甘き果実は夏の誘惑

作者:小茄


「最後の夏やのになぁ……」
「夏季講習一色よな」
 ため息混じりに会話を交わしつつ、夜道を歩いているのは夏服姿の男子高校生2人組。
 受験生でもある彼らの夏に、胸をときめかせる機会は訪れそうに無かった。
「……うふふっ。ねぇ、そこのキミ達……こっちにキて?」
 2人が何度目かの深いため息をついた直後、どこからか聞こえて来るのは若い女性の甘ったるい声。
「え?」
「コッチよ」
 声はどうやら、道を外れた雑木林の中から聞こえてくるらしい。男子2人は顔を見合わせたが、相談するまでもなく「取りあえず様子を見てみる」方針で一致した。
「えっと……誰か居るんで――カハァッ!?」
 先を歩いていた青年が、突如奇妙な声を上げて硬直する。
「え、何があっ……とわぁっ?!」
 続く青年が固まった友人の肩越しに見たのは、ほぼ全裸のダイナマイトボディを晒す女。と言っても肌は緑、身体は樹木と一体化している様にも見える。
「ほらぁ、早く……キて?」
 手招きする緑肌の女。いかに思春期の男子とは言え、こんな妖しい誘いに乗ってしまって良いのだろうか。彼が逡巡そうした時……。
「手触り最高や……永遠にこうしてられるわ。それにこのお姉さん、めっちゃ良い匂いするし」
「イイのよ、永遠にこうしていても。ワタシもカワイイ男の子は大好きだもの」
 友人は既に、女の胸の中にその身を委ねていた。それどころか、胸に顔を埋めて感触を堪能していた。
「お、お前な!」
「さぁ、アナタも……」
 見れば、女は1人だけではなかった。
 友人が抱きついている女よりも少し顔立ちは幼く、体つきもやや見劣りするが、それでも十分にスタイル良好と評価して良いボンキュッボン。
 それが自分を見つめて、手招きしている。
「お、俺かて……男の子や!」
 友人に先を越された焦りか、或いは彼もまた眼前に揺れる二つの果実に魅了されたか、後先考えずに彼女の胸へとダイブしたのだった。


「……と、このまま行けば彼らは色々な物を絞り取られた挙句、秘部を露出した無様……じゃなくて無惨な死体で発見される事になるわ」
 ヘリオライダーの説明によれば、大阪城にほど近いこの雑木林に出現したのは、攻性植物「バナナイーター」。
 男性を魅了して殺害し、グラビティ・チェインを奪い尽くす恐ろしい存在だ。
「可哀相にも程があるっす。何としても助けなきゃいけないっすね……」
 こうしたバナナイーターとの戦いを経験して居り、警戒を強めていた久遠・翔(銀の輪舞・e00222)。
 女性に弄ばれ玩具にされる男性の悲哀もまた、十分に知っている彼である。
「と言う訳で、今回の任務はこのバナナイーターの撃破よ」
 この様にして集められたグラビティ・チェインは、攻性植物の新たな作戦に用いられる可能性も高い。未然に阻止するに越した事は無いだろう。
 幸いと言うべきか、このタイミングであれば高校生がバナナイーターの毒牙に掛かるより先に、現場の雑木林に到着する事は可能だと言う。
 つまり、高校生の代わりにケルベロスが囮となって彼女(達)を誘き出す作戦も考えられる。
「ただしバナナイーターは、『15歳以上の男性』を標的として出現するわ。女子の男装やエイティーン等の変装は通用しないから気をつけてね。身体をチェックされたらバレちゃうし」
 もしケルベロスの中に条件を満たす者が居れば、囮役1人につき1体のバナナイーターを出現させる事が出来る。
 ただしその後の戦闘を考えると、最大で4体程を目安とするのが良いだろう。出現させすぎて敗北する様な事があっては本末転倒だ。
「もし囮役をする人が居なかったら……その時は、予知の通りに男子高校生に囮を勉めて貰うしかないわね」
 これも幸いだろうか、バナナイーターが捕食した対象を即座に殺めてしまう事は無い。
 囮役には3分程耐えて貰い、一気に戦闘へ突入する形が良いだろう。
「なんで3分かと言うと……」
「バナナイーターは拠点である大阪城から、地下茎を通じて現場に送られているみたいっす。その3分以内に危険を察知すると、即座に城まで逃げられてしまうっす」
 と、ヘリオライダーの言葉を引継ぐ翔。
「バナナイーターの魅了はあなた達には通じないから、囮役は誘惑された様なフリをする事が大事かも知れないわね」
 彼女達は条件さえ満たせば、ケルベロスの男性でも問題無く獲物と看做すが、さすがに魅了を受け付けないとなれば一般人で無い事に気付いてしまうだろうから。

「バナナイーターは自身の樹木になっている果実を投げつけるとか、抱きついて胸で窒息させるとか言う、ちょっと色物っぽい戦法を取るわ。戦闘力は決して高くないけれど、変則的な攻撃には注意が必要かも知れないわね」
 特に多感な男子は。
「それと、彼女達は言葉を喋るけれど、その機能は相手を誘惑する事に特化していて、例えば交渉だとか情報を引き出すみたいな事は出来ないわ。その点も忘れないでね」
 ともかくも、平穏な暮らしを取り戻し始めた大阪の人々を、再び悲劇に見舞わせる訳にはいかない。
「いかなる犠牲を払おうとも、きっちり始末して来てね!」
 そんな微妙に縁起でもない言葉で、ブリーフィングは締めくくられたのだった。


参加者
槙野・清登(棚晒しのライダー・e03074)
伊・捌号(行九・e18390)
立華・架恋(ネバードリーム・e20959)
アイリス・フォウン(金科玉条を求め・e27548)
岩櫃・風太郎(閃光螺旋の猿忍ガンナー・e29164)
ベルベット・フロー(電光石火の美少女ビショップ・e29652)
キアラ・エスタリン(光放つ蝶の騎士・e36085)
人首・ツグミ(絶対正義・e37943)

■リプレイ


「最後の夏やのになぁ」
「夏季講習一色よな」
 ため息交じりに夜道を歩いてくるのは、塾帰りの男子高校生2人組。
「そこのお2人さん、ちょっと良いっすか?」
「えっ?」
 と、そんな彼らを呼び止めて歩み寄るのは、伊・捌号(行九・e18390)。
「かくかくしかじかで、ここは危険なんで速やかに避難して欲しいっす」
 突如現れた修道服に、ギョッと身を強張らせた男子達だが、それが同年代の少女である事に気付くと大人しく耳を傾ける。
「……」
「……聞こえてるっすか?」
 反応の薄い2人の顔を覗き込む捌号。
「お、おう?!」
「……え、って事は、ケルベロスなん? めっちゃ可愛いやん。高校生? SNSとかやってる?」
 意を決した様に、猛アタックを始める男子。塾三昧の夏に、微かな潤いを求めているのだろうか。
「さっさと避難しろって言ってるんすよ」
「いったぁ!」
 しかし当然の如くスルーされ、お尻を蹴飛ばされて退散して行くのだった。
「捌号さん、そろそろ始まりますよ」
「了解っす。……ラブフェロモンも諸刃の剣っすね」
 去って行く高校生の後ろ姿と、他の一般人が居ない事を確認しつつ告げるアイリス・フォウン(金科玉条を求め・e27548)に応え、捌号も雑木林の中へ。

「うふふっ……ねぇ、キて……こっちに……」
 一見鬱蒼と木々の生い茂る雑木林だが、聞こえてくる声に導かれると次第に視界が開けてくる。
「あちらさんもお待ちかねみたいだし……風太郎君、そろそろ行くかい?」
 先頭を歩む槙野・清登(棚晒しのライダー・e03074)は、最後の確認とばかりに声を潜めて問う。
「左様でござるな。では、ベル殿……愛銃を宜しく頼むでござるよ」
 これに頷くと、二挺の銃を差し出す岩櫃・風太郎(閃光螺旋の猿忍ガンナー・e29164)。
 その表情は穏やかな微笑を湛えており、いわば覚悟を決めて死地へと赴く戦士のそれであった。
「アタシ信じてるよ……自分自身に負けないって」
 対照的に、銃を預かるベルベット・フロー(電光石火の美少女ビショップ・e29652)は、祈るような表情(頭部を獄炎に包まれている彼女だが、雰囲気的にそう窺える)。
 そしてこの光景は遥か古代より繰返されてきた、戦場へ向かう男とそれを送り出す女の姿であるのかも知れない。
「囮役、辛いでしょうけど2人とも頑張って……!」
 同様に、ハラハラと心配そうな表情でエールを送る立華・架恋(ネバードリーム・e20959)。
 今回の作戦において、バナナイーターは男性のみをターゲットと看做す。それ故、囮役を務める事が出来るのは男性である2人のみ。
 女性陣は木陰に身を潜め、その奮闘を見届けるしかないのだ。
「ねーぇ、はやくぅ……焦らしちゃイヤぁん」
 さて、そうこうしている間にもバナナイーターは胸の谷間を強調し、たふんたふんと揺らして挑発を始める。
「ドーモ、エイプニンジャでござ……ヒャッハー! ぷるんぷるんでござる!」
 猛然とダッシュし、伝説的怪盗の孫よろしくダイブする風太郎。バナナイーターの豊かな乳房に顔を埋め、その感触をこれでもかと満喫し始める。
「コレは事案発生かッ? いいのかコレ! ……いや、考えるな、感じるんだ!」
 若さのまま突っ込んで行った風太郎とは対照的に、逡巡する素振りを見せる清登。その辺は大人としての思慮深さを演出するが、結局は女体へとダイブ。
「は、始まりました。3分、ですよね」
 生真面目なキアラ・エスタリン(光放つ蝶の騎士・e36085)も、場の空気に流されて緊張の面持ち。
 3分と言えば短くも思えるが、その間、完全に敵に身を委ねるとなれば気は抜けない。
「スタートしますよーぅ」
 こちらは普段通り余り緊張感を感じさせないが、カウントダウンタイマーをスタートさせる人首・ツグミ(絶対正義・e37943)。
「あとは時間まで囮役に愉し……頑張ってもらいましょうかーぁ」
 言いかけて、さり気なく訂正する。
 そう、いかにバナナイーターが男性好みのワガママボディであれ、命懸けの任務中にそれを愉しむ余裕は無いだろうから。
「バブみを感じる! なんたる極楽!」
「うふふ、いっぱい甘えても良いのよ?」
 無い……筈だが、そこはさすがに忍者である風太郎。おっぱいに身を委ね、その圧倒的母性に酔い痴れる(演技をする)。
「ここから先はどうしたら良いんだッ! 教えてエロい人ォッ!? ……べ、べつに魔法使いとかじゃないし!」
 一方の清登はと言えば、選択肢もコマンドも無い状態での女体との遭遇に、やや混乱状態。
「お姉さんに、ま・か・せ・て♪」
 しかし、そんな彼すらも優しくリードするバナナイーター。
 するすると、2人の服を肌蹴させ、或いはその隙間から手を滑り込ませてゆく。
「そ、そんな所まで!? これが……この世の春か!」
「その様に激しく上下に!? ほとんど犯罪行為でござる!」
 2人に裸身を密着させながら、医療行為(多分違う)を施し始めるバナナイーター。
「バナナ……イーター……そ、そういうことね……! ええ、し、知ってたわ!」
 この光景には思わず赤面して俯く架恋。
 13歳のサキュバスである彼女は、一見するとクールで大人びた印象だが、意外と純粋な様子。
「これでバナナイーターを相手にするのは二度目ですが……色んなものが吸い尽くされるとはどういうことなんでしょう……?」
 こちらも生真面目で清楚な印象のキアラだが、特に表情を変える事無く状況を見届ける構え。
 発育も良く豊満なスタイルを誇る彼女には、バナナイーターの身体もさほど物珍しいモノでは無さそうではある。
「うーん、男の人ってこういうの好きなのか」
 一方、不思議そうに小首を傾げつつ呟くアイリス。
 自身も色香漂うオトナの女性と言ったイメージだが、妖艶な見た目に反して色恋には疎い様子。
「……」
 ベルベットはと言うと、なぜか彼らの奮闘ぶりをスマホで撮影中。その映像は、レイティングシステムに照らし合わせれば、少なくともR-15くらいにはなりそうな予感がする。
「ふむふむぅ……これが男性を籠絡する術と言う訳ですねーぇ」
 興味本位や好奇心とは別に、知識としてラーニングしようとするツグミ。どこまで参考になるかは不明だが、意外とスタイルの良い彼女のこと、身に付ければ武器になりそうではある。
「ううっ……ダメだよ、そんな所……あぁっ!?」
「そ、それ以上いけない!」
 女性陣が様々な反応を示している間にも、バナナイーターの恐るべき技というか術というか、そんなこんなで切羽詰まり始める男子2人。
 このままだと、後々の戦闘にも支障を来してしまうのではないかと思われた丁度その時。
 ――ピピピピピ。
 鳴り響く電子音。
「あ、終わったっすか? んじゃ、ちゃちゃっとお仕事すましちまいますか」
 女性陣の中にあってひとり、起こっている事に興味を示さずアイスを囓っていた捌号。
「行くよ!」
 ベルベットも録画を中止し、猛然とバナナイーター目掛け突進。
 戦いの幕は切って落とされた。


「2人を離せっ!」
「な、なに?」
 文字通り火の玉と化して間合いを詰めたベルベット。
 まだ状況を把握しきれていないバナナイーターへ手を翳すと、灼熱の炎でその身体を包み込む。
「ぎゃあぁっ!?」
「銃を!」
「ザッケンナコラー! 痺れて砕けろッ!」
 怯んだバナナイーターの胸を脱した風太郎は、空中で銃を受け取るが早いか、眩く迸る光線を放ち、彼女と一体化した枝やツタをなぎ払う。
「こっちも、行くよ行くよ!」
 間を置かず、アイリスの腕から放たれるケルベロスチェイン。
 バナナイーターの身体へと絡みついてその動きを制限する。
「危ない所だった……行くぞ相棒ッ!」
 同様に囚われの身から脱した清登。ライドキャリバーに突進の合図を出しつつ、得物である改造スマートフォンを構える。
「最近のスマホの薄さを舐めるなよ……!」
「ぐっ、あぁぁっ!?」
 携帯即斬(ワンギリ)はあたかも居合の如く、すれ違い様に敵の脇腹を切り裂く。
「邪魔、しないでよねぇ……っ!」
「絶対に絞り取ってやるんだから。ただし、さっきみたいに優しくはして上げないわよ!」
 自身と一体化した樹木に生る果実を囓り、体力を回復するバナナイーター達。これが自分達を倒す為の罠である事を理解した様だ。
 先ほどまでの甘ったるい声色とは打って変わって、湧き上がる殺意を隠さない。
「そっちは圧倒的に不利っすけどね。エイト」
 捌号はそんな殺意をさらりと受け流し、ボクスドラゴンのエイトに属性インストールを指示。自らは魔眼によってバナナイーター達を見据える。
「架恋さん、援護するっす」
「OK、行くわよレイン」
 捌号の合図に応じるのは、既に助走の体勢に入っていた架恋。ウイングキャットのレインに援護を命じつつ、自らは空高く跳躍。
「はぁっ!」
「くうぅっ!?」
 ツタや枝を重ねて防御姿勢を取るバナナイーターだったが、架恋の繰り出す流星の如き蹴りにそれらをへし折られ、尚も強烈な衝撃によって表情を歪ませる。
「……こうなったら、疲弊してる男からやるわよ」
「解ったわ、姉様」
 邪魔者を排除してから搾り上げるプランを破棄して、先に男子を始末する事にしたらしいバナナイーター。
 一斉に触手を伸ばし、比較的近い場所の風太郎を捉えんとする。
「くうっ!」
 さすがは忍者という身のこなしで、ヒラリとこれを回避する風太郎。
 しかし触手の数は無数、次第に逃げ場は無くなってゆく。
「あはは! さぁ坊や、続きをしましょう!?」
「そうはさせません! 今癒します。蒼の抱擁にて、再び立ち上がる力を!」
 キアラの光翼から発せられる、蒼き清浄の光。癒しを告げる蒼き抱擁(ヒーリング・ブルー)は風太郎の身体を包み、体力と耐性を高める。
「小賢しいっ! まだまだよ!」
「ではこちらも……慈愛の想いに溢れた素敵なヒールの実行ですよーぅ♪ 誰の想いだったかは忘れちゃいましたけどねーぇ」
 尚も執拗に風太郎を追撃するバナナイーターだったが、今度はツグミの対応。清らかなる罪人の手(キヨラカナルザイニンノテ)が、瞬く間にその傷を癒す。
「ぐぐっ」
 策の裏を掻かれた事に加え、ケルベロスの圧倒的な戦力と治癒力に優れた重厚な布陣。
 戦闘に特化している訳では無いバナナイーターにとって、この状況を打開する事は至難のはず。
「こんな奴らに、やられるわけには!」
 彼女の足下から伸びた茎は急速に成長し、ハエトリグサの如き捕虫器を出現させる。
「二度も捕まるか!」
 が、清登はとっさに高くジャンプしてこれを回避。
「甘いわ!」
 バナナイーターは口の端を歪め、その捕虫器を今度は空へ向かって急成長させる。植物というより、まるで得物を狙う蛇の様だ。
「それはこっちのセリフよ!」
 言うが早いか、黒槍を横薙ぎに振るう架恋。茎が断ち切られ、捕虫器はどさりと地面に転がり落ちる。
「清登さん、合わせるっすよ」
「おう!」
 空中から体重を乗せた物理殴打を仕掛ける清登に呼応して、妖精弓を引き絞る捌号。
「くらえッ!」
「ぎゃうぅっ!?」
 心射る矢と、改造スマホの角が容赦ない波状攻撃となってバナナイーターに直撃する。
「さ、そろそろトドメかな!」
「ぐ……ま、まだっ!」
 マインドリングによって形成された光の剣を手に、剣舞を踊る様に飛び込むアイリス。
 雷を帯びた霊刃は、必死の防戦を展開する攻性植物を断ち切りながら圧倒してゆく。
「今度は自分達も攻撃しますよーぅ」
 スローな口調とは裏腹、音も無く背後に回り込んだツグミは、バナナイーターの背に流れる気脈を人差し指で突く。
「なっ、ぐ……」
「行きます!」
 キアラの召喚した御業から放たれる浄化の炎弾。
「ギャアァァーッ!」
 石化した様に動きを鈍らせたバナナイーターに回避する術は無く、真紅の炎に呑み込まれる。
「……ね、ねぇ? さっきの続き、しましょ? ほらぁ、アナタ達も中途半端はいやでしょう? 次は最後まで……」
 仲間を失って絶体絶命の状況になると、再び猫なで声で色仕掛けを始めるバナナイーター。
 しかし効果があるはずもなく。
「アタシの炎をおすそ分け♪ 熱いやつ、お願いします!」
 ベルベットが再び放ったインフェルノ・リアクターは、今度は癒しと破魔の炎となり、風太郎の身を包む。
 そのまま空中で二挺の言霊銃を変形合体させ、携帯型決戦用閃光螺旋杭打ち機SUSANOWOを手にする風太郎。
「な、何っ!?」
「これが貴様を裁く、地獄の一撃でござる! 銀河の輝きを螺旋に変えて、裁きの光で貴様を貫くッ! ギャラクシィーブライトォッ! ニンジャッ! スパイラルドライバァァーッ!」
 銀河光の螺旋は巨大な杭となって、燃えさかりながらバナナイーターの心臓部を貫く。
「アバーッ!!?」
 断末魔の悲鳴を響かせながら、女型の攻性植物は爆発四散したのだった。


「恐ろしい敵だったわね……清登も風太郎も、大丈夫だったかしら」
 残り火の始末やヒール等の処理を済ませ、一同を見回す架恋。
「あぁ、お陰さんで。ガワだけ繕った誘惑じゃ熱くはならんさ……人の心ってヤツを学んで出直して来い」
 架恋に片手を挙げて応えると、ニヒルな笑みを浮かべてバナナイーターの燃えカスへ告げる清登。
「清登さん、鼻血めちゃめちゃ出てるっすよ」
 そんな彼をジトっと見上げつつ、指摘する捌号。
「ぐふっ、まぁとにかく……青少年諸君、こんなけしからん誘惑に囚われず、健全な道を進め!」
 未だ春遠き四十男は、難を逃れた高校生達へ、或いは全ての男性に対する教訓かも知れぬ激励を贈る。
「いや全く、けしからん敵でござったなぁ」
 柔らかい感触を思い出しながら、うんうんと頷く風太郎。
「ふふっ」
「ん? ベル殿?」
 笑みを浮かべ、背後からぎゅっと抱きつくベルベット。
「本当に演技だったのか確かめたげる! 邪念がなければ熱くないよ♪」
「いや、あれは演技でござる! 全ては任務の為! やめろ、ベル殿! アイエエエ!?」
 再び炎に包まれる風太郎。ナムサン!
「こんな所に居ると蚊に刺されちゃうし、帰りましょ帰りましょ」
 手をひらひらして蚊を追い払いつつ言うアイリス。
 無論裸だったバナナイーターほどではないが、改めて考えるとかなり露出度が高い。
「ご馳走様でした。そうしましょうかねーぇ」
 頷いて立ち上がるのは、バナナイーターから必要な物を回収し終えたらしいツグミ。
「そうですね、無事終わって良かったです……無事、ですよね?」
 ほっと安堵の吐息を零すキアラは、若干一名黒焦げになっている仲間を見遣って確認するが、どうやら大丈夫らしい。

 かくして、男性を狙う恐るべきバナナイーターはケルベロスによって退治され、一行は静まりかえる雑木林を後に、凱旋の途に就いたのだった。

作者:小茄 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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