●海馬の夢
ずり……ずるり……びしゃ……ずるり……。
狭苦しい暗闇の中を、何かが這い進む。
そいつは街の下で、人知れず下水道を這い回る。入り組んだ経路を進み、気まぐれに地上を目指す。狭い狭い縦穴を上に進むと見えてくるのは、円形の金属蓋。
ゴゴゴゴゴ……重い金属音を立てて、マンホールの蓋が開いていく。
生じた隙間に、金色に光る一対の瞳。
「ひ……っ」
息を呑んだ海馬の姿を間近に捉えた瞬間、狭い穴倉には到底収まり切らないはずの大質量が躍り出た。
それは、二本足でそびえ立つ、巨大なワニ。
「グルルルルル――シャァァァァァ!!」
牙を並べた大口がパカリと開き、海馬はワニに丸呑みにされた。
「ぎゃあああああ――あ!? ……え、夢か……マジか……」
自室で飛び起きた海馬は、こめかみから伝う汗をぬぐって、安堵の息をついた。
「あーびっくりしたー……学校で巨大ワニのウワサなんか聞いちゃったせいかなー」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
「は!?」
間近で囁くような言葉に目を丸くした瞬間、海馬の胸に巨大な鍵が突き立てられた。
魔女の手により心臓を一突きにされた海馬の意識は途切れ、ベッドに逆戻り。
その傍らには、子供部屋の天井を突くほどの巨大ワニが、新たに顕現するのだった。
●巨大ワニのビックリ大作戦
「『都会の下水には巨大ワニがいる』……よく聞く与太話だけれど、ドリームイーターならば、利用すると思っていたわ……」
たどたどしくも知性的に呟くルベウス・アルマンド(紅卿・e27820)に、戸賀・鬼灯(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0096)は静かに首肯した。
「お見事な先見でございました。こたびは、小学六年生の海馬君が見た夢に端を発しております」
子供が夢でビックリして、夜中に飛び起きるというのはよくある事。そんなありふれた『驚き』を、第三の魔女・ケリュネイアは奪い取り、新たなドリームイーターを現実化してしまう。
海馬が見た夢は、『下水道の巨大ワニ』がマンホールを開けて人を丸呑みにする、というもの。現実化されるのは、もちろんこの巨大ワニだ。
「魔女は既に姿を消しておりますが、この巨大ワニも人を襲う性質のもの、決して放置はできませぬ。早急な撃破をお願い致します」
巨大ワニさえ撃破できれば、自室で昏倒したままの海馬も、やがて目を覚ます事だろう。
敵は巨大ワニ1体。配下はいない。
金色の眼光で睨み付ける、大口を開けての威嚇、丸呑みせんばかりのかみつき、といった攻撃を行ってくる。
巨大ワニが徘徊するのは深夜の下水道。海馬の眠る家の近所となる。
「これなるドリームイーターは、他者を驚かせる事を至上の存在意義としております。それ故、付近のマンホール周辺を歩いているだけで、意気揚々と向こうから寄ってきて、皆様を驚かせんと奮闘してくれましょう」
鬼灯は現場の地図を広げ、範囲を区切る。下水に繋がるマンホールは、全て道路上に分布しているようだ。
「時は深夜。周辺の交通量はほぼ皆無となりますゆえ、こちらの交差点のマンホール周辺にて待ち構えるのが適当でございましょう」
片側に歩道橋のある、かなり広めの交差点だ。簡単な人避けだけしておけば、戦場にするには十分な立地だろう。
また、現れた巨大ワニはまず、大口を開けた威嚇で相手を驚かそうとする。
この時、威嚇が通じなかった相手……すなわち、驚かなかったケルベロスを優先的に狙って攻撃してくるようだ。この性質を利用し、戦いを有利に運ぶ事も可能だろう。
「子供の夢から生み出だされた存在が、人を害するなどあってはなりませぬ。海馬君が安心して目覚められるよう、被害が出る前に確実な討伐を、お願い致します」
参加者 | |
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天津・総一郎(クリップラー・e03243) |
立花・吹雪(一姫刀閃・e13677) |
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046) |
ルベウス・アルマンド(紅卿・e27820) |
霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284) |
言葉・彩色(妖シキ言ノ刃・e32430) |
愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053) |
伽藍堂・いなせ(不機嫌な騎士・e35000) |
●交差点封鎖完了
深夜の交差点は人の姿も車の通りもなく、すっかり静まり返っている。
「街中にワニが出るなんて、都市伝説かっつーの」
周辺に民間人がいない事を確認し終えた伽藍堂・いなせ(不機嫌な騎士・e35000)は、傍らのガードレールに姿勢悪くもたれかかりながら、紫煙をたなびかせる。
都市伝説を下地にした存在というのなら、弱点も流布されていてくれたら良かったのだが、さすがにそうそう都合よくはいかないらしい。
「下水道にワニ……確かに都市伝説としてはポピュラーなものですね」
愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053)は件のマンホールから這い出てくるワニの姿を思い描き、ごくりと喉を鳴らした。
「確かに薄暗くてジメジメしてるし、ワニが生息していてもおかしくはないな……ジャングルってそんな気候だよな?」
キープアウトテープで交差点の一方向を封鎖しながら、うろ覚えに首を傾げる天津・総一郎(クリップラー・e03243)。
「類型の話では、『長い地下生活で色素が抜け落ちた白い鰐』とされる事もあるね。今回の巨大鰐は、一体どんな姿かな?」
言葉・彩色(妖シキ言ノ刃・e32430)は白い仮面の下で興味深げに笑みを刷く。
「マンホールから出られる程度なら、たいしたサイズじゃないのかしら……いえ、油断は禁物、ね……」
他の道を封鎖しながら、ルベウス・アルマンド(紅卿・e27820)は知的に思考を巡らせる。
「殺界、はっておいた。これで民間人はちかよれないはずだ」
「お疲れ様なのです、ヒダリギちゃん。ふああ……ねむいのです。早いとこ終わらせて、帰って寝るのですよ」
近衛木・ヒダリギ(森の人・en0090)を労ったのち、ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)は手持ちのランプを揺らしながらあくびをした。
最後の分岐を封鎖し、立花・吹雪(一姫刀閃・e13677)が仲間達を振り返る。
「少年を悪い夢から救い出すためにも負けられませんね。皆さん油断せずに参りましょう!」
かくて交差点は四方をキープアウトテープで封鎖され、さらに殺界形成で二重に閉ざされた、正方形の戦場が完成した。
残るは、ワニが出現するのを待つのみ。
(「ワニさんそのものは嫌いではないんですよね……。だからこそ、悪事を働くワニさんは懲らしめてあげないといけません!」)
ワニと因縁浅からぬ霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284)も、気合いが入る。
ケルベロスの視線が集中する中、ほどなくして、マンホールの蓋が重々しい音を立てて持ち上がった。
●驚かせたいワニ
ゴゴゴゴゴ……もったいぶってマンホールが開口していく様を、総一郎はわくわくと見守った。
「どんなワニなんだろうな。クロコダイル? アリゲーター? サルコスクス?」
一方、固唾を呑んでゲシュタルトグレイブを抱きしめる心恋。
「わ、ワニなんか……怖くありません……!」
生じた隙間の暗闇に、金色の眼光が怪しく閃いた。
次の瞬間、金属蓋がはじけ飛んだ。開口部から顔を覗かせるや否や、まるで風船が膨らむように体を膨張させ、高々と立ちはだかる。
「――……っ」
三メートル近くはあろうかというワニの巨大さに、ルベウスは目をまん丸にして、真っ赤な羽をけば立てて硬直してしまう。子供の想像力を考慮に入れていなかったようで、意外とわかりやすい、本気の驚愕っぷりであった。
巨大ワニは海馬の夢の通りに二本足でそびえ立ち、口蓋をパカリと開いた。
「グルルルルル――シャァァァァァ!!」
質量さえ感じる咆哮。
「ひぐぅ!?」
うっかり上げかけた悲鳴を涙目で呑み込んだのは心恋。盾役として、ここは耐えねばならぬところだと、必死にこらえる。若干グレーなリアクションに、これは驚いているのかどうかと、ワニも首を傾げてちょっと困惑気味である。
一方、他の面々は模範的な驚きっぷりを披露する。
「なんでこんなところにワニがいるのですか!」
すっかり目を覚ました様子で、ビックリしてみせるヒマラヤン。
「街中にワニが出てくんなよアホか……っ!?」
声を荒げて一芝居打ついなせ。傍らのウイングキャットのビタは、主の言いつけを守って、反応せずにじっとしている。
「おやおや……これはたまげたね」
彩色の場合、驚き方も飄々としたものである。
「敵が巨大ワニであると事前に知ってはいましたが、これ程の大きさとは……」
至極素直な驚きを零してみせる吹雪。
「すっごくおっきなワニさん!! むしろ、今どうやって下水道を通ってきたんですか!?」
好奇心をないまぜにして全開で驚くユーリのリアクションは、巨大ワニにとっては最も理想的なものであっただろう。
「お口も大きいですよぅ!! ばっくんとされてしまいそうです!!」
囃し立てるようでさえある騒ぎっぷりにご満悦の巨大ワニ。
……が、まるで驚きを見せぬ者も。
「うーん、あえて言うならカイマンに似てるか? ……まあいいや」
ワニの威嚇をけろりと無視して、総一郎は帽子をかぶり直し、グローブを嵌め直し、真正面から巨大ワニに対峙する。ワニ程度で動揺してちゃ、オトナの男は務まらないのだ。
「とっととオメーを倒してポロシャツの刺繍にでもしてやるぜ!」
ワニは剣呑に目を細めると、今度はグラビティの衝撃を乗せた咆哮を放った。
●狙うは驚かなかった奴
咆哮のプレッシャーに身をすくめる前衛。後衛はすぐさまフォローに動く。
「食べられる位なら逆に食べ……られるのですかね? このワニ」
すっかり目を覚ましたヒマラヤンは、巨大ワニに熱心な視線を注ぎつつ、ケルベロスチェインで魔法陣を描き始める。
「カイマンの一種が、食用に養殖されることはあるわ……もっともこのワニは、実在の種とはディテールが違うみたいだけれど、ね」
驚きから立ち直ったルベウスは、気を取り直して博識なところを発揮しつつ、胸元を抑えて呼吸を整える。
「無理っぽいならいいのです。どちらにせよ、この時間から食べるのはちょっと大変なのですよ」
奇妙にリアルな受け答えをすると、ヒマラヤンは完成した魔法陣で治癒と強化を振り撒いた。ルベウスの歌い上げる「幻影のリコレクション」は敵の信念を揺らがせ、その力を落とさせる。
「ワニの鱗板は硬いと聞きましたがどれほどのものか試してみましょうか!」
吹雪は凛々しく声を張り上げると、素早く接敵、鋭く重いスターゲイザーでワニの機動力を奪う。続けざま、電光石火で駆け込んだ総一郎の旋刃脚が敵の動きを鈍らせる。
「支援はお任せください……万全に戦えるよう、サポートいたします」
きちんと標的となれているかどうか、ヒヤヒヤしつつ、心恋はメタリックバーストを前衛に広げていく。いなせもまたヒールドローンで守備を固める。
ユーリはライトニングボルトを迸らせながら、ヒダリギを振り返る。
「ワニパワーは強大です! 回復のお手伝いをお願いします!」
「わかってる。全力でなおすよ」
ヒダリギは仲間達に耐性を付与すべく、攻性植物を黄金の果実へと変容させていく。
「ではでは、御耳と御目々を同時に拝借。今宵を彩るは怪異譚。どうか、最期の時までお楽しみいただけますよう」
語るは「怪談」見せるは「不可思議」見させるは「感情」。語り部騙る女狸は、白い狐面の下でくすくす笑う。
(「さぁ、教えてくれないか。キミという『物語(いろ)』を、キミの『存在(ことば)』で」)
「今よりこの場を彩るは、火車と呼ばれる火猫の御話――」
彩色の放つ熾炎業炎砲が、ワニの巨体を容赦なく炎で包み、焼き捨てる。
「グゥ、ウガァッ」
巨大ワニはうっとうしげに炎を払うと、凶悪な牙を剥き出しにして突進してくる。上下に開いた不気味な口蓋が総一郎を捉え、ばくんっ! 丸呑みにする勢いで胴部に噛み付く。
「ぐあ……っ」
肉食動物が人間を呑まんとするえげつない迫力と、盾役の防御を貫き、なおかつ電信柱を巻き込んで薙ぎ倒す衝撃。ケルベロス達は息を呑む。
「さっすが、ハンパねェ威力だなっ……!」
ブレイブマインで強化を施すいなせは、傷の様子と治癒の手応えからダメージを推し量り、驚嘆に似た声を上げた。
「貴方だけに捧げる詩……身も心も、私の歌で癒します」
心恋は愛情歌を歌い上げる。オンリーユー・ラブソング。あたかもたった一人の想い人へとそうするように想いを込めて、凄惨な傷を瞬く間に塞いでいく。
「距離を取った方がいい、かしらね……」
翼を広げ、聖なる光を放ちながら、心持ち身を引くルベウス。決して、爬虫類が苦手なわけではない。……ちょっと気味が悪いだけである。
「この一撃の重さは厄介ですね。その力を封じるとしましょう」
吹雪は極限まで精神を集中させ、研ぎ澄まされたサイコフォースで敵を打ち据えた。
「ワニと言えば水タイプ! 麻痺攻撃でびりびり! 動けなくさせてしまいます!」
ユーリは激しい電流を発しながら、超高速の稲妻突き。一貫した麻痺攻めで、徐々に敵の動きを鈍らせていく。
次々と浴びせられるグラビティに、自慢の牙と膂力を緩やかに抑えつけられ、動きを制限されていくワニ。その鬱憤をぶつけるように金の瞳で睨み付けた先は、心恋。先の微妙~なリアクションを、「素直に驚いてくれなかった」と解釈した模様である。
「うく……っ、あ、青くない……だから大丈夫……!」
テレビウムのメロディの治癒を受け取りながら、必死に自己暗示をかけて耐える心恋。もちろん、ワニが青い目の白竜に進化するなどということはない。
「はーい、痛くしないので、逃げちゃ駄目なのですよ~?」
すかさずヒマラヤンが取りいだしたるは巨大注射器。怪我人にぷすりと刺せば、中の液体(?)が痛みもなく痕も残さず傷を癒してくれる。
「上手いコト乗ってくれたみてぇだな……」
十分な治療はなされたと見て、手隙のいなせはストラグルヴァインを敵へと伸ばしながら、ニヤリと口の端を持ち上げた。
●謎は日常の真下に
まんまとケルベロスの思惑に嵌ったワニは、ディフェンダーのみを狙い続ける。攻撃の威力は決して侮れないものの、堅い防護と回復に盤石を期した布陣には十分な余裕があった。
「グルゥ……シャシャシャシャアアアァァァ!!」
攻めあぐね、苛立ち混じりの威嚇を轟かせる巨大ワニ。
「お前ら、根性見せろよ!」
しかし列を巻き込むプレッシャーも、いなせのfast aidによって瞬く間に霧散した。ビタは黒い肢体を翻して、治癒に掛かり切りになる主に代わって敵へと飛び込み、ワニの鼻づらを鋭く引っ掻く。
同じくウイングキャットのヴィー・エフトに攻撃を任せるヒマラヤン、メロディと守りを固める心恋の治癒が瞬く間に傷を癒し、陣営を堅固に維持する。
「今よりこの場を彩るは、蜘蛛の身体に牛の頭もつ鬼の御話――」
実在した怪異譚『廃工場の牛鬼』。彩色の操るそれは下法の術。かつての敵の『存在(いろ)』を『力(ことば)』として再現、具現化された鬼は、ただただ周囲を薙ぎ払う。
「雷全開ですよ!!」
ユーリはライトニングロッドを振るい、莫大ないかずちを迸らせた。激しい雷撃の中で巨大ワニのシルエットが滑稽に痙攣する。
「俺の太陽は勢いよく昇るけどよォ~、オメーの太陽は沈む時だぜ!」
総一郎は二本足で立つ巨大ワニの懐に果敢に飛び込むと、一瞬身を屈め、全身をバネにして大きく跳び上がった。【 天道 】。日が昇るが如く勢いをつけた掌底が、アッパーの如くワニの顎に叩き込まれる。
「雷光一閃……貴方に見切れますか?」
全身に雷の霊力を駆け巡らせ、己の能力を限界まで引き出す吹雪。その手に構えるは斬魔刀【絶花】。
「少年を蝕む悪夢をこの一閃で切り裂く!」
雷纏う刃が斬り込む。雷華。放たれた斬撃が、雷を花の如く輝かせた。
「昼でなく、夜でなく……生であり、死であり……石膏のように、雨露のように」
ルベウスの詠唱に呼応して、胸に埋められた宝石状の魔術回路が、淡く輝く。
「……気丈に羽ばたき、無邪気に爪を剥く……」
緑色の輝きを放つオーラが形作るのは、猛禽に似た霊的生物、エメラルドホーク。
意志持つ緑の鷹に、強烈な一撃で打ち据えられたワニは、白目を剥き、ゆっくりと前のめりに倒れ込む。
鷹の燃え尽きる緑の残滓と、泡のように霧散していく夢喰いの残滓が、宙に溶けて消えていく。それこそまるで、夢の中の一幕であるかのように。
「あー終わった終わった」
清々したとばかりに伸びをしながら、早速ヤニを求めて懐をまさぐるいなせ。
「今宵を彩った物語『下水道の巨大ワニ』……これにて、閉幕」
滔々たる口上で落着を告げると、彩色は「さて、お片付けかな?」と交差点を見回した。
アスファルトはところどころ罅割れ、ガードレールは凹み、信号機の支柱はひん曲がり……ワニの暴れ回った傷跡はなかなかに豪快だった。
「あんな巨体で暴れられると、こうなってしまいますよね。わにわにパワーでしっかり治します!」
ユーリは両手を合わせて、ワニの口のようにパクパクさせた。決して遊んでいるのではない、かつて自身の病魔であった巨大ワニの力を無理やり引き出し、野生の力をヒールに変えているのだ!
「まずいのです。戦ってたら眠気がどっか行ったのです。明日お仕事なのですよ」
心恋、ヒダリギと共に修復に勤しみつつ、ヒマラヤンが難しい顔をしてぼやいた。
はじけ飛んだマンホールの修復を行いつつ、総一郎はふと考え込む。
「にしてもマンホールの中って、一番身近にある洞窟みたいなもんだよな……もうすぐ夏休みだし、洞窟探検を兼ねて一つ潜ってみるのもいいかも……?」
「いや……危険でしょうし、何より不潔ですから、あまりお勧めできませんが……」
傍らで瓦礫を片づけながら、吹雪は柔らかく苦笑する。
交差点の封鎖を解き終えて、皆の元に戻ったルベウスもまた、マンホールの奥底を見透かすように目を細めた。
「あんな風に、地下で細々と生きている動物達も、いるのかしらね……」
重々しい金属蓋に閉ざされた地下は答えを返さず、謎と浪漫を秘めて、不気味に沈黙を保ち続けている……。
作者:そらばる |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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