「ゲドムガサラとの戦い、参加した人はお疲れさんやったな」
宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)がケルベロス達にねぎらいの言葉をかける。飫肥城での戦いにより、ケルベロス達は螺旋帝の血族・緋紗雨を智龍ゲドムガサラから守り切ったのだった。
「その成果でや、なんと、螺旋忍軍のゲートである『彷徨えるゲート』出現する場所が分かったで!」
感嘆の声を上げるケルベロス達。となると、決戦の日は近いかもしれない。その事を把握したケルベロスは、手で拳を叩く。
「ただ、や。この前、亜紗斬ちゃんは螺旋忍軍に捕まってしもたやんか。それが『最上忍軍』と呼ばれるヤツや。当然やけど簡単にこっちの思う通りには出来へんやろな」
そうだったと、その事を思い出すケルベロス。盛り上がっていた雰囲気が、少し小さくなる。
「ええか、この最上忍軍は螺旋帝の血族・イグニスから新しい命令を受けて、各勢力に潜入していた螺旋忍軍達を利用して『螺旋忍軍のゲートが現れる地点に戦力を集結』させようとしてる、って情報が入ったわ。
ダモクレスからは『載霊機ドレッドノートの戦い』の残党勢力。
エインヘリアルからは、ザイフリートやイグニスの後釜を狙う王子とその私兵団。
更に、各勢力が研究していた屍隷兵の中で、戦闘力の高い者達を集めた軍勢も用意してる、っちゅうことや」
絹は手持ちの端末を見ながら、正確に情報を展開する。
「そいつらは、どうやら螺旋忍軍から『魔竜王の遺産である、強大なグラビティ・チェインの塊が発見された』『このグラビティ・チェインを得る事ができれば、巨大な功績になる』『この事実を知ったケルベロスの襲撃が予測されている』という偽情報で振り回されてるらしいな。
んで、『魔竜王の遺産は独占が望ましいが、複数の勢力が参戦してくる事が予測されている為、敵に漁夫の利を与えない為の立ち回りが重要である』と説明されてるみたいでな、デウスエクス同士では戦端を開かずに、牽制しあうようにも仕向けられとるそうや」
端末から目をケルベロス達に移す絹。少し困った表情をしながらも、説明を続ける。
「イグニスとドラゴン勢力はな、集めた戦力を『ゲートから戦力を送り込むまでの防衛戦力』として利用しようとしているわけや。この勢力を全滅させるには、ケルベロスウォーをやないとあかんやろ。
でもや、行軍中の軍勢を襲撃して、その中の指揮官を幾つか撃破できたら、その勢力を弱くできる。ちょっと危険な任務やけど、頼むわ」
絹の話を聞き、理解したケルベロスが絹に、自分たちの向かう先はと尋ねる。
「うちらはエインヘリアルの所に向かうことになった。
どうやらエインヘリアルの第十一王子である『マン・ハオウ』ってヤツと、その私兵集団が最上忍軍からの情報で地球に来たみたいや。
この私兵団を率いる『ペンプ・オグ』は、『ユナン・ジス』、『ダウ・ガル』、『テイル・レイ』、『ペデル・ケイン』、『フウェフ・ディー』、『セイジュ・オー』、『エイジュ・ラディウス』、『ナウ・ソーン』、『デク・サムス』、『ユネク・シザリス』っちゅう歴戦のエインヘリアルを引き連れて来た。そいつらが数百名のエインヘリアルの軍勢を率いとる」
その説明を聞き、ざわつくケルベロス達。余りにも多い為だ。
「まあそんな感じやから、有力なエインヘリアルを撃破するのはかなり難しいやろ。ただ、実はこの軍勢ちょっとした性質をもっとる」
身を乗り出すケルベロス達。誰かがごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。
「……女の子や」
「……へ?」
「この軍勢のさっき名前を挙げたヤツラ、全員ロリ……とと。背の低い美少女を特別視しとるっちゅう情報が入った」
「まさか……」
「もしそんな子が目の前に現れたら……」
「た、ら?」
「軍勢を待機させて自分達だけで突撃! してくるらしいで」
思わず力が抜けるケルベロス。それを見て、絹はまあそんな反応するやろなとは思ってたと良いながら、んん! っと軽く咳払いをする。
「言うても、その力は強大や。しかも12体全員で突撃してくる訳や。そう考えたら恐ろしいんやで。
コイツらを釣りだして倒すのも、勿論有効や。それか、釣りだした隙を付いて、エインヘリアルの軍勢を減らすっちゅうのも手やろ。
それに、残されたエインヘリアルの軍勢の中には、最上忍軍の『最上・幻夢』の姿もあるらしいから、『最上・幻夢』の撃破を狙うのもアリや。
ただ、隊長である『ペンプ・オグ』だけは少女よりも『マン・ハオウ』の安全を優先するらしいから、うちらが手強いと思ったら、『マン・ハオウ』と共に軍勢の元に撤退しようとするやろ。
その他の私兵団員は各個撃破が可能みたいやけど、さっきも言うたように、強いで。確実に撃破しようと思ったら、その1体につき2班の連携が必要やろな」
こんなもんかな、と絹はケルベロス達を見る。何人かのケルベロスはどうすれば良いか考えているようだ。
「螺旋忍軍との決戦。この後には当然それが控えてる。ここで戦力を減らすことが、決戦勝利の第一歩や。無理する必要は無いけど、重要や。皆、頼んだで!」
こうしてケルベロス達は、ヘリポートに向かったのであった。
参加者 | |
---|---|
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426) |
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896) |
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871) |
フェル・オオヤマ(焔纏う剣と盾・e06499) |
ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925) |
リディア・リズリーン(想いの力は無限大・e11588) |
ソル・ログナー(鋼の執行者・e14612) |
レイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721) |
●花園の少女ー王子の戯れ
「……聞いてはいたが、多いな」
レイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)が木の陰に隠れながら、そう呟く。木は少し苔が生え、湿り気を帯びている。夏の強い日差しにより、辺り一帯からは、植物が放つ香りでむせ返っていた。
ここは伯母子岳。ケルベロス達の目の前には、数千人のエインヘリアルの軍勢が列を成して進軍していた。
ケルベロス達はその様子を見ながら頷きあう。
「手筈通りに行くぞ」
ソル・ログナー(鋼の執行者・e14612)がそう言った時、四人の少女が進み出た。
『Flowery Princess Vanadialice……♪』
その中の一人、アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)が、ゆったりとしたリズムで歌い始めると、彼女達の周りに虹の花園が出現し、その中心で花を愛で始める。
「……反応したようだ」
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)が敵軍の様子を確認し、拳をぐっと腰の辺りで握る。
「じゃあ神崎くん、僕はあっちに……。不思議の国の案内人なんて柄ではないんだがな……」
ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)はそう言いながら、アリスの後方へと向かう。
「ただ……こう、なんだろうな。この距離感は宛ら授業参観というか……うむ」
「少し分かるわ。守る為に、頑張りましょうか」
持ち場に向かう友人を見ながら言う晟の言葉に、隠密気流で隠れていた黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)がくすりと笑いながら、言葉だけ返す。そして彼女も自分の持ち場へと移動していった。
ケルベロス達は、各エインヘリアルの軍勢の特徴を把握し、敵が好みそうな少女を囮とすることにした。集まったメンバーにはその適正を備えた少女が存在していたからだ。
眼前に広がる一面の花には、四人の少女。それを把握したエインヘリアルの一人が何やら指示を出し、全員を待機させて突っ込んでくるのが分かった。
猛牛のような角の付いた兜と、露出の多い鎧を着たエインヘリアル第十一王子『マン・ハオウ』の姿だ。何か叫んでいるようだが、ここからはその言葉を確認できない。ただ、鼻息は相当荒い様だ。
『綺麗なお花……♪ ――貴方は…?』
歌を止めたアリスがすっと姿勢を正し、スカートを少し持ち上げてハオウに挨拶をする。アリスは目の前の巨漢が放つ、恐ろしいまでのオーラを感じ取った。怖くない訳が無い。だが、これはステージであると自らに言い聞かせ、毅然と微笑むのだ。それを見たハオウは立ち止まり、ポーズをとってその問いに答える。
「俺様は第十一王子『マン・ハオウ』だ! はぁっはぁっ……」
息が切れている。どうやら、本気で全力疾走してきたらしい。
「素敵な王子様……私達と遊びませんか?」
アリスが問う様な仕草をして言うと、あかりが続く。
「王子さん、足速いね。僕たちと鬼ごっこをしようよ」
そして、あかりの言葉をアイリスが促し、眞白が誘う。
「あなたが鬼です。私達は逃げますから……」
「捕まえてみてください?」
四人はそう言うと背後にある森へと駆けて行く。
「ほう……」
それを見たハオウは、あごを撫で、目を輝かせる。
「良いだろう! 下々の戯れを楽しむとするか!」
そう言って、ハオウは意気揚々とアリスが消えた方へと進んでいった。
その様子を確認したリディア・リズリーン(想いの力は無限大・e11588)が、消え始めた花園に立つ。
「どうやら、行ったようでぃす」
そして、この戦場を覆い隠すようにバイオガスを張り巡らせたのだった。
少し背の高い植物をかき分け、アリスを探すハオウ。だが、アリスの姿は見えない。それもそのはず、ガロンドが「隠された森の小路」でその逃走を補助している為だ。ハオウはその効果で、少し開けた場所へと誘導されていった。
その時、フェル・オオヤマ(焔纏う剣と盾・e06499)が、叫びながら飛び蹴りを炸裂させた。
「ひっかかったな。この、ロリコンどもめ!」
●十二星拳の使い手
「はっはっは、甘い甘い! 遅すぎて欠伸が出るぞ!」
ケルベロス達は、囮を使った作戦の効果を発揮させるために、即座に戦闘に入った。だが、それ程時間を要することも無く、ハオウの実力を思い知らされることになった。
フェルの奇襲は成功したが、その後が続かなかったのだ。余裕の表情で、ケルベロス達の攻撃を退け、十二星拳と自らが言う拳を叩き込む。既に晟と舞彩は大きなダメージを受けていた。
「黙れ!」
ソルがそう言いながら、チェーンソー剣『ブラッディサージ・アサルト』を勢い良く上段に振りかざし飛び込み、振り下ろすが、ハオウは労する事無く避ける。
「やはり……一筋縄ではいかんか。ラグナル!」
晟は受けた傷をアリスに塞いでもらうと、ボクスドラゴン『ラグナル』にタックルを指示し、後方のアリスを自らの身体でを使って陰にする。
「ぬ!?」
その時、晟の身体に何処からとも無く水属性のグラビティが施された。
「どうやら、他の班が援護してくれているみたいだねぇ」
助かると言いながら、ガロンドがルーンアックスで傷ついた舞彩に破剣の力を施す。その間ミミックの『アドウィクス』がハオウを牽制する。そして、狙いの力をアップしなければ、戦いにならないと感じた舞彩も、オウガ粒子を放出して備える。すると突如彼女に光の盾が施された。
「これは……誰かしら。キツイけど、嬉しくなって来るわね」
ケルベロス達の戦いは、舞彩が言うように分が悪かった。当たらない攻撃は、こちらの精神力をも奪っていくようであった。
「さっきまでの威勢はどうした! おおっと! 見つけたぞ!」
ハオウがすかさず、ちらりと見えたアリスに向かい、尾を引くような流星のグラビティを放った。
「こ、の、ロリコンどもめ!」
アリスとの間に舞彩が入り込み、その力を弾き飛ばす。だが、彼女のその片腕がだらりと力なく垂れ下がる。
「黒住さん!」
「大丈夫! まだ死んでないわ……なんてね。フェルはまず……」
心配したフェルの声に応える舞彩。その言葉を聞き、フェルは頷く。
ケルベロス達は、素早く状況を把握していた。こちらからの攻撃をまず当てるようにすること。それが無ければ始まらないのだ。それを担っているのがフェルだった。彼女は意を決して、ハオウの懐に飛び込み、もう一度蹴りを放つ。
「お待たせしましたでぃす!」
すると、それにあわせる様にリディアが木の上から飛び蹴りを打ち込んだ。バイオガスを放っていた彼女が戻ってきたのだ。
二人の攻撃は、ハオウの足元をかすめ、少しだけだが傷を付けた。だが、まだまだ怯んだ様子はない。
「増えたな! 良いぞ! ……しかし、お前は惜しいなぁ!」
「何のことでぃす!」
「もう少し背が低く、もう少し若ければなあ! おおっと!」
リディアが、このロリ……と返そうとした時、レイリアがゲシュタルトグレイブ『凍刃槍』を使い、稲妻を帯びた高速の突きをハオウの頭を狙って放つ。しかし、首をかしげるようにしてその切っ先を簡単に避けるハオウ。
「……王族の名を穢す、愚か者が。貴様は此処で討ち倒す」
レイリアはそう言い、ゆっくりと槍を回転させて、また構えをとった。
●増援
主力であるレイリアとソルの攻撃は、まだ当てる事が出来ないでいた。
アリスを護るように構える晟、ガロンド、舞彩そしてリディアの傷は、益々深くなっていっていた。ハオウの一撃はすべてが重く、気を抜くと全て持っていかれる可能性を秘めていた。受けた傷はアリスやリディアのテレビウム『ナノビィ』が回復させる。そしてそれだけではなく、木に隠れた他の班からの支援でなんとか致命傷にはならずに済んでいた。それが無ければ、もっと早くに誰かが倒れていただろう。
気合を入れなおし、吹き飛ばされた晟が立ち上がる。
「く……この、ロリコンどもめ……」
その時、木々の間からハオウに向かい、グラビティが打ち込まれ、爆発が起こる。それに合わせて再びフェルが蹴りを叩き込む。それらの攻撃により、ハオウの動きが少し鈍った。更なる援護を有難く感じながら、ケルベロス達の眼は再び光を放つ。
「ここは……行くところだろ!」
ソルが受けた攻撃の痛みをペインキラーで押さえ、叫ぶ。
「合わせろ、幽川彗星!」
すると、その意図を理解したリディアが、すうっと息を吸い込んで声を出す。その歌声が、ハオウの意識をリディアに強制的に向けさせた。
「らぁっ!」
ソルはリディアが造ったその隙を見逃さなかった。ハオウに向かい一気に距離を詰めると、チェーンソー剣『ブラッディサージ・アサルト』でハオウに切りつけた。
ザシュ!
そして、追い討ちをかけるように、レイリアが空の霊力を凍刃槍に与え、その傷を広げていく。
「血が欲しいのなら、己の血で賄え」
そのまま、一歩飛び退くレイリア。
「ふははははっ! 成る程、血か! 確かに欲しくなった所だ!」
ハオウはそう言って、己の力を右腕に乗せ始める。
「来る!」
強い攻撃が来る。そう察知したフェルが、全員に呼びかける。
「これが、十二星拳の実力だ!」
ハオウがそう言った時、チラリとアリスに目を向け、先ほどより威力を増した流星のグラビティを腕から放った。
「ぐっ……ああぁ!」
その攻撃はアリスにそのまま向って飛ぶが、咄嗟に間へと飛び込んだリディアに直撃する。彼女はそのまま太い樹木に激突し、ずるりと地面へと落ちた。
「リディア!」
ソルが駆け寄り、傷を見る。深い。
「まずい……ねぇ……」
その様子では、彼女はもうこれ以上戦えないだろう。そう考えながら、ガロンドが彼女達の間へと移動し、構えた。
その時、木の陰から少女の声が聞こえてきた。
「王子さん、王子さん、僕はこっちだよ」
ウイングキャットを従えたあかりが、ハオウの真横に現れたのだ。
「僕とも遊んで欲しいな」
彼女がそう言うと、ハオウが目を輝かせながら、奥のほうへと誘われていった。
「助かったな」
レイリアがそう言い、リディアを見る。アリスがヒールを懸命に施すが、残念ながらこれ以上の戦闘は無理であることが分かった。
「でも、まだ戦いは終わっていないわ。回復したら、出れる者が出る。OK?」
舞彩の声に頷くケルベロス達。そう、まだ戦いは始まったばかりなのだった。
●高く舞い上がる笛の音
回復を終えたケルベロス達は、剣戟を交えた戦闘音を頼りに進んでいった。リディアはソルの背に身体を預けていた。いつ何時、ハオウを追ってきた他のエインヘリアルに襲われるか分からなかったからだ。
「いたわ!」
そして、舞彩が前方で戦闘を繰り広げている一団を見つける。
「アイリスさんのチーム……ですね」
フェルが見ると、既にあかりのチームから、アイリスのチームへと交替が行われていた。
「先ほどのチームも心配だが、敵にもかなりのダメージがあるな。我々も……行こう」
レイリアがそう言い、一同は目の前のメンバーへと支援の力をかけていく。
すると、彼らのやや後方から、同じように支援のグラビティを与える一団があった。それは、先ほど我々を助けてくれたあかり達の一団であった。
ケルベロス達は、無言で頷きあう。目的は唯一つだ。
すると、彼女達一団の一人、メロウがあかりとアリスに意思を持った視線を走らせる。
状況を察したケルベロス達は、その戦闘範囲を取り囲んでいく。
「……行ってくるぜ」
その動きを認識したソルが、優しくリディアを背から降ろす。
「へへっ。ざまぁないね。……私の分も、ね」
そう言って、二人は拳を合わせた。
アリスが一歩前に出る。それは、ハオウから見れば直ぐに認識できる距離。
「あら、王子様。鬼ごっこはまだ終わっていませんよ。私のところには、来てくださらないのですか?」
アリスがハオウに向かい、また演じる。
「王子さん、僕のところに来てくれるよね?」
少し離れて、あかり。
「王子様、私達はまだ捕まっていませんよ?」
「私達の方には来てくれないんですかぁ?」
意図を察知したアイリスと眞白が挑発するように、声を上げる。
「おおっと、お前たちか! そのように呼ばれては迷うではないか!」
ハオウがその声を聞き、ズタボロになりながらも、その四人を見渡す。グラビティの効果で彼女達しか目に入っていない様だ。ハオウはそれ程までに攻撃を受けていた。
しかしその隙は、多くのケルベロス達の前にさらすには、いささか無防備すぎた。
「チャンスです、集中砲火決めちゃって下さい!」
メロウが声を出し、突っ込む。
『希望よ光れ。願いよ輝け。誓いよ導け。我らが世界を見よ、絆に誓え!この身に宿りし想いの全てを使って、俺達は共に未来を拓く!』
ソルが拳に宿らせた焔を打ち込み、レイリアが全身を光に変えて駆け抜ける。
そして、『D.W.どっかーんバズーカ』を打ち込んだガロンドの左右から、舞彩とフェルが躍り出た。
『我竜!』
同じ名を持つ二人が同時に叫ぶ。
『月渦氷陣!』
『牙連斬』
冷気の高速連撃がハオウを弄ぶ。
そして樹が、光と音のグラビティで最期の攻撃を打ち続ける。ハオウはそれでも倒れないが、もはやという状態であることは分かった。
樹がふと晟を見た。晟は視線の意味を理解して頷く。
晟は彼がその力で誘導する先に位置し、ゲシュタルトグレイブ『蒼竜之戟【漣】』を構えた。
「うちはナンパお断りなんで、そろそろお静かにお願いしますよ、っと」
晟の槍がハオウの胸へと突き刺さり、背中へと貫通したのだった。
「バカな! 俺様は……十二星、け……」
ハオウの言葉はそこで途切れた。だが最期まで倒れなかった。それは相対した敵がエインヘリアル第十一王子であった事を告げている様であった。
バイオガスが晴れる。それはハオウの絶命を意味していた。
「ロリコン死すべし、慈悲はない。あ、たまちゃんは別よ、なんてね」
舞彩が陣内に軽く笑う。すると彼は彼女の顔に掌を近づけた。
「ロリコンでは無い」
陣内の指先が彼女の額を弾く。
「アイタタタ……。そんなにムキにならなくても……もごもご」
舞彩は額を押さえながら何か言おうとしたが、陣内にギロリと睨まれて口ごもった。
すると、ヒメが思い出したかの様に口を開く。
「他の皆にも報せねばね」
ケルベロス達は、敵を倒した際には、笛の音を一度鳴らすと連絡をしていたのだ。
「では、僭越ながら私が吹かせてもらおう。これは号笛と言ってだな、海自が使うとても……」
ハオウが消滅を始めたのを確認し、武器を納めた晟がそう言って、手にすっぽりと収まるくらいの金属を懐から取り出した。
「神崎、説明は後で良い。今は早く他班に知らせよう」
「あ、ああ……そうだな」
彼はそのまま口の端に号笛を咥え込み、ひときわ高い音を鳴らした。
海で聞く鳶が鳴く様なその音は、山々に、高らかに響き渡ったのだった。
作者:沙羅衝 |
重傷:リディア・リズリーン(想いの力は無限大・e11588) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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