螺旋忍軍大戦強襲~ 罪深き欲望のエインヘリアル軍団

作者:そうすけ


 集まったケルベロスたちを前に、ゼノ・モルス(サキュバスのヘリオライダー・en0206)は拳を固め、柄にもなく熱く語る。
「螺旋忍軍の『彷徨えるゲート』が出現する場所が分かったよ! さあ、螺旋忍軍との決戦だ、ケルベロスウォーだ――っとその前に……」
 ゼノは大きく息を吸い込んで、気持ちを落ち着けた。
「『螺旋忍軍のゲートが現れる地点に集結しつつある敵戦力』を何とかしないと決戦が不利になる。飫肥城の死闘から時間がたっていないけど、また、みんなの力を貸して欲しい」
 最上忍軍は螺旋帝の血族・イグニスから新たな命令を受けて、ダモクレスやエインヘリアルの勢力に潜入していた螺旋忍軍たちを集結させているらしい。
 更に、各勢力が研究していた屍隷兵の中で、戦闘力の高い者達を集めた軍勢も加わることが予知で判明している。
 ダモクレスからは『載霊機ドレッドノートの戦い』の残党勢力。
 エインヘリアルからは、ザイフリートやイグニスの後釜を狙う王子とその私兵団。
 各勢力が研究していた屍隷兵の中で、戦闘力の高い者達を集めた軍勢。
 この三勢力が『彷徨えるゲート』の出現地で守りを固めつつあった。ケルベロスウォーを発動しない限り、集結する軍勢を全て撃破する事は不可能なのだが――。
「行軍中の軍勢を襲撃して主だった指揮官を撃破する事ができれば、敵勢力を弱体化させることができるよ」


 ケルベロスたちの中から、各勢力がどの程度連携して動いているか、という質問が出た。
 その質問を待っていましたとばかりに、ゼノはにんまりする。
「彼らは、それぞれ螺旋忍軍から『魔竜王の遺産である、強大なグラビティ・チェインの塊が発見された』『このグラビティ・チェインを得る事ができれば、巨大な功績になる』『この事実を知ったケルベロスの襲撃が予測されている』という偽情報を掴まされている。どうやら、イグニスとドラゴン勢力は彼らにゲートは守らせたいけど、あまり仲良くしてほしくないみたいだね」
 偽情報に踊らされ、『魔竜王の遺産』の独占を目論んだデウスエクスたちは、共闘どころか互いを牽制しあっているという。
「ま、そんなわけでボクたちに目はあるってわけ。こちらも勢力別に戦力を割り振って撃破していくことになったんだ」
 ゼノが戦場へ運ぶチームは、エインヘリアルの軍勢とぶつかることになる。
「エインヘリアルの第十一王子『マン・ハオウ』と、その私兵集団が相手だよ。あとでリストを配布するから、移動中に、どの指揮官を狙うか他のチームとよく話し合って決めてね」
 私兵団を率いるのは、『ペンプ・オグ』以下、ユナン・ジス、ダウ・ガル、テイル・レイ、ペデル・ケイン、フウェフ・ディー、セイジュ・オー、エイジュ・ラディウス、ナウ・ソーン、デク・サムス、ユネク・シザリスといった歴戦のエインヘリアルだ。彼らが数百名のエインヘリアルの軍勢を率いて地球に来ている。
「ここで、とっておきの情報を出すよ。マン・ハオウ以下有力なエインヘリアルたちは、背の低い美少女に目がないんだ。うん、ボクも美少女は大好きだけどね。背の低いってとこがポイントかな。彼らの理想の女の子がにっこりと微笑みかければ、軍勢を待機させて自分たちだけで突撃してくるよ、絶対」
 ――といっても12体の有力なエインヘリアルが固まって襲ってくるわけで。
「取り巻きの雑魚を相手にしなくてもいいとはいえ、むちゃくちゃ大変な戦いになるのはまちがいないんだけどね。あ、逆に指揮官がいなくなった雑魚エインヘリアルの部隊を攻撃して数を減らすといった作戦もありだよ」
 質の高い相手との闘いを選ぶか、その他多数との闘いを選ぶか、だ。
 ちなみに、残された雑魚エインヘリアルの軍勢の中には、最上忍軍の最上・幻夢の姿もあるようなので、最上・幻夢の撃破を狙っていくのもいいかもしれない。
「ただ、私兵団の隊長である『ペンプ・オグ』は、美少女よりも『マン・ハオウ』の安全を優先するよ。襲撃してきたケルベロスが手強いと知れば、『マン・ハオウ』と共に自軍勢の元に撤退、もありうる。『ペンプ・オグ』を狙うなら、よくよく作戦を練ってね」
 なお、その他の私兵団員は各個撃破が可能だ。しかし、腐ってもエインヘリアルの指揮官。戦闘能力はかなり高い。確実に仕留めようとするならば、1体につき2チームが連携して戦うのが望ましい。
「今回の作戦は、進軍する敵を強襲して撤退する奇襲作戦だ。作戦終了後は、素早く撤退しなければ、敵の勢力圏に取り残されることになるので注意して欲しい。ボクからは以上――ここで敵戦力を削る事ができなければ、確実に状況は悪化してしまう。地球の明日は、みんなの頑張りにかかっている。頼んだよ、みんな!!」


参加者
アイリ・ラピスティア(宵桜の刀剣士・e00717)
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)
エレ・ニーレンベルギア(追憶のソール・e01027)
シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)
武田・克己(雷凰・e02613)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
ステイン・カツオ(剛拳・e04948)
ライラット・フェオニール(旧破氷竜姫・e26437)

■リプレイ


 紀伊半島のど真ん中、へそともいうべきところに位置する伯母子岳は、緑がすっかり濃くなり、初夏の装いだ。
 その初夏の緑が瑞々しい山間に、甲高い乙女の悲鳴が響き渡る。
 シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)は、多様な種類や年齢の樹木が入り交じる自然林の中を必死に走っていた。木々の間を飛ぶようにたなびく白いベールの後を、三メートル近い巨体の剣士が笑いつつ、木々をへし折り、切り倒ししながら追いかけてくる。追っ手はエインヘリアルの第十一王子『マン・ハオウ』が抱える私兵集団の指揮官の一人、テイル・レイだ。
(「ロリコン、ロリコン、ド・ロリコンが追ってくる……いやぁ!」)
 仲間たちと合流する前に捕まってしまえば、何をされるかわかったものではない。こちらを見定めた時のあのいやらしい目、舌なめずりのあとで濡れ光った唇。思い出すだけで怖気がする。
 シルフィディアは本隊からの指揮官誘い出しに同行していた別班のリリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)の身を案じた。二人一緒に、おびき出した指揮官たちを仲間が待ち伏せるポイントへ導くはずだったのだが、まさか、「私は左、俺は右」といきなり別々に襲い掛かってくるとは思ってもいなかった。そのため、想定していた登山道のコースを外れて、別々に斜面を下りることになってしまったのだ。
 果たして彼女は無事なのだろうか。まさか捕まって草の上に転がされ、口にできないようなおぞましいことをされているのでは――。
(「と、とにかくポイントへ急いで戻らなきゃ」)
 どのぐらい走っただろう。このままでは捕まってしまう、と焦りだしたところで、当初予定していたコースに戻ってこられた。登山道は整備されており、アップダウンも少ない。仲間たちか待つ場所へ向かって、オラトリオの幼きシスターはラストスパートをかけた。


 ――来た。
 悲鳴を聞きつけて、武田・克己(雷凰・e02613)は隠れていた茂みから頭を出した。おとり役を先導に、巨大な影が土煙を上げながら空き地に走り込んでくるのが見えたが、どうも様子おかしい。
 小声で隣のウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)へ、把握した状況を伝達する。
「シルフィディア一人だ。敵の司令官を一体、連れてきている」
「リリウムさんはご一緒ではないのですか?」
「ああ。何かあったに違いない。向こうの班に知らせてくれ」
 ウィッカが立ち上がって伝令に走る、と同時に克己は潜んでいた茂みから勢いよく飛び出した。目の前をおとり役のシスターが駆け抜けていく。
 克己はほぼ真横から、シスターを追いかけてきた敵指揮官の太い脚に雷を纏う直刀・覇龍を突き刺した。
 森の中に開けた空き地に絶叫が上がる。
 エインヘリアルの指揮官は少し先で立ち止まると、太ももに手を当てて体液の流失を止めた。振り返った頬に傷。髭面で白髪の大男は、凶悪な目で森から出てきたケルベロスたちを睨んだ。
 肩を怒らせた巨体の脇を大きく迂回して帰ってきたシスターを、伝令から戻ったウィッカが霊力を帯びた紙兵を撒きつつ、広げた腕の中へ迎い入れた。
「ご無事なによりです」
「ウィッカさん、怖かったよー。連れ出した後、別々に襲われて――彼女は、まだ?」
 シスターは友の胸から頭を起こして辺りを見回した。やはり茂みから出てきた別班のケルベロスたちと目が合ったとたん、一人だけ先にたどり着いた気まずさから思わず顔を伏せてしまった。
 流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)は大剣を抜き、構え持った敵の前に進み出た。挨拶なしに上段から豪快に振り下ろされた大剣の斬撃を、バトルオーラを纏った鈍色の腕で受けとめる。衝撃の強さに体がほんの僅か、後ろへ押し戻された。
 渇いた土の上につけた短い筋を見下ろしつつ、清和は背中越しに別班のケルベロスたちへ声をかける。
「一緒に叩く計画が狂ってしもうたな。けど、こればかりはしょうがない。あのロリコンはおっちゃんたちが抑えとく。はよ、助けに行ったって」
 その時、南側の斜面からリリウムが空き地に駆けあがって来た。あとに別のエインヘリアルを引きつれている。
 別班のケルベロスと先に到着していた敵の指揮官が、ほぼ同時に南へ動いた。
「おおっと! 悪いが、ここから先はおっちゃんが行かせへんでっ」
「その通り。貴方様の相手は『こっちですよ』」
 ステイン・カツオ(剛拳・e04948)は、清和がロリ指揮官の前にひと足早く回り込んで足止めをしている横から怪光線を頬傷に打ち込んだ。
 少し離れた場所から、別班が別のロリ指揮官を相手に戦う音が聞こえてくる。
「おじさんこちら! ここまでおいでー!!」
 ステインは、イケおじなのになぁ、もったいないなぁ、と思いつつロリ指揮官を挑発、引きつけにかかった。班の中では最年長だがドワーフらしく見た目は低身長のロリロリである。あえておとり役には立候補しなかったが、ロリコンを釣る自信はあった。
「くそ……貴様ぁ」
 果たして、頬に手をやり怒声とともに振り返ったロリ指揮官は、ステインの姿を見るなり表情をデレッデレにとろけさせた。その変わりようたるや……。
「王子に献上する乙女が二人も手に入るとはな。味見も二回か……ぐふふっ」
 距離があるにも変わらず、ごくりと生唾を呑み込んだ音がケルベロスたちの耳に届いた。
 渋い顔が台無し、ただのでかいスケベオヤジである。
 引きつった笑顔でエレ・ニーレンベルギア(追憶のソール・e01027)が相棒であるウイングキャットのラズリとともに前線に出る。
「うわあ、極力関わりたくないですね、ホントに! ですが、これもケルベロスの務め。全力で屠らせて頂きますよ! ……と、その前に」
 エレの周りがすっと暗くなった。背後に大宇宙に煌めく銀河を背負う。祈りの形に組み合わせた手から、光の粒があふれだし始めた。
 『煌めく星の加護を、此処に。降り注ぎ、満ちろ!』
 流星群がケルベケスたちの間を飛びぬけていく。
 生命の輝きに満ちた小さな星の流れは、身を盾にして敵の第一撃を防いだおっちゃんの傷をたちまち癒した。
「ふん! その程度の星繰……エインヘリアルの指揮官たるこのテイル・レイに稚技を見せるか。ババアと歩くクソ袋どもはふたりの乙女を残し、とっととこの場から去れ。目障りだ。特別に今回だけは見逃してやろう」
「ババア? ババアって、それ、もしかして……」
 アイリ・ラピスティア(宵桜の刀剣士・e00717)は腰から宵桜を抜刀、光る切っ先をテイル・レイへ向けた。
「もしかしなくてもお前と後ろの二人のことだ。十三歳、百三十センチ以上の女はババア! 味見すらする価値なし!」
 怒りが脚を動かした。一気に距離を詰めると咆哮しながら割れた腹筋に蹴りを入れる。木々を抜けて吹く風に、飛び散った星屑が流されていく。
 ぐっと息を詰まらせたものの、アイリ渾身の流星蹴りは巨体を折るまでには至らなかった。
 あわてて引く足に大きな手がのびる。
 その手が空で止まった。
 ライラット・フェオニール(旧破氷竜姫・e26437)の金剛石のような竜爪が、固い手甲ごとエインヘリアルの肉を貫いていた。
 ラズリが翼をはためかせて飛んできて、テイル・レイの顎の下から頭突きを喰らわせる。
 がふっ、と敵が頭をのけぞらせた隙に、アイリはラズリとともに後ろへ下がった。
「ナイスフォローでしたよ、ラズリ」
 エレはウイングキャットが戻ってくるなり抱き寄せて、頭を優しくなでてやった。
 微笑ましい光景を背の後ろに隠し、ライラットは右の親指で男二人の方を指す。
「……よう、ロリコン。ついでに聞くけど、『歩くクソ袋』っていうのは彼らのこと?」
 高いところから唸り声が落ちてきた。
「ほかに言いようがあるのか?」
 ライラットは笑った。
「男にはとことん興味なし、か。ロリコンだけど変態じゃない、と。いいね。じゃあさ、小さい女の子じゃなくて悪いが、ちょいと私と一緒に遊ばねえか? 大人の女の良さを教えてやるよ!」
 文字通り体にね。
 テイル・レイの手を貫く竜の爪が聖光を発した。爪を食い込ませたまま巨体を自分に引き寄せて、黒炎に覆われた右の拳を割れた腹に叩き込む。
 さすがに今度ばかりは堪らず、エインヘリアルの指揮官は体を折った。
「どうだい?」
「ふっ。刺激が足りんな。この程度では起たんわ」
 テイル・レイは竜の爪に貫かれたままの右腕を豪快に振り上げて、ドラゴニアンの女戦士を投げ飛ばした。


「誰が『歩くクソ袋』だって? 聞いてて胸糞悪いし、確実に――殺る!」
 克己は強く踏み込むと同時に刀を抜き放った。光放つ刀身が白昼に白い孤月を描く。
「てめぇだってトイレぐらい行くだろうがぁ!」
 肩から胸にかけて深い傷を負いながら、テイル・レイもまた、数多のエインヘリアルを束ねる指揮官の意地と実力を見せる。
 流れる血と痛みをものともせず、左手一本で刃渡り三メートル近い両刃の大剣を軽々と振り回した。大剣の重量がそのまま威力へと変わる。刀身より放たれた衝撃波の威力だけで、雷凰の刀剣士は軽々と吹き飛ばされた。
 歩くクソ袋――男に手加減はしない。まして、一度ならず二度までも誇り高き戦士の体に傷をつけた男には。
「美形はトイレなど行かん! そのままくたばっていろ」
 テイル・レイは吐き捨てるように言うと、シルフィディアを手招きした。
「燃え立つように輝く緋色の髪の乙女よ。さあ、こちらへ。まずはお前の血がマン・ハウオ王子に捧げものに相応しいか……、まず俺が乙女の泉より吹きだす黄金水を顔面に浴びて、舌と喉で味を確かめようではないか」
 女性陣から一斉に嫌悪に満ちた悲鳴が上がる。
 ウィッカはテイル・レイの視線から友を守るように前に立った。嫌悪に震えながらもマインドリンクを回し、地に伏した克己を癒す。
「妖精種族を滅ぼしただけでなく、幼い少女を狙う……つまり、弱き者を虐げる嗜好など許せません」
 赤きに怒りを燃やし、指を突きつける。
「わが友に指一本たりとも触れさせはしません!」
「ウィッカさん、ありがとう。私は大丈夫です」
 覚悟完了。修道女服を脱いで全身をフィルムスーツで覆った戦闘モードのシルフィディアが友の背の後から出てきた。
 体のラインを露わにした幼女を見て、変態が前を張った。半開きにした唇から、上ずった声を漏らす。
「お、おお……っ、堪らん! 黄金水の前にひと舐め、内股や脇の下の汗の味を確かめさせてくれ!」
 またしても女性陣から悲鳴が上がる。男二人はげっ、と声を漏らした。
「ク、クソが……浴びるのは貴様の血です!」
 激しい蹴りで地が削ずられ、炎が巻き起こった。振り上げられた足から火竜が牙をむいて飛ぶ。
 炎にあぶられたテイル・レイは身をくねらせた。その顔は歓喜に満ち溢れている。
 ――と、いきなりケルベロスたちに向かって突進してきた。
 エレとラズリが素早くブロックに動く。
「邪魔だ! どけ!」
 文字道理、猛烈なアタックにラズリともども吹っ飛ばされながら、エレは笑っていた。
 笑ながら杖の頭を巨大な敵に向けて雷を飛ばす。
「なんでも思う通りにできると思ったら大間違いです!」
 乙女に向かって伸ばされた太い指が引きつったように空で止まる。
 機を捕えた清和は、女魔導士とシスターを両脇に抱えると、大男の影から急いで離脱した。
 後列でバスタライフルを構えていたアイリの姿が露わになる。
(「背の低い……幼い美少女、私の大事な友達も該当するんだよね。あの子は今頃、変態のボス……マン・ハオウと戦ってる。いますぐ助けに行きたいけど……」)
 覗き込んだスコープの十字が微かに震え、あわてて気を引き締めた。
 怒りで顔を真っ赤にしたテイル・レイが走り出す。
「いまや! 撃て」
(「うん、でも、私もあの子も、ロリコンになんて絶対に負けないよ」)
 銃口から凍てつく波動が撃ち放たれた。白い激流の中で、縁を鋭く尖らせた六角片が舞い飛ぶ。
 六角片はエインヘリアルのぶ厚い筋肉に突き刺さり、薄く氷膜を広げた。
「もしもの時は捨ててっていいぞ。若いやつに無茶させたんじゃねえ……2度も同じ想いすんのはごめんだよ。一番の年上が我儘言ってる時点で威厳もクソもねえけどな」
 ステインは自然体でアイリと敵の間に割り込むと、そのままテイル・レイの前までゆっくり歩を進めた。手を伸ばせば触れられるほど近づいて立ち止まり、髭面を見上げる。
 テイル・レイはニヤつきながら頬の傷を指で掻いた。
「仲間を守るために自ら進んで身を差し出すか。なんと気高い……がお前はドワーフだな? 見た目はいいが……やってから王子に差し出しても構わんだろ」
 ステインは冷めた目を下へ、前に張り出しているものへ落とした。
「これだけ攻撃を受けても……まだ勃っていやがる。ロリコンの上にナルシスト、マゾのど変態め」
 おもむろに腰を落として背に回されようとしていた巨大な腕をかいくぐり、拳を固めた右腕を上半身をねじってぐっと後ろへ引く。
「ただの強パンチ改め、G・G・B・U(ゴールデンポール&ゴールデンボール、ブレイクアップ)!!」
 体重とスピードが乗ったステインの一撃が、変態の猛る股間を直撃した。
「ヘブンッ!!!」
 テイル・レイが白目をむいて口から泡を吹く。
 ライラットは巨体の背後に駆け寄ると、突き出された尻に足をかけて高く跳んだ。翼を開いて空で静止する。
「地獄に落ちろ!」
 左手で白髪頭を押さえつけて露わにしたうなじに、回転しながら断罪の手刃を振り降ろす。
 テイル・レイは咄嗟に両ひざを落として受けたダメージを流した。
 ライラットの着地を狙って大剣を薙ぐ。
「すまない。ロリ以外は帰ってくれ!」
 剣に刻まれたロリコン座のシンボルが光を放つ!
「まてまてまて! 宇宙(そら)のどこにあるんや、ロリコン座っ!」
 勝手に作るな、と、邪悪なる光を単身遮りつつ清和が叫ぶ。
「ぐ、ふふっ……ロリコンの星はこの胸の中、常に輝いている。星光を浴びし貴様も今日からは立派なロリコンだ」
 口の端から血の筋を垂らしながら、片目をつぶってサムズアップするロリコン司令官。
「なるかー! って、うわっ。自慢のツルピカボディーがザラザラしてる。キモ過ぎてサビ、浮いてきた!?」
「下がれ、清和。ロリ菌は元から断たなきゃダメ、だ! 『この一太刀で、神すら斬ってみせる!!』」
 木立ちの葉に闇が降りかかり、日光が龍玉の放つに鮮やかな緑色に染まった瞬間、テイル・レイは脳天から股まで、見事なまでに真っ二つにされていた。
 巨体が血を吹きあげながら倒れる。
「風雅流千年。神名雷鳳。この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ」
 克己の呟きに重なる様に、少し離れた場所でエイジュ・ラディウス討ち取りの勝鬨が上がった。

作者:そうすけ 重傷:流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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