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「螺旋忍軍の『彷徨えるゲート』が、次に出現する場所を突き止めたでありますよ。これも皆さんが『螺旋帝の血族・緋紗雨を智龍ゲドムガサラから守り切った』成果であります」
小檻・かけら(藍宝石ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「この情報があれば、螺旋忍軍との決戦を行う事が可能でありましょう……ですが、決戦を行うには、正義のケルベロス忍軍から螺旋忍法帖を奪取して螺旋帝の血族『亜紗斬』を捕縛した『最上忍軍』が、大きな障害になります」
最上忍軍は、螺旋帝の血族・イグニスから新たな命令を受け、各勢力に潜入していた螺旋忍軍達を利用して『螺旋忍軍のゲートが現れる地点に戦力を集結』させようとしている。
また、ダモクレスからは『載霊機ドレッドノートの戦い』の残党勢力。
エインヘリアルからは、ザイフリートやイグニスの後釜を狙う王子とその私兵団。
更に、各勢力が研究していた屍隷兵の中で、戦闘力の高い者を集めた軍勢をも用意しているようだ。
「彼らは、螺旋忍軍によって『魔竜王の遺産である強大なグラビティ・チェインの塊が発見された』『このグラビティ・チェインを得られれば大きな功績になる』『この事実を知ったケルベロスの襲撃も予測される』との偽情報を掴まされたみたいであります」
また『魔竜王の遺産は独占が望ましいも、複数の勢力の参戦が予測される為、敵に漁夫の利を与えぬ為の立ち回りが重要だ』と説明されて、デウスエクス同士では戦端を開かずに牽制し合うべく仕向けられている。
「イグニスとドラゴン勢力は、集めた戦力を『ゲートから戦力を送り込むまでの防衛戦力』として利用しようと目論んでるであります」
ケルベロスウォーを発動しない限り、集結する軍勢を全て撃破する事は不可能。
しかし、行軍中の軍勢を襲撃して、主だった指揮官を撃破できれば、敵勢力を弱体化させられる筈だ。
「危険な任務となりますが、皆さんのお力をお貸しくださいませ」
かけらは深々と頭を下げた。
「載霊機ドレッドノートの戦いの後、姿を消していたダモクレスの残党勢力が、最上忍軍の情報を得て動き出したであります」
組織の再建の為、大量のグラビティ・チェインを必要としていたダモクレス残党にとって、最上忍軍の情報は渡りに船だったのだろう。
ゲート出現予定地は『奈良平野』であり、ダモクレスの残存勢力は三重県伊賀を越えて奈良を目指すと予測される為、当班のケルベロス達は伊賀市近郊で迎え撃つ事になる。
「ダモクレス残党は、指揮官型ダモクレスである、マザー・アイリス、ジュモー・エレクトリシアン、ディザスター・キングを中心に、有力な戦力が残っています」
指揮官型ダモクレスを1体でも撃破する事ができれば、戦況はかなり好転するに違いない。
「進軍するダモクレスの軍勢の先鋒は、ディザスター・キングと配下のダモクレス軍団が担ってるであります」
ディザスター・キングを撃破する為には、この強力な先鋒部隊をまず相手にする必要がある。
「マザー・アイリスは全軍の中央に位置していて、周囲を多数のダモクレスが取り囲み護衛してるであります」
周囲を囲むダモクレスの戦闘力は決して高くなく、単純な戦闘しか行えまいが、指揮官型の一体、ジュモー・エレクトリシアンが直接操作しているらしく、取り付く隙がない。
「ジュモー・エレクトリシアンは、全軍の後方で護衛ダモクレスの指揮などを行っています」
ジュモー・エレクトリシアンを撃破するには、ジュモーとジュモーを守る3体の有力ダモクレスと同時に戦えるだけの戦力が必要だろう。
「また、ダモクレスの軍勢の中には、最上忍軍の最上・幻斎が同行してるようであります」
最上・幻斎の居場所は不明であり、見つけ出すのは難しいと思われるが、なんらかの作戦を行って最上・幻斎を撃破できたなら、最上忍軍に大きな打撃を与えられるかもしれない。
「今回の作戦は、進軍する敵を強襲して撤退する奇襲作戦になります。作戦終了後は、素早く撤退しなければ、敵の勢力圏に取り残されますのでご注意を」
かけらはそう補足して、説明を締め括った。
参加者 | |
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エルナ・トゥエンド(主を得た失敗作・e01670) |
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470) |
千手・明子(火焔の天稟・e02471) |
ククロイ・ファー(鋼を穿つ牙・e06955) |
翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525) |
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540) |
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570) |
長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485) |
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三重県伊賀市。
ケルベロス達は、マスターオーブメント率いる部隊の進軍を待ち構えていた。
「雌伏は嫌いじゃないんですよね……今だっ!」
特殊な気流を纏い、目立たぬよう努めていた北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)が、敵の姿を認めて鋭く叫ぶ。
故郷をデウスエクスに滅ぼされ、仲間や家族、師匠などを失った過去を持つが、日頃はそんな辛い来し方などおくびにも出さぬ穏やかな性格。
しかし心の奥底ではデウスエクスへの怒りと憎しみの炎が燻っているらしく、今日もライドキャリバーのこがらす丸を駆って、残存ダモクレスに立ち向かう。
尚、隠密気流によって他人から認識されづらくなるのはあくまで非戦闘時に限り、いざ攻撃を仕掛けんとする奇襲まで隠し通せる訳ではない。
それでも、予々の作戦通りにマスターオーブメントと近くにいたダモクレス達を8人で取り囲めたし、
「ゲートを好き勝手されるわけにはいかない、ここでしっかりと潰して後顧の憂いを断つ……!」
計都はそのまま、マスターの隣の量産型機人兵へ肉薄、豊富なグラビティ・チェインによって破壊力を増した破龍鎚【赫灼】を、奴の胸部へ力一杯叩きつけた。
こがらす丸も彼と呼吸を合わせて、炎を纏った車体を突撃させる。
量産型機人兵は燃え移った炎に全身焼かれ、ガクガクと苦悶した。
「……奇襲、暗殺はわたしの得意技……。望んで得た技術じゃないけど、ね……」
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)も自嘲めいた呟きを洩らしつつ、気配を殺してマスターオーブメントへ近づき、奴らの包囲に参加した。
絹みたいな白く長い髪と澄んだ金の瞳が可愛らしい、シャドウエルフの少女。
普段はぼ~っとしていて口数少ないが、義兄や人との関わりの中で自然な感情の発露も少しずつ増えているようだ。
「ん……行くよ……」
リーナは霊刀「鳴月」の刀身へ雷の霊力を籠めるや、目にも止まらぬ速さの突きを繰り出しす。
魂を斬り裂くと言われる小太刀の刃が、ズブリと量産型機人兵の外装を勢いよく貫いて固い守りを崩した。
「……防具特徴を活かしての奇襲は無理があったか。想定通りの奇襲と言うのは、なかなか難しいものだな」
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)は、マスターの周りに付き随うダモクレス達を見て、眉を顰めた。
自らを『絶望請負人』と称する、黒い翼や表皮、赤い瞳が大層迫力あるドラゴニアンの壮年男性。
負け戦の経験は数知れず、地に伏し泥を啜り、過去幾度も死に瀕してきた歴戦の勇士である。
「ともあれ、トゥエンドがマスターオーブメントとの因縁に決着をつける為にも、多少想定外の事態があったとて、挫ける訳にはいかん」
と、悪そうな顔に似合わず友達思いのアジサイは、対デウスエクス用のウイルスカプセルを投射。
量産型機人兵の頭部へ見事命中させて、怪我の治りをぐっと遅くした。
「……やるじゃない、アジサイ。そうね、その通りだわ」
千手・明子(火焔の天稟・e02471)は、相棒であるアジサイが攻撃する様を見て、自分もエルナの力にならねばと決意を新たにする。
艶のある黒髪と大きな黒眼を持ち、和装のよく似合う刀剣士。
性格は明るく元気、ウソや駆け引きは苦手な姉御肌である。
ちなみに、趣味で『黒流花壇』なる骨董品屋の店主をしているそうな。
「エルナはわたくしを守ってくれる。そしてわたくしは、エルナを守る。わたくしの望みはそればかり」
岩をも通す一念を胸に、すらりと名物『白鷺』を抜き払う明子。
「エルナと皆で、帰るの……わたくし達の家に。手伝ってね、アジサイ」
緩やかな弧を描く斬撃を繰り出して、量産型機人兵の四肢へ通っている神経を、的確に斬り裂いた。
その傍らでは、
「邪魔……エルナが……用があるのは……旧マスター……だけ」
エルナ・トゥエンド(主を得た失敗作・e01670)が、マスターオーブメントを庇うが如く立ちはだかる機体へ向かって、アームドフォートを向けていた。
元は新機能を搭載したダモクレスの試験機であり、その為か魂には強大なデウスエクスが眠っているらしいエルナ。
ケルベロスに覚醒して以後は、エルナ・トゥエックスとの戦いの際に出会った明子を、新たなマスターとして慕うようになった。
その為か、レプリカントとして心が目覚めた後も強迫観念に近い想いが残って、とにかく明子だけは命に代えても守ろうとする。
「……たとえ……護衛が妹たちでも……そうでなくても……倒す……」
エルナは構えていたアームドフォート——HLLC(ハイパーロングレンジレーザーキャノン)の主砲を一斉発射、量産型機人兵のどてっ腹へ文字通り風穴を開けて、死に至らしめた。
一方。
「残霊利用は厄介過ぎるんでねェ! 潰せる時にすり潰すッ!!」
紙の地図にスーパーGPSを用いて自分達の現在地を確かめていたのはククロイ・ファー(鋼を穿つ牙・e06955)。
ぼさぼさした灰色の髪と眼光鋭い金の瞳が意思の強さを感じさせるウィッチドクターで、その行動原理は感情や直感、本能に基づく。
軽口多めでノリがよく、ちょっと粗忽者という、元ダモクレスながら実に人間味溢れる性格をしている。
「投薬治療だァ! 多目に出しておくぜェーッ!」
そんなククロイは頭にレプリクロウを被り、気合充分でDCDを乱射。
ミサイルポッドから焼夷弾をばら撒いて、敵群の前衛陣を炎に包んだ。
他方。
「普段より少し難易度の高い仕事に殴り込んでみたけど、さてうまくこなせるかな?」
長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)は、声に幾分か緊張を滲ませて言う。
オールバックな灰色の髪と紫の瞳が特徴で、人の好さそうな表情をした自宅警備員のおっさん。
元々引き篭もりだったらしく、日々自宅を警備しながら鍛錬、休息、趣味の時間のローテーションで暮らしている。
「何だ、最上幻斎は魔竜王の遺産独り占めするために、もう何処かへ行ったのか?」
周囲に奴らしき人影や気配が感じられないのを確かめてから、ダモクレス達へ向かってカマをかけるゴロベエ。
勿論、改造スマートフォンから電波を放出して、なんやかんやでヴォルテックマシンを一時的に洗脳する事も忘れない。
だが、大部隊の指揮官でないマスターオーブメントの更に下につくヴォルテックマシンやディザスター・ナイト達が最上・幻斎の動向など知らされている筈もなく、反応は得られなかった。
ただ、頭部の長大な砲身からヴォルテックレーザーを吐いてくるだけだ。
「……あきら!」
すかさず、エルナが明子を庇って彼女のダメージを肩代わりし、強い衝撃を受けるも倒れずに精一杯踏み留まった。
「エルナさん……宿敵との決着をつけたいお気持ち、私にはよく解ります……ですが、どうかご無理はなさらずに」
その様を目に留めた翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)は、優しく穏やかな声音で仲間を気遣う。
美しい緑の髪と橙色の瞳が特徴で、どことなく勇ましい雰囲気のシャドウエルフの女性。
基本的に穏やかな性格だが、幼い頃は男兄弟に負けじと森を護る修練を積んでいた事もあってか、いささか男勝りだったりする。
服装も男性っぽい物を好んで着る事が多く、今日もドレッシーなブラウスに紺のスリーピーススーツも中性的な風貌にぴたりと嵌まっていた。
「強力な相手ですが、これからの為にも負けられませんね」
エルナの傷を早く治癒したい気持ちもあるのだろう、風音は地面へケルベロスチェインを展開、魔法陣を形作って前衛陣を守護する。
ボクスドラゴンのシャティレも、ダモクレスがそれぞれ抵抗する中、ディザスター・ナイトのナイトチャージを喰らったゴロベエを属性インストールで癒していた。
●
8人は、マスターオーブメントと戦うのへ邪魔なダモクレスを先に倒すべく、奴らの中でもディフェンダーらしき耐久力を誇る機体から順に撃破しようと決めていた。
その一方、指揮能力に特化したマスターオーブメントへ従うダモクレス達もまた、行動に一切の無駄がない。
奴らはこちらの頭数を手早く減らす為、体力が低めの者へ攻撃を集中させて、一刻も早い戦線突破を狙っていたのだ。
「エルナが……あきらを……皆も……守る」
そのせいか、ロス・オブ・ネームズ(女)の無名拳からリーナを庇って、苦痛に喘ぐエルナ。
「そういう事なら全力でお手伝いするのもやぶさかではないかな」
ゴロベエもエルナの盾となるべく立ち回り、可能な限り彼女を守ってくれたのだが。
何分、エルナ自身が望んでディフェンダーとして動いていた為、幾ら苦痛が半分和らごうとも仲間に比べたら激しく消耗するのは仕方のない事だった。
タイタンキャノンの右肩部大型無反動砲から、リーナを守って強烈な一撃を受けたのもエルナなのだ。
「エルナには……ある種……感謝……の、念がある。エルナが……あきらと……出会えた……のは、旧マスター……が、エルナを……創ってくれた……おかげ」
もはや満身創痍の彼女だが、何とかして背中から——直に生えたふうに見える光の翼を展開。
全身を覆う一種のバリアを形成して、己が体力を回復させた。
「数多なる生命よ、どうか我等に力を……」
自ら奏でた音楽を通して、数多の自然へ語りかけるのは風音。
それらが持つ癒しの力を借りた、しっとりした歌声が響き渡り、前衛陣に癒しと再生の力を与えた。
戦いは続いて。
「その思考機能、焼き切ってやんよォ!!」
ディザスター・ナイトはククロイがフォートレスキャノンで葬ったし、
「一発で駄目ならもう一発、それでも駄目なら全弾撃ち込む……!」
ロス・オブ・ネームズ(女)も計都が連射した弾を全て命中させてトドメを刺した。
こがらす丸も一生懸命に疾駆して、激しくスピンをかけると同時にヴォルテックキャノンの多脚を轢き潰した。
「貴方は……ここで仕留める……!」
タイタンキャノンへ引導を渡したのはリーナだ。
これでマスターオーブメントに随伴していたダモクレス5体を殲滅できた。
後はエルナと因縁深いマスターオーブメントを倒すのみだが、そのマスターオーブメント当人は、とても一筋縄でいかない強さを有していた。
奴がずっと天を衝くように挙げていた両手を振り下ろした瞬間、空から赤い光球が次々と降り注いだのだ。
「ん……っ!」
気力だけで立っていたエルナが、明子を庇うべく光球の真下へ自ら身を晒すも、全身を焼く灼熱へ耐え切れず、とうとうがくりと膝をついてしまう。
「エルナっ!?」
悲鳴を上げた明子に抱き起こされる最中も、ガラス玉のような瞳はマスターオーブメントを真っ直ぐに射抜いて。
「旧マスター……もしも……あきらに……危害を加えたら……その時は、容赦しな……、……」
意識を手放す直前までずっと、明子を護りたい一心で彼女の身を案じていた。
「しかし良いのか? 螺旋忍軍に良いように使われてるだけに見えるけど」
エルナ程では無いにしろ疲労の色濃いゴロベエだが、マスターオーブメントを挑発すると同時に自分の足元をぶん殴る。
すると、マスターオーブメントの真下の地面から、巨大な漆黒の魔犬の頭が出現。
牙を剥いた魔犬は、奴の脇腹へ力一杯喰らいつき、肋骨まで噛み砕きそうな程に深く歯を突き立てた。
「へへっ、疑問質問、文句や苦情は直接忍軍の人へお願いします! ってな」
ククロイもめげずに最上・幻斎を誘き出す為か、わざと情報を流しながらマスターオーブメントへ接近する。
「スキャニング『シャドウエルフ』! んじゃ、死んでくれやァッ!!」
そのまま自身に蓄積されたシャドウエルフのデータを過剰にスキャンしては、己がグラビティをシャドウエルフのそれと同質化。
変形展開した胸部の発射口から『絶対に殺す』という意志と魔力が込められた無数の黒いレーザーを放つや、マスターオーブメントを影の如く追尾した果てにぶち当てた。
マスターオーブメントは、燃え盛る光球の他にも冴えた冷気を放つ光球、瘴気夥しい光球を射程も自在に降らせて、7人を苦しめる。
風音とシャティレだけで回復が追いつかない事もあり、ククロイはメディカルレインで味方の火傷や凍傷の治癒に徹した。
そんな中、エルナの次に意識を失ったのはゴロベエ。意地でも倒れまいと足を踏ん張って味方を守り続けた奮闘虚しく、凍てつく光球に意識を断ち切られた。
「まともに考えて、魔竜王の遺産があったとしても今の今まで放置されてる訳がないだろう?」
計都は、敢えて事実を語る事でマスターオーブメントを挑発する傍ら、リトルリボルバスターの狙いを定め連射。
「嘘の情報に騙されてご苦労な事だ、おまけにここで俺達に倒されるんだからな!」
銃の師匠の教えを忠実に守ってダメージを確実なものにするまで、宙に浮かぶ腹部を目掛けありったけの弾丸を撃ち込んだ。
「……わたしの刃から……逃げられる……?」
元暗殺者らしく軽い身のこなしで戦場を駆け巡り、マスターオーブメントを翻弄するのはリーナ。
「……貴方の足の速さもなかなか……足、ないけど……」
フェアリーブーツを履いた足で機敏に跳び上がるや、理力を籠めた星型のオーラをマスターオーブメントの顔面へ容赦なく蹴りつけた。
「墜ちろ!」
アジサイは勢いよく黒砕を振り下ろすと同時に、竜を模したグラビティの塊をマスターオーブメントの脳天に向けて落下させる。
ゴィン!!
頭上という死角からの攻撃によって当て易さと威力の高さを両立、非常に正確な照準でもってグラビティを命中させ、奴の顔面を苦痛に歪めた。
「可哀想なエルナの元マスターさん。螺旋忍軍は魔竜王の遺産を独占するようよ」
それに合わせて、明子も名物『白鷺』の白刃を真っ直ぐ振り下ろす。
「あなたの大事なELUNAシリーズも、もはやわたくしのエルナとあとたった一人。あなたは利用するだけ利用されて、ここで地獄に落ちる定め」
「ダモクレスすら遺産独占の為の駒に使うとはな。敵ながら同情する」
アジサイが淡々と相槌を打つ。演技をする気のない朴訥とした物言いが却ってわざとらしさがなく、相手が相手なら信じてしまいそうな風情である。
「墜ちなさい!」
紫電一閃、明子の放った竜に似た形のグラビティは、マスターオーブメントの脳天へ寸分の狂いなく叩きつけられた。
ズーーン……!
腰から露出していた赤い球が光を失い、大きな音を立てて地面に墜落するマスターオーブメント。
「残霊研究はここまでか……無念……」
戦闘中もずっと手振りだけで配下を動かし、無言を貫いてきた彼の、最期の言葉であった。
「終わったわ、エルナ……帰ろう」
と、エルナを抱き上げる明子。
「にいさん……どうか、無事で……」
指に嵌めたエンジェル・ウィスパーを撫でて、リーナは近くの戦場にいる兄の無事を祈った。
作者:質種剰 |
重傷:エルナ・トゥエンド(主を得た失敗作・e01670) 長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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