「あっちこっちで色々やってくれて……イグニスーっ……」
恨めしげに目をこすりつつ、跳鹿・穫は手元の資料を見下ろした。
智龍ゲドムガサラを退けたことにより、螺旋帝の血族・緋紗雨が螺旋忍軍の『彷徨えるゲート』出現場所を伝えてくれた。この情報を元にゲートを急襲すれば、螺旋忍軍との決戦を行い、螺旋帝の血族として復活したイグニスの陰謀を阻止することができるだろう。
しかし、ここでひとつ大きな障害が発生している。去る螺旋忍法帖防衛戦の際、五稜郭の忍法帖を奪い螺旋帝の血族・亜紗斬を捕縛した『最上忍軍』が、ゲートに戦力を集めようとしているというのだ。
というのも、イグニスの命令を受けた彼らは、各勢力に潜入していた忍軍達を利用して彷徨えるゲート出現地点を制圧せんと画策している。しかも、召集をかけた戦力は載霊機ドレッドノートの戦いを生き延びたダモクレスの残党勢力、離反・死亡した王子の後釜を狙うエインヘリアル第十一王子とその私兵団、各勢力の研究により生まれた屍隷兵の精鋭部隊と粒ぞろいの面子。
彼らは『魔竜王の遺産である、強大なグラビティ・チェインの塊が発見された』、『このグラビティ・チェインを得る事ができれば、巨大な功績になる』、『これを知ったケルベロスの襲撃が予測されている』という偽情報を吹き込んだ上、『遺産の独占が望ましいが、複数勢力の参戦が予測されている為、漁夫の利に注意して立ち回るべき』と説明されており、仲間割れを上手いこと避けている状態に落とし込み、これらの戦力をドラゴン到着までの防衛戦力として利用する腹積もりであるようだ。
敵勢力の数は多く、ケルベロス・ウォーの発動なしでは軍勢を全てを倒しきれない。そこで今回は、召集中の勢力に奇襲をかける。部隊の主だった指揮官を倒せれば、来たる戦争の際に敵を弱体化させることができるはず。
シビアな激戦を重ねてしまうが、どうか力を貸して欲しい。
●
今回このチームでは、エインヘリアル第十一王子『マン・ハオウ』と、その私兵集団を相手取る。
私兵団は統率者『ペンプ・オグ』以下、数百名の歴戦エインヘリアルからなる軍勢なのだが、このエインヘリアル達の、特殊な性質を利用して奇襲をかけることになる。
実はマン・ハオウ以下有力なエインヘリアル達は、背の低い美少女を特別視しており、そういった存在が目の前に現れれば、軍勢を置いて自分達だけで特攻してくる。
理由は全くもって不明であるが、一度に戦うエインヘリアルを減らすことができる上、その相手は有力敵。討伐すれば、相手に多大な被害を与えることができるだろう。
しかしながら、有力エインヘリアルは全十二体。それが固まって襲ってくるので、危うさを秘めた作戦でもある。加えて、私兵団隊長『ペンプ・オグ』は、少女よりも『マン・ハオウ』の安全を優先するため、襲撃者の強さ如何によってはマン・ハオウと共に撤退しようとすることもある。なお、その他の私兵団員は各個撃破が可能なようだが、戦闘力が高いので一体につき二チームが連携して戦うのをおすすめする。
ちなみに、『マン・ハオウ』以下有力なエインヘリアルではなく、彼らが出払った後の軍勢を狙うのでもいい。こちらには残された最上忍軍所属の最上・幻夢の姿もあるので、こちらの撃破に動くのも手だ。
「波乱万丈な展開が続くけど……もう少しでイグニスとも決着だ! 頑張って踏ん張って!」
参加者 | |
---|---|
叢雲・宗嗣(夢謳う比翼・e01722) |
ブリキ・ゴゥ(いじめカッコ悪い・e03862) |
斎藤・斎(修羅・e04127) |
ソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957) |
レオン・ヴァーミリオン(リッパーリーパー・e19411) |
ティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467) |
響命・司(霞蒼火・e23363) |
アイシャ・イルハーム(七星極光・e37080) |
茂みの中でレンズが砕ける。響命・司(霞蒼火・e23363)は手の中で壊れた望遠鏡を投げ捨て即座に跳び下がった。
「バレたぞ」
「嘘っ!?」
仲間とバックジャンプしながら叫ぶアイシャ・イルハーム(七星極光・e37080)。直後すさまじい熱風が吹き荒び、周囲の木々がまとめて炭化。熱波をしのいだ叢雲・宗嗣(夢謳う比翼・e01722)はマントめいて背中を燃やし、飛びかかってくる二人の剣士を見て抜刀!
「ヴァーミリオン、霧っ!」
「はいよ」
レオン・ヴァーミリオン(リッパーリーパー・e19411)が指を鳴らすと光る霧が炭化した森を包み込む。空中のナウ・ソーンは隣のペデル・ケインに目をやった。
「なんか出たぜ、ペデルの旦那」
「ハン!」
二人の剣が禍々しいオーラをまとう! 光る霧から炎に包まれた宗嗣と斎藤・斎(修羅・e04127)が飛び出した!
「篁流格闘術……」
「参ります」
炎の軌跡を描く二人に剣士は不敵な笑みを浮かべる。そして大剣を縦一文字に振り切った! 黒斬撃を紙一重でかわした宗嗣と斎は一気に肉迫、飛び蹴りと横薙ぎ斬撃を放つ!
「『吹雪』!」
「ふっ!」
ペデルの胸を蹴りが打ち、ナウは腕で大剣を振り払う! 枯れ果てた大地に着地する騎士に向かって大鎌を構えたブリキ・ゴゥ(いじめカッコ悪い・e03862)が蛇じみてのたうつ黒い鎖を連れて特攻! 槍投げの要領で燃える鎌を投げつける。悠々と首を回すナウ・ソーン!
「へっ。下らねえぜ」
長大な剣を腕一本で振るい鎖と鎌を一閃の元に破壊。だがブリキは白い歯を見せて笑った。
「ここは止めます! ともかく幻夢を!」
「はい!」
ナウの隣をティ・ヌ(ウサギの狙撃手・e19467)と司、アイシャが突っ切り駆け抜ける!
「旦那!」
「わかってるよ!」
瞬時に身をひるがえすペデルの襟を空中浮遊する手甲がつかむ。光る霧から上半身だけ出したソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957)はピンクの瞳に油断なく二人を捉えた。
「ちょっと待ちなさい? 話があるのだけれど」
肩越しに振り向いたペデルは舌打ち。すぐさま森の奥に向き直って叫んだ。
「ユネク! おいユネク! そっちに三人行ったぞ! 止めろッ!」
遠くから聞こえる声に、ユネク・シザリスは白髪をなでつける。疾走してくる三人の目線を読むと傍らの最上・幻夢に見もせず言った。
「おいガキ。お前に客だ。手伝え」
「承知したでゴザル」
少し嫌そうな顔で、幻夢は鎖でつないだ小刀を抜く。ピンクのライフルを構えるティ・ヌにナイフの二刀流を手にした司は前方に刀身を向ける。
「目標確認。……突入タイミングは任せた」
「了解、スリーカウントでお願いします。三、二、一、GO!」
銃声と共に幻夢が一閃! 真っ二つに裂けた銃弾を背にした彼が司のナイフに映り込み、ナイフと共に発火した!
「グワーッ!?」
「イヤーッ!」
狙いすましたアイシャの蹴りを赤い大剣が受け止める。即座にバク転して離れる彼女。ユネクは大剣のヒビを脈打たせ、突っ込む司に横薙ぎ斬撃! 司はふわりと浮いて剣を回避しナイフを投げた。それをキャッチするユネクの手を蹴り幻夢は司を飛び越える。小刀を繋ぐ鎖が彼の首に巻きついた!
「ぐァ……!」
首吊りめいて引かれる司に振り向き幻夢は二刀で刺しに行く! だがその手首を弾が貫き光を解放、ピンクの鎖で両手を縛る。アイシャが回し蹴りで小刀の鎖を断ち切ると、ユネクは舌打ちしつつ脈打つ剣を地面に刺した!
「ハオウ私掠団ッ! あの半端に女々しいクソガキを守れ!」
ユネクを中心に炎が爆発! 周囲の木々をなぎ倒しては焼き払い、焦土に変える旋風がペデルとナウの追い風になる。炎熱をまとって急加速した二人を剣と宗嗣の剣とソフィアの浮遊籠手が衝突! だが暴走特急めいて止まらない!
「ソウジくん下がんなさい! ブリキくん!」
「承知しました! 頂きまァす!」
宗嗣が横っ飛びで避けると同時にブリキがペデルに飛びかかる。大口を開け頭から突進する彼をペデルは屈んで避け大剣の柄で腹を突く! 背後に飛んでいくブリキ!
「なんだ、大したこたねえ……」
「止まれ旦那ァッ!」
「んッ!?」
ナウの制止にペデルは思わず前を見る。そこでは業火に燃える大剣を振りかぶった斎が真正面から迫っていた!
「遠慮はいいわ。後ろはできる限り支えとくから思い切りやっちゃいなさいな!」
「はいっ!」
大剣の腹を盾にするペデルとナウ! 紅潮した頬を火の粉で照らした斎は刃の炎を推進力に爆炎の剣を打ちつける!
「無銘・焔舞ッ!」
二本の大剣の腹に衝撃が走った。剣を盾に踏ん張る二人の片足に黒と白の鎖が巻き付き、足首を強く強く締めあげる。斎の後方、霧に潜むレオンは笑顔で鎖を握り込む!
「砕けて沈め。闇のような魔霧の奥に……」
二人は大剣と足首を軋ませ、不敵に笑ってその場で跳躍! 空ぶる斎を放置し光る霧へ滑空する二人の背後に炎のトンボ羽を広げた宗嗣。燃える刀を大上段に掲げて急降下!
「篁流剣術……」
「ナウ、肩貸せ」
「あいよ」
ペデルは足の鎖を断ち切りナウの肩をつかんで乗っかり、片足で跳ぶ! 飛来するペデルめがけ宗嗣は刀の炎を解放。爆炎の刃の嵐が降り注ぐ!
「『散月』ッ!」
「ハァーッ!」
刃群にかち込むペデルの一閃! 全弾まとめて裂かれ火の粉となって霧散する炎を突っ切りペデルは下段からの斬り上げ宗嗣の胸と肩口を割る。鮮血を引きながら反転するペデルの大剣!
「がッ……!」
「もう一丁だ!」
一方地上で斎がブリキを乗せた剣を持って高速回転。ハンマー投げめいて振り切った剣がブリキを勢いよく射出、ペデルへ一直線へ吹き飛ばす! 傷を押さえて羽ばたく宗嗣を一旦見逃しペデルは飛んでくるブリキの額に大剣の柄を叩きこんだ!
「ふんッ!」
「ぐぬぉ、おおおおおおおッ!」
額を砕かれながらもブリキはペデルの両手をつかむ。そして歯を食いしばって目を見開いた。
「魔竜王の遺産の話は、真っ赤な嘘ですッ!」
「……あァ?」
その下で、ナウは光る霧を剣を振るって吹き飛ばす。続いてまき散る金貨をうざったそうに払う懐にレオンが素早く潜り込む。鎖を巻いた拳でアッパー!
「よっと!」
「うおっ」
身を反らして避けるナウの真横にレオンはスライド。剣持つ腕を潜り抜け脇腹を撃ちローキック! 反撃の回転斬を屈んでかわすとバク宙を繰り出すナウを追いかけ間合いを詰める。思案顔で剣を上げるナウの腕をソフィアの浮遊籠手が捕まえた。切れた腹に手を当てながら、ソフィアは宙のナウを見上げる。
「あなた達が守ってるモガミのゲンム君だけど。あの子、あなた達を謀ろうとしているだけよ」
「……。いよっと!」
ナウは浮遊籠手を払って着地。彼と背中合わせにペデルが地を踏みしめる。
「本当の目的は、別の連中とぶつけて露払いにすること。あわよくば、コギトエルゴスム化したあなた達を回収して捕虜にしようって腹よ」
「五稜郭での戦いで捕らえた、最上の捕虜から得た情報です。少々手荒に聞きだしたので、まず間違いないでしょう」
二人を挟み、ブリキとソフィアは油断なく目を光らせながら説得に入った。
「第一、本当に魔竜王の遺産を見つけたとしてもあなた達に分ける理由なんて向こうにはない。目下の敵を潰し合わせるための方言なのよ。マン・ハオウは承知の上で出陣しているようだけど……王子のことを思うなら、本当に討つべき敵はわかるわよね?」
「あなた達は最上の捨て駒にされようとしているのです。大事な命をドブに捨てる事はないと、愚考しますが」
しばしの沈黙。二人の剣士は表情ひとつとして変えず、肩越しにアイコンタクト。
「……だ、そうだ。どう思うよ、ペデルの旦那」
「それ本気で聞いてんのか? ……ユネク! ガキはどうなった!」
いつしか周囲を覆った霧に向かってペデルが叫ぶ。霧の外側、焦土に立つユネクは目だけで辺りを走査し幻夢と彼に追いすがるアイシャを認めた。アイシャが鋭い掌底を打つ!
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
幻夢は素早く半身で回避。胴体狙いの小刀突きをバックフリップでかわすアイシャをトゲ鉄球が打ち据えた!
「ンアーッ!」
直後モーニングスターとハルバードを構えたエインヘリアルが特攻! アイシャの背にとりついた軍服の子猫が彼女を引っ張り緊急離脱、二体の攻撃をすんででかわし癒しの風を起こして治癒する。その奥で幻夢は目を見開いて急停止。その足元に鉛弾が突き刺さる! 押し寄せる軍勢から飛び退きながらティが幻夢を狙撃した!
「っ!」
反射的に弾丸を斬る幻夢! 同時にアルシャへ迫る二体へ突っ込んだ司が両手のナイフを腹部に打ち込む。
「砕けろ」
二体の腹が蒼炎を噴いて爆発し巨体を後ろへ跳ね飛ばす。その間をすり抜けた幻夢の刺突を司はナイフのクロスガードで防御! 蒼炎をまとったナイフと二刀の小刀が火花を散らして斬り結ぶ! 数合の打ち合いを経て至近距離での鍔迫り合い。司はナイフを押し込みながら気だるそうにつぶやいた。
「全く、最近はえらくハードだ。ニンジャだのドラゴンだのエインヘリアルだの……のんびりタバコを吸う事も出来ん」
「それはこっちの台詞でゴザル! ここ一番でいちいち邪魔をしてくれて!」
力を込めてにらむ幻夢を、司は正面から冷たく見返す。
「だからまあ、厄介事はさっさと片付けるに限る。……テメェの首は頂いてくぞ」
「やってみるでゴザルッ!」
剣が弾かれ両者が離れ、司の左右に拳を構えたエインヘリアル二体が挟撃! 司が鉄拳を屈み回避すると同時に跳躍したアイシャは回し蹴りで二体の頭を蹴とばした!
『グワーッ!』
「さあさあ覚悟して頂きますよっ! 末期のハイクを考えてください!」
「アイシャさんっ!」
銃声が鳴り二人に飛びかかった鉄槌のエインヘリアルが空中転倒! やや離れた地点でダガー持ち兵士の猛攻を掻い潜りながらティ・ヌが叫んだ。
「一度合流を! このままでは危険ですっ! ……プリンケプス!」
ハサミじみた斬撃をバク転回避し子竜に弾丸を投げ渡す。それを飲んだ相棒の腹が膨張、ダガー持ちに向かって発射! ダガーが弾を斬り飛ばす隙にバックジャンプしながら幻夢を撃つ。同じく反撃しつつ下がる司とアイシャを眺めるユネクを再度ペデルの声が呼ぶ。
「おいユネク!」
「生きている。問題はない」
霧の内部で素っ気ない返事を聞いたペデルはナウとアイコンタクト。そろってふてぶてしい笑みを浮かべる。
「ったく、誰かいると思ったらアレ狙いかよ。ま、別にどうでもいいけどよ。ウチの王も怪しんでたしな」
不穏な空気を感じて身構える宗嗣と斎。それを肩越しに一瞥したナウは二の句を継いだ。
「だが、俺達はマン・ハオウ様に、あのエセ幼女と待っていろと命令された。命令は……守らねえとなッ!」
二人の大剣がかすみ剣風が周囲に吹き荒れた! 光る霧がまとめて消し飛びブリキとソフィアをかばったヒガシバが飛ぶ。真っ二つにされたミミックは消滅、胸を裂かれ倒れるブリキにペデルは大剣を突き刺しに行く!
「死にな」
「篁流射撃術!」
ペデルの炎が点灯。宗嗣はペデルに向けた手を握る!
「『暴れ梅雨』ッ!」
ペデルにまとわる火種が爆発! そこへコートの胸元を押さえて跳んだ斎が地獄車めいた炎のチャクラムと化して落下するも爆発から出た大剣が刃を突いて強制停止。空中で剣を弾かれた斎の胴を横薙ぎにするペデルをブリキがタックルで阻む!
「決裂したなら仕方ありません。お命、頂戴致しますッ!」
「大きく出たなァ……オラッ!」
鎧の足が四角い顎を蹴り上げた。横回転に移行し打ちかかる斎の剣を防ぐ背後で、レオンはナウの連続斬をすんでのところで後退しながら回避する! 切っ先に触れ裂かれるコート!
「ほらほらどうした! さっきの威勢はどこ行った!?」
リーチを生かして攻め立てるナウ。一方のレオンは全身に裂傷を負いながらもレオンは獰猛な笑みを浮かべて突きをかわした。空ぶる剣の切っ先を、ソフィアの浮遊籠手がつかんで引っ張る。
「今よ! 一発殴ってやりなさいッ!」
「喜んでやるさマドモアゼル!」
レオンは焼けた地面を蹴ってダッシュ! 影から伸びた黒白の鎖を腕に巻きつけ、ワン・インチ距離から拳を繰り出す!
「砕け散れッ!」
ナウの腹に拳が当たり鎖が巻き付く。だがナウはその場でステップを踏み剣を引いて一回転、レオン側頭部を柄で殴る! ソフィアが柏手を打ち紅蓮のオーロラを展開。戦場を包む光の被膜は斬撃めいた炎に裂かれた! 炎に投げ出されもんどりうって転がるティ・ヌを鎖鉄球が上から強襲! プリンケプスの体当たりで軌道が逸れた鉄球を横に転がって避け、銃を連続で発射した。大剣で銃弾を防ぐユネクにアイシャは稲妻じみたかかと落としで襲撃!
「イヤーッ!」
ユネクは大剣の腹を掲げて難なくガード! 地を這うように突進した司の蒼炎の拳を最小限の動きで回避し赤く脈打つ刃で斬り払う。猛烈な爆風が二人を打ち据え、奥の六人もろとも吹き飛ばした! ユネクの片手に猫めいて首をつかまれた幻夢が暴れる。
「は、離すでゴザル! 着物のえりが伸びるでゴザルぅ!」
「黙れ。騒げば耳を斬り落とす」
大人しくなる幻夢を無視し、赤い刃を肩に担ぐ。軍勢を背後に控え、ユネクは怪訝そうな目を仲間に向けた。
「やけに長いこと戦っていると思ったが……遊んでいたのか?」
挑発的かつ冷静な問いに、ナウは胴の鎖を引き千切って投げ捨て答える。
「お前だって似たようなもんだろ。そっちこそ何人がかりだ? たかだか三人、なんで狩れない」
「そっちもたかが五人だろう」
「その赤い目は節穴か? こっちは二人に対して五人だぞ。つか、ダウの爺さんはどこ行った。戻ってきてなかったか?」
「知らん」
論争を始めるエインヘリアル達を見ながら、斎は上目遣いに問いかける。
「ご無事ですか?」
「何発かもらったが、まぁ無事だ。向こうもだがな」
軍帽の子猫に傷をふさいでもらいつつぼやく響命の隣で、レオンとソフィアはユネクの手にぶら下がった幻夢を見つめた。
「ちょっと不味いかなー。結構奥に数いるみたいだ」
「敵も多いし、一度撤退した方がよさそうね。ゲンム君があれじゃ話もできないと思うし」
「致し方なし、ですか」
「……クヤシイっ!」
ブリキとアイシャが渋い顔でつぶやく。一方、なおも不毛な言い争いを続ける同僚を前に、ペデルは呆れたように口を挟んだ。
「なんでもいいがよお二方。そろそろウチの殿が戻る頃だろ? いい加減……」
「篁流射撃術!」
「あん?」
振り返る彼の前で宗嗣は両腕から炎トンボの群れを放出! エインヘリアルめがけて飛んだそれらは連鎖爆発を引き起こす!
「『外待雨』ッ!」
「うおッ!」
炎が軍勢を覆うと同時、八人はレオンの霧に身を隠す。爆炎が剣圧で吹き飛んだ時には、既に彼らの姿はなかった。
作者:鹿崎シーカー |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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