螺旋忍軍大戦強襲~大戦の前に

作者:八幡

●螺旋忍軍大戦強襲
「次に螺旋忍軍の『彷徨えるゲート』が出現する場所が分かったんだよ!」
 意気揚々とケルベロスたちの前に現れた、小金井・透子(シャドウエルフのヘリオライダー・en0227)は、皆が頑張って螺旋帝の血族・緋紗雨を智龍ゲドムガサラから守り切ってくれたおかげなんだよ! と話を始める。
「この情報があれば螺旋忍軍と決戦を始められるんだけど……決戦を始める前に、正義のケルベロス忍軍から螺旋忍法帖を手に入れて、螺旋帝の血族『亜紗斬』を捕まえた『最上忍軍』が動いているんだよ」
 螺旋忍軍にとっても生命線となるゲートだ。当然打つべき手は打ってくるだろう。
「最上忍軍は、螺旋帝の血族・イグニスから新しい命令を受けて、各勢力に潜入していた螺旋忍軍達を利用して『螺旋忍軍のゲートが現れる地点に戦力を集結』させようとしているみたいで、ダモクレスからは『載霊機ドレッドノートの戦い』の残党勢力。エインヘリアルからは、ザイフリートやイグニスの後釜を狙う王子とその私兵団。あとは、各勢力が研究していた屍隷兵の中で、戦闘力の高い者達を集めた軍勢も用意しているんだよ」
 そして最上忍軍は各勢力に潜入している訳で……当然こういった手段を用いてくるわけだ。
「彼らは、螺旋忍軍から『魔竜王の遺産である、強大なグラビティ・チェインの塊が発見された』『このグラビティ・チェインを得る事ができれば、巨大な功績になる』『この事実を知ったケルベロスの襲撃が予測されている』っていう偽の情報を掴まされているみたいなんだよ。あとは『魔竜王の遺産は独占が望ましいが、複数の勢力が参戦してくる事が予測されている為、敵に漁夫の利を与えない為の立ち回りが重要である』と説明していて、デウスエクス同士では戦わずに牽制しあうように仕向けられてるみたいなんだよ」
 イグニスとドラゴン勢力としては、各デウスエクスたちを上手く言いくるめてケルベロスとのみ戦闘になるように誘導し『ゲートから戦力を送り込むまでの防衛戦力』として利用しようとしているのだろう。
「ケルベロスウォーを発動しない限り、集結する軍勢を全て撃破する事は不可能……でも、行軍中の軍勢を襲撃して、主だった指揮官を撃破する事ができれば、敵勢力を弱体化させることができると思うんだよ!」
 だが、何もイグニスとドラゴン勢力の思い通りに進めてやる必要はない。集められて脅威になる前に、各個撃破してしまえばよいのだ。
「危険な任務だけど、みんなの力を貸してほしいんだよ!」
 みんなならできると思うんだよ! と、透子はケルベロスたちを見つめた。

●大戦の前に
「載霊機ドレッドノートの戦いのあとに、姿を消していたダモクレスの残党勢力が、最上忍軍の情報を聞いて動き出したみたいだよ」
 載霊機ドレッドノートの戦いで手痛い損害を受け、組織再建のために大量のグラビティ・チェインを必要としていたダモクレスの残党としては、最上忍軍の情報は渡りに船だったのだろう。
「ダモクレス残党だけど、指揮官型ダモクレスである、マザー・アイリス、ジュモー・エレクトリシアン、ディザスター・キングを中心に、有力な戦力が残されているんだよ。でも、指揮官型ダモクレスを一体でも倒せればかなり有利になると思うんだよ!」
 指揮官型ダモクレスが居るいないでの戦況の違いは、以前の戦いで身に染みている。それを一体でも落とせればダモクレスたちの力を大幅に削げるだろう。
「進軍するダモクレスの軍勢の先鋒は、ディザスター・キングと配下のダモクレス軍団が担っているんだよ。ディザスター・キングを倒そうとすると、とっても強い先鋒部隊と決戦しなくちゃいけないんだよ。ディザスター・キングを倒したい場合は、メタルガールソルジャー・タイプS、メタルガールソルジャー・タイプG、ディザスター・ビショップ、ダイヤモンド・ハンマー、ゴルドといった有力な敵を倒すか、倒せなくてもディザスター・キングの援護にいけないように釘付けにした上で、複数チームでディザスター・キングを強襲する必要があるんだよ」
 ディザスター・キングを撃破しようとするなら、先に配下のダモクレスを倒すか足止めした上でディザスター・キングへ挑まなければならない。
「マザー・アイリスは全軍の中央に位置いて、周りをたくさんのダモクレスが囲んでいるんだよ。周りに居るダモクレスは単純な戦闘行動しかできない上に強くないけど、指揮官型の一体のジュモー・エレクトリシアンが直接操作しているみたいで全く隙が無いんだよ。マザー・アイリスを倒す場合は、ジュモー・エレクトリシアンを先に倒すか指揮が取れない状況に追い込んで、護衛のダモクレスを混乱させた隙に、マザー・アイリスの元に突入する電撃戦をする必要があるんだよ」
 マザー・アイリスの護衛はジュモー・エレクトリシアンが操作しているため、全く手を出せない。
 ならば先にジュモー・エレクトリシアンを倒すか、護衛を操作できなくさせて、マザー・アイリスに電撃戦を仕掛ける必要があると言うことだ。
「電撃戦をする場合は、指揮が混乱した護衛ダモクレスを陽動するチーム、隙が出来た場所の護衛ダモクレスを撃破して突破口を開くチーム、マザー・アイリスを撃破するチームの連携も重要になるよ」
 操作を失ったと言っても単純な行動くらいはできる。そんな護衛ダモクレスをまともに相手にしないための作戦が必用になるだろう。
「ジュモー・エレクトリシアンは全軍の後方で護衛ダモクレスの指揮とかをしてるんだよ。常にレイジGGG02、オイチGGG01、マザー・ドゥーサといった護衛と一緒にいるから、ジュモー・エレクトリシアンを撃破するには、ジュモーとジュモーを守る三体の有力なダモクレスと同時に戦えるだけの戦力が必要になるんだよ」
 ジュモー・エレクトリシアンは護衛と常に四体で行動しているため、小細工が効かない。四体同時に相手をするだけの戦力が必用となるだろう。
「指揮官型を狙わない場合は、星喰いのアグダ、導陽天魔、マスターオーブメント、智の門番アゾート、ブレイン・ハンター、シン・オブ・グリード、英霊機タロマティア、あずさ、ムシバルカン、エクスガンナー・アルファ、シスターエイルといった有力なダモクレスを倒せばダモクレスの戦力を削ることができるんだよ。あとは、ダモクレスの軍勢の中に、最上忍軍の最上・幻斎が同行しているみたいだよ。最上・幻斎の居場所は不明で、見つけ出すことは難しいと思うんだけど、なんらかの作戦を行って、最上・幻斎を倒せれば最上忍軍に大きな打撃を与えることができるかもしれないよ!」
 指揮官を狙わなくても、有力敵を倒せれば損害を与えることが出来るし、もし最上・幻斎を発見、撃破できるならそれに越したことはないだろう。
 一通りの説明を終えた透子はケルベロスたちを真っ直ぐに見つめ、
「ここで指揮官型ダモクレスを倒せれば、必ず次に繋がるんだよ! だから、危ない任務だけど、何としても指揮官型ダモクレスを倒してきてね!」
 両手を胸元にあてて願うように、言葉を紡いだ。


参加者
生明・穣(月草之青・e00256)
ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)
伏見・万(万獣の檻・e02075)
藤・小梢丸(カレーの人・e02656)
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)
レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)
影渡・リナ(シャドウランナー・e22244)
シトラス・エイルノート(碧空の裁定者・e25869)

■リプレイ


 迫りくるディザスター・キングとその配下の先方隊……圧倒的な体躯を誇るキングを中心に一糸乱れぬ足並みで進行するダモクレスの集団は正に軍と呼ぶに相応しい。
「目標は発見したけど……」
 敵の様子を探るために気配を消して先行していた、影渡・リナ(シャドウランナー・e22244)は遠目に見えるキングの軍団を前に、小さく息を吐いた。
 キングの姿は探すまでもなく、リナたちの目標であるメタルガールソルジャー・タイプGの姿と、この場にいるケルベロス全員で遠距離による先制攻撃を仕掛けるつもりだったディザスター・ビショップも簡単に見つけることが出来た。
 出来たのだが、この状況での遠距離攻撃……つまりは正面からの撃ち合いを行えばリナたちの方が一瞬で消し飛ばされることは明白だろう。
「連絡だよ」
 どうしたものかと考えていると、糸目の白い男から攻撃中止の連絡を受ける……リナはその言葉に小さく頷くと、仲間たちのもとへ戻った。

 リナの連絡を受けた、レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)たちは先制攻撃を諦め、息を潜めてキングの軍団が近づいてくるのを待つ。
 待つ時間というものは人に色々なことを……嫌なことを考えさせてしまう。特に、このような大きな戦いの前となれば尚更だ。
 溢れてくる不安を拭う様に大丈夫、大丈夫とレイラが自分に言い聞かせるように、転生と再生の象徴である、聖なる青睡蓮の意匠が施された美しい金杖を持つ手に力を籠めていると、
「これが終わったらお腹いっぱいカレーライスを食べるんだ!」
 藤・小梢丸(カレーの人・e02656)は遠くを見つめながらそんなことを口走る。唐突な発言に、え? と、小首を傾げるレイラに無言で親指を立てる小梢丸。どうやら緊張をほぐそうとしているようだ。
「そろそろですよ」
 その効果があったかは不明だが、目を細めるレイラの様子を確認して、シトラス・エイルノート(碧空の裁定者・e25869)が何時もと変わらぬ穏やかな口調で告げる。
 シトラスの言葉に促されキングの軍団を見やれば、その姿は先ほどよりもはっきりと確認することができ――、
「今だ!」
 間を計っていた、渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)が短く言い放つと同時に飛び出し、そのすぐ後をシトラスたちも追う。数汰たちが駆ける先……そこには無数のダモクレスたちがひしめき合っているが、躊躇うことなく軍団の中へと入りこむ。
「あっちだよ!」
 そして目標であるタイプGの位置を示すリナの誘導に従いつつも周囲を見回せば、ダモクレスの軍団の合間からシトラスたちとは違う班の仲間たちもそれぞれに目標の敵へ向かい駆けて行く姿を確認することが出来た。
 その中でも特にキング討伐と言う同じ最終目標を持つ仲間たちがそれぞれキングとビショップの元へ進む姿を遠目に見つつ、数汰たちもダモクレスの軍団を掻き分け……、
「見つけたぞ」
 垣間見えた緑色の装甲に、ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)が鋭い視線を向け、次の行動へ出るべく深く息を吸い込む。
「まずはアイツを喰うぜ!」
「確実に倒していきましょう」
 そして各々の距離で足を止めた、伏見・万(万獣の檻・e02075)と、生明・穣(月草之青・e00256)の声を後ろに聴きながら、ディークスは駆ける……ここに至るまでも、既にいくつもの戦いがあったのだ。その戦いで仲間たちが最善を尽くしてくれたからこそ、今に繋がっている。
 その繋がりを絶たぬためにも、今回は自分たちが必ず応えねばならないのだと、ディークスは透明感のある刀身と漆黒の柄を持つ槍を手に、緑色の装甲を持つダモクレスの懐まで踏み込んだ。


 リナに導かれ、敵軍の中に見つけたメタルガールソルジャー・タイプGの懐へ飛び込んだディークスは、稲妻を帯びた超高速の突きを放つ。
 駆け込んだ勢いのままに放たれたその一撃だが、タイプGは右手に持ったガトリング砲でディークスの突きの軌道を逸らす。
「おっと、お前の相手は俺達だ」
 初撃が防がれた事実と金属同士がこすれ合う耳障りな音にディークスが眉を寄せる中、タイプGの視線がキングへ向いていることを確認した数汰が、ディークスの一撃を防ぐために空いたタイプGの左腕へ流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させる。
 数汰の蹴りを受けたタイプGの体が僅かに揺らいだところへ、獣化した手に重力を集中した小梢丸が高速かつ重量のある一撃を叩き込もうとするも、タイプGは背中のブースターを噴射させて小梢丸から距離をとった。
「さて、僕たちの本来の目的はキングですので、貴方なんかに時間をかけている暇などはないのですよ」
 距離をとりつつキングへ視線を向けていたタイプGを挑発するようにシトラスは微笑みかけながら、禁断の断章を紐解き詠唱する。
 キングへ向かったケルベロスが一班だけであることを確認したタイプGは、シトラスたちへ再び視線を戻し、槍を手に低く身構えるディークスと蹴りの反動を利用して小梢丸の後ろへ下がった数汰を見つめる。
 それからシトラスの挑発に応じるようにガトリング砲を構え……前衛に向けて嵐のように弾丸を放ち、タイプGの動きに呼応するように周囲のダモクレスたちからも、光線や砲弾が飛んでくる。
「皆さんは前だけを見てください、バックアップは任せてください!」
 降り注ぐ弾丸の雨を小梢丸とシトラスは正面から受け止め、小梢丸たちの背中を支えるようにレイラが手を伸ばせばオーロラのような光が彼らを包み込んでいく。
 オーロラの光が小梢丸たちの傷を癒す中、万が地面にケルベロスチェインを展開して魔法陣を描いて前衛を守護し、
「放つは雷槍、全てを貫け!」
 稲妻の幻影を武器に宿らせたリナが槍の如く武器で虚空を突くと、雷の槍が弾丸の雨を貫いてタイプGの腹部装甲に直撃する。
 リナが放った雷槍の残滓が帯電するタイプGの体を見ながら、穣は全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出して自身の超感覚を覚醒させ、ウイングキャットの藍華にも羽ばたきで邪気を祓わせた。

「インド洋に沈め!」
 周りのダモクレスから浴びせられる攻撃を、芳醇と名付けた攻性植物で受け止めつつ小梢丸はブラックカレーのようなブラックスライムを捕食モードに変形しタイプGを丸のみにする。
「唄え。その想い示す儘に」
 ディークスが手を翳すと意思が紡ぐ歓喜の唄が青い稲光となって、タイプGを丸のみにしたブラックスライムの周りに出現する。
 そして、ブラックスライムを振りほどいたタイプGの装甲を這うように走った稲光が、その装甲に華のような黒い傷跡を刻み、身を震わせるタイプGの目の前まで駆け込んだリナが稲妻を帯びた超高速の突きをねじ込もうとする。
 しかし、半歩右にへ動いてリナの一撃を避けたタイプGは、ゲシュタルトグレイブを突き出した姿勢のままのリナの顔へガトリング砲を向け――、
「っ!」
 衝撃に備えて目を閉じたリナの真横を光線が貫いた。光線はタイプGのガトリング砲へ直撃すると、その熱量を奪ってガトリング砲に霜を降ろさせる。
「思い通りにさせるわけがないでしょう」
 それからシトラスがリナの襟首を掴んで後ろへ引くと同時に、電光石火の蹴りをタイプGの首筋へ放つ。後ろへ引かれたリナは一瞬体勢を崩すも片手をついて反転して立て直すと、そこにはバスターライフルを構えた数汰の姿があった。
 シトラスの蹴りを左手であっさり受け止めたタイプGは、今度はシトラスの顔面へガトリング砲を向け――その引き金を引く。
 目の前で放たれた大量の弾丸を、シトラスは両手に這わせたバトルオーラを盾に防ぐが、防ぎきれなかった弾丸がシトラスの皮膚と肉を削り、地面へ血だまりを作っていく。
「離れろ!」
 その様子を見たレイラがすぐさま生命を賦活する電気ショックを飛ばし、空の霊力を帯びたオウガメタルで万がタイプGへ斬りかかるが……タイプGは身を引いて、万の一撃を避けた。
「消えぬ炎は怨嗟の色」
 だが、その回避先を狙う様に穣が放った青い衝撃波がタイプGの体を捉え、緑色の装甲を青い炎で包み込んだ。


「この距離は苦手だろう!」
 得物を惨殺ナイフへ持ち替えた数汰が、周囲のダモクレスの攻撃を掻い潜りながらタイプGの懐へ入り込み、ジグザグに変形させた刃で回復しづらい形状に斬り刻む。
 幾度となく繰り返した攻防だがタイプGは倒れず、周囲のダモクレスもあり数汰たちはじわじわと追い詰められていた。
「カレーが食べたいんだぁァぁあぁ」
 それでも回復手段の多さが幸いしてか、誰も倒れることなくタイプGの足止めを続けられていたのだが……、
「歯応え充分すぎんだろ!」
 小梢丸が叫びつつ自身の傷を癒すのを確認した、万は苛立ったように奥歯を噛みしめる。もともとは速攻でタイプGを倒しキングへ合流する手はずだったのだ。それが、ここまで時間を使わされてしまっては作戦全体への影響も出始めるだろう。
 かといって何かをかなぐり捨ててでもタイプGを倒すような無茶な攻めをするつもりは彼らにはなかった……が、それにしても……と、穣に付けられた炎を気にする様子もなく自分たちと対峙するタイプGをリナは見つめる。
 レイラの癒しで自分たちの傷は粗方回復しているとは言え癒しきれない傷がそろそろ目立ち始めてきている。しかし、そんな自分たちをタイプGは無理に追い詰めてくるようなことはしない。周囲のダモクレスと共に、漫然とした攻撃を繰り返すだけだ……まるで何かを待っているような、
「まずいですね」
 リナがそんなことを考えていると、視界の端に強烈な光が入り……穣の声に促されるようにそちらを見れば、戦場を包むガスを発生させる黒髪の男と、キングと周囲を取り囲むダモクレスたちの中に半壊している仲間たちの姿が見えた。
「前線を維持しつつ、あちらの支援を」
 頑強な装甲を持つ男が剣に貫かれ、銀髪の女性は腹に穴をあけられ……キングのもとに向かっていた仲間たちの姿は、凄惨を極めていた。
「初めから逆……ということかな」
 その姿を見たリナは唇を噛む。タイプGの動き、キングの強さ……考えてみれば当たり前の話だ。そして逆を考えれば、別の可能性も当然ある。もっともそれは結果から導き出されるものであり、作戦の段階で捨て身で突撃などという策をとれる者は、そうそう居はしないだろう。
 いずれにしても、キングへの強襲は失敗に終わった……ならば次に取るべき行動は明確だ。
 キングを前に絶体絶命の仲間たちへ支援をというシトラスの言葉に頷き、リナは思考を切り替えた。

 前線をシトラスと小梢丸が維持し、レイラがその背中を支える。
 小梢丸たちとて無傷ではない、タイプGと周囲のダモクレスたちの攻撃にさらされ続けた体には無数の傷がつき、いくつかはすぐには回復しきれないほどだ。
「支えて見せます!」
 傷つく仲間をレイラは癒しの光で覆う。たとえどれだけ傷つこうとも必ず支えて見せると、ここで自分たちも倒れたら誰がキングを前に奮戦する仲間たちを助けるのだと、ニンファエア・カエルレアを持つ手に力をこめる。
「背中は俺たちがあずかる」
 レイラたちが前線を維持する中、ようやくキングまでの道を確保したディークスは彼らを庇う様に前に立ちダモクレスたちと対峙する。それから改めて仲間たちの姿を確認し……もっとできることがあったはずだと、奥歯を噛みしめる。
「食いちぎんぞオラァ!」
 ディークスに続いて敵を突破した万が精神操作で伸ばした鎖でキングの周りにいるダモクレスを締め上げると何体かのダモクレスが塵に還るが、
「感謝するよ! ……問題は!」
 傷だらけの男を引っ張りガンナースタイルのホルスターに銃を納めた青い髪の女性の前にはキング……ここまで到達したは良いが、目の前には最も高い山がある。
 万全の状態で挑んだ仲間たちが及ばなかった相手だ。今の状態の、万たちで手に負えるものではない。しかし打つ手がない訳ではないが……、
「約束、申し訳ありません」
 ディークスが覚悟を決めるより先に、一人の少女がキングの前に立ちはだかる。
 この間にも押し寄せるダモクレスの群れを青い稲光で押し返しつつ、彼女を止めようとする仲間たちの声を背中に聞く……だが、彼らとて手段がそれしかないことは分かっている。
 黒炎の障壁でキングの大剣を跳ねのける儚げな少女の後姿がダモクレスの群れに呑まれていくのを、ただ黙って見つめながらディークスたちは撤退を開始した。


 追撃を仕掛けてくるダモクレスの群れを捌きつつ、数汰たちは突き進む。
 キングは先ほどの少女が押しとどめてくれているのか追撃を仕掛けては来ず、タイプGもまたそのキングに合流したのか姿を消した。後はこのまま戦場を離れれば、最低限の目的は果たしたと言えるだろう。
 目の前の敵を魂を喰らう降魔の一撃で蹴散らしつつ戦況を分析していた数汰だが、その思考は唐突な爆発音に遮られる。
『……撤退する! 僕らは、まだここにいる! 助けを頼むよ!』
「まだ、余裕はあるかい?」
 そして爆発音に続いて聞こえた救援を求める声……あれはもう一班、ビショップへ突撃した仲間たちの声だろう。
「当たり前だ! さァ、刻んでやるぜェ!」
 肩で息をしつつも穏やかに問いかける小梢丸に万は吠え、声のした方に群がるダモクレスへ向けて己の中に潜む獣の群れを、幻影として呼び出した。

「居ましたよ」
 ダモクレスの群れに蒼炎を撒いていた穣が、敵軍の中を突き抜けて来た仲間たちの姿を見つける。
「こっちだ! こっち!」
「救援をお願い!」
 それから可憐容姿のオラトリオと金髪の少女の声に導かれて合流するが……彼らもまた傷つき、何人かは仲間の手を借りなければ動けないほどだ。それに……、
「これで全員か?」
「ああ。僕らは七人だ。一人は……残ったよ。すまない」
 数汰の問いに、金色の瞳の男が答える。予想はしていたが、突き付けられた現実に穣は小さく息を吐いた。
「ビショップは死んだよ。でも、色んなものに借りが出来たね」
 それでも目的は達したと、糸目の白い男は言う。そしてそれは同時に色々なものに借りを作ることになったとも。
「せめて、今……私たちが出来ることをしましょう。こちらへ!」
 良いものであれ悪いものであれ、借りたものは返さなければならないだろう……でも、と、レイラは彼らをいざない、
「生きいてこそだよ」
 さらに膨れ上がったダモクレスの群れへ、黒色の魔力弾を放ちながら穣は言う。
 救えなかった後悔、倒すべき敵を倒せなかった無念、色々あるだろう。だが、生きていてこそ次がある……少なくとも今回は、次があるのだ。
「だから、前を向こう」
 自分にも言い聞かせるように呟いた穣の言葉に、一行は頷くと傷ついた仲間たちを庇いながらダモクレスの群れを抜けた。

作者:八幡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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