鎌倉ハロウィンパーティー~trap!

作者:彩取

●賑わいの陰
 街に溢れるハロウィンカラー。
 鮮やかな色の南瓜ランタンに、店頭の網籠に並べられたお化けモチーフのお菓子達。
 お好みとあらば、蝙蝠が鍵番をしている小さな宝箱にお菓子を詰めて、お家に持ち帰るのだって構わない。そこ行く愛らしい魔女のお嬢さんには、お伴に黒い仔猫のぬいぐるみか、あるいは宝石を咥えた鴉のバレッタなどもお勧めしましょう。
 そんなうたい文句がずらりと並ぶ街中を歩く、一人の少女。
「……はあ」
 秋町ゆめるは学校からの帰り道で、深い溜息をついた。
 雑貨店も、お菓子屋さんも、どこもかしこもハロウィン仕様。
 勿論、ゆめるもハロウィンは好きだ。しかし、賑やかな場所が苦手なのである。
 どうしても気後れしてしまうし、第一極度の人見知りだ。この秋に転校してきたばかりという事もあって、一緒に遊べるような友達もまだいない。
 だから今年も、その賑やかさを眺めるだけ。
「でも……わたしも参加したいなぁ」
 社交的で、パーティーを楽しめる人が、とても羨ましい。

「その夢、かなえてあげましょう」
 その声が聞こえたのは、ゆめるが願いを呟いた瞬間だった。
 手に持つ鍵で、ゆめるの心臓を貫いた者――赤い頭巾のドリームイーターの少女は、倒れゆくゆめるを見ながらこう言った。
「世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 やがて、赤い頭巾の少女の隣に、人型が生まれた。
 頭からつまさき、指先に至るまでモザイクに覆われたドリームイーター。魔女の衣装を身に纏った小柄なドリームイーターは、その場から姿を消したのだった。

●trap!
「日本各地で、ドリームイーターが暗躍しているようです」
 藤咲・うるる(サニーガール・e00086)の調査により判明した事件。
 現在出現しているドリームイーターは、ハロウィンのお祭りに対して何らかの劣等感を持っていた人達から生まれ、ハロウィンパーティーの当日に一斉に動き出すようだ。
「敵の出現地は、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場、鎌倉です」
 よって、パーティ開始までに、ハロウィンドリームイーターを撃破して欲しい。
 ジルダ・ゼニス(レプリカントのヘリオライダー・en0029)はそう言って、ケルベロス達に今回のドリームイーターの特徴を説明した。
 ハロウィンドリームイーターは、パーティー開始と同時に現れる。
 よって、パーティー開始時間よりも早く、あたかもパーティーが始まったように楽しそうに振る舞えば、誘き出す事が出来るだろう。その見た目は、予知の通り全身がモザイクと化した少女型。フリルやリボンが沢山あしらわれた黒のゴシックドレスを身に纏い、魔女にはお決まりの三角帽子をかぶっている。
 するとジルダはタブレットで地図を開き、ある一点を示した。
「出現地域はこの辺りなので、誘き出すならこの公園が良いでしょうね」
 ここなら広さもあり、戦いに困るような事はない。
 そう説明を終えたジルダは、結びの言葉を隣にいたうるるに託した。
「大勢の人が楽しみにしている、大事なハロウィンパーティーだもの。ケルベロス皆で力を合わせて、ハロウィンドリームイーターを倒しましょ!」
 日傘をくるりと回しながら、仲間達を見つめたうるる。
 さあ、世界で一番盛り上がるハロウィンパーティーの前に、華麗なる罠を仕掛けよう。


参加者
藤咲・うるる(サニーガール・e00086)
レグリス・リュシザード(死の番人・e00250)
ポート・セイダーオン(異形の双腕・e00298)
オペレッタ・アルマ(ドール・e01617)
シャンドール・ホークアイ(鷹の目・e01876)
桐野・七貴(秋桜散華抄・e07329)
野々宮・イチカ(ギミカルハート・e13344)
ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)

■リプレイ

●trap!
 電灯には風に揺れる蝙蝠の飾り。
 お祭り仕様の公園の中、滑り台の上にどーんと鎮座した南瓜お化けも、ハロウィンの雰囲気をぐんと引き立てている。更に、野々宮・イチカ(ギミカルハート・e13344)が設置した簡易用の机の上には、可愛らしい南瓜ランタンと、皆の用意したお菓子がずらり。
 あっという間に、お茶会の準備完了だ。
「Trick or Treat! お菓子をくれなきゃ実験するぞ!」
 始まりを告げたイチカの仮装は、白衣を羽織った魔女姿。三角帽子とキャンディバーの杖を手にした彼女の前にも、個性的な面々が揃っている。
「せっかくのケルベロスハロウィンを台無しにされたら困るもの。パーティーの前に一仕事しなくっちゃね。でも、折角だから、お菓子も楽しみましょ!」
「……そうですね。敵が出てくるまで、楽しみましょう」
 笑顔で語るのは、白い魔女姿の藤咲・うるる(サニーガール・e00086)。全身を隠す大きなローブと三角帽子を被るのは、ポート・セイダーオン(異形の双腕・e00298)だ。
 うるるからクッキーを受け取るポートのローブの袖口からは、両腕の地獄が幻想的にゆらゆら。また、寒色を纏い氷の魔女に扮したレグリス・リュシザード(死の番人・e00250)は、ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)に語りかけた。
「ディオは狼の使い魔か? 似合うな」
「応、地下深い煉獄の銀狼。そう言うレグリスは氷の魔女か……良く似合ってるぜ?」
 赤と黒を基調にした民族調の上着、毛皮の縁取り、はては銀の装飾類まで天然モノの仮装。そんな彼にレグリスは淹れたての紅茶を手渡した。
「魔女の姿になるのは初めてだ……紅茶は美味いか?」
「ああ、格別美味ェ……わいわいすンのも良いモンだナ?」
 と、そこにひょこりと現れたのは、
「魔女さま。お菓子をおめしあがりになりますか? おすきなものを、おもちします」
 ディオニクス同様、魔女の使い魔である黒猫だ。
「『これ』は使い魔です、おやくにたちます。……にゃーん」
 にゃーんだけど無表情、でもとても愛らしい。
 オペレッタ・アルマ(ドール・e01617)はふわふわの耳にしゅるるんとした尻尾。袖なし黒ブラウスにふんわりドロワーズのボリュームが特徴だ。そんなオペレッタの傍には、カラスに化けたシャンドール・ホークアイ(鷹の目・e01876)の姿もある。
「オペレッタには、こちらのお菓子をたくさんあげましょう」
「『チョコレイト』、……はい、頂きます」
「イチカも準備お疲れ様です。マフィン――焼き菓子はいかがですか?」
 途端、シャンドールが見せた宝石のように艶々のチョコを前に、猫の瞳はキラリ二割増し。またイチカも南瓜型マフィンを手に、喜びのままに声をあげた。
「使い魔の皆もかっこいいかわいい、全員使い魔にしたい! あれ?」
 その時、音源に繋げた携帯スピーカーから、音楽が流れ始めた。
 意表を突くように跳ねる旋律に、エコーの掛かったお化け達の可愛い合いの手。
 ただ、その楽しい音楽を用意した桐野・七貴(秋桜散華抄・e07329)は思案していた。
 それは主に、自分自身の表情について。
 狼に扮してはみたが、この仏頂面で、お化けが誘い出されてくれるだろうかと。
 しかし、七貴がふと公園の入口を見た、その時である。
「――どうやら、杞憂になったようだな」
 念を入れて人避けを施した公園に現れた、魔女姿の人物。
 間違いなく、ゆめるの夢から生まれたドリームイーターだ。
「罠にかかってくれたようで、何よりだ」
 そう告げ、愛用の日本刀に触れた七貴。
 さあ、役者は勢ぞろい。それでは早速、楽しいパーティーを始めよう。

●Trick――!
 逃げ道を塞ぐように。可能なら回り込み挟撃、あるいは包囲を狙う。
 その方針の元、ケルベロス達は徐々に接近するドリームイーターとの距離を窺い、然るべき間合いに敵が足を踏み入れた瞬間、一斉に展開した。
「お客様に最高のTrapを……――さァ、狩りの始まりだ」
 敵を見据え、拳を打ち合わせるディオニクス。
 丁度敵の真正面に構えた彼の得物は、肩まで覆う、魔獣を模した縛霊手。
 程なく、両手の爪を擦り合わせ浮かべた獰猛な笑みが、開戦を示したその瞬間、
「Trick but Treat! 悪い子にはおしおきよ!」
 うるるは挨拶に合わせて、敵にウイルスカプセルを投射した。それは相手の特性を踏まえて投じられた布石。すると白い魔女は瞳をキラリと輝かせ、顔のない魔女へと告げた。
「魔法使いのサバトへようこそ。歓迎するわよ、ドリームイーター!」
 少々手荒い歓迎なのはご愛嬌。
 背面で嘯くうるるの後に、側面へと回ったポートも続いた。
「子供の夢を弄ぶ……見ていて気分の良いものではありませんね」
 静かに呟く声に対し、振るう腕は力強い。
「……捉えた!」
 身の丈に見合わぬ、巨大な機械の両腕。鋭い爪先に纏う炎は、自身が手にした地獄の炎。それを力の一滴まで躊躇なく、ポートは敵へと叩きつけた。
「潰させて頂きます、お覚悟を」
 手応えを得てもなお、紡ぐ言葉は涼しげなもの。しかし直後、ドリームイーターも笑い声をあげながら反撃に打って出た。
「アハハ! 楽シイパーティー、アタシと一緒に遊びまショ」
 芝居めいた台詞と共に、ポートに襲いかかるモザイク弾。
 それを防いだ七貴も、風を裂くように戦場を駆けた。
「ゆめるがパーティーを楽しむのに、貴様の力など必要ない」
 鞘より抜いた刀に、空の霊力を与える七貴。狙いは一つ、仲間達が付けた傷痕だ。全ては夢を奪われ、眠り続ける少女の為。
「――消えてもらうぞ、夢喰い」
 直後放たれた一閃が、モザイクの魔女を斬り裂いた。
 当然、これは真剣勝負である。けれど、今日はハロウィンで、敵の正体は歪められた少女の夢。ともあれば、少し雰囲気を出しても罰は当たらない。
「遊びたいのはどっちの子?」
「ドッチ? だあれ? フフフ!」
 カタコトの魔女も何処か楽しげ。
 だから続くイチカの言葉も、軽やかかつ、高らかに響き渡った。
「それじゃあね、どっちもわたしとあーそびーましょ!」
 再び戦場を翔けるウイルスカプセル。
 直後更に加速する戦況の中で、ディオニクスにモザイク弾が直撃した。
「――悪戯かお菓子か、っと。悪戯は遠慮してェなァ?」
 対し、斯くも愉快とばかりに弧を描く鮮血の双瞳。その高揚感が薄れぬ内に、すぐさま地獄の炎を纏う一撃を繰り出すディオニクス。モザイクの魔女を襲う銀狼の黒き炎。それに続いたのは、氷の魔女たるレグリスの操る力だ。
「ディオの炎の爪と、俺の氷の鎌」
 万物が凍て付く凍土の魔法。
 氷華が咲くように冷ややかに、死が降りるように厳かに。
 吹雪を模った氷河期の精霊が、レグリスの示した敵へと襲いかかる。
「踊らせてやろう、存分に――」
 それは、華麗なる炎と氷の重奏撃。
 だが、敵のモザイクにはそれを拭い去る回復の力もある。
「イイわ。モット楽しく踊りまショ! それとも、そろそろ御休みスル?」
 当然、それも想定内。故にシャンドールは冷静に、治癒の力を選択した。次の攻撃に備え、ディオニクスに向けたのは分身の術。メディックであるシャンドールの放つ治癒の力は、同時に仲間の痺れを打ち祓い、敵の攻撃への耐性も併せてもたらした。
「眠りに落ちるのは、貴女の方ですよ」
 悪い魔女が倒される。その定石は、この戦場でも例外ではない。
「それに、折角のパーティーを邪魔されたくはありませんし」
 夢の本当の持ち主、ゆめるを助ける為にも、モザイクの魔女は逃がさない。そうして後方より構えるシャンドールの言葉に、首を傾げて奇妙に笑うドリームイーター。
 その首を傾げる姿に、ふと先程の事を思い出す者がいた。
 加速突撃を放ち終えたオペレッタである。
 誘き出しの席にて、手渡された小さなお菓子、チョコレイト。
 あの瞬間、胸のあたりに感じたあたたかさは、一体何だったのだろう。
「『これ』には……よく、わかりません。アナタは、『楽しい』をしっていますか?」
 キラキラ、そわそわ。そんなハロウィンの魔法を、楽しいココロを、知っているのか。
 しかし、モザイクの魔女は答えない。
 代わりに、愛らしく、悪戯っ子のように小さな笑い声を零してみせた。

●Treat――!
 両腕の羽根飾りを揺らしながら、仲間の治癒に努めるカラス。
 集約したオーラを仲間の為に。そうして前線を支え続ける中、シャンドールは敵の姿を通して、ゆめるへと思いを馳せた。
 友達のいない人見知りの少女。
「……僕も、あまり参考になる事を語れはしませんが」
 それでも、勇気を出して一歩を踏み出せば、きっと何かが変わる筈。それが怖いと感じるのなら、自分達が力になりたいとイチカは思った。
 機器の砦から離された自分の手を、引いてくれたあの人のように。
(「お姉ちゃんはもういないけど、それでも――」)
 今はもう怖くはない。
 だからイチカは、柔らかな手を伸べるように告げた。
「ゆめるちゃんにとって、今日が、その一歩目だよ」
 瞬間、身に宿る地獄の炎で編みあげたのは、本来なら電波が描く心電図の如き波紋――左の乱数(ハートノイズ)。在る筈のないまなうらに浮かぶ、覚えなき炎の夢にもがくモザイクの魔女。そこに、レグリスとディオニクスが畳み掛けた。
「魔女は火炙りと相場が決まってる。燃やし尽くしてやるよ」
 炎は夢から、現の熱へ。燻し銀の髪が揺れる中、敵を包む地獄の炎。しかし当然、彼ら二人の連撃であれば、続く力は氷のそれ。
「夢を見る時間は――遊びの時間はもう終わりだ」
 レグリスの詠唱により現界したもの。
 それは氷雪のひとひらと、蒼く奔る雷の咆哮。
 終の魔方陣が見せる幻想譚であり夜葬宴、または生と死の狂神録。その力がドリームイーターに襲いかかる中、眼前まで接近したのはポートだった。傷を癒す事も出来たが、この流れを維持する為にも、決して足を止めないポート。
「無常の理、其の身に受けて……!」
 異形の両腕が生み出す破壊の嵐。
 敵を切り裂き、少女の夢からは悪夢だけを引き裂き、目覚めへと導くように。
「……悪夢、終わらせて頂きます」
 そうして繰り出されたポートの豪快な一撃に、少女のものとは思えない声で絶叫するドリームイーター。ゆめるであれば決してあげない声を耳に、七貴は蒼色の瞳に敵を映し、弧を描くように刀を振るった。
「――ゆめる、もうすぐ本当のパーティーが始まる時間だ」
 目の前の敵は、人に仇名す悪しき夢喰い。
 しかし、刃が敵を裂こうとも、この口で紡ぐ言葉は、少女の為に。
 その思いを胸に、己の技量からなる練磨の一撃を繰り出し、なおも構え直した七貴。
 そこに、うるるもふわりと踏み切り、白い魔女帽子を揺らしながら近づいた。
「今日はハロウィンだもの、少しの勇気できっと素敵な夜になるわ」
 きっと大切なのは、諦めない心なのだ。
 夢を夢のまま俯かず、空を見上げて明日への一歩を踏み出す事。
「だから、そろそろお目覚めの時間よ! 寝坊するのはもったいないわ!」
 そう発したうるるが放つ降魔の一撃がモザイクの魔女へと届く中、最後の一撃を繰り出すべく、ぴたりと足を止めたオペレッタ。
「『チョコレイト』を、ください」
 その問いに、モザイクの魔女はふるると首を横に振った。
 それが黒猫への答えなのか、次の一撃を嫌がる素振りだったのか、この一瞬にその判別を下せた者はいなかったに違いない。
「おもちでないのでしたら、『イタズラ』を『実行』します」
 しかし、どちらであっても、オペレッタの行動は変わらない。
 ff(フォルティッシモ)とは、きわめて強くを意味する言葉。それでもステップは猫のように軽やかに、風を置き去りにする加速の直後、その一撃は至近距離から繰り出された。
「――ッアアアアアア!!」
 皆が見守る中、溶けるように消えゆくドリームイーター。
 やがて、南瓜お化けの姿に変わった魔女の姿に、
「……にゃー」
 黒猫は別れを告げるように、小さく鳴いた。

●SweetMagic!
 壊れた壁にヒールをかければ、灰色のコンクリートは南瓜カラーにお化粧直し。
 そこにパンプキンシードの色をした蔓草がくるっと絡まれば、元々そういう飾りがあったみたいに見えるのも、ハロウィンの魔法かもしれない。
「うん、これもご愛嬌だよね!」
 人懐こい笑顔でそう語り、イチカはくるりと踵を返した。
 視線の先では再集合する仲間達。七貴が丁度、ドリームイーターの残した南瓜お化けのオブジェを、滑り台の南瓜達の横に並べ終えたところだった。
「しかし、魔女の仲間に使い魔に、バリエーションに富んだ一行だな」
 魔法使いに魔女に黒猫に加え、カラスや色違いの狼まで勢ぞろい。
 そんな七貴の言葉に、オペレッタが呟いた。
「『これ』は考えます。ゆめるは、目を覚ましたでしょうか」
 それは、今日まで眠り続けていたゆめるの事である。
 イチカの魔法の杖のキャンディバーに、オペレッタの添えたチョコレイト。一同はそこに可愛らしい魔女の衣装と共に、ハロウィンの招待状を添えて少女に贈ろうと考えていた。それが少しでも、ゆめるが勇気を持てるきっかけとなるよう、願いを込めて。
「もう目は覚ましたと思います。これで、ご両親も安心しますね」
「小さなウィッチも、はやく元気になるといいですね」
 ゆめるの体調を心配しながら、少しでも彼女が早く元気になりますように。そう語るポートやシャンドールの言葉に、レグリスも魔女に扮した少女の姿を思い浮かべて言った。
「しかし、そうなるとゆめるは立派な魔女だな」
 彼女の参加を待っている魔女仲間が、こんなにいるのだから。
 すると、悪戯っぽく目を細めたのはディオニクスだ。
「参加する時は、小さな魔女さんの足になってやるかね」
 例えば肩車をして、銀狼の肩の乗り心地は如何かと訊ねてみる。その時、魔女の少女はどんな表情をするのだろう。勿論、それが現実になるか否かは、ゆめるの勇気と決断次第。
 けれど、きっとゆめるなら。
 不思議とそう思いながら、うるるは笑顔でこう言った。
「大丈夫。可愛い魔女さんへの招待状に、お誘いの期限なんて設けてないもの!」
 いつだって、ハロウィンのお化けは貴女の事を待っている。
 したためた言葉は、悪戯でも罠でもない、本当の気持ち。
 だから勇気を持って踏み出せば、ゆめるの夢――楽しいパーティーを皆と楽しみたいという願いは、夜に見る願望から、楽しい思い出へと化けるだろう。

 だからさあ、招待状に魔法を込めよう。
 魔女のお嬢さんが勇気を持てる、とびきりのお菓子と思いを添えて。

作者:彩取 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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