「螺旋忍軍の『彷徨えるゲート』の、次の出現地点が分かりました」
夏の日差しを遮るべく、河内・山河(唐傘のヘリオライダー・en0106)は赤い唐傘の位地を調整した。
その上で言葉を続ける。
「『螺旋帝の血族・緋紗雨を智龍ゲドムガサラから守り切った』成果ですね。これがあれば、螺旋忍軍との決戦を行うことも可能でしょう。皆さん、胸を張ってください」
しかし、正義のケルベロス忍軍から螺旋忍法帖を奪取し、螺旋帝の血族『亜紗斬』を捕縛した『最上忍軍』が、大きな障害になろうとしている。
それというのも、螺旋帝の血族・イグニスから新たな命令を受けた最上忍軍が、各勢力に潜入していた螺旋忍軍達を利用して『螺旋忍軍のゲートが現れる地点に戦力を集結』させようとしているようなのだ。
ダモクレスは、『載霊機ドレッドノートの戦い』の残党勢力。
エインヘリアルは、ザイフリートやイグニスの後釜を狙う王子とその私兵団。
そして各勢力が研究していた屍隷兵の中で、戦闘力の高い者達を集めた軍勢も用意されている。
彼らは螺旋忍軍から偽の情報を掴まされているようだ。
その理由はさておき、『魔竜王の遺産は独占が望ましいが、複数の勢力が参戦してくる事が予測されている為、敵に漁夫の利を与えない為の立ち回りが重要である』という説明を受けている。
つまり、デウスエクス同士は牽制し合うように仕向けられているのだ。
「イグニスとドラゴン勢力は、集めた戦力を『ゲートから戦力を送り込むまでの防衛戦力』として利用したいんでしょうね」
問題は、終結する軍勢を全て撃破するのであれば、ケルベロスウォーの発動がなければ不可能というところだ。
しかし、行軍中の軍勢を襲撃し、主だった指揮官を撃破する事が出来れば、敵勢力の弱体化に繋がるはずだ。
「うちがお願いするのはダモクレス。載霊機ドレッドノートの戦いの後、姿を消していたダモクレスの残党勢力です」
組織を立て直すために大量のグラビティ・チェインを必要としていたダモクレス残党にとって、最上忍軍の情報は渡りに船だったに違いない。
ダモクレス残党は指揮官型ダモクレスである、マザー・アイリス、ジュモー・エレクトリシアン、ディザスター・キングを中心に、有力な戦力が残っている。
指揮官型ダモクレスを1体でも撃破出来れば、流れは大きく変わるはず。
ダモクレス軍勢の先鋒はディザスター・キングと配下のダモクレス軍団。ディザスター・キングの撃破を狙うのであれば、強力な先鋒部隊との決戦は必須。
配下の撃破、もしくは足止めをした上で、複数チームがディザスター・キングを強襲しなくてはならない。
マザー・アイリスは全軍の中央。周囲を多数のダモクレスが護衛している。
この護衛の戦闘力は高くない。単純な戦闘行動しか行えないようだが、指揮官型の1体であるジュモ―・エレクトリシアンが直接操作をしているらしく、取り付く隙は無い。
マザー・アイリスの撃破を目指すのであれば、ジュモ―・エレクトリシアンの撃破か、護衛戦力の指揮が出来ないほどに追い込めばいい。護衛戦力が混乱した隙に、マザー・アイリスの元に突入する電撃作戦を行う必要がある。
この場合、指揮が混乱した護衛ダモクレスを陽動するチーム、隙が出来た場所の護衛ダモクレスを撃破して突破口を開くチーム、マザー・アイリスを撃破するチームの連携も重要になるだろう。
そしてジュモ―・エレクトリシアンは全軍の後方で護衛ダモクレスの指揮などを行っている。
常にレイジGGG02、オイチGGG01、マザー・ドゥーサといった護衛と共に行動している。ジュモー・エレクトリシアンを撃破するならば、ジュモーとジュモーを守る3体の有力なダモクレスと同時に戦えるだけの戦力が必要だ。
指揮官型を狙わないのであれば、星喰いのアグダ、導陽天魔、マスターオーブメント、智の門番アゾート、ブレイン・ハンター、シン・オブ・グリード、英霊機タロマティア、あずさ、ムシバルカン、エクスガンナー・アルファ、シスターエイルといった、有力なダモクレスの撃破を狙っていくと、ダモクレスの戦力を削る事が可能となるだろう。
「ダモクレスの軍勢の中には、最上忍軍の最上・幻斎が同行してるみたいです。居場所は不明で、見つけ出すんは難しい思います。せやけど、なんらかの作戦を立てて撃破出来れば、最上忍軍に大打撃を与えることができるかもしれません」
一通り説明を追えると、山河はくるりと唐傘を回した。
「螺旋忍軍との決戦も、近くなってます。ここで敵戦力を削らんと状況は悪化してしまうでしょう」
そして、山河は1つ息を吐く。
「今回の作戦は、敵を強襲してすぐに撤退する奇襲作戦です。作戦が終了したら、すぐに撤退せんと敵の勢力圏に取り残されることになります」
だから、どうか気を付けて。
山河は小さく言い添えると、深々とケルベロスに頭を下げた。
参加者 | |
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イェロ・カナン(赫・e00116) |
寺本・蓮(眼鏡が本体疑惑・e00154) |
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393) |
メイザース・リドルテイカー(夢紡ぎの騙り部・e01026) |
軍司・雄介(豪腕エンジニア・e01431) |
テレサ・コール(ジャイロフラフーパー・e04242) |
千歳緑・豊(喜懼・e09097) |
バラフィール・アルシク(黒の世界に光明を見出す者・e32965) |
●血路
目標はマザー・アイリス。
確実に標的を討つ為に機を待たねばならない。
イェロ・カナン(赫・e00116)は懐にある、褪せることない赤い花に触れながら戦場を眺める。
「今回はどこも随分と大所帯だねえ」
メイザース・リドルテイカー(夢紡ぎの騙り部・e01026)の言葉と表情だけならいっそ暢気にさえ聞こえるが、表面上に過ぎない。
モノクルの奥にある赤い瞳には戦いに身を置く者ゆえの厳しさがある。英国紳士たる者、常に優雅でなくては。
戦場を見渡す水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)の心中に浮かぶのは好奇心からくる疑問。
「ホント……なぜこうなったのかな?!」
「流布された情報が彼らにとってそれだけ重要だったということにございましょう」
テレサ・コール(ジャイロフラフーパー・e04242)は、時折吹き抜ける風にも反応を示さず戦況を見守っている。
もっとも、青と白のメイド服が乱されかけるとすかさず整えはするのだが。
頑張るけど何処まで出来るかと不安を漏らす蒼月だが、臆した様子は欠片も無い。頑張るしかないと知っているからだ。
あちらの思惑がどうあれ、することは変わらないとメイザースが言えば、千歳緑・豊(喜懼・e09097)が笑みを深めた。
「偽の情報に踊らされてるっていうんだから憐れな話だけどね」
その言葉は豊の余裕の表れ。
泰然とした態度をそのままに、深みのある緑の視線をバラフィール・アルシク(黒の世界に光明を見出す者・e32965)に向ける。
気付いたバラフィールは僅かに首を傾げ、それに応えた。絹糸めいた白い前髪がしゃらりと音を立てる。
この戦いは螺旋忍軍との決戦を見据えたものだ。けれど今は、目の前のマザー・アイリスを倒すことだけに専念しなくては。
「……ですよね、カッツェ?」
ウイングキャット『カッツェ』は主の言葉を肯定すべく翼を1つ、羽ばたかせる。
寺本・蓮(眼鏡が本体疑惑・e00154)の心中も同じ。
ゲートの確保も重要だが、今後の憂いを絶つ為にもここで戦力を減らしておきたい。
「目の前の敵を確実にってね」
それぞれが発した声は仲間にだけ届き、それより先は戦場に満ちる音がかき消してくれた。
やがて、時が来た。ジュモー・エレクトリシアンに攻撃が仕掛けられたのだ。
「気合入れていくぞぉ!」
軍司・雄介(豪腕エンジニア・e01431)の威勢のいい声を合図に、ケルベロス達は走り出した。
先陣切って走る豊はオーダーメイドシャツの袖口をまくり上げる。
8人は2つの班と共に戦場を駆け抜ける。
前方の敵――マザー・アイリスを取り巻くダモクレスの動きに変化が表れた。突撃前のような統率は見る影もない。
しかし、マザー・アイリスの周囲に多くのダモクレスがいるという事実はそのままだ。
共に移動していた班の1つが、無数にいるダモクレスへ攻撃を仕掛けた。
次第に敵は数を減らしていき、それにより生まれる道。
「道は開いた。ここは押さえる、頼んだぞ!」
長い銀髪の男が声を上げた。
もう1つの班からは返事の声。
それとは別に、その班の地球人の男が言う。
「こちらが先行します。ついてきてください。来るべき戦いの為、この星の未来の為――必ずや道を切り拓きます」
かけられた言葉も2つの班がそれぞれに課した役割も違う。それは1つの目的を成し遂げる為に。
「任せろ、絶対にぶっ壊してくっからな!」
護衛を蹴散らしにかかった班に力強く言い放つと、雄介は再び走り出した。
マザー・アイリスの巨躯が近づく。
「後ろに回り込むよ! みんなついてきて!」
黒豹のウェアライダーが呼びかけると、先行する班が進路を変えた。
自らの背後を取らんとする一団にマザー・アイリスは目の色を変えた。
「私の……可愛い可愛い子供達を傷つけたお前たちに……これ以上、好き勝手させるとでも思ってるの!?」
振り向きざま、マザー・アイリスは手のひらほどの小型ダモクレスを複数出現させ、光線を放つ。
それは彼らの狙い通りの動きだった。
仲間が作った隙を突くべく、8人は加速する。
ニッと蓮は笑った。
「こんな熱い展開、現実だとそうお目にかかれないね。……行くよ!」
●途上
「ターゲット」
その言葉を合図に地獄の炎で出来た獣が豊の側に出現する。
『栄光の手』の名を冠する皮手袋に覆われた豊の手がマザー・アイリスを指し示す。
獣は唸りを上げてマザー・アイリスの背中に食らいつく。
自身が術中に陥ったことに気付いたマザー・アイリスの脚部が複数の砲身へと姿を変える。
薙ぎ払うように一斉射撃が行われた。
吹き飛ばされたテレサは勢いを逃がすべくタンッタンッと後方に跳ねた。想定していた『守』ではなく、『攻』に重きを置いてしまっていたが為に衝撃がすさまじい。
マザー・アイリスは吹き飛ばしたケルベロスをゆるりと見回す。
「おいたをする子には……お仕置きをしてあげなきゃねえ?」
バラフィールは白鋼の避雷針を掲げ、雷壁を展開した。
テレサも自身を含めた前衛に小型治療無人機を送る。
古き神の名を持つ武装生命体と、受難の象徴たる時計草の攻性植物に声をかけるメイザース。
「さて、騙り部呪術医の本領発揮だ、君たちも存分に力を見せておくれよ?」
重ねるように光り輝くオウガ粒子を放つ。
「母は強しとはよく言ったものだね」
「今はあんまり嬉しくない話だけど。でも、給料分は働くから任せとけ!」
蒼月は超鋼金属製の槌を変形させ、狙いを定める。放たれた竜砲弾が足と機械の境界線に叩き込まれた。
直後、マザー・アイリスの真上から星が下る。イェロの黒い靴が流星の輝きを宿し、その身を裂く。
着地と同時に後方に飛び退いたイェロが見たのは、髪で隠れがちな瞳に宿る怒りの炎。
「私の可愛い子供達を……よくも、よくも……!」
「可愛い子供達、ねぇ……」
デウスエクスであり、ダモクレスでありながらもマザー・アイリスはどうにも生々しいくらい感情的に見える。
「子を想う気持ちってのは変わらないものなんだな」
「関係ねぇさ。さっきメイザースが言ったろ。することは変わらないってな」
「そういうこと。ここで確実に仕留めるだけだ!」
言い終えるや否や、蓮はライフル銃から魔法光線を放った。
雄介も地を滑った勢いのまま跳びあがり、流星の煌き乗せた蹴りを見舞う。
体をくの字に曲げたマザー・アイリスは体勢を整えることなくケルベロス達を睨み付けた。
「いいえ、それは叶いません。お前達にはこの母が罰を与えます!」
「やれやれ、随分とおっかないね」
豊の回転式拳銃が目にも止まらぬ速さで火を噴く。
マザー・アイリスの髪が爆ぜた。
髪の一部分がバラバラと音を立てて地面に落ちるよりも先に、バラフィールが再び雷壁を展開する。
その直後、蒼月が放った氷結の螺旋がマザー・アイリスを襲った。
「こざかしい真似を……」
マザー・アイリスの視界には氷を纏わされた己のパイプ。苛立ちのあまり顔を歪めたマザー・アイリスを鼓舞するように小型ダモクレスが姿を見せた。
「あれは……カッツェ!」
主に応じるべくカッツェは宙を駆け、メイザースの代わりにビームを浴びる。
あまりの威力に高度を落としたカッツェはくるりと回って体勢を整えるが、翼が弱々しく震えている。
畳みかける機を逸した蓮だが焦りはしない。
眼鏡がずれないようぐっとブリッジを押さえると、地面を舐めるように走り抜けた。
刹那、摩擦で生まれた炎にマザー・アイリスが包まれる。
それを見ながらテレサは『守』に立ち位置を変える。
想定外の一手を勿体ないと思う反面、指揮官型ダモクレスという強敵相手では『盾』がカッツェ1体では追い付かないのだ。
バラフィールは足を動かしながらも、ちらと戦場を窺った。
護衛の大部分は最初に送り出してくれた班が。マザー・アイリスの側にいる護衛は、白い巨体を挟んだ向こう側の班が引き受けてくれている。
どちらの班もまだ余力がある。
しかし。
「きっついね」
「ええ。流石は指揮官型というべきでしょうか。……光よ、矢となって英雄の魂を解き放て!」
バラフィールが構えると光の矢が出現した。放たれた矢はテレサに力を与え、傷を癒す。
蒼月とバラフィールの視線の先には、マザー・アイリスの白髪で薙ぎ払われた者達の姿。
ある者は地面に武器を突き立てて勢いを殺し、またある者は強引に空中で姿勢を整える。
一撃一撃が重い。
豊を背に庇ったテレサの息は荒い。呼吸に合わせ肩が大きく上下する。
2枚の円状の武器を展開することで威力をある程度殺せたものの、膝が笑っている。
「お前達はここで私が壊しましょうねぇ。ええ、私の子供達の為に。我らダモクレスの為に」
●終焉
ケルベロスの疲労は色濃く、時と共に血が流れていく。
小型ダモクレスが姿を見せた。
テレサはメイド服の裾をなびかせ懸命に走る。
「当たれっ!!」
蒼月の前に飛び出すと同時にジャイロフラフープから弾丸を射出する。
反動でバランスを崩しながらも、テレサは一歩も退かなかった。
その身を何本もの光線が焼く。
咄嗟に、蓮は倒れ行くテレサを抱き上げた。
ここでは危険だ。一刻も早く遠ざけてやらねばならない。
ちらと後方へ視線を送る。
「ごめんっ!」
蓮はテレサの体を投げた。謝罪の言葉は意識の無いテレサと、後を託すメイザースへ。
刹那、宙を舞ったテレサをメイザースがしっかと受け止めた。
そんなやり取りがイェロの視界の片隅で行われた。
豊やテレサのように、借り出された『こちら側』の者達もいる。
お互い、大切なものの為に戦うことしかできないというのであれば。
イェロは黒い悪夢の魔力弾を撃ちだす。
「出来ること、出来る限りで尽くさせてもらうわ」
「僕も! ってわけで、いい加減親離れしたいからさ、ちょっとマザー眠ってて! 永遠に」
蒼月の影から這い出た大小様々な猫が魔法弾を追う。
黒弾が髪で弾かれ爆ぜる。そこに猫達が襲い掛かった。マザー・アイリスの白い体を塗りつぶそうとしているようにも見える。
「忌々しいっ……!」
マザー・アイリスは黒を振り払わんと体を大きく翻す。
その時、戦場に不似合いなハーモニカの音が聞こえた。音色は明らかに周囲へ呼びかける意図を持っている。
「急ぎましょう。ジュモー班がそろそろ持ちません」
マザー・アイリスの向こう側から聞こえた微かな声に雄介は歯噛みした。
ジュモー・エレクトリシアンが操作に専念出来るようになってしまえばマザー・アイリスは落とせない。
後方から戦況を把握するべく努めていたからこそ、このままでは間に合わないと理解できてしまう。
けれど。
「だったらここで決める……! マザー・アイリス……貴様の最後の時だ……!」
黒龍のオーラが叩き込まれた。それを切欠に向こう側の班は狙いを護衛からマザー・アイリスに変える。
雄介はダァンッと砲身がついたルーンアックスの柄頭で地面を叩いた。この流れを掴み取るのだという意志の表れ。
精神を極限まで集中させ、解き放つ。
「でかい目標だ。外すかよっ!」
マザー・アイリスの脚部が爆ぜた。
弾け飛ぶ部品が雨のように降り注ぐ中、蓮は己の体に影を纏わせる。
「これだけは他の幻装と違ってちょっと特殊でね。使い方次第でこんなこともできるんよっと!」
影の杭がマザー・アイリスを足元から貫いたところに蓮は影の爪を叩き込んだ。
マザー・アイリスの顔は怒りと憎悪で燃え滾っている。
「っ、お前は、お前たちはっ、私の子を……私の子供たちをぉぉ!」
叫ぶマザー・アイリスに豊は地獄の炎弾を叩きつけ、文字通り燃え上がらせた。
「戦うのが愉しい、そんな理由で殺し合いができるロクデナシでね」
「っ! 来なさい、私の子供達っ! 壊せ、この男を跡形もなく壊すのよ!!」
そう言って笑う、今にも倒れそうな豊を打ち据えるべくマザー・アイリスは小型ダモクレスを呼び出す。
体のいたるところがショートし、外装が剥がれ落ちていることもお構いなしだ。
だからこそ、イェロの刃が迫っていることも見えていなかった。
「鬼さんこちら。余所見をした君の……そうさせた俺達の、勝ちだ」
イェロの得物が鳴る。マザー・アイリスが音の主に気付いた時にはもう遅く――刃は深々とその胸に突き立てられている。
母は最期に呼び出した子供達と共に崩れ落ちた。
勝利の余韻には浸れない。
未だ周囲には多数のダモクレス。
しかし、ここには退路があった。突破口を開いた班が確保し続けた道だ。
「うっし、撤収だ」
雄介が言い終えるや否や、テレサを抱えるメイザースを6人で囲んで走る。
駆け抜けながら、今もなお退路を守る彼らにメイザースは短く言葉をかけた。
「すまないね、助かる。あとは頼んだよ」
そこからはただ真っすぐに。立ちはだかる者を払いのけながら8人は走る。
一度だけ、バラフィールは自分達が戦っていた場所を振り返った。
「おやすみなさい、マザー・アイリス」
作者:こーや |
重傷:テレサ・コール(黒白の双輪・e04242) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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