに葛葉の蹴りが刃となって襲い掛かれば、ほぼ全ての攻撃を受け続けたマークの体がどさりと倒れた。
目を見開き、一瞬だけ固まっていたウィルが掌に螺旋を集束させ始める。敵の様子に岳は心を痛めた。
「友を慈しむ心があるのなら貴方方とも解り合える日はきっとくる……そう信じたいです。でもそれは今ではないようです」
守りたいものがあるから、此処で倒す。その為に仲間を癒し支えるのが自分の役目。
その姿を見てマダラは攻撃を選んだ。魂喰らう拳撃を真っ直ぐ叩き込めば、十郎が与えた傷に次々と猟犬達の牙が重なっていく。そして。
「これで終わりだ」
恵の振るう刀に斬られたのだと解らぬまま、もう1体の螺旋忍軍は、手裏剣を握ったまま倒れ伏した。
●ハッピー・ジェム
「緊張したけど、何とかなったかな……あ、岳、ケガない?」
祈りを終えた岳を気遣えば、マダラや皆のおかげで大丈夫ですと笑顔が返ってくる。
そうして戦場を整えて戻ったケルベロス達を待っていたのは、綺麗に梱包されたケルベロス作のジャムと笑顔のアレサだった。
「わ、ありがとー」
「こちらこそ、よホリィちゃん! とっても楽しかったわ!」
「……作ったジャムを花鳥で出して良いか」
恵の掌で桃色が煌めいている。これをリクエストした父は、桃ジャムに合うどんな珈琲を淹れてくれるのか。来られなかった奴にも作ってやる予定だと呟けば、眩しいくらいの笑顔が向けられた。
「いいに決まってるわ! その時はお店にお邪魔していいかしら!? あ、良ければみんなのジャムまた食べさせてね! 最高だったから!」
相変わらず高いテンションを見守っていた十郎はそっと笑み、サイガは勢いに少し圧され――ケイは破顔し、礼を言う。
「きっとまた来るよ。今度は小さな女の子2人も連れてさ」
「いつでもウェルカムだわ。うふふ!」
それじゃまたねと笑うアレサの笑顔も、ケルベロス達の手にあるフルーツジャムも――とびきりの煌めきを持った、ただ1つのジェム。
作者:東間 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 1
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