螺旋忍軍大戦強襲~集うがらくたを壊す為

作者:なちゅい

●決戦に当たって……
 ヘリポートにて。
 新たな作戦の決行を聞き、その参加を決めたケルベロス達が集まる。
「次に、螺旋忍軍の『彷徨えるゲート』が出現する場所が判明したよ」
 これは、『螺旋帝の血族・緋紗雨を智龍ゲドムガサラから守り切った』だと、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は語る。
 この情報があれば、螺旋忍軍との決戦を行うことは可能だろうが、『最上忍軍』が大きな障害になろうとしている。
「最上忍軍は、正義のケルベロス忍軍から螺旋忍法帖を奪取して、螺旋帝の血族『亜紗斬』を捕縛した一団だね」
 最上忍軍は螺旋帝の血族・イグニスから新たな命令を受け、各勢力に潜入していた螺旋忍軍達を利用して『螺旋忍軍のゲートが現れる地点に戦力を集結』させようとしているようだ。
 ダモクレスからは、『載霊機ドレッドノートの戦い』の残党勢力。
 エインヘリアルからは、ザイフリートやイグニスの後釜を狙う王子とその私兵団。
 更に、各勢力が研究していた屍隷兵の中で、戦闘力の高い者達を集めた軍勢も用意しているようだ。
「彼らは、螺旋忍軍から偽情報をつかまされているようだね」
『魔竜王の遺産である、強大なグラビティ・チェインの塊が発見された』
『このグラビティ・チェインを得る事ができれば、巨大な功績になる』
『この事実を知ったケルベロスの襲撃が予測されている』
 偽情報としては、こういった内容らしい。
 また、『魔竜王の遺産は独占が望ましいが、複数の勢力が参戦してくる事が予測されている為、敵に漁夫の利を与えない為の立ち回りが重要である』と各勢力は説明されている。
「その説明によって、デウスエクス同士では、戦端を開かずに牽制しあうように仕向けられているよ」
 イグニスとドラゴン勢力は、集めた戦力を『ゲートから戦力を送り込むまでの防衛戦力』として利用しようとしているのだろう。
 さすがに敵戦力が多く、ケルベロスウォーを発動しない限り、集結する軍勢を全て撃破する事は不可能だ。しかし、行軍中の軍勢を襲撃して主だった指揮官を撃破する事ができれば、敵勢力を弱体化させることができるはずだ。
「危険な任務になるだろうけれど……、どうか皆の力を貸してほしい」

 こちらでは、ダモクレスの軍勢を相手にすることとなる。
 載霊機ドレッドノートの戦いの後、姿を消していたダモクレスの残党勢力。それらが最上忍軍の情報を得て動き出したようだ。組織の再建の為に、大量のグラビティ・チェインを必要としていたダモクレス残党にとって、最上忍軍の情報は渡りに船だったのだろう。
「ダモクレス残党は、指揮官型ダモクレスである、マザー・アイリス、ジュモー・エレクトリシアン、ディザスター・キングを中心に、有力な戦力が残されているよ」
 これらの指揮官型ダモクレスを1体でも撃破できれば、戦況はかなり好転するはずだ。
「進軍するダモクレスの軍勢の先鋒は、ディザスター・キングと配下のダモクレス軍団が担っているよ」
 ディザスター・キングを撃破しようと思えば、この強力な先鋒部隊を抑える必要がある。有力敵の撃破、あるいは、複数チームでディザスター・キングを強襲するといった作戦を取らねばならないだろう。
「マザー・アイリスは全軍の中央にいて、周囲を多数のダモクレスが取り囲んで護衛しているよ」
 護衛のダモクレスの能力はさほど高くないが、それらを指揮官、ジュモー・エレクトリシアンが直接操作しているのが厄介だ。
 マザー・アイリス撃破には、ジュモー・エレクトリシアンの撃破か、指揮出来ぬほどに追い込んで、護衛ダモクレスが混乱した隙を見てマザー・アイリスへと攻め入りたい。また、こうした電撃戦には、役割分担したチームの連携が必要だ。
「ジュモー・エレクトリシアンは全軍の後方で、護衛ダモクレスの指揮などを行っているよ」
 ジュモー・エレクトリシアン自身にも3体の有力敵の護衛がついており、撃破にはこれら全てのダモクレスと同時に戦える戦力が必要となる。
「指揮官型を狙わないなら、有力ダモクレスを倒しておけば、ダモクレスの戦力を削ることに繋がるはずだよ」
 ダモクレスの軍勢の中には、最上忍軍の最上・幻斎が同行しているようだ。
 最上・幻斎の居場所は不明で見つけ出す事は難しいと見られるが、なんらかの作戦を行って最上・幻斎の撃破を行う事ができれば、最上忍軍に大きな打撃を与える事ができるかもしれない。
 敵戦力について語り終えたリーゼリットは、作戦に臨むケルベロス達へと最後にこう告げる。
「後の決戦を考えれば、指揮官型ダモクレスなどは厄介な能力を持つ相手も多いから、ここで叩いておきたいけれど……」
 それには、多くのチームと協力する必要もあるだろうし、ある程度撤退も想定せねばならない。その討伐を目指すのであれば、綿密な作戦を立てる必要があるだろう。
「それでは行こう。皆の作戦での成果、期待しているよ」


参加者
シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)
リヴカー・ハザック(幸いなれ愛の鼓動・e01211)
アルディマ・アルシャーヴィン(リェーズヴィエ・e01880)
ラピス・ウィンドフィールド(天蓋の綺羅星・e03720)
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
アシュレイ・ヘルブレイン(生まれたばかりの純心・e11722)
榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)

■リプレイ

●開戦
 三重県伊賀市近郊。
 綿密な打ち合わせの上、奈良平野でダモクレスを迎え撃つ作戦を展開し始めたケルベロス達。
「出来れば、何らかの決着がつけばいいのですけど……」
 銀の長髪に首のチョーカーが目を引く、ラピス・ウィンドフィールド(天蓋の綺羅星・e03720)が気を引き締める。
 それもそのはず、相手は指揮官ダモクレス。それだけにメンバー達も緊張の面持ちで他班の奇襲合図を待つ。
「待ってろ、ジュモー軍団。最低でも護衛達は倒させてもらうよ!」
 ドレッドノート攻略戦では途中で諦めたが、今回は。榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)はそうして意気込む。
 有力敵と戦えるようにとこれまで力をつけてきた。だからこそ、一騎はこれ以上なく好戦的になっている。
「敵とはいえ、女性を傷つけるのは忍びないな」
 露出の大きめな服装でスレンダーな身体をさらす、リヴカー・ハザック(幸いなれ愛の鼓動・e01211)がそんな冗談めかした言葉を呟く。
 狙うは、3体の有力敵と数で揃えた雑魚ダモクレスに囲まれた、ジュモー・エレクトリシアン。
 それらにじりじりと近づくシルディ・ガード(平和への祈り・e05020)。天真爛漫なドワーフの彼は、敵の姿を鼻歌交じりに望遠鏡とボールペンを使って描こうとするが、なかなか全容が確認できず、作成が難しい。
(「何となくだけど……ジュモーは、わたしが一番決着をつけたい宿敵に似ている気がするわ」)
 黒い仔猫の姿で合図を待つ円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)。外見でなく、その内面にキアリはジュモーと自身の宿敵に類似性を見出していた。
 そして、ジュモーを母と呼び、再会を待ちわびるシエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)の緊張した面持ちに、真剣な表情をして。
「大丈夫だ、心配は不要だ。我々であればな」
 そうして、リヴカーは彼女を安堵させようとする。
 だが、そちらに向かうチームは自分達を含めて僅か3班。不安要素としてはかなり大きい。
 その時、轟く衝撃音に、メンバー達が注目する。どうやら別班が敵へと攻撃を開始したようだ。
「未来に繋がる光ある道のため、非情の理を従え闘いましょう」
 アシュレイ・ヘルブレイン(生まれたばかりの純心・e11722)は臨戦態勢をとる。一騎も仲間に、他チームに合わせてジュモー部隊へと仕掛けていく。
「送り届けるべき味方がいる。この程度では止まれないな!」
 作戦の範囲内ではあるが、ジュモーと因縁のある少女に出来る限り対話させたい。戦闘時は竜派の姿で戦いに臨むドラゴニアン、アルディマ・アルシャーヴィン(リェーズヴィエ・e01880)はそう考え、ジュモーの取り巻きであるオイチGGG01へと向かっていく。
「お母様……」
 自身の前方には、同じ戦場にいながらなかなか出会えなかった母、ジュモー・エレクトリシアンの姿。
 今度こそ、話を。シエナはその一念でこの場へと立っていた。
「ぶつけたいものがあるなら、存分にね」
 動物変身を解いた猫のウェアライダーのキアリは、そんなレプリカントの少女へと発破をかけるのである。

●対オイチGGG01戦
 ジュモー・エレクトリシアンに攻撃を行いたくとも、周囲には取り巻きとなるダモクレス。さらに、有力敵が3体もいる。
 3隊のケルベロスはこれらを相手にしつつ、ジュモーの牽制を目指す。
 メンバーがまず打倒を目指すは、機械で出来た蛇の尾を持つ和服姿の女性ダモクレス、オイチGGG01。
 まず、アシュレイが若干距離を取りつつ、竜鎚から砲弾を叩き込むと、飛び出したラピスが精神を集中し、オイチの手にする扇を爆発させる。
「En avant! 全軍突撃なの!」
 シエナもジュモーとの対話のタイミングを図りつつ、オイチへと蜂の群れをけしかけ、一斉に針を刺していく。
 だが、冷ややかに微笑むオイチは尻尾となっている太い機械の蛇をけしかけ、食らいつかせてくる。ラピスはそれを食らってしまい、全身に毒が駆け巡る感覚を感じていた。
 開戦する中、シルディは敵の背後からじわじわと移動しながら迫っていた。
 シルディは鼻歌を歌いつつ、ボールペンを握って手配書を作り上げるが、すでに戦い始まっていることもあり、仲間の前に出て身構え始める。
 その時、一騎がカラフルな爆発を巻き起こす。仲間の士気を高めた一騎はくせっ毛を靡かせつつ、華奢なオイチの本体目掛けて殴りかかっていく。
 さらに、仕掛けようとするアルディマを見たリヴカーは、銀に輝く弓「Pas un n’est brise」を構え、祝福と癒しを備えた矢を射る。
 それによって力を得たアルディマ。彼は後方でケルベロスチェインを操り、オイチの身体を縛りつけようとする。
 出来る限り素早く撃破したい。そんな思いでアルディマは鎖を握る手を強める。何せ、この後にジュモーが控えているのだ。
 そんな中、シエナがわらわらと集まる雑魚ダモクレスに絡まれてしまって。
 数の多いプラズマテレビウム、ギャラクシーマンボウ。それに、トランペッター、ソードメイデン、チャリオットメイデン、ダモクレスメイジといった雑魚どもが取り付き、なかなかジュモーへと近づくことができない状況が続く。
 それを見たアシュレイはジュモーの混乱を図らねばと、援護を行いつつ雑魚に流星の蹴りを繰り出し、道を切り開こうとしていた。
 ジュモーの援護に動こうとするオイチの食い止めをするオルトロス。アロンが睨みつけたオイチの身体を発火させると、無表情のままでキアリは氷結の螺旋をオイチへ浴びせかける。
 着地したキアリは巻き髪を翻す。次に妖精のブーツで一蹴をと考えつつ、彼女はちらりとジュモーに対するメンバーを視界に入れた。
(「頑張ってね、応援してるわ」)
 他班がジュモーと健闘している。そちらがうまくやってくれることを期待したいが。
 キアリ自身もいち早くそちらに向かいたいと、オイチ打倒を目指す。
 同じく、前線でオイチを直接食い止めるシルディもその場から動けず、ジュモーの元に向かった少女を思う。
「ジュモーの感情の吐露はみられる……かな?」
 直接、ジュモーにこのナイフの刀身に映るトラウマを見せ付けるためにも。シルディも星型の鉄球のついた柄を握りしめ、直接鉄球を力強くぶつける。
 ジュモーが娘へと本音を語ることを願って。

●その声は届くか……?
 乱戦は続く。
 時折、信号弾が飛んだかもしれないが、残念ながらそれを確認する余裕はケルベロス達にない。
 他チームが半数以上の手を裂いて、ジュモーに攻め込もうとしているのを見たアシュレイ。見れば、すでに地に伏せている全身鎧のレプリカントの姿が。
 オイチGGG01は未討伐ではあったが、さすがにジュモーを放置したままというわけにもいかぬだろう。
「いまいち決め手に欠ける、か」
 別班、白い短髪のレプリカントは僅かな優勢を感じながらも、崩れぬジュモーを見据えて。
「だとしても、食らいついてやるさ」
 右腕の地獄を燃え上がらせたウェアライダーが地を蹴った次の瞬間。
 雑魚を散らして飛び込んだアシュレイが、ジュモーへと流星の蹴りを浴びせかけた。
「共闘させていただきます」
 構えを取るアシュレイの横、ボクスドラゴンのラジンに盾と回復を任せたシエナがすかさず、前方の女性型ダモクレスへと呼びかけた。
「Demander……ジュモーお母さま」
 そうして、シエナは長く待ちわびた、母、ジュモー・エレクトリシアンとの再会を喜ぶ。
 戦いながら、同じレプリカントであるはずのアシュレイは、そんな少女の感情が理解できずに戸惑いを見せる。
 しかし……。
「シエナの事を覚えていますか?」
「シエナ……? ああ、欠陥によって、壊れてしまったのですね」
 ただ、ジュモーの対応は氷のように冷め切っていた。
 そんな母の言葉に、レプリカントの少女は身を震わせる。外見の変化などほぼないはずなのに。あの冷たい視線は。
 だが、そこへ、取り巻きのダモクレスがシエナを襲うと、会話が一旦途切れる。動揺する彼女はやむなく、チェーンソー剣から騒音を発して相手を牽制するのである。

 一方、オイチGGG01交戦班。
 扇を手にし、氷結の舞いを舞い踊るオイチ。
 それは前衛メンバーに浴びせかけられ、身体を凍りつかせたラピスが消耗しているところへ、回復に専念するリヴカーが詠唱を始めて。
「愛しき谷よ、遥けき故地より我が元へ至れ」
 深緑の葉を伴い吹き抜ける風がラピスに癒しをもたらしたことを確認し、リヴカーが微笑む。
「ありがとうござます」
「なに、可憐なお嬢さんを助けるのが私の勤めだ」
 飄々とラピスの返礼を受けたリヴカーは、次に、隣で前線を持たせているシルディにも癒しを振り撒いていく。
「キッチリとお返し……です」
 礼を言ったラピスはやられたらやり返すと、エアシューズの蹴りにグラビティを籠めて思いっきりオイチの身体を蹴りつける。
 キアリも負けじと星型のオーラを敵へと蹴り込むが、オイチは思ったよりも頑丈だ。
 そして、この間にもオイチは尻尾の蛇を使い、ディフェンダー陣を縛り付けていく。
「よく耐えてくれた。ここからは私が盾になろう」
 これ以上は前線が持たないと考えたアルディマが前に出る。
「いや、最後まで役割を果たすよ!」
 アルディマの好意を受けながらも、シルディは笑顔を崩すことなく、オイチへと惨殺ナイフを振り回していくのである。

 対ジュモー・エレクトリシアンに臨むメンバー達。
「さあ、行くのです」
 ジュモーが放つ攻撃用ドローンがケルベロス達の身体を傷つける。さらに、敵は手にする工具で戦うメンバーの四肢を貫いていた。
 劣勢とまでは言えずとも、ジュモー班の戦力不足を見かねた一騎がそちらへと駆けつけていた。
 オイチ戦同様、この場のメンバーの為にとカラフルな爆発を起こして鼓舞した一騎は、戦籠手を振り上げてジュモーへと殴りかかっていく。相手がジュモー・エレクトリシアンとあらば、テンションも高まって好戦的にもなろうというものだ。
 シエナは邪魔な配下に、捕食形態とした攻性植物「ヴィオロンテ」をけしかけながら、再びジュモーへと問いかける。
「Inviter……。お母様、ケルベロスとなった者にレプリカント化装置が有効か気になりませんか?」
 だが、ジュモーはそれに対する返答すらしない。
「残念ですが、あなたは私の知っているシエナではありません。……同じ姿をした、ただの他人です」
 ジュモーはあろうことかシエナも攻撃対象に入れ、自身の周囲に置いた固定砲台から青いレーザーを発射する。
「D'autres……他人……」
 それに射抜かれたダメージよりも、最も恐れていた一言を母の口によって、シエナは愕然としてしまう。
「…………」
 アシュレイはショックを受けた彼女を気遣いながらも、交戦すべく竜砲弾をジュモーに叩き込んでいくのだった。

●牽制は十分だが……
 開戦から10分あまり。
 オイチと交戦するメンバーは5人になっていた。
 食らい付いてくる大蛇の尻尾。シルディは身を張ってそれを食い止めながらも、回復役リヴカーの様子を見る。彼女は、ジュモーと戦うメンバーの回復支援にも当たっていて、こちらだけを見ている状況ではない。
「その口より溢れる紅蓮の炎にて、彼のものを守り給え!」
 ポンッ。
 そんな可愛らしい音を立ててシルディの叫びに応じたのは、小さな火トカゲ。それは姿を変え、高温の盾となりながらも、シルディを程よい暖かさで癒してくれる。
「天蓋に舞う蝶よ風となり刃となれ」
 その間に、ラピスは天空に舞う瑠璃蝶を風の刃となしてオイチを取り巻き、その身体を切り裂いていく。
 さらに、キアリが両手に携えたガトリングガンを叩き込み、敵に銃弾の雨を浴びせかけた。
 それでも、目の前のダモクレスが倒れる気配はない。
「脅威を退けるどころか……」
「突破口すら開けませんね……」
 戦いの中、リヴカーがかけてきた言葉に、ラピスが悔しそうに歯噛みする。
 本来は、ジュモーを撃破、さらに他班の支援もと考えていたが、ジュモーどころか、オイチすらも切り崩せぬ状況だ。
 こちらのチームの被害はまだそこまで大きくはないが、これ以上は盾となるシルディも持たないかもしれない。
 だが、ケルベロス達が十分に牽制したことで、ジュモーがマザー・アイリス周囲のダモクレスの指揮を行った様子はない。そちらに向かった班を十分に援護できたはずだ。
「最上幻斎を追いたかったですがね……」
 アシュレイは他班の撤退を耳にし、足並みを揃えるべく自班メンバーへと促す。
「退きましょう、時間は十分稼げたはずです」
 アシュレイが仲間へ、そして悲痛な声を上げるシエナへと促す。
 ただ、皆が消耗する中、ジュモー部隊は離脱の妨げとなり、その包囲網を突破するのは難しい。
 他チームも戦闘不能者がおり、上手くこの場を切り抜けられズにいたようだ。
 このままでは、更なる犠牲者が出てしまう。
「やむを……えんか」
 ――貴族たる者、仲間を、皆を守る為ならば。
 撤退に動き始めている他チームの動きを見て、アルディマは内なる潜在能力を暴走させて……。
「はああああぁぁぁぁ…………!!」
 竜派ドラゴニアンの彼は禍々しい竜へとその身を変え、咆哮を上げてオイチへ、ジュモーへと攻め込んでいく。
 最悪、一騎も、シルディも、自分がとは考えていたが……。いざこのような事態となると、メンバー達も驚きを隠せない。
 されど、仲間が作ってくれたこの隙を逃すわけにはいかない。
 猛然とダモクレスを襲うアルディマを残し、3チーム全てが雑兵ダモクレスを倒しつつこの場から離脱していく。
「お母様……」
 話の通じぬ母。他人という言葉を突きつけられ、愕然とするシエナは失意の中、またも仲間に連れられる形で戦線を離れていくのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:アルディマ・アルシャーヴィン(リェーズヴィエ・e01880) 
種類:
公開:2017年7月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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