●最上忍軍の謀り
「螺旋忍軍の『彷徨えるゲート』が、次に出現する場所が判明しました」
イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、希望に満ちた瞳を見開いて、ケルベロス達を迎え入れた。
「これは『螺旋帝の血族・緋紗雨を智龍ゲドムガサラから守り切った』成果です。これにより、螺旋忍軍との決戦を行う事が可能になりました」
しかし、決戦を決行する上で、大きな障害となろうとしている勢力があるという。
「正義のケルベロス忍軍から螺旋忍法帖を奪取し、螺旋帝の血族『亜紗斬』を捕縛した『最上忍軍』。彼等は螺旋帝の血族・イグニスから新たな命令を受け、『螺旋忍軍のゲートが現れる地点に戦力を集結』させようとしているのです」
各勢力に潜入していた螺旋忍軍達が暗躍し、『魔竜王の遺産である、強大なグラビティ・チェインの塊が発見された』『このグラビティ・チェインを得る事ができれば、巨大な功績になる』『この事実を知ったケルベロスの襲撃が予測されている』などの偽情報を巧みに流して、様々な勢力を決戦の地へと誘導しているようだ。
ダモクレスは『載霊機ドレッドノートの戦い』の残党勢力、エインヘリアルはザイフリートやイグニスの後釜を狙う王子とその私兵団、その他各勢力の研究していた強力な屍隷兵の軍勢が、実際に動き始めている。
「イグニスとドラゴン勢力は、これらの戦力を『ゲートから戦力を送り込むまでの防衛戦力』として利用するつもりなのでしょう」
かなりの大軍勢、ケルベロス・ウォーの発動なくして全ての撃破は不可能だ。
「しかし、行軍中の軍勢を襲撃し、主だった指揮官を撃破できれば、敵勢力を弱体化させる事ができるはずです。ここにいる皆さんには、ダモクレス軍勢への襲撃をお願いします」
●ドレッドノート残党を強襲せよ
載霊機ドレッドノートの戦いの後、姿を消していたダモクレスの残党勢力は、最上忍軍の情報を得て動き出した。
「勢力再建の為に大量のグラビティ・チェインを必要としていたようですから、今回の情報は渡りに船、といったところなのでしょう……」
ゲート出現予定地は『奈良平野』。
指揮官型ダモクレス『マザー・アイリス』『ジュモー・エレクトリシアン』『ディザスター・キング』が、多くの有力戦力を率い、三重県伊賀を越えて奈良を目指すようだ。
ケルベロスは伊賀市近郊で彼等を迎え撃つ事になる。
指揮官型を1体でも撃破する事ができれば、戦況はかなり好転するはずだ。
「進軍する軍勢の先鋒は、ディザスター・キング配下のダモクレス軍団です」
ディザスター・キング撃破を目指す場合は、配下の有力敵達を撃破、あるいはキングの援護に向かえないよう釘付けにした上で、複数のチームでキングを強襲する必要がある。
「中央に位置するはマザー・アイリス。多数のダモクレスに取り囲まれる形で護衛されています」
護衛のダモクレスは大した戦闘力も持たず、単純な戦闘行動しか行えないが、後方に控えるジュモー・エレクトリシアンが直接操作しており、取り付く隙がない。マザーを狙う場合は、ジュモーを撃破あるいは指揮が取れないほどに追い込む必要がある。
「全軍の後方で指揮などを行っているジュモー・エレクトリシアンにもまた、護衛戦力がついています」
ジュモーを撃破する為には、3体の有力なダモクレスと同時に戦えるだけの戦力が必要になるだろう。
「他にも、数々の有力ダモクレスが行軍に加わっています。指揮官型を狙わない場合は、それらの撃破を狙う事で、ダモクレスの戦力を削る事が出来るでしょう」
また、最上忍軍の最上・幻斎がダモクレスの軍勢の中に同行しているらしい。
しかしその居所は不明。見つけ出す事は難しいだろうが、なんらかの作戦でもって最上・幻斎を撃破できれば、最上忍軍に対して大きな打撃を与えられるかもしれない。
進軍する敵を強襲し、撤退する奇襲作戦。作戦終了後は素早く撤退しなければ、敵の勢力圏に取り残される事になるだろう。
「決戦を前に敵戦力を削る事ができなければ、さらなる状況悪化もあり得ます。ここが踏ん張りどころです。……指揮官型ダモクレスの撃破は、皆さんの悲願でもあることでしょう……」
イマジネイターは胸元に手を置き、複雑に眼差しを伏せた。
しかしその瞳はすぐに、決然と見開かれ、ケルベロス達をしかと見つめる。
「とても危険な作戦です。けれど、来るべき決戦をより盤石に迎える為に、どうか、皆さんの力を貸してください」
真摯な訴えが、ケルベロス達の胸に託された。
参加者 | |
---|---|
リリア・カサブランカ(グロリオサの花嫁・e00241) |
八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484) |
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634) |
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795) |
鏡月・空(藻塩の如く・e04902) |
ティユ・キューブ(虹星・e21021) |
柊・詩帆(怠魔師・e26972) |
鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532) |
●襲撃開始!
三重県伊賀市近郊を、ダモクレスの軍勢が列を成して進行していく。
ケルベロス達は隠密気流を駆使して物陰に潜みながら、その様子を静かに注視していた。
「また厄介な連中が集まったもんで。これ以上跋扈させて堪るかよ」
緩く掴み所のない雰囲気でぼやく鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)。望遠鏡越しに確認できるのは、いずれも強敵揃いだ。
「さて、今回はどこまでいけますかね」
鏡月・空(藻塩の如く・e04902)はクールにひとりごちる。
「本当に魔竜王のキーワードは100%嘘? 何か、信じさせるだけの餌でも……?」
地元の地図と現場の状況を照らし合わせて確かめつつ、メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)は首を傾げる。
そうした裏事情があるかどうかは不明だが、少なくとも、偽情報に躍らされるほどにドレッドノートの残党勢力が追い詰められているのは間違いないだろう、とケルベロス達は結論付ける。
「情報を巧みに利用し様々勢力を集めるなんて、螺旋忍軍は狡猾ね……」
リリア・カサブランカ(グロリオサの花嫁・e00241)は目を細める。
「でも、面倒な敵を集めてくれたおかげで一掃しやすくなった、と考えれば悪くない状況かも!」
「だね。折角の機会だ。出来るだけ奴らの戦力を削ぐとしよう」
前向きなリリアの言葉に、ティユ・キューブ(虹星・e21021)は飄々と、しかしやるべき事をまっすぐ見据えて応えた。
「ここで、次のうちらの戦争の苦しさが変わってまうんやなぁ。……っしゃ! 気合入れてかかろか!」
八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484)は仲間達を見回してニッと笑いながら、掌に拳を豪快に打ち付けた。
ほどなくして行軍の後尾が見えてくる。艶やかな青のドレスの指揮官型と、彼女の傍らを付き従う三体の護衛の姿も。
「皆さん……段取りは大丈夫ですね」
銀色のオウガメタル『鬼瓦』を傍らに、鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)が柔和な眼差しで問いかけると、仲間達は頷き返した。
狙うは、ジュモー・エレクトリシアンの護衛の一人、レイジGGG02。将校然とした軍服を威圧的に着こなす、細面の青年ダモクレスだ。
これを撃破し、ジュモーを狙う他班の後押しをする。それがこのチームの役割だ。
グラビティの衝撃音が轟き、敵後尾の陣営に緊張が駆け抜ける。対ジュモー部隊の一つが仕掛けたのだ。
それは、開戦の狼煙だった。
「よーし、突撃ー!」
『めんどい』も一周回れば開き直りに通ず。控えめな印象を彼方に投げ捨て、柊・詩帆(怠魔師・e26972)はハイテンションで声を張り上げた。
●我が母の為に
ケルベロス達が一斉に飛び出した。妨害に現れるプラズマテレビウム、ギャラクシーマンボウを蹴散らし、荘厳な姿のトランペッター、ソードメイデンを退けながら、瞬く間に中枢を固める四体の元へと肉薄する。
「ここより先は通さん!」
マザー・ドゥーサを後方に庇う形で駆け出し、懐から銃身の細いピストルを取り出すレイジGGG02。向かい来るケルベロス達へと引き金を引くと同時、空中に膨大なプログラムが駆け抜け、数多の弾丸を周囲に複製。相手を威圧する激しい銃弾の雨が、一斉にケルベロスへと襲い掛かる!
「さて、ここで止めさせて貰うよ」
銃弾の瀑布の前に躍り出たのはティユ。小柄な体で衝撃を受け止め、リリアの進む道を拓く。
「――行くわよ!」
続けざま、高々と跳躍したリリアがスカルブレイカーを叩き込んだ。
「ぐ……っ」
強烈な衝撃に、レイジGGG02は押し込まれるようにその場を退いた。
そこをすかさず狙うのは、詩帆のドラゴニックハンマー。
「護衛おつさまー。暇そーだしお話相手にならなるよー」
轟竜砲こと『お話(物理)』が容赦なく敵を打ち据える。ここにいるのは温和な羊さんなどではない、『襲うなら襲われる』の道理を叩き込む、獰猛な地獄の番犬なのである。
「回復はお任せ下さいっ」
癒し手の役目に万全を期して望む奏過。『鬼瓦』に胴体と左腕に覆われながら、鎖を操りサークリットチェインの治癒を前衛に施していく。
「導こう」
ティユは星の輝きをもって星図を投影し、後衛の照準精度をより研ぎ澄まさせていく。
「手早く倒しましょう」
颯爽と敵の懐へと駆け込む空。レイジGGG02の細身を蹴り飛ばし、吹き飛んだ先へと神速の先回りをしてまた蹴り飛ばすを繰り返し、トドメはやり過ぎのかかと落とし。
「消し損ねた残火がまた燃え広がらねーように、止めるとしよーか」
体勢を立て直そうとするレイジGGG02を、鋭く、隙なく、雅貴の閃影が追い討ちをかける。それは刹那、音もなく。影より生じた鋭刃が敵の身を掠め、闇と痺れに蝕んでいく……。
「良い距離感ですね。あちらも、よほど私達を大将に……というより『母』に近付けたくないのでしょう」
平時のムードメーカーぶりから一転、メリーナは冷たく静かな微笑を浮かべ、ブラッディダンシングで鮮やかに斬り込む。
レイジGGG02はジュモー・エレクトリシアンの護衛として動ける範囲で、私情においてはマザー・ドゥースの守護を旨としているのが明らかだった。マザー・ドゥースから出来る限り敵を切り離しておきたいレイジGGG02と、レイジGGG02の完全撃破によって他班をフォローしたいケルベロス達の思惑がある種の一致を見て、両者の戦いは、エレクトリシアン控える主戦場から少し外れた場所で展開される流れとなった。
「忌々しい……どこにでも現れるものだな、ケルベロス共よ!」
「残念! 全部うちらには筒抜けやで!」
(「まんまと騙されてしもてからに、やっぱ心が無いと考える頭も無くなるんかなー」)
瀬理はレイジGGG02を嗤ってやりながら、旋刃脚と共に膨大な痺れを叩き込んでやる。
「――ならば、全てを斬り捨てるまで」
軍服の裾を翻し、レイジGGG02はアンティーク調の軍刀を構える。細身のサーベルにプログラムの文字列を魔術のように纏わせたかと思えば、数度、目にも留まらぬ速さで刃を鮮やかに閃かせた。斬り払われる動きに合わせて、刃の残影となった文字列が高速でケルベロス達へと迫り、前衛を次々斬り裂いていく。
「……服破り。この威力と立ち回りは、スナイパーでしょうね」
奏過はすかさず防御増強を乗せた治癒を前衛に施し、その手応えから敵の力を推察する。
文字列を散らし、レイジGGG02は直立したままに戦場を睥睨する。
「我が存在する限り、母には指一本触れさせぬ」
透徹な殺意が、ケルベロス達を射抜いた。
●銃と刃と
戦いは熾烈を極めた。
レイジGGG02はピストルとサーベルの複製増殖による列攻撃によって、徹底的に前衛を押し止めるような戦い方を好んだ。
プレッシャーと服破り、執拗に繰り返される二種の攻撃。ケルベロス達はその一挙手一投足に神経を尖らせるも、ひとたび標的として狙われれば、レイジGGG02の正確無比な攻撃を免れることはできない。
「大した命中だな、全く」
雅貴は舌を巻いたとばかりにぼやきながら、眈々と隙を狙う。諜報・暗殺の類を本性とする男の月光斬は、決して引けを取らない精度で急所を斬り裂いていく。
「へぇー、結構敵さんもやりよんなぁ。けど、まだまだ!」
瀬理はローラーダッシュで摩擦をかけながら、強気にグラインドファイアで踏み込む。膨大な炎がレイジGGG02を焼きつける。
「ねーお話しよーよー! 愚痴とかないの? んー、愚痴られても殴るだけなんだけどね」
テンション高く言葉を投げつけ続ける詩帆。言葉の通り攻撃の手を止めることはなく、ライジングダークできっちり敵の動きを鈍らせてやる。
「こうるさいハエが。母に仇なす輩に馴れ合う口は持たぬッ」
すげなく言い捨て、サーベルを振るうレイジGGG02。敏速な攻撃が前衛を襲い、健気なサーヴァント達がクラッシャーの盾となって耐え抜く。オルトロスのコペルは比較的軽傷で済んでいるが、ボクスドラゴンのペルルは頻繁に弱点を突かれて少々弱り目だ。
ケルベロスであろうとサーヴァントであろうと、盾役に就いたからには、いちいち攻撃の内容など精査せず、出られる時に前に出てしまう……そういうものなのだ。
「きついのは分かるがもう一踏ん張り、少しでも耐えておくれ」
ティユは頑張り屋の二匹の消耗に神経を尖らせながら、ブレイブマインで士気を高めてやる。
決定的に大きなダメージはない。しかし、前衛はまんべんない消耗を余儀なくされていく。
熟練の職人を思わせる手際で、黙々と治癒に勤しむ奏過を主軸に、ケルベロス達も対応に怠りない。が、負傷の全てを治癒しきれぬのと同様、蓄積された弱体効果も、必ずしも狙った通りに解消しきれるとは限らない。
「……頃合いか」
常にケルベロスから一定の距離を置いていたレイジGGG02が、初めて深く踏み込んだ。プログラムを刻み込まれたサーベルが、文字列を明滅させながら、研ぎ澄まされた一閃を解き放つ。狙うは、重ねて斬り裂かれたまま立て直せずにいた、布陣の穴。
「……っ」
非常な精度で振り下ろされた刃のもたらす激痛に、メリーナは声も出せない。陣営に戦慄が駆け抜ける。
「――それ以上はさせません」
冷静に踏み込んだ空がドラゴニックハンマーを敵へと振りかぶる。即座にその場を退こうとするレイジGGG02を、ドラゴニック・パワー噴射による加速が逃さず、激甚な一撃をお見舞いする。
「大丈夫。守護が働きました。――立て直して見せます」
肩で息つくメリーナの無事を確かめ、奏過は素早く赤光のメスを顕現し、治癒にとりかかる。隙あらば付与してきたサークリットチェインの防護が、瞬間的に弱体化を相殺してくれたようだ。
「うちがついとる! さぁ行くでぇーっ!」
瀬理が咆哮する。拙くも「アイドル」を意識した鼓舞が、仲間達に活力を振り撒いていく。
「……実に忌々しい……ッ」
思い通りにならずに、レイジGGG02が小さく吐き捨てた。
決死の覚悟で八人のケルベロスを押し止めるその全身に、刻みつけられた夥しい傷と消耗もまた、じりじりと死を引き寄せつつあった。
●もぎ取った一勝
攻防は、十巡目を数えようとしていた。
「まだヤるの? ……そろそろヤる気のストック尽きてきた」
詩帆のテンションも、平時の『めんどい』に戻りつつある。
レイジGGG02もいい加減焦れてきたのか、攻撃精度は維持したままに、後方の本陣をちらちらと気にする仕草も見せ始めた。あちらも、激戦が続いている様子だ。
「気が急くのは分かるがね。僕らを放置してくれるのかい?」
気力溜めで治癒を補佐しながら、ティユが挑発するように注意を引き戻させると、レイジGGG02は怜悧に目を細めた。
「貴様等を駆逐せずして、母の元に戻れるとは思わんッ!」
再びの踏み込み、強烈な一閃。
斬り捨てられたのは、自らサーベルの前に飛び込んだ、小さなドラゴン。
「――今よ!」
凛と声を張り上げたのはリリア。
(「この苦境を乗り越えたなら……」)
脳裏に浮かぶのは、白く彩られた自身、傍らのフィアンセ、幸せな結婚式と、その先の輝かしい未来。愛しい人の無事を祈りながら、リリアは全霊を尽くして誓約の舞いを舞い躍り、青翠の風で敵を打ち据える。
「旅役者」
誘導駆使の剣舞。メリーナの呟きに合わせ、レイジGGG02の視界が逆光に眩む。次の瞬間、周囲を取り囲むのは、膨大な『影』。
「教えて、あなたはどんな色? 何の為に戦いますか? 終幕に後悔は? 私たちが憎いですか。私は――何の恨みもないんですよ?」
『影絵』が見せる『終わり無い命の話』。満身創痍のメリーナは、それでも口許に静かな笑みを湛え続け、問いかける。倒すべき相手の生き方を。
「……本当に、お母様を愛してたんですね」
答えを聞かずに、刈り取った魂の中に、答えを知る。
「慈悲は要らないようで」
業滅覇龍撃。空は多重の蹴り飛ばしを繰り返した仕上げに、蒼い龍のオーラを纏った回転かかと落としで、詩帆の方向に向けてレイジGGG02を蹴り飛ばした。
「エターナルなフォー……ゲホゴホッ! 声が枯れるっ!? 喉いたぁーーいっ!」
張り切り過ぎたツケに苦しみながら、吹っ飛んできたレイジGGG02に、八つ当たりじみたEFBを叩き込む詩帆。
奏過の猟犬縛鎖が、瀬理の旋刃脚が、次々にレイジGGG02の動きを鈍らせ、命の灯火を削り取る。
最後に動いたのは、雅貴。
「全ては断てずとも、せめて――テメーにゃ此処で果てて貰うぜ」
影に紛れ――いや己自身が影となり、密やかに急所へと迫る。
「道も野望も、此処で終いにしてやる」
斬撃が、音もなくレイジGGG02の首を掻いた。
「母……よ……もうし……わ……け――」
ゼンマイ仕掛けの人形のようにカタカタと痙攣すると、レイジGGG02の肢体は意志の通わぬパーツ群となって、バラバラに地面に崩れ落ちた。
レイジGGG02、討伐完了。
しかし戦いは終わっていない。すぐにでも援護に乗り出したいところではあったが……。
「消耗が激しい。連戦は危険です」
のんびりと全回復を待つ余裕はない。奏過は撤退すべきと警鐘を鳴らす。
征くべきか退くべきか。一同が逡巡していたその時、ジュモー・エレクトリシアンと他二体の護衛を同時に引き受けたチームから、撤退の意思が伝えられた。
「撤退……! っしゃーない、最上・幻斎も捜したかったけど、無理は禁物や。ずらかるで!」
瀬理が呼びかけ、一同は素早く撤退の体勢に入った。主戦場から零れ落ちるように纏わりついてくるチャリオットメイデンやダモクレスメイジを片づけ、他二班の退路を確保しながら、徐々に後退していく。
――突如、咆哮が轟いた。
振り返ったジュモー本陣には、禍々しい竜の姿。
「ドラゴン……じゃねーな。ドラゴニアンの暴走か……」
「ええ。ジュモー班の誰かが、退路を拓いてくれたのでしょう」
雅貴と空が目を細めて呟いた。
身をなげうって敵を引き付けてくれている仲間の思いを噛みしめながら、ケルベロス達は戦場より退いた。
ジュモー陣営を乱した三班の戦いが、厳しい戦力差の中から確かにもぎ取った一勝が、きっと誰かの助けになっている事を信じて。
作者:そらばる |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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