鎌倉ハロウィンパーティー~非リア魔女の襲撃!

作者:質種剰

●非リアの夢は際限なく膨らむ
 スーパーマーケット。
 妙齢の女が1人、インスタントラーメンや夜食用のスイーツを買い込んだカートを押していたところ、とあるコーナーに視線を吸い寄せられた。
「ハロウィンか……」
 ジャックオランタンを模したケースから溢れそうな飴の詰め合わせ。
 ドラキュラや魔女の形をしたクッキー、カボチャのフォルムが可愛いマシュマロ。
 来たるハロウィンをアピールしたお菓子コーナーを見やって、女は深いため息をつく。
「はぁ……」
 一度ぐらいハロウィンパーティーというものに自分も参加してみたい。
 可愛い魔女やミイラの仮装に身を包んで、皆からちやほやされたい。
 あわよくばイケメン男子を引っ掛けて、『お菓子いらないからイタズラして?』とか言ってみたい。
 生まれてこの方、彼氏が一度も出来た事の無い女の妄想は、留まるところを知らない。
 現実見ろよ、とツッコんでくれる友だちもいない。
 ただ、幾ら夢見ようと流石に現実で叶う事はないと、女は頭で判っていた。自分の容姿にも社交性にも自信が無いからだ。
 それでも、未練がましくマシュマロを買ってアパートに帰れば、赤い頭巾の少女が待っていた。
 女が驚く間もなく、赤い少女は『心を抉る鍵』を女の心臓へ突き刺す。
「うっ……?」
 意識を失い倒れる女だが、心臓を穿たれても怪我した様子がなく、死にもしない。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 赤い頭巾の少女――ドリームイーターは女を見下ろしてそう呟くと、鍵の先端から今しがた吸い取った女の夢を使って、新たなドリームイーターを生み出す。
 可愛い魔女の仮装をしたドリームイーターが女の隣に現れるも、すぐに姿を消した。


「藤咲・うるる(サニーガール・e00086)殿が調査してくださったところによりますと、日本各地でドリームイーターが暗躍しているそうであります」
 小檻・かけら(サキュバスのヘリオライダー・en0031)は、説明を始めた。
「出現するドリームイーターは、ハロウィンのお祭りへ対して劣等感を持っていた方で、ハロウィンパーティーの当日に一斉に動き出すようであります」
 ハロウィンドリームイーターが現れるのは、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場――即ち、鎌倉のハロウィンパーティー会場だという。
「皆さんには、当日、ハロウィンパーティーが開始する直前までに、ハロウィンドリームイーターを撃破して頂きたいのであります!」
 かけらはそう言ってぺこりとお辞儀した。
「ハロウィンドリームイーターは、ハロウィンパーティーが始まると同時に現れるであります。魔女の仮装をしていて、それ以外の体全体が、モザイクに覆われているでありますよ」
 そのため、ハロウィンパーティーが始まる時刻よりも早く会場へ到着し、ケルベロス達自身であたかもハロウィンパーティーが始まったかのように楽しそうに振るまえば、ハロウィンドリームイーターを誘き寄せることができるだろう。
「さて、ハロウィンドリームイーターの攻撃ですけど、手にした棒付きのマシュマロからモザイクを飛ばして身体を包む、催眠効果のある『夢喰らい』を使ってくるであります」
 また、例のモザイクを大きな口に変化させ、相手の武器ごと噛み砕く『欲望喰らい』も用いて攻撃してくる。
 理力に満ちた『夢喰らい』の射程は長いが、敏捷を活かした『欲望喰らい』は近くにいる相手へしか通じない。どちらも単体攻撃である。
「ハロウィンパーティーを気持ち良く楽しむため、ドリームイーターをしっかり撃破してきてくださいね。期待してるであります♪」
 かけらは、彼女なりの激励の言葉で、説明を締め括ったのだった。


参加者
ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)
ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)
トウコ・スカイ(宵星の詩巫女・e03149)
フェル・オオヤマ(白き魔法剣士・e06499)
月神・天(ミスめんどくさい・e08382)
ニア・サード(叩いても直りません・e09052)
ニルス・カムブラン(暫定メイドさん・e10666)
マルチナ・ヘイトマーネカ(カレー派芋掘りメイド・e14100)

■リプレイ


 鎌倉のハロウィンパーティー会場。
「ハロウィンパーティーをめちゃくちゃにされたら、きっと皆様はがっかりするのです」
(「戦う事は好きではありませんが、誰もが笑顔でパーティーを楽しめるよう頑張って襲撃を阻止するのです」)
 ニルス・カムブラン(暫定メイドさん・e10666)はそう決意すると、もこもこふわふわの羊の仮装で、あたかもパーティーが既に行われているかのように振る舞った。
「お菓子くれなきゃバツなのですーっ、くれない方はモフモフするのですーっ」
 うがーっ、と両腕を振り上げ迫るシルエットは、創作物に出てきそうな狼のそれだが、あくまで格好がもこふわ羊の為、何とも愛らしい。
「さあさあ、お魚ドーナツとなめろうドーナツを用意しました。どちらでもお好きな方を、いえいえ折角ですから両方どうぞ!」
 すると、ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)が、首に提げたバスケットから、大好物のなめろうを入れたドーナツやお魚のすり身で作ったドーナツを薦めた。
 この日の彼女は、ビルシャナを青くした着ぐるみに身を包んでいる。
 元より、水色の頭部に黄色い瞳、ブルーの草摺に白のロングスカートという爽やかな出で立ちのビスマス。
 それ故、同じ青系統のビルシャナ着ぐるみへ入っても違和感がなく、むしろ、なめろうやたたっこを広めんと誓いを立てた彼女にぴったりとさえ思えた。
「なめろうのドーナツ見たの初めてです。ぜひ頂きますっ!」
 ニルスは得体の知れないドーナツへも臆する事なく、笑顔でかぶりついた。
 その感想は。
「美味しいですっ、サンマの旨味とシソの香りが口いっぱいに広がります!」
 およそドーナツへのコメントに思えないものだ。
 とはいえ、ビスマス曰く味噌ドーナツからヒントを得てカラッと揚げてみたというなめろうドーナツは、普通に美味しそうだ。
 ちなみに、ニルスのライドキャリバーであるトライザヴォーガー、通称ザヴォちゃんは、巨大南瓜のハリボテの中に大人しく隠れて、会場のインテリアのフリをしている。
「ハロウィンで自分が仮装するのは、5年ぶりですわにゃん♪」
 トウコ・スカイ(宵星の詩巫女・e03149)は、いつも弟妹の世話を焼く姉としての落ち着きをこの日に限っては忘れるかのように、童心に帰ってはしゃいでいた。
「これは猫又と言いまして、日本に昔から伝わる妖怪ですのよ……ですのにゃん?」
 彼女の説明通り、今は普段のドレス姿でなく白い和服を着込んで、腰を隠す程長い黒髪の天辺に猫耳を飾り、腰には2本に割れた尻尾を垂らして、すっかり猫又になりきっていた。
「中身は南瓜風味のキャラメルですのよ、にゃん♪」
 小さな袋入りのお菓子を荷物から取り出して、羊へと渡すトウコ。
「ありがとうございます!」
 貰ったキャラメルを早速ぱくりと食べて、ニルスがにっこり破顔する。
「とっっても美味しいのですっ」
 トウコも嬉しそうに頷くや、お魚ドーナツへ手を伸ばした。
「猫又ですから、お魚は大好きですにゃん♪」
「ハロウィンパーティーへの憧れから産まれたドリームイーターですか……パーティーに憧れたドリームイーター犠牲者さんには申し訳ないですが、どういう経緯であれ夢を奪うような存在は許せません……!」
 丁寧な物言いで憤るミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)は、オラトリオの羽を仕舞った背中に裏地の赤い黒マントを羽織り、口へ鋭い牙をつけて、吸血鬼の仮装をしている。
 深い緑色のウェーブがかった美しい髪と、純真そうな瞳を持つ彼女が、普段の白いナース服の上からマントを纏った格好は新鮮で、凛々しくすら映る。
「……ところで、そのお魚ドーナツ、私も頂きますね……できれば猫にあげる分も――」
 だが、目を輝かせてお魚ドーナツを手に取る辺り、どんな装いをしていてもミリアはミリアだった。
「年に一度のハロウィンパーティーを滅茶苦茶になんてさせてやらないで御座いますですよ!」
 煩いぐらいの元気の良さで、パーティー会場を練り歩くのは、ニア・サード(叩いても直りません・e09052)だ。
 艶のある緑色の髪と澄んだ青い瞳が可愛らしい彼女は、頭からすっぽりと大きな南瓜のマスクを被って、ジャック・オ・ランタンに扮している。
「さあさあ、沢山お菓子を持って来たですよ。皆さんどうぞどうぞ食べて下さいで御座います。私もトウコさんの南瓜キャラメルを早速頂きますで御座います! これぞ共食いで御座いますですね!!」
 ドリームイーターへ既にパーティーが始まっていると思わせる為の作戦とはいえ、仲間達へお菓子を配る傍ら、キャラメルを南瓜の口へ放り込むニアは、心底楽しそうに見える。
 賑やかしとして天賦の才があるようだ。
 さて、会場へ着くまでのヘリオンの中でこそ。
「まったく、ハロウィンパーティーを襲撃するとは何事でござるか!」
 プンスプンスと怒っていたフェル・オオヤマ(白き魔法剣士・e06499)であったが、今はしっかり気持ちを切り替え、魔女の仮装で会場を回っている。
 白い髪へ乗っけた三角帽子やだぼだぼしたローブが、どこか蠱惑的な雰囲気のあるフェルに、よく似合っていた。
「ん〜と、お菓子をくれなきゃ悪戯するでござるよ〜」
 フェルは、ゆる〜い口調で仲間達からドーナツやキャラメルなどを貰って。
「ほんの少し話しただけでお菓子が食べ放題……つくづくハロウィンパーティーとは良いお祭りでござるなぁ〜」
 いかにも自宅警備員らしい基準で感動していた。
 働かずして食う飯が旨いなら、お菓子だって当然旨いのだな、と。
 そして、フェル以上に自宅警備員っぽい言動を重ねているのが、月神・天(ミスめんどくさい・e08382)。
「はぁ……お祭りは好きですけど……戦闘めんどくさい。ドリームイーターもまた面倒な仕事を増やしてくれました……」
 でも非リアに罪はないです。その夢を悪用して事件が起こされるというのであれば、ケルベロスとしては放っておくわけにもいかないわけで。
「……でもやっぱりめんどくさい」
 途中でちょっと良い事を言った風に聞こえても、すぐにそれを掻き消す『めんどくさい』の嵐。
「作戦名、みんながんばれ! ってわけには、いかないですよね……むぅ」
 とにかく自分から動こうとしない天のスタンスは、自宅警備員としてなら立派な生き様かもしれない。
 きっと彼女の中の『めんどくさいゲージ』が、徐々に溜まり始めているのだろう――但し、お祭りは好きであり面倒臭くもないらしく、ノリノリで仮装していた。
「私は、この仮装に合わせる意味でも、スイートポテトを作って参りました。遠慮なくお召し上がり下さいませ」
 そう礼儀正しくにお辞儀して、マルチナ・ヘイトマーネカ(カレー派芋掘りメイド・e14100)は、綺麗にラッピングした小箱を差し出す。
 中では、大き過ぎず小さ過ぎず、立食パーティーで摘むのに丁度良いサイズのスイートポテトが、甘い匂いを放っていた。
 そして、普段ならば茶色の三つ編みと素朴さ漂う麦わら帽子がトレードマークで、理知的なメイドさんといった風情のマルチナだが、今は巨大なサツマイモと化している。
 もこもこ素材で出来たその着ぐるみは、大きさからして可愛さより迫力が勝っているも、恐らくマルチナの強い芋愛が飽和した結果だろうから仕方ない。
「わぁ、甘そうなスイートポテト! お菓子くださいっ、くれなきゃバツなのですーっ」
「くださいにゃん♪」
「くれなきゃ悪戯でござる〜」
 ニルスやトウコ、フェルが囃し立てる傍ら。
「美味しそうですね、遠慮なく頂きます」
「むぐ……美味しかったです……」
 きちんと手を合わせて食べ始めるミリアや、いつの間にか完食している天など、反応は様々だ。
 とまあ、ビスマスのなめろう布教や南瓜ニアのお菓子大盤振る舞いもあって、8人が楽しそうに盛り上がる中。
「……貴方達……心底ハロウィンパーティーを楽しんでますって顔してるわね。ムカつく!」
 件のドリームイーター――非リア魔女が現れた。


 ついに対峙した非リア魔女とケルベロス達。
「先手必勝! 釣り上げだら即迎撃で御座いますですよ!」
 まずは、ニアが鉄塊剣を軽々と振り上げて、その重厚無比な刀身で魔女を叩き潰す。
 ゴッ!
「げぼっ!」
 痛そうな音がして、ひしゃげた三角帽子がみるみるうちに真っ赤に染まった。
「発生した理由を考えると物悲しいと言いますか……せめて精一杯相手を勤めましょう」
 ビスマスは、そんな風に非リア魔女へ憐憫の情を向け、しんみりした気分で戦闘態勢を整える。
「どうせどうせ、皆気立ても良くて可愛い女の子を囲んでチヤホヤちやほや祀り上げて、盛り上がってるんでしょう! ああクソ羨ましい!! 私だって沢山の人に構われたいわ!!」
 しかし、欲望ダダ漏れの非リア魔女が棒マシュマロを振りかざし、どデカいモザイクでミリアを包み込まんとするのを見れば、大層微妙な気持ちになった。
「何と言いますか……人の心と言うものは、余りに明け透けに覗いてしまうと、微妙な気持ちになりますね……」
 まったくである。
「……あ、急激にめんどくさくなってきました」
 天もぼやいた。戦闘も面倒臭ければこの非リア魔女も色んな意味で糞面倒臭いものだ、と。
「味方への攻撃を防ぐのもお仕事なので御座いますですよ!」
 ミリアへの夢喰らいは、咄嗟に前へ出たニアが代わりに受けた。
「青魚だけが『なめろう』じゃない……今からそれを証明して見せますっ!」
 ビスマスも気をとり直して、蟹に宿りしご当地パワーを集め始める。
 そして、蟹を模したフルアーマーと蟹鋏型のシールド付きアームガードを装着。蟹鋏で非リア魔女へ掴みかかった。
「ズワイガニ……シザースクラッシャーっ!」
 バキバキボキバキベキッ!
 鋏へ力を込めて、非リア魔女のたるんだお腹を挟み込んで粉砕。肋骨を何本もイカれさせた。
「何すんのよ痛いわね……!」
 次いで、ビスマスのボクスドラゴンであるナメビスも、高坏を思わせる封印箱に入ったまま、非リア魔女へ体当たり。
 どんっ!
「痛ぁあ!」
 魔女の大根足が真っ赤に腫れ上がる。
「無粋な真似はおよしなさいませですの。寂しさを埋めるのは自分自身の心がけ一つですわ」
 トウコは非リア魔女を静かに諭すと、おもむろに天を仰いで詠唱を始める。
「……照り焦がす陽光の銀幕を引き裂き凍れる闇の緞帳を突き破り降り注げ鳴り響け兵よ立ち上がれ」
 ピシャアアアアン!
 善なる者を護り助ける蒼き稲妻が、前衛陣の頭上から爪先目掛けて貫き、ニアの負傷を癒すと共に、彼らの命中率を高めた。
「人の夢を奪うデウスエクスは、馬に蹴られちゃえ、です!」
 毅然とした態度で魔女へ言い放ち、ライトニングロッドを構えるのはミリア。
「うっ……!?」
 杖の先より発射されし時空凍結弾が、魔女の貧相な胸へ吸い込まれるかのように命中、身を切られる痛みの凍傷を残した。
「ドリームイーターさんこっちなのです、私達がお相手するのですっ!」
 ニルスはもこふわ羊着ぐるみのままで、ビシッとポーズを決める。
 そして、もこもこふわふわな毛玉で上手く隠れているファスナーを全開。アームドフォートの主砲を全て、非リア魔女へ照準を合わせた。
 ドドドドドドドドドド――!
 地鳴りの如き音を立てて一斉発射された砲弾が、魔女の全身へ降り注ぎ爆炎を上げる。
 ドーーン!
 ザヴォちゃんも炎を纏って突撃をぶちかまし、魔女の体力を削った。
「これで決めるッ! 天翔雷雨!」
 上空へ飛び上がるやガトリングガンで牽制攻撃するフェル。
「上!?」
 非リア魔女が怯んだ瞬間を見逃さず、フェルはマインドソードを構えて急降下、魔女のドラム缶のような胴体をズブリと貫いた。
 さて。未だハロウィンパーティーが開始される時刻では無い為、会場に一般人は1人も居らず、マルチナが避難誘導に奔走する必要は無かった。
「覚悟するだよドリームイーター、おらも相手だべ!」
 気が抜けたせいか、うっかり方言で啖呵を切ってしまうマルチナ。
「あっ……いえ、兎も角、焼き芋のようにこんがり焼いて差し上げましょう」
 慌てて言い直す彼女の前に現れしは、うっすらと透けた御業だ。
 その御業より噴射された熾炎業炎砲が、非リア魔女の腰回りを覆ってスカートごと焼き捨て、大火傷をもたらした。
「うぁあぁあぁあ! しぶとい糞リア充どもは全員殺す!! そして私がリア充になるんだからー!!!」
 非リア魔女は、もはや女性としての見栄も体裁もかなぐり捨てたかのような醜い表情でケルベロス達を睨みつけると、幾つものモザイクを飛ばしてきた。
 夢喰らいである。そして執念の再行動である――憎悪もここに極まれり。
 ニアがトウコを、天のライドキャリバー怠惰号が、自分を庇ってモザイクの餌食になっているところを見て、天の『めんどくさいゲージ』が更に上昇する。
「……ぁ、もう無理」
 そして、ついにめんどくさいゲージが限界を超えた時、天はもの凄い勢いで不満を爆発させた。
「ダルいしんどい働きたくないゴロゴロしたい寝たいめんどくさい……すっっっっっっごくめんどくさい!!!」
 彼女の『働きたくない、めんどくさい』という強い想いが、何と奇跡を起こしたのだ。
「ぎゃあああああ!」
 なんやかんやで大ダメージを喰らった非リア魔女は、ばたっと背中から地面へ倒れて動く気配がない。
 そのまま、巨大南瓜の中身をくり抜いた置物へと変化してしまった。
 ハロウィンパーティーに参加したいという強過ぎる我執がそうさせたのか――ともあれ、非リア魔女ドリームイーターは、なんやかんやで息絶えたのだった。
「皆、無事でござるな? ……お疲れさまでした」
 仲間達の負傷具合を確かめてから、フェルが穏やかに声をかける。
「ささっ、次はフリでなはなくほんとにお菓子を貰いに練り歩くのですっ」
 満面の笑みで宣言するニルスへ、戦闘の痕跡をヒールで修復しつつ、トウコも頷いた。
「これで皆様、安心してハロウィンを楽しめますわね♪私たちも楽しんでいきましょうですのにゃん♪」
「いよいよハロウィンパーティー……パーティーに猫は集まるのでしょうか。いえ、パーティーに集まる猫をもふもふしたいとか、そんな下心はないですよ?」
 ミリアは猫ハーレムの妄想に浸りつつも、かのドリームイーター生成へ夢を使われた被害者をパーティーに誘えないかと気遣った。
「では、パーティーが終わってからでもお土産をお届けするのはいかがで御座いましょう」
 同じ事を考えていたらしいマルチナが提案する。
「何だかとっても疲れました……帰るのもめんどくさい……怠惰号、頑張って……」
 怠惰号に跨って、天はのろのろと会場を後にする。
 ハロウィンパーティーが始まるまでの間、疲れを取るべく寝直すのであろう。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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