見たらわかる、アカンやつやん

作者:刑部

 大阪城近郊。
 攻性植物のゲートがあり爆殖核爆砕戦後は騒然となったものの、その後周辺にそれほど影響がないと知ると、そこは逞しい大阪人。緑の際まで日常生活の風景が戻っていた。
「むしろ緑が増えて、空気が良くなったんやないか」
 汗を拭きながら木陰に移動した男性が、水筒から口を離すと大きく深呼吸する。
 どうやらジョギングの途中の様だ。
 その深呼吸で肺いっぱいに吸い込んだ空気に混じる甘い香り。
「うん、何の匂いや?」
 と辺りを見回した男の目に飛び込んで来たのはおっぱい!
「ううふふふ……」
 全身緑色のほぼ全裸の女性が、妖艶に微笑みながら男を手招きしていた。
(「見たらわかる。アカンやつやん!」)
 明らかに人間ではないその肌の色に、男の脳内で警鐘が鳴る。
 ……だが、更に誘う様におっぱいに手を当て、そのたわわな果実を上下に揺らす女性。
 その動きから目が離せない。
(「何をしてるのです。明らかに攻性植物です。逃げなさい!」)
(「いやいや、コスプレの痴女の可能性も捨てきれない。そうならこれは千載一遇のチャンスだ!」)
 頭の中で青い半被を着た天使と悪魔が激しい口論を始める。
 その間もたゆんたゆんと揺れるおっぱいから目が離せない。
「……うう……」
「うふふふ……」
「……ううぅ……」
「うふふふ……」
「……うう……」
「うふふふっ……」
 脂汗を流す男と微笑み続ける女性。
「ま……祭りの季節じゃワッショーイ!」
 ついに血走った眼ででダイブする男性を、優しく迎える女性。暫く後に、
「アカーン!」
 という男性の断末魔が木霊したのである。

「爆殖核爆砕戦後、大阪城に残った攻性植物の調査を行っていたエミリ達から、新たな情報が得られました」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)が、鹿坂・エミリ(雷光迅る夜に・e35756) 達の地道な調査によって、攻性植物に動きがあった事を告げると、
「報告によると大阪城付近の雑木林などで、男性を魅了するたわわに実った果実を持つ攻性植物『バナナイーター』が現れている様なのです。
 バナナイーターは、15歳以上の男性が近寄ると現れて、その果実の魅力で魅了し、いろいろ絞りつくして殺害する事で、グラビティ・チェインを奪う様なのです」
 イマジネイターは淡々と起こっている事件を伝えると、
「攻性植物は、こうして奪ったグラビティ・チェインを使って、新たな作戦を行うつもりなのかもしれません。皆さんには、このバナナイーターを撃破して、誘惑されてしまう犠牲者を救ってもらえるようにお願いします」
 と軽く頭を下げる。

「ジョギング中の男性が襲われるのですが、この方が攻性植物に出会う場所に先回りする事が出来ます。
 バナナイーターを出現させる為には、そのまま男性を誘惑させるか、或いは、この男性を避難させた上で、赴く皆さんケルベロスの内、15歳以上の男性が囮となる必要があるでしょう。
 そしてバナナイーターは、攻性植物の拠点となっている大阪城から地下茎を通じて送られているようで、囮となった人数に応じて数が増えるみたいです。
 1体目のバナナイーター以外は、戦闘力が低い様なので、なるべくおびき出して一気に叩く事も可能ですね」
 と、イマジネイターがとりうる戦術について説明し、
「注意すべき点は、バナナイーターが出現してから3分以内に攻撃を仕掛けると、出現した地下茎を通ってすぐに撤退してしまう事です。
 つまり、囮となった者は3分程度、バナナイーターと戦闘せずに接触する必要があるのです。
 幸い、バナナイーターもその3分間は攻撃などはせず、対象の男性を誘惑する行動を行う為、囮が一般人であってもすぐに死んでしまうという事はありません」
 と、最大の注意事項を説明し、
「バナナイーターは、ケルベロスであっても男性であれば獲物として区別しない様で、その誘惑は皆さんケルベロスには効果はありませんが、囮となる場合は、誘惑されているような振りをする事も必要かもしれません」
 とあくまで真面目に淡々と説明を続けるイマジネイター。

「果実を投げたり、抱き付く様にしてグラビティ・チェインを絞り取る攻撃をして来る様です。また果実を食べて回復する事も出来るみたいですね。戦闘になれば一気呵成に行けると思いますので、いかに逃がさないかの方が大事だと思います。
 宜しくお願いしますね」
「まったく……地球にはどれだけ浪漫あふれてるんだ? いいだろう俺が浪漫のなんたるかと教えてやるぜ、な、おむちー?」
 頭を下げるイマジネイターを見た火鳴木・地外(酷い理由で定命化した奴の一人・e20297)が拳で掌を打ちつけ、ケチャップ容器を背負う黄色いウイングキャット『おむちー』に笑顔を見せ、おむちーはやれやれと言った半眼で視線を返す。
「あ、囮対象になる男性が多く行った方が、多く倒せますので、その辺りもご配慮頂ければと思います。宜しくお願いします」
 そのやりとりを微笑ましく見守ったイマジネイターは、そう締めくくって皆を送り出したのだった。


参加者
望月・巌(虎よー虎よ・e00281)
ラティクス・クレスト(槍牙・e02204)
文丸・宗樹(シリウスの瞳・e03473)
火鳴木・地外(酷い理由で定命化した奴の一人・e20297)
宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
神苑・紫姫(ヒメムラサキ色吸血鬼・e36718)
熨斗蘭・百合(深森の魔女・e37266)

■リプレイ


 勇敢にも囮を買って出た5人を見送る女性陣達。
「人型の攻性植物……話には聞いた事があるが見るのは初めてじゃな。特に最初の以外のやつはたいして力も強くは無いと聞く、研究には持ってこいじゃ」
 中でも熨斗蘭・百合(深森の魔女・e37266)はそう嘯きながら、冷ややかな赤い瞳を向けており、
「夏の祭典の入稿は既に終えたのデスガ、オマケの折本のネタにでもと……」
 『機腐人』たるモヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)も、ミミックの『収納ケース』から取り出した動画撮影用の機材を手に、この時期に夏の入稿を終えていると言う強者ぶりを見せつけつつ、そのレンズを囮達の方へ向ける。
 ちなみに、夏東京来るの? だったら手伝ってよと言われ、よく分からないまま夏の祭典に初めて赴く事になり、3日目成人男性向け壁サークルで売り子やらされた刑部って人の話は……いらないか。
「こういうのに全く耐性がないんですわよね……ステラ。……いい機会です。少し、耐性を付けてもらいましょう」
 その隣で神苑・紫姫(ヒメムラサキ色吸血鬼・e36718)が、にっこりとほほ笑んでビハインドの『ステラ』の肩を叩く。
 その間に仕寄る男性陣に反応し、2体のバナナイーターが現れた。
「さて……周囲に人は居ない様ですし、テープだけで十分ですわね」
「邪魔されると鬱陶しいからのぅ」
 種族特徴を使うまでもないと判断した紫姫がキープアウトテープを用意すると、百合が素早く殺界を形成し、バナナイーターを観察すべく現場近くの物陰へと移動を始め、
「趣味と実益を兼ねられるのは良いデスネ」
 レンズを囮達に向けたモヱも、気取られない様に百合について移動する。
 紫姫がテープを張って戻る頃には、すっかり作戦が開始されていたのだった。

 接近する五人の囮に対し、クールビューティーな秘書っぽいバナナイーター『沢潟』と、スポーツ少女タイプの『蓮』が現れ、妖艶な笑みを浮かべて男達を誘う。
「うおおおおぉぉぉぉ」
 その揺れるおっぱいに血走った目を向け、奇声を上げながら頭を振るのは、自慢の槍は2つあるんだぜ? と豪語するも、未だ童貞のラティクス・クレスト(槍牙・e02204)。
(「ハッ! なにか今……オレが童貞である事が、全世界に晒された気がする……」)
 次の瞬間、謎の観応力を発揮するも今は目の前のおっぱいで、
「フッ……秘書系はおじさんの大好物だ」
 と、続く望月・巌(虎よー虎よ・e00281)の口元がニヤリと歪む。
 無防備を装う為、得物はツナギのポケットに入れており、多少膨らんでいるものの遅かれ早かれ膨らむものだと、大人の余裕を感じさせ、
「いや、なんというか……正直どっちも好みじゃない……あぁ、そうだねバジル。囮はちゃんとしないとね」
 現れた2体のバナナイーターに視線を這わせ、残念そうにそう呟いた文丸・宗樹(シリウスの瞳・e03473)が、ため息交じりに首を左右に振ると、ボクスドラゴンの『バジル』が諭す様に頭を撫で、宗樹は力無く微笑んでラティクスと巌に続いた。

「話に聞いてた通りスポーツタイプ……スポーツ……くっ、大人の夜のスポーツしか思い浮かばねぇ、これも奴の力か……だが俺は負けない。引き締まっていながら出るところは出て……の夏の極上フルーツを揉んで……いや、もいで見せるぜ」
 よく知る者が居れば奴の力じゃなくていつもじゃねーか! と、ツッコミが入る程度には平常運転の火鳴木・地外(酷い理由で定命化した奴の一人・e20297)が、舌なめずりしつつもう1体のバナナイーター『蓮』に向かって、指をわきわきさせつつ突っ込んでいくと、ウイングキャットの『おむちー』はその地外を冷めた半目で見送り、同じくウイングキャットの『ミコト』がこいつ大丈夫か? という目で見つめている背中は、宵華・季由(華猫協奏曲・e20803)のもの。
「世界平和の為だ……致し方ない。同志達よ、俺達で阻止するぞ!」
 本心じゃないんだよ、仕方ないんだよ的な建前を口にしてその視線に気づき、
「ミコト、そんな目で見るな。俺は大人の階段を登るのかもしれないんだから! まだ死ねない! 祝え!」
 と白い歯を見せた笑顔をミコトに残し、季由は地外の後を追う。


「蓮、だったな。お前さんが元気なお陰で俺も元気を分け与えてもらってるようだ。もっと分けて貰おう」
 言うや否や蓮のおっぱいを揉みに掛る地外。
(「凄い……一片の建前も言い訳もない。当たり前の様に揉みに掛った。……流石同胞に胸装甲硬すぎるんだよ! と言い放ってボコボコにされて定命化しただけの事はある。……見習わなければ」)
 季由は今、誤った人生の師匠を得ようとしていた。止めてー、誰かと止めてー。そうだミコトは? と見ると、おむちーとミコトは主人の馬鹿騒ぎを余所にじゃれ合っていた。……うーん、実に猫らしい。
「あーバナナイーター定命化しねーかなー」
(「凄い……本音を隠そうともしない。なんて自然体に欲望を垂れ流すんだ……見習わなければ」)
 頬を赤らめる蓮のおっぱいを揉みしだきながらそう口にする地外を見て、季由は誤った大人の階段を全力で駆け上がっている。そして、自分とその状態に羨望の眼差しを向ける季由に、ちらちと向けた地外だったが、ぷいっと蓮に向き直り、おっぱいを揉むのに全力を傾ける。
(「凄い……譲る気なんてまったく無い。そこにあるのはただ『俺がおっぱいを揉みたい』という信念だけ……見習わなければ」)
 気付け季由。大人の階段を上っている様で、転げ落ちているだけだという事実に。
 要因は複数あった。組んだのが己の欲望に忠実たる同じ『レプリカント』の地外であった事。
 そして季由に、中身は天然ボケでどこかネジが抜けており、ピュアで純真、経験により成長するレプリカントという資質があった事だ。
「そうか! 定命化して味方になったら、気軽に揉み辛くなる気がするってジレンマを感じるな。季由はどう思う?」
(「凄い……こちらに話題を振りながらも手は止まらず、むしろ色々な揉み方を試している……見習わなければ」)
 何かに思い至った地外がくるっと季由を振り返るが、その手の動きは触手の様に複雑さを増しており、季由は答える事も出来ず、ただただその妙技に感心するのだった。

「BL萌えなのになぜバナナかというと、最近はTSものが流行りなので素晴らしい資料になるからです。あ、BLは言わずもかなボーイズラブの略で、TSというのは性転換……」
「いや、詳しい説明を聞きたい訳ではないのですわ」
 ちょっとした質問に、無表情のままながらも、我が意を得たりとばかりに小声で喋り出したモヱの口を押さえる紫姫。
 紫姫はビハインドのステラに囮達の痴態をガン見する様に命じており、そのステラは両手で顔を覆っているものの、その指の間は大きく開いていた。
「……それ、見えてるのか見えてないのかどっちなんですの?」
 そもそもステラは目の部分を包帯で覆っているので、指が開いてれば見えてるのかと言われれば良く判らない所であった。
(「ターゲットを絞って効率よくグラビティ・チェインを集める為に、作られた者なのかな?」)
 百合はバナナイーターの動きを注視して観察を続けながら、
(「いずれ男だけでなく、女子供も獲物に出来るように進化する危険も有り得るのう」)
 と、股間にバナナの付いたダメな攻性植物を思い浮かべて頭を振る。

「ワー、ないすぷろぽーしょんデスネー」
 まったく感情の籠って無い台詞を吐きながら、照れている様に顔を覆う宗樹。
「これは麗しい知的なお嬢さん、青いバナナも元気があって良いだろうが……熟れ頃のバナナも美味しいモノだよ?」
 その宗樹の視線の先で、誘惑されたふりをしてふらふらと沢瀉に近づいた巌が、ツナギのチャックを下げ肉体美をアピールし、それより先に沢瀉の前に着き、伸ばした右手がおっぱいに触れたところで、ビビった様に手をひっこめたのはラティクス。
「あら? うふふ……かわいいわね」
 その様子を見て妖しく微笑む沢瀉。
(「ここで一気に揉めないのが童貞の悲しい性か……」)
 意を決してもう一度手を伸ばそうとするラティクスより先に、巌が沢瀉に挑み掛り、その巌をのズボンを優しく撫でる沢瀉。
「大きくて硬いだろう?」
 ニヤリとする巌であるが、それは銃だ。
 そんな2人を見つめる宗樹を見上げるバジル。
「枯れてる? 違う違う。好みが違うだけだから、俺はもう少し服を着てる方が好きなだけだ」
 と宗樹はバジルの頭を撫でると腰を下し、
(「2人があれだけ頑張ってるなら、囮は必要ないな」)
 元来の物臭さが顔を出し、陽光属性であるバジルと2人で日向ぼっこの様相を呈していた。
 その視線の先で右手で巌の相手をする沢瀉に、左手で手招きされたラティクスが、先程の感触が忘れられなかったかの様に、おっぱいへ両腕を伸ばす。
「仕方ない、柔らかいんだから仕方ない」
 掌でその柔らかさを堪能したラティクスは、思わずその突起部分をつんつんしている。
「若いっていいもんだな」
 その様子に思わず目を細める巌。そしてその後ろでラティクスと同い年の宗樹は、
(「ラティクス……つんつんをモールス信号で叩いて『ありがとう』を伝えるとは……」)
 と変態の謎の技能に感嘆していた。


 無情に後ろの草むらから鳴り響くアラーム音。
「はいはいそこまで。さっさと戦闘開始しますわよー」
「少し勿体無い気もするが、植物に卑猥な印象を持たれるのも癪じゃしのう」
 紫姫の声と共に百合も立ちあがって弓を構え、
「なかなか良い画が撮れまシタ。はやく原稿に落とす為にさっさと片付けマショウ」
 と立ちあがったモヱは容赦なくその胸を開くと、コアブラスターをぶっ放した。
「え? もう3分たったの?」
「時間か、うむ、色んな意味でとても元気になれたぞ!」
 振り返る季由の前で、絡め取ろうとした蓮からするりと抜けだした地外が、御馳走さんとばかりに笑顔を見せると、ミコトとおむちーもじゃれ合うのを止め、戦闘態勢をとる。
「さぁバジル。被害を出さない為にもしっかり働こうか」
 宗樹とバジルも立ち上がって地面を蹴ると、
「チッ、タイムオーバーだ。お望み通り、太くて硬くて黒いモンぶっぱなしてやるぜ!」
 沢瀉に組み付かれた巌が舌打ちして言うや否や、股間の『黒いモン』をぶち込み、吹っ飛ばされる沢瀉。
「俺の指はまだ死んではいない」
 ぶち込まれた巌の黒いモン……リボルバー銃の銃口から昇る煙を突っ切ったラティクスが、指天殺を見舞うべく、両人差し指を立てて吹っ飛ばされた沢瀉に迫る。
 その姿は、昔別のゲームで遠くをノックする能力があったのだが、それでひたすらおっぱいの突起部分を狙った、遠隔セクハラ変態が居た事を刑部に思い起こさせるに十分であった。
 あ、後はみんな一生懸命戦ったので、無事『沢瀉』と『蓮』を倒しました。(棒読み)

 一部興奮状態の男性陣が囮の困難さを熱く語り合う中、モヱは原稿をするからととっとと帰ってしまい、
「ステラもこれで少しはそっち方面にもつよくなりましたわ」
 紫姫がステラを見てうんうんと頷くが、ステラは嫌そうに項垂れていた。
(「地下茎を通じて来るのなら、地下茎を断てば戻れなくなる訳じゃのう。それを鉢植えに植え替えれば……」)
 百合は戦闘中も色々調べたバナナイーターについて、何やら考え込みながら興奮状態の男性陣に続いて帰路についたのだった。

作者:刑部 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 6/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。