螺旋忍軍大戦強襲～機械の刃に果たす影

■リプレイ

●導かれし行く先に
　怒濤の如くの勢いで、進軍せし三つの軍勢……ダモクレス、エインヘリアル、屍隷兵。
　最上忍軍の情報を得て動き始めたダモクレスの残党勢力は、伊賀を越えて、奈良を目指すと言う。
　……そんな進軍せしダモクレスの一つ、導陽天魔。
　浦戸・希里笑（黒蓮花・e13064）の宿敵であり、仏の如くアルカイックスマイルと共に、瞳を抉り、自身のパーツとして取り込むという……導陽天魔。
「……瞳を奪うダモクレス、ですか……」
　と、ルチアナ・ヴェントホーテ（波止場の歌姫・e26658）の言葉に、希里笑自身が。
「……うん。私にとって……私の知っている天魔は、後はこの導陽天魔だけ。出来れば、ここで倒しておきたい所……」
　……ぽつりぽつりと呟く言葉には、導陽天魔に対する、静かな闘志が滲む。
　それだけ、宿敵に対する思いは激しく、強い。
　しかしながら、下手すれば自分達の瞳を奪われかねない強敵であるのも間違い無いだろう。
「……目を奪うダモクレス、ねぇ……」
　そう上野・零（シルクハットの地獄使い・e05125）が瞑目すると、その傍らの夜陣・碧人（影灯篭・e05022）とバジル・サラザール（猛毒系女士・e24095）、リョウ・カリン（蓮華・e29534）らが続き。
「そうですね。でも……私は伊達ですけど眼鏡をしてるんですが、眼鏡越しに眼を奪うって……レンズが割れて大変な事になりますね」
「……えっと、そうね、どうなのかしらね？　まぁ、瞳を奪われる様な事態になったら、普通は生きていないでしょうけど」
「そうだね。人の眼を奪うなんて……これを野放しにしておく訳にはいかない。それに希里笑の宿敵なら……絶対に倒さないとね」
　ニコッ、と希里笑に微笑むリョウ、そして希里笑は。
「ん……ありがとう。でも……強敵なのは間違い無い。それに……何処かに居る最上・幻斎が現れるとも限らないから、その辺りにも注意を向けないといけないな」
　と頷くと、それにジェミ・フロート（紅蓮風姫・e20983）が。
「そうね。暗躍する幻斎を見つけられれば、全体の趨勢も変わるかもしれない。勿論、簡単に見つかるような相手じゃ無いのは解るけど……その尻尾を掴めるところは掴みたい所ね」
　消息不明の最上・幻斎。ただ、このダモクレス軍勢の中に情報を流布し、帯同しているという事は、その大軍勢の中のどこかに居るのはほぼ間違い無いだろう。
　それが前衛か、後衛か……それとも、中頃なのかは解らないが。
「ま、何にしても、導陽天魔を探して叩き潰す。最上幻斎を探して、見つけたら仲間に知らせる、だぜ」
　とタクティ・ハーロット（重力を喰らう晶龍・e06699）に、リョウと零が。
「うん。とびっきりヤバイ奴みたいだけど、此処で倒せれば深い所まで行く仲間たちの退路の切り口に出来るかな？」
「ああ……此の度は色々とめんどうな戦いだけれど、せめて奴ぐらいは倒したいものだ……」
『ギャウ！！』
　そんな仲間達の言葉に、碧人のボクスドラゴン、フレアも気合いの咆哮を上げる。
　そして……ケルベロス達は、近づきつつあるダモクレス軍の行く先である、奈良にて対峙するのであった。

●瞳盗者
　そして……ケルベロス達の目の前に揃うは、多くのダモクレス達。
　多くの軍勢が、三重県伊賀市を越えて、奈良を目指している進軍途中。
　その多くの軍勢達の中から、導陽天魔の姿を、眼を見晴らせ、探すケルベロス。
　無論、宿敵や、周囲の護衛達を討伐する為に……次々と仲間達が強襲を仕掛けていく。
　強襲を仕掛けられたダモクレス軍、一部に混乱を来しつつも、更に次なる強襲が続いて行く。
　……暫しの強襲の後、鋭く戦況をうかがっていた希里笑が。
「……居た、あそこ」
　と指さす先に、護衛のメタルガールソルジャー達と共に進軍する、アルカイックスマイルの導陽天魔の姿。
　導陽天魔を護りしメタルガールソルジャーと共に相手にしなければ、導陽天魔には至れないだろう。
　ただ、周りに最上・幻斎の姿は無い様である。
「……幻斎は居ない、か……」
「その様だぜ。でも、導陽天魔は倒すんだぜ」
　零に頷くタクティ、そしてジェミが。
「そうね……希里笑さん、大丈夫？」
　と希里笑に声を掛けると、希里笑もこくり、と頷き……そして、希里笑らケルベロス達は、導陽天魔の居場所へと、一気に強襲を仕掛ける。
　導陽天魔の元へ対峙すると、メタルガールソルジャーのタイプＳ、タイプＧが一体ずつ、ケルベロス前に立ち塞がる。
　……そして、導陽天魔が立ち止まり、その口元の微笑みを不敵に浮かべる。
　その導陽天魔に対し。
「貴方、希里笑ちゃんの宿敵なんだって？」
　とバジルが問うも、導陽天魔はアルカイックスマイルのまま。
「導陽天魔、あなただけはこの手で調伏するわ。我が名の由来、聖ルチアの名に掛けて！」
「そうね。眼なんて渡すものですか、絶対に負けないわ。この自慢の身体には、一つとしてくれてやるものはないもの！！」
　ルチアナ、ジェミの宣戦布告、そして希里笑、バジルが。
「……残る天魔はあとは貴方だけ。どんなに言葉を飾っても、私は貴方の、貴方達の本質を知っている。だから……ここで潰えてもらうよッ！」
「そうね……倒させて貰うわ！」
　……バジルは言葉と共に、前衛陣へライトニングウォールのBS耐性を付与して強化。
　更にフレアが、希里笑に属性インストールで更にBS耐性を付与していく。
　BS耐性付与に続き、ジャマーのリョウがフロストレーザーで、遠距離から導陽天魔に、氷の付与を狙う……が、効果には至らず。
「……っ……やはり、中々の強敵だね」
　とリョウの言葉に対し、碧人は頷き。
「もう少し近づけるように、足止めを入れましょうか」
「ああ、そうするんだぜ」
　タクティが頷き、共にスナイパーの命中効果アップを伴い、轟竜砲の連打。
　……流石にその両撃を受けた導陽天魔、足止め効果が現れる。
　そして、続く零とルチアナが、立ち塞がるメタルガールソルジャー・タイプＳに近接。
「……さあ、これでも喰らえ」
「そう、邪魔なのよ。私達は、導陽天魔に用があるのだから！」
　零のマジックミサイル、そしてルチアナの達人の一撃がタイプＳへ命中し、大幅に体力を削ると、更に希里笑とライドキャリバーが連携し、フォートレスキャノンとガトリング掃射。
　そしてジェミもハウリングフィストを同ターゲットに叩きつけて、半分以上体力を削り去る。
　次の刻になり……敵陣が先手を突く。
　タイプＳの遠距離射撃、タイプＧの中距離射撃は、本来援護射撃の筈だが……導陽天魔の居る前では、前に立ちふさがり対峙せざるを得ない。
　そして……導陽天魔自身、その背中の背光にて目眩まし。
　……その視線を外しながら、僅かに周囲の戦況と……幻斎の出現を監視する零。
「……居ないな」
　とぽつり呟きながらも……目前の相手に対峙し続ける。
　……護衛と、導陽天魔に対峙しながら、幻斎の出現を監視する作戦を継続するが……戦況的には、明らかにケルベロス達が押されている状況。
　しかし、それをおくびにも出さず、ケルベロス達は導陽天魔に向けて。
「しかし敵さんもよくやるな……忍者なんて、二勢力をさしぬき遺産を手にしてるしだぜ」
「……ああ。忍者も色々考えてる……こうして君らダモクレスなどを出し抜いて、『遺産』を狙っているらしいし、ね」
　とタクティ、零の言葉に続け、碧人、ジェミ、バジルも。
「ヤレヤレ。どうせその教養も、螺旋忍軍が奪う『魔竜王の遺産』とやらに潰されるだろうに」
「本当、惨めね。螺旋忍軍に騙されてるのにねー」
「そうね。螺旋忍軍に騙されてるのはかわいそうだけど、それはそれよね」
　と、同士を疑心暗鬼にさせるべく、嘘の情報を吹聴する。
　……が、導陽天魔は、そんなケルベロス達の言葉に明確な反応を帰す事は無い。
　むしろ、ケルベロス達に対し、その眼を奪わんが如く……護衛の者達に指示を与え、そして護衛達はその指示に従い、ケルベロス達へと攻撃していく。
「っ……負けないわ。私の身体……砕けると思わない事ね！」
　と、苦境に立たされても、敢て微笑みを浮かべるジェミ。
「さぁ、ケルベロスの力、見せてあげるっ！」
　と声を上げて、仲間達を鼓舞する。
　……どうにか押され気味の戦況の中、どうにか対峙。
　そして強襲を仕掛け、7分が経過した、その瞬間。
　周囲では、次々と激しい戦闘が巻き起こる中……。
「……みんな、あそこ！」
　とリョウが声を上げる。
　ダモクレスの影に紛れた……最上・幻斎の姿を発見。
「……あそこか。良し、打上げる……！」
　と、幻斎の姿を視認した零が、信号弾に持ち替えて、空高く……赤い信号弾を打上げる。
　……周囲が一瞬、赤色に染まる……それが、最上・幻斎発見の合図。
『っ……！』
　幻斎はその合図に気づき……軽く舌打ちしたかと思うと、周りのダモクレスの人混みに紛れて、すぐにリョウらの視界から闇へと紛れてしまう。
　勿論、仲間達がその信号弾に気づき、幻斎討伐に向けて動き始める。
　が……信号弾が打ち上がるという事は、周囲のダモクレス達も、その信号弾に誘われるが如く、一気に集結し始める。
　瞬く間に、多くのダモクレス達が、己が周りへ集結……然るに、退路も瞬く間に封じられてしまう。
　退路も無く、追いかける事も出来ぬ状況……その先に待つは、死。
「っ……」
「これは……不味いわね……」
　唇を噛みしめる希里笑と、額に汗するバジル。
　……全員が死を覚悟した、その瞬間。
「……仕方ない……」
　と呟いたのは……零。
「……零、さん？」
　とルチアナが声を掛けるが、零は静かに微笑んだ後。
「……俺が惹きつける。皆は……逃げろ！」
「え、それって……」
「ダメよ。そんな事！」
　リョウ、バジルが叫ぶが……次の瞬間。
　彼の周りに次々とブラックスライムと、ブレイズキャリバ－の焔が混じり合ったものが立ち上る。
　そして、その焔が唸りを上げて、周囲に立ち塞がるダモクレス達を呑み込んで行く。
　……そして、僅かにこじ開けられた一筋の光明の退路を指さし。
「……行け！！　オレに構うな！！」
　零が叫ぶ。
　……僅かな戸惑いを覚えるが。
「皆……行くよ……！！」
　唇を噛みしめながら、こじ開けられた退路を指さす希里笑。
「で、でも……」
　とルチアナの言葉に対し、碧人、タクティが。
「零の覚悟を無駄にする気か？　……ここに留まれば、全員が死ぬだけだ」
「そうだぜ……ほら、こっちなんだぜ！」
　ルチアナの手を引き……零を残し、こじ開けられた退路を駆け抜けて行くケルベロス達。
「……頼むぜ……」
　と、零は一言を零し……そして、周りのダモクレス軍団を、その地獄の焔に包んでいった。

●その手から零れし
　そして……どうにか戦場から撤退した7人。
　遠くでは、まだまだ戦の音が駆け巡るが、ここは……既に住民達も居ない為か、静けさに包まれている。
「……」
　しかし、漂うは悲壮感。
　……勿論、敵陣のど真ん中で信号弾を上げるという事は、自分達の位置を知らせると共に、敵陣の注目を集めることとも同様な訳で……。
「……さて、この後はどうなりますかね……」
　と碧人の言葉に、リョウと希里笑が。
「……少なくとも、ケルベロスウォー発動の時は間近だろうね」
「うん……それに、零さんも……」
　唇を噛みしめ、手を……血が滲む程に握りしめる。
　迫る、決戦の時。
　……仲間一人の命がけの行動へ、強い決意を心に抱きながら……その時に備えるのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：上野・零（延炎轟々地獄式・e05125）
種類： 公開：2017年7月21日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 10
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