特大クリームソーダに溺れて

作者:天木一

「えーっとねー、どれにしようかなー」
 少女が足のつかない椅子に乗って、ぶらぶら足を振りながらメニューとにらめっこする。
「イチゴケーキもいいしー、タルトもおいしそー。でもでもーんーパンケーキがいいかなー」
 あれもこれもと目移りしていた少女がようやく注文を決める。
「パンケーキと、特製クリームソーダをください!」
 元気に注文すると歌いながら注文を待つ。するとコックがパンケーキとクリームソーダを置いた。
「わー、おいしそー! いただきまーす♪」
 少女がパンケーキにバターを塗り、たっぷりのメープルシロップを掛けて頬張る。
「おいひーーー!」
 口に含んだまま頬を緩め、そして鮮やかな緑のジュースにストローを入れてシュワシュワのクリームソーダで口を潤し、真っ赤なさくらんぼをパクっと口にした。
「はぁ~クリームソーダはホントおいしー、さくらんぼはさいしょに食べちゃうっ」
 スプーンでアイスを掬いパクっと口にして口の中のハーモニーを楽しむ。
「もうクリームソーダがあれば何でもおいしく食べられちゃうかも!」
『そーなんだー、だったら君をクリームソーダにしてあげるー』
 えっと驚く暇もなく、クリームソーダが少女より遥か大きく巨大化して少女の体をグラスの中へと取り込んだ。
「わぷっおぼれちゃう!?」
 慌てる少女の上からアイスが乗せられソーダの中へと沈んでいく。
「ぶはっ……ソーダは?」
 目覚めた少女が目にするのは見慣れた自分の部屋。
「なーんだ、夢だったのかー」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 少女が安堵した瞬間、その胸に鍵が突き立てられた。目の前には魔女の姿。鍵を引き抜くと幻であったかのように魔女の姿は消え、少女は意識を失った。
 静寂の中に現れたのは、シュワシュワと炭酸を立てる巨大なグラスに入ったクリームソーダ。
『ソーダを浴びるほど飲もーよー』
 それは窓を突き破り、獲物を求めて外に飛び出した。

「また美味しそうなドリームイーターが現れるみたいよ。今度はクリームソーダの姿をした相手のようね」
 ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)が新たな事件が起きる事を伝える。
「第三の魔女・ケリュネイアが少女から奪った『驚き』から新たなドリームイーターを生み出し、人々を襲わせようとしているようです」
 隣に出たセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が詳しい事件の説明を行う。
「新たに生まれたドリームイーターはグラビティ・チェインを求めて人々を襲い、多くの犠牲者が出てしまいます。そうなる前に皆さんに敵を撃破してもらいたいのです」
 今ならまだ被害が出る前に現場に到着でき、敵を倒せば少女を眠りから救うことも出来る。
「敵が現れるのは京都の住宅地。通行人を驚かせてから襲うようです」
 夜遅くなので人通りも少ない場所だ。戦うには適しているだろう。
「姿は5mほどあるグラスに入ったクリームソーダの姿をとっています。液体やアイスにサクランボと多彩な攻撃をしてくるようです」
 特に液体には人を魅了する効果があるので注意が必要だ。
「それと敵はまず相手を驚かせようとするようです。そして驚かなかった者を優先して攻撃するようです」
 驚きから生まれた性質だろう。それを利用すれば被害の出る確率をぐっと抑えられる。
「クリームソーダ―は子供が大好きなジュースですね。ですがそんなジュースでも人を襲う悪夢となれば倒さなくてはなりません。どうかよろしくお願いします」
 そう言って頭を下げたセリカが出発の準備に取り掛かる。
「クリームソーダかぁ、これも美味しそうね。でも人を惑わすようだから退治ちゃうわよ!」
 ユーロの言葉に同意しケルベロス達が動きだす。それに続きながらユーロも新たな戦場へと思い馳せるのだった。


参加者
ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)
リーズレット・ヴィッセンシャフト(アルペジオは甘く響いて・e02234)
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)
鍔鳴・奏(弱モフリスト・e25076)
レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)
葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)
雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)
ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)

■リプレイ

●クリームソーダ
 静かなはずの夜道を人々が警察に誘導されて避難している。ドリームイーターの出現場所付近から逃げているのだ。
「避難誘導などは警察に任せるとして、我々はドリームイーターを退治するとしよう」
 ベルンハルト・オクト(鋼の金獅子・e00806)は避難する人々を横目に、流れに逆らって道を行く。
「しかしクリームソーダ、か……ちょっと気になるな、少しだけなら……?」
 そのジュースの味を想像していると足の速度が上がっていた。
「今回は特大クリームソーダかぁ。良く冷えたソーダに、冷たいアイス。夏向きなドリームイターよね」
 夜でも蒸し暑いとユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)は汗を拭う。
「食べてもほとんどダメージ無いけど、美味しさに魅了れてしまうのね……少しだけならいいわよね」
 ちょっとなら大丈夫大丈夫と楽観的に微笑んだ。
「巨大なクリームソーダとか……なんと心躍る響なのだ……食べたい……とても食べたいぞー!」
 その姿を想像したリーズレット・ヴィッセンシャフト(アルペジオは甘く響いて・e02234)は期待に胸を膨らませる。
「……クリームソーダ。美味しそうじゃん」
 その様子に鍔鳴・奏(弱モフリスト・e25076)も興味をかき立てられてジュースを探す。
「クリームソーダか……嫌いじゃないけど甘すぎてちょっとね、それにいいトシした男が喫茶店で頼むのは恥ずかしい」
 自分が注文している姿を思い描き、レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)は肩を竦める。
「アタイ甘味はほんと好きなんだよねぇ。ドリームイーターでさえなければ、食べてみたかったなぁ」
 怪しい眼帯をした葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)は残念そうに息を吐く。
「クリームソーダ、どんな味なんだろうねぇ」
 きっと美味しいのだろうとイメージを膨らませ上機嫌に笑みを漏らす。
「初めての依頼……頑張らなきゃいけないわね。相手は特大のクリームソーダ……ただでさえ暑いのに嫌な敵が出てきたわね……絶対飲まないんだから!」
 緊張しながらもナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)は気合を入れて戦いに臨む。
「避難は進んでいるようだな、これなら戦いに集中できそうだ」
 人払いの済んだ周囲を見渡した雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)は警戒して敵の姿を探す。
「ここら辺よね、始めましょうか」
 ナナリアがアコースティックギターを取り出して、ここに居るぞと敵に報せるようにメロディを爪弾く。
 すると曲がり角から何やら長い棒が飛び出した。目を凝らせばそれが巨大なストローだと分かる。
『シューズといえば……クリームソーダ!』
 ぬぅっと角から現れたのは5mはある巨大なグラス。中に入っている緑のメロンソーダの上に丸いアイスクリームとさくらんぼが乗ったクリームソーダそのものの姿だった。

●シュワシュワ
「すごーい! こんな大きいクリームソーダ、飲みきれないわよ!」
 ぽかんと大きく目を見開いてユーロが驚く。
 その後ろでナナリアは敵が現れても無表情のまま演奏に集中していた。
「俺はやるよ。かなりやる。こいつで圧倒してやる」
 獲物を見つけたような顔で、奏は手にしたスプーンとストローを構える。
「おっと涎が……さあ来い!!」
 食べる気満々で敵の気を引くように奏が挑発する。
「夢のようなドリームイーターだが、ひ……被害がある限り退治せねばな……何かあったら奏にお願いすればいいかな? かなりやるみたいだしな!」
 ビクッと怖がりながらも、リーズレットは奏の背に隠れるようにして黒薔薇を咲かせ、放つ光が仲間を覆い耐性を高めた。
「食べ物型のドリームイーターか。ブリーフィングでは大きい奴と聞いていたが……いやはや、ここまで大きいとはな」
 その巨体を真也は一歩引いて見上げる。
「だが、敵なら容赦はせん。ここで倒させてもらうぞ」
 そして気を取り直すように異空間から弓を召喚して右手に持って戦闘態勢に入る。
『シュワシュワ炭酸なーのよー』
 ストローを昇ったソーダが噴水のようにケルベロス達の上に巻き上がると真也は咄嗟に飛び退く、ボクスドラゴンの響が少しでも被害を減らそうと体で受け止め、目を回してペロペロとソーダを舐め始めた。
「うぅ、驚かないっていうのは苦手だけどぉ……」
 ぐっと我慢した咲耶は、口元に笑みを作り平気な風を装ってみせる。
「そんなんじゃあ、アタイは驚かせないねぇ」
 そして御業を読み出しグラスに組み付かせた。
「クリームソーダか……見た目が毒々しいよね。すごく体に悪そうな色をしてるというか……だから子供が好むのかな?」
 ライフルの銃口を向けながら観察していたレスターが引き金を引き、放たれた光線がグラスを溶かし変形させた。
「ただ驚かせるだけならそこまで害はないだろう、少しの刺激は生活に必要だからな」
 だがとベルンハルトは無造作に拳銃を撃ち、敵を外れた弾が壁に弾かれ方向を変える。
「人を襲うなど、許されはしない。ここで討たせて貰おう」
 跳弾した弾が背後から襲いグラスに穴を空けた。
『飲んで飲んでー美味しいソーダー』
 ぐるりと回転しながら穴から勢いよくソーダが薙ぎ払うように噴き出すと、ケルベロス達をびしょびしょにしてしまう。
「そんなに溢したらぁ、ソーダがもったいないよぉ」
 咲耶が紙兵を壁のようにばら撒くと、緑色に染まってくちゃくちゃに潰れながら水流を減衰させた。
「ふはは! 残念だったな! 水着を着ているから、そのような攻撃なんともないぞ!」
 びしょ濡れの服を脱いで中に着ていた水着姿となったリーズレットは、オーロラの輝きを広げ仲間達を正常に戻していく。
『じゃあもっともっとー』
「目の保養の邪魔をするんじゃねぇ!!?」
 水着姿をガン見する奏は、視線を外さぬまま邪魔だとばかりにソーダを斬り払い、グラスに槍を突き入れ稲妻を奔らせる。
「リズ! 今直ぐ拭ってやるからな!」
 そして槍を捨てタオルに持ち替えソーダ塗れの頭を拭う。ボクスドラゴンのモラは属性を分け与えてゆき、仲間達のソーダの影響を弱めていく。
「み、見てないよ」
 女性陣の水着や透けた服から赤面して視線を逸らしたレスターは、敵だけを見るように集中してライフルから光線を撃ち出しソーダを凍りつかせた。
「美味しそう……けど我慢しないと!」
 ぷるぷると首を振ったナナリアは、宙に精製した弾丸を撃ち出し更に凍結範囲を広げ、そこへテレビウムのシングが凶器を叩きつけひびを入れた。
「まずは武器を封じさせてもらおうか」
 真也は攻撃を避けながら天より無数の刀剣を召喚し、雨のように降り注がせアイスやサクランボを削って傷だらけにしていく。
「クリームソーダの見る悪夢ってどんなのかしら?」
 ユーロは黒色の魔力弾を飛ばしてぶつけ敵の脳裏に悪夢を呼び起こす。
『うわっ炭酸が抜けちゃうよ!』
 するとソーダの炭酸が抜けきってしまう悪夢に体を震わせた。
「これだけ大きいとグラスも分厚いな。だが斬れないほどではない」
 その僅かな隙に踏み込んだベルンハルトは刀を抜き放ち、刃を傷跡の沿わせグラスに大きな傷を刻む。
『ひんやりアイスも美味しいーよー』
 ストローで掬ったアイスを差し出してくる。汗ばむ中うっかり手を出してしまいたくなる魅力があった。
「はい、あーん☆」
 食べてみたいがまずは毒見させようとリーズレットがアイスを掬って差し出す。
「おいおい、そんなドリームイーターを俺に突き付けんな。クリームソーダは好きだがデウスエクスだよ、これ。しかし水着姿の美女にあーんなんかされたら食うしか無いじゃん!?」
 ノリと勢いで奏はパクリとアイスを食べた。
「ウマーーー!」
 そう叫ぶとそのポーズのまま体が凍り始めて氷像のようになってしまう。
「……ぁ……死んだ……くっそ……よくも奏を!」
 憤り両手に肉球グローブを嵌めたリーズレットは、にくきゅうをぷにぷにさせて凍結をほぐした。
「日本の梅雨や夏はジメジメして暑苦しいから、冷えてて炭酸がシュワシュワ刺激的なソーダと、冷たくて美味しいアイスが食べたくなるわよね」
 にっこり笑ったユーロは4人に分身して敵を囲み、ソーダを飲みアイスをむさぼり食う。
『口ん中にアイスの残ってるうちにーソーダを混ぜるのだー』
 ストローからソーダがシャワーのように撒き散らされる。
「わぷっ」
 そこへ仲間を庇おうと前に出た咲耶は顔から直撃を浴びて全身をソーダに染めた。
「炭酸がしゅわしゅわってするよぉ」
 思わず口に入ったソーダを堪能して唇をペロリと舐めた。その間にもソーダの放出は続き次々と顔からソーダを浴びていく。
「ん、痺れる。刺激的だな……むっ、いかんいかん。集中しなくては……!」
 頭を振ってソーダを飛ばすと、ベルンハルトは手にオーラを集め塊にして放ち、弧を描き死角からグラスにぶつかりひびを入れる。
「硬いガラスだが、一度攻撃を受けたところならどうだ」
 駆け出した真也は左手に銀色の剣を召喚し横一閃、敵の傷口を狙い大きく斬り裂きソーダを溢れさせる。
「少女の命がかかってるんでね、見た目はおいしそうでも手抜きはしないよ」
 懐に入ったレスターは銃口をピタリと穴に当て、炎の弾丸を撃ち込んだ。
「ソーダ? だから何? 子供だからって何でもホイホイ飲むと思わないでよ」
 勢いをつけて跳躍したナナリアはグラスを蹴り、足の大きな星型オーラを叩きつけてその形に穴を空けた。

●食べきれないほど
『さくらんぼもあるよー』
 大きなサクランボが幾つも放りだされ、地面に落ちる前に爆発して果肉を撒き散らす。そこへモラは飛び込み体当たりでさくらんぼを1つ弾いた。
「爆発する前に凍らせてしまえばいいのよ」
 ナナリアは弾丸でサクランボを撃ち抜き凍らせる。
「怖いけどぉ……頑張るよぉ」
 おどおどと咲耶は氷の騎士を召喚し、その槍でサクランボをグラスごと貫き凍らせてゆく。
『アイス食べ放題ジュース飲み放題だよ! 浴びるほど飲んでねー!』
 ソーダとアイスが宙に乱舞し周辺を緑と白に染めていく。その身を盾にして響はブレスを放って耐え凌ぎ、シングも攻撃を受け止め全身が白いアイスに埋もれた。
「奏の仇を討たないと!」
 リーズレットはオーロラの帯を広げてその効果を打ち消した。
「まだ死んでねーし! さっきはよくもやってくれたな!」
 凍らされた仕返しにと、奏は刀を振るい敵の差し出すアイスの乗ったストローを斬り飛ばした。
「確かに食べ放題飲み放題は魅力的だが、食べ過ぎるのも問題だ」
 駆けるベルンハルトはすれ違い様に刀を打ち抜き、胴を薙ぐようにグラスを斬り裂く。
「やっぱり暑いと冷たいものが美味しいわよね」
 突っ込んだユーロは鋼を纏った拳を叩き込みグラスに穴を空ける。そこから溢れるソーダを浴びてゴクリと飲んだ。
「貪欲だな……クリームソーダの海で泳ぐなんてロマンチックだけど、体がべたべたして不快だね」
 シャワーのように降り注ぐソーダから慌てて飛び退いたレスターは、ライフルを構えて光線が穴から入り内部を貫通して反対側に穴を空けた。
「剣はまだあるぞ。遠慮せずにとっときな」
 真也はもう一度刀剣の雨を降らせ、グラスの中に入った刃が内側から突き破る。
『夏には冷たいものだよー』
 短くなったストローを使いアイスが奏の口に突っ込まれる。
「もう無理! 口の中がキンキンだって!」
 アイスを突っ込まれた奏はこれ以上は無理と、顔を背けて頬で受け全力で拳を叩き込んだ。
「奏ばっかりアイスを食べて羨まし……酷い事をするな!」
 リーズレットはにくきゅうで頭を挟み込んで頬をぺしぺし叩いて、口にしているアイスの効果を打ち消した。
「これ以上刺激的な味で魅了されるわけにもいかないな」
 敵から離れた位置でベルンハルトが刀を振り上げると、周囲に魔力で剣が何本も生み出される。そして刀を振り下すと同時に剣が一斉に射出され取り囲むように飛翔して敵の全身を貫いた。
「俺はジンジャエールのほうが好きなんでね」
 容赦なくレスターは地獄化した涙を封入した弾丸を装填し、ライフルに接吻をして魔術回路を繋げ銃口を向ける。放たれ弾丸はグラスを貫き噴き出るソーダが無数の蝶となって幻の如く消えていく。
『遠慮しなくてもー飲み放題だからー』
「飲まないって言ってるでしょ!」
 足元を覆うほど溢れるソーダを避け、電柱を蹴り上がったナナリアは敵の頭上から急降下して踏みつけるように蹴りを放ち、頂上のアイスを深く沈めた。
「そんなに浴びたら服がソーダ味になっちゃうんだよぉ」
 咲耶は取り出した御札の呪を解き放ち、周囲を冷気で覆い飛び散るソーダを凍りつかせていく。
「そろそろ幕引きと行こうか」
 真也は炎を纏った銀色の剣を召喚し左手に持つと、剣が矢のように細くなり弓に番える。
「太陽の灼熱を纏った聖剣よ。その力をもって、敵を亡き者にせよ。太陽の灼熱聖剣(ガラティーン)!」
 放たれた炎を纏う剣は超音速で飛び敵を貫通し、その後に遅れて炎の軌跡が燃え上がりソーダを内部から沸騰させてしまう。
「これ以上食べると夢中になっちゃいそうだから、終わらせるわね」
 分身したユーロは敵を囲んで魔弾を次々と撃ち込むと、手にした炎の剣で四方から斬り裂く。
『空になっちゃったー』
 グラスがバラバラに砕け、地面にぶちまけられたソーダが染みとなって消え去った。

●夜食にも
「危ない所だったね。君はクリームソーダは好きなのかい?」
「うんっクリームソーダ大好き!」
「大人になると見栄や意地が邪魔して好きなものを好きって言えない事が増えてく、今の気持ちを大事にしてくれ」
 少女の無事を確認したレスターがそう優しく語り掛け、礼を言う少年におやすみと部屋を出る。
「今度は普通のソーダやアイスが食べたいわね。この時間だとファミレスかな?」
 外で建物へのヒールを終えたユーロが冷たいものを食べに行こうと誘う。
「はいはーい! 賛成だよぉ、アタイもクリームソーダ食べに行くぅ!」
 すぐに手を上げて咲耶が微笑む。
「私もクリームソーダが飲みたいわね」
 ギターケースを担いでナナリアも乗り気で頷いた。
「クリームソーダは……もう十分かな」
 それよりも小腹が空いたとベルンハルトは何を注文しようか考える。
「いちごソーダフロートと言うのも美味しいのだぞ……」
 リーズレットがそう呟くと、食べたくなったのか奏を無理矢理引っ張っる。
「いや、俺はもう今日一生分のソーダ味を食ったのだけど……」
「24時間ファミレスにGOだ!」
 聞く耳を持たずに奏を引き摺るように駆け出し、それに仲間達も続く。
「綺麗な星空だな。夏の大三角形がよく見える。こういう夜はぐっすり眠って、良い夢を見たいものだな」
 最後に真也が歩き出し、星の輝く夏の夜空を見上げて呟いた。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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