鎌倉ハロウィンパーティー~嘆きのパンプキンウィッチ

作者:天枷由良

●南瓜の魔女
「ごめん、あたし仕事だから……うん、じゃあまたなー」
 友人からの誘いに断りを入れ、女は電話を切るとベッドへと倒れこんだ。
「……はぁ」
 ハロウィンを皮切りに続くイベント事の為、自分が会社で企画を取りまとめている頃、仮装した友人たちは街を練り歩くらしい。
 いろんな出会いも有ったりするのだろう。あぁ、全くもって羨ましい。
「何がハロウィンだよちくしょー、カボチャなんて冬至に食うだけで十分だろーが……」
 独りごちても、それはつけっぱなしのテレビの音に呑まれてしまう。
 目を向ければ、インタビューに答えるカップルの姿。
 どうやら、二人でコスプレをして街を歩く予定のようだ。
 仲睦まじそうな姿を見て、思わず携帯を握りしめる手に力が入る。
「あたしだって……あたしだって、イケメンとトリックをトリートしてぇよ!」
「――その夢、叶えてさし上げましょう」
 突然返ってきた言葉に飛び起きると、目の前には赤頭巾の少女。
「もうすぐ、世界で一番楽しいパーティーが始まりますの。ドレスの準備を急がないと」
 微笑みを湛える少女は、手に持った鍵を女の胸へと突き刺す。
 倒れこんだ女の横にするりと現れたのは、カボチャと同じ色をしたローブの魔女。
「きゃはっ! イタズラしちゃうよー♪」
「ふふ、可愛らしいこと」
 笑う少女を尻目に、魔女は何処かへ向かって飛び出していった……。

「ドリームイーターに、新たな動きが見られます」
 ケルベロスたちを集めたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は言った。
 その情報は、藤咲・うるる(サニーガール・e00086)の調査によって得られたもの。
 どうやら、今度はハロウィンに対する劣等感を持つ人を襲って、新たなドリームイーターを生み出すつもりのようだ。
「彼らが狙うのは、世界で一番盛り上がるはずのハロウィンパーティー……そう、鎌倉で行われるケルベロスハロウィンです。皆さんには、パーティーが始まる前に、ドリームイーターを倒して頂きたいのです」
 セリカは小さなカボチャを取り出して、テーブルに置いた。
「敵は顔から足まで全てモザイクの身体の上に、橙色のローブにとんがり帽子を被った魔女のような姿。どうやら、忙しさのあまりハロウィンに参加できない女性から生み出されるようです」
 言いながら、今度は何処からか取り出した小さな帽子をカボチャに被せる。
「ハロウィンの喧騒に惹かれて現れるはずですから、皆さんが本来の時刻よりも早くパーティーが始まったように振る舞っていれば、会場に敵をおびき出すことが出来るでしょう」
 くるりと回すと、カボチャには顔が彫られていた。丸い目とギザギザの口が可愛らしい。
「敵は、モザイクをカボチャの形にして皆さんを喰らおうとしたり、あるいは身体に当てて傷を治癒します。極めつけは大きなカボチャの付いた鍵を振るって、皆さんのトラウマを呼び起こそうとすることですね。……カボチャの鍵、見た目だけなら飾り付けにも使えそうなものですけれど……」
 じっとカボチャを見つめたままだったセリカは、ケルベロスたちに向き直る。
「こういった飾り付けも準備され、多くの人々がケルベロスハロウィンを待ち望んでいます。それはもちろん、私や皆さん方も同じでしょう。ハロウィンを楽しく、そして満喫するために、皆さんの力を貸してください」


参加者
水無・ゆかり(おしとやか中学生・e00258)
佐竹・勇華(太陽の勇者・e00771)
神楽坂・遊(頭の中身天然レプリカント・e02561)
モンジュ・アカザネ(双刃・e04831)
村雨・柚月(七色カードの魔砲使い・e09239)
匣咲・栞(ボックスゲーム・e09474)
紫苑寺・響姫(全方位武術師・e09901)
黒夜葬・鬼百合(クソニート君・e15222)

■リプレイ

●装い方は人それぞれ
「かんぱ~い!」
 ケルベロスハロウィン会場にほど近い場所。
 お化け南瓜にランタンが飾り付けられ、橙色のクロスを敷いたテーブルが置かれている。
 キャンディ、ラスク、パイにケーキにジュースに紅茶、様々な物を持ち寄ったケルベロスたちは、談笑しつつドリームイーターの襲来を待つ。

「ふふっ♪ 皆、今日は楽しみましょう?」
 金髪をなびかせて言った神楽坂・遊(頭の中身天然レプリカント・e02561)は、軽鎧と艶やかなスカートに身を包み、頭につけた猫耳デバイスをぴょこぴょこと動かした。
 その風貌はまさに姫騎士、だが彼は男である。
 下着まで女性もの、だが彼は男である。
 姫騎士の概念が揺らぐ。くっころ、などと気軽に言ってはいけない。
「……神楽坂さんって『そっちの人』じゃないんですよね?」
 尋ねた佐竹・勇華(太陽の勇者・e00771)は、戦闘用の鎧を着用している。
 先日も女装した遊を見る機会があったが、仮装もこれとは、彼は本物なのではないか。
 疑念を抱くも、遊は聞こえていなかったようだし、それよりも鎧の下に履いているハロウィン限定カボチャブルマが、ごわごわした肌触りで気になる。
 どうにも落ち着かないので、勇華は考えるのをやめて菓子を頬張った。

「洋装なんてしねぇからな、服に着られてる気がするぜ」
 普段は和装のモンジュ・アカザネ(双刃・e04831)だが、今日は執事服にモノクル。
 愛用の刀は身につけたままだが、シックな服装に赤い髪が良く映える。
 こんな執事が務める屋敷があれば、お嬢様はさぞ気の休まらない日々を送るであろう。
「似合っていると思いますよ? あ、ケーキをカットしていただけますか?」
 そう頼みつつ、鼻歌混じりで紅茶を入れている紫苑寺・響姫(全方位武術師・e09901)の仮装テーマはゾンビメイド。
 血糊で染まったエプロンドレスにホワイトブリム、顔と手足には化粧で幾つもの傷を付け、肌は土気色に塗ってある。
 チェーンソー剣を装備してなくて幸いであったと思うほどに気合バッチリ、可愛さと恐ろしさが混ざった姿はスタンダードなハロウィン仮装と言っていい。
 二人は給仕に扮して、動き回りながら辺りを警戒する。
「はい。お茶と、こっちは南瓜のパイです。どうぞ」
 響姫が差し出した先には、本日の生贄、ではなく主賓と言っても良い二人。

「南瓜のパイだってよ……ほら、あ、あ~ん……」
 黒夜葬・鬼百合(クソニート君・e15222) が、震える手を必死に抑えながら、匣咲・栞(ボックスゲーム・e09474)の口先へフォークを持っていく。
 二人は共に吸血鬼の仮装で身を包み、腕を組んで体をぴたりと合わせ、公害程度にピンクハートなラブリーオーラを撒く。
 遊びではない。敵を誘き出す重要な役目に、至極真面目に取り組んでいるだけだ。
 自己犠牲を厭わない姿は、あぁ、ケルベロスの鑑かもしれない。
「……うん、美味しい。はい、鬼百合も」
 フォークを受け取った栞は、あくまでも余裕な素振りを装ってパイを食べさせる。
「……確かに美味いな」
 何ともぎこちない。とは言え一日限定偽装交際なのだから仕方がない。
 鬼百合は密着した栞の体の柔らかさが気になるし、栞も演技に集中するのに必死だ。
 ハロウィンそのものに悪戯をされた二人の苦難は、まだ始まったばかりである。

「きゃー、お熱いですね」
 水無・ゆかり(おしとやか中学生・e00258)は、お茶を楽しみつつ黄色い声を上げる。
 持参した仮装はまだ鞄の中だ。
 尻込みしているのは、神社の娘であるゆかりにとって、これが初めて体験するハロウィンパーティーだからである。
「やっぱり、恥ずかしがってちゃダメね」
 呟き、足元で栞のミミック『はっこん』と戯れていたオルトロスの『ブリュレ』を抱え、こっそりと話しかける。
「ね? ブリュレもそう思うよね?」
「わう? ……わうっ!」
 凛々しい秋田犬の風貌をしたブリュレは、力強く吠えた。
 愛犬に頷き、ゆかりは村雨・柚月(七色カードの魔砲使い・e09239)に耳打ちをした。
「……それならいい余興を用意してある。少しは時間が作れるさ」
 とんがり帽子と黒のローブで魔法使いに扮した柚月は、ゆっくりと席を立つ。
 まだ敵の気配はない。今のうちに一芸を披露して、場を盛り上げておく事も必要だろう。
「すみません。お願いしますね」
 鞄を抱えてこっそり移動するゆかりに気づかれないよう、柚月は仰々しく喋り出す。
「やぁやぁ、そこのお二人さん、良かったら占いでもどうだ?」
 小気味好くカードをシャッフルしながら、カップル役の二人へと近づく柚月。
 シャーマンズカードの使い手だからなのか、その手捌きは慣れたものだ。
「簡単な話だ、引いたカードで相性を占う。どんぴしゃで同じカードだったら、二人の相性は抜群、ってな」
 テーブルに置いたそれを扇型に広げて促すと、鬼百合は特に悩むこともなく1枚引いた。
「なるほど、ハートのAだな。じゃあ、その札を戻して、よーくシャッフルする」
 何度も丁寧に混ぜあわせ、今度は栞の前に。
 幾らかの時間をかけ、真剣に吟味する栞を、皆は固唾を呑んで見守る。
 そして選んだカードは――。
「……嘘、ハートのAだわ」
「へぇ……案外、本当にベストカップルかもしれないな」
「いいなー、素敵! 私も彼とハロウィン楽しみたかったなー」
 勇華がわざとらしく言って絡むと、栞の顔は赤らみを増していく。
 カードを手早く片付けて席へ戻った柚月は、茶化されるカップル役を眺めつつ、敵の出現に備えた。

●まじかる・らぶりー・みすてりー
 相性占いで気を良くしたのか、鬼百合は脳内設定に基づいた馴れ初めを披露し始めた。
「出会いは桜舞う春――ライバルの遊との勝負に負け――モンジュのような漢を目指し――食パンを咥えて――途中、しおりんとぶつかって――」
 雄弁に語るが、参考文献は数多視聴したアニメ。
 何もかもすべて、フィクションである。
 口下手な栞では突っ込めずにいると、会場の隅から救いの手――いや、声が響いた。
「インディゴブルーに想いを乗せて、砕けハロウィン、ばかっぷる! 愛と藍の使者、まじかるゆかりん、ただいま参上!」
 ババン! 山積みにした段ボールの上に、露出高めの魔法少女コスで立つゆかり。
「リア充な悪い子には、悪戯ですっ♪」
 キラッとポーズを決めてから飛び上がり、普段は隠している翼をはためかせて降り立つ。
 豊満な胸が揺れ、翻ったスカートから白く眩しい太腿が弾けた。
 見えそう、だが見えない。ブリュレが絶妙な位置で邪魔をする。
 魔法少女がフシギなチカラに守られるのはお約束である。
「さぁ、覚悟――」
「きた! 魔法少女きた! これでドリームイーターにも勝てる!」
 立ち上がってガッツポーズの鬼百合に気圧され、ゆかりは真っ赤になって後ずさり。
「あ、あぁ……あんまり見ないでください。恥ずかしいですっ!」
 思わず振りぬいた杖が、頬を真芯で捉えた。
 ――リア充死すべし、慈悲はない。
 そう言わんばかりの一撃で、鬼百合は椅子ごとひっくり返って頭を強打した。
「ご、ごめんなさい!」
「あっぶねぇ、ケルベロスじゃなかったら死んでたぜ」
 赤くなった頬を擦り、座り直す鬼百合に向けられた視線。
「……あれ、しおりん、どうした?」
 無言の栞は、恐る恐る様子を伺うパートナーに腕を回して引き寄せると、その首筋に噛みつく振りをして言った。
「鬼百合が見て良いのは私だけ。今の貴方は、私のものなのだから」
 攻め込んだ演技。艶やかな吐息が肌を撫で、鬼百合が身震いするとともに。
「ひゅー! ひゅー!」
「もっとやれー!」
 ケルベロスたちが口々に野次を飛ばし、会場のボルテージは最高潮に達した。
 その時。
「――きゃは! イタズラしちゃうよー♪」
 先ほどゆかりが立っていた段ボールの上に、南瓜の魔女が姿を現した。
「現れたなドリームイーター! ハロウィンを楽しむ邪魔はさせない! わたし達がお前を倒す!」
 びしっと指差して宣言した勇華に続き、各々の武器を構え陣形を組む。
 先程までの賑やかさが消え、変わって場を支配する張り詰めた空気。
 ……が、魔女は一行に動く気配を見せない。
「どうした! かかってこないのか!」
 勇華が再び声を上げると、魔女はわなわなと肩を震わせて言った。
「……だよ」
「なに!?」
「被ってんだよ! 登場の仕方が!」
 唖然とする一同を他所に、モザイクを明後日の方向に投げつけ地団駄を踏む魔女は叫ぶ。
「なんだよもう! 衣装はその男と色違いなだけだし! バーンと現れようとしたら小娘に先を越されるし!」
「え、あの……」
「何が『恥ずかしいですっ!』だよ! てめぇから見せてんだろうが!」
 思わぬことで標的となった栞は、胸とスカートを押さえた。
「む、胸が大きくなったのは私のせいじゃないです……」
「そういう態度が男を悦ばせ……やっぱ分かってやってんなお前!」
「若い子に噛みつくなんて、みっともないわ」
 栞に煽られた魔女は、ようやく南瓜の鍵を構えた。
「噛み付いてたのはお前だろ、この色ボケ女!」
 段ボールを踏み切り、飛び出して栞を狙う。
「しおりんはやらせねぇ!」
 振り下ろされようとした鍵の前に、完全にリア充気分になりきった鬼百合がロッドを構えて立ちはだかる。
「ナイト気取りか! 彼女より背が低いくせに!」
「……それは関係ねぇだろうがよぉ!」
 少し涙目になりながらも、鍵をロッドで受けとめる。
 しかし、押し込まれて態勢の崩れた一瞬を狙って、鍵は腹部へと突きたてられた。
「ぐぅっ……」
「っ! ……よくもっ!」
 栞が蹴りを放ち、はっこんも共に殴りかかるが、魔女はそれを後方転回して回避。
 更に勇華が跳躍から繰り出した蹴りを受け止め、モンジュの斬霊刀を鍵で受け流すと、響姫の放ったフォートレスキャノンを高く飛び上がって避ける。
「ふざけた態度の割に、やりますわね!」
「……神楽坂さんのそれも大概、って、おい!」
 柚月の横で、遊は宙を舞う魔女に向かってスカートを捲っていた。
 そこにはおおよそ人が使うとは思えないほどの大砲、その砲口の先だけが見える。
「それ撃つのか!?」
「軽く牽制するだけですわ」
「そもそも何処に収まってたんだよそれ!」
「……女の子のスカートの中は、神秘の空間ですのよ♪」
 ウインクと共に轟音。
 向かってくる弾丸を避けるため、魔女は大きくバランスを崩して地面に落ちた。
「納得行かないが……」
 ともあれ出来た隙だ、柚月は走りこむ。
「コメットドライブ!」
 煌めく飛び蹴りが腹部へと炸裂し、魔女は流星のように段ボールの山へと突っ込んだ。

●ハッピーハロウィン
「黒夜葬さん!」
 ゆかりが御業で創り出した鎧をまとわせたことで、傷は癒えた。
 それでも朦朧としている鬼百合は、駆け寄ってきた栞へ親指を立てる。
「心配いらねぇぜ、今日のオレは……リア充だからな!」
 言って深呼吸。そして天に向かって叫ぶ。
「うぉぉ! しおりん、愛してるぞぉぉ!」
 場内に響き渡る声。その気合が、魔女の与えた苦痛と悪夢を吹き飛ばす。
「……自慢? 自慢なの? ふざけんなよ!」
 起き上がった魔女が南瓜型のモザイクを作り上げ、投げつける。
 大口を開けて飛来したそれが齧りついて、鬼百合はロッドを落とした。
 だが。
「まじかるゆかりんパワーで回復ですぅー!」
 戦闘中に揺れるとか見えそうなどと言ってられない。
 恥を捨てたゆかりが放った光が、傷を包み込んで癒していく。
「こんのカマトト女がぁ!」
 鍵を振りかざした魔女にブリュレが斬りかかり、すれ違いざまに刃が魔女の衣装を裂く。
「あ、あたしの一張羅が! キーッ! この駄犬!」
「うぉぉ! しおりーん!」
「うっさいわね! いつまでやってんのよ!」
 ヒステリックに叫ぶ魔女に、モンジュがすかさず斬り込んだ。
 刀と鍵がぶつかり合い、カチカチと音を立てる。
「何なの! どうせアンタも売約済みなんでしょ!」
「さぁな。どっちにしろ、てめぇみてぇのは勘弁願うぜ!」
 鍔迫り合いから、モンジュが力をすっと抜いた。
 つんのめる魔女の横を抜け、その背を袈裟懸けに斬りつける。
「いってぇ! ちくしょう! あたしが悪戯していいフリーのイケメンは何処だよ!」
「あなたのは悪戯なんて可愛いレベルを超えてるんですけど!」
 メイド服の裾を摘んで駆ける響姫。
「うわっ! なんだお前、化け物か!」
「これはメイクですっ!」
 繰り出した飛び蹴りが、魔女の顎を捉えた。
 よろめく間もなく、勇華の伸ばした左手が魔女を吸い寄せる。
「お前みたいなのはイケメンの方からお断りだ! 多分!」
 鉄拳制裁、顔面をぶち抜いた、輝く右ストレート。
 錐揉み状態になった魔女を、二つの砲口が狙う。
「やっぱりトランプより、こっちの方が手に馴染……」
 空中に六枚のカードで六芒星を作りながら、柚月はスカートをたくし上げる遊を再び見てしまった。
「またあれか!?」
「嫌ですわ、今度は普通の銃でしてよ」
 ホルダーから自動拳銃を抜き、目にも留まらぬ速さで魔女を撃つ。
 安心した柚月は気を取りなおして、六芒星の中心に最後のカードを添えた。
「食らえ!」
 放たれたエネルギー弾に吹き飛ばされ、地に落ちて無残に這いつくばる魔女。
 逃げようとするが、はっこんが足に齧りついて引きずり戻す。
「……やめてよ、イケメンとしたいことが、沢山あるのに……」
 うつ伏せで息も絶え絶えの背に手を当て、栞が囁く。
「せめて、夢の中で叶えばいいわね」
 鋼鉄の杭が打ち込まれ、魔女が消え去った後には南瓜だけが残った。

 戦いで散らかったものを片付け、ケルベロスたちは改めてテーブルを囲んだ。
「うわぁ、村雨さんってお料理上手なんですね!」
 柚月が並べた幾つかの料理に、勇華は目を輝かせる。
 だが他に並ぶのは、遊が持ってきたエナジードリンクだけ。
「大したものは用意できなかったが……」
「皆で楽しい時間を過ごすのが、いいんですよ」
「響姫さんの言う通りです。初めてのハロウィンがこんな事になるとは思いませんでしたけど、私すごく楽しいです!」
 談笑する輪から外れ、座り込む鬼百合。
 その肩に、モンジュが手を掛ける。
「おう、どうした」
「……リア充の振りとかもう無理、死にたくなってきた」
「何拗ねてんだ。お前カッコ良かったぜ? ……ほらっ」
 強引に鬼百合を立たせ、輪へと放り込む。
「あ! 匣咲さん、あなたの勇者が来ましたよ!」
「あぁ、鬼……いや、黒夜葬、お疲れ」
 ぼーっとしていた栞は労いの言葉をかけた後、問う。
「村雨、あの占いは、その……」
 何処か熱っぽい栞を見て、柚月は軽く言った。
「あぁ、あれ全部ハートのAだからな?」
「……は?」
「はいっ、かんぱーい!」
 唖然とする二人は、最後まで宴の肴にされたのであった。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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