●南瓜王子
「……、はぁ……」
紫とオレンジがどぎつく使われた派手なチラシ。『ハロウィンパーティーのお知らせ』と大きくプリントされたそれを手にして、学校帰りの少年はまた溜息をついた。
一昨年は、迷いに迷って結局家から出なかった。去年のパーティーは、会場の前まで行ったけれど、賑やかな声を聞いただけで引き返した。引っ込み思案な彼にとって、楽しいパーティーは手の届かないショーウィンドーの向こうと同じである。
「仮装、してみたいなぁ……」
ハロウィンパーティーといえば仮装がつきもの。少年とて、興味が無いわけではないのだ。去年準備した衣装は、結局出番のないままクローゼットに眠っているけれど。
「でも、どう思われるかなぁ」
くすくすと、或いは指を指されて笑われないだろうか。
あれ誰? なんて眉を顰められないだろうか。
誰も本気の仮装なんてしていなくて、一人浮いたりしないだろうか。
普段は全く目立つところの無い彼である。張り切ってパーティーに参加した挙句悪目立ちするのではないか、と心配でしょうがないのだ。
だが、その時。
「ハロウィンパーティー、ですか」
背後で囁く少女の声。驚いて振り向いた彼の視界には、赤い頭巾を被った少女の姿。そして、少年が何かを口にするより早く、少女は何かを彼の胸へと突き立てる。
それは鍵。彼を何一つ傷つけることなく、けれど心を抉る鍵。
「その夢、叶えてあげましょう。――さぁ、世界で一番楽しいパーティーで、その心の欠損を埋めるのです」
力なく崩れ落ちる少年。傍らに、南瓜のマスクを被り、王子様の衣装を着込んだ姿が現れる。『彼』が剥き出しにした腕や脚は、肌を見せる隙間すらなくモザイクで覆われていた。
●ヘリオライダー
「藤咲・うるる(サニーガール・e00086)さんの調査によると、楽しいハロウィンの時期に、日本各地でドリームイーターが暗躍しているようなのです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がケルベロス達に齎したのは、ハロウィンパーティーの日にドリームイーターが現れるという知らせ。
ハロウィンのお祭りに気後れしている人達が、次々とハロウィンドリームイーターに変えられ、楽しげなパーティーに集まってくるというのだ。
「ドリームイーターが現れるのは、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場――つまり、鎌倉のパーティーに違いありません」
セリカの予見によれば、ハロウィンドリームイーターはパーティーが始まると同時に現れるという。ならば、パーティーが始まる時間よりも早く、あたかもパーティーが始まったように楽しげに振るまえば、ドリームイーターをおびき出すことが可能だろう。
「皆さんに対処していただきたいのは、南瓜の王子様の姿をしたドリームイーターです」
ケンスケという中学生の少年から生まれたそのドリームイーターは、全身を覆うモザイクを飛ばすことで攻撃を仕掛けてくるだろう。冷静さを失わせたり、知識を喰らって呆然としてしまうかもしれない。
それに、ドリームイーターが持つ鍵を、この個体も自在に扱えるようだ。肉体だけでなく精神の傷を突く攻撃には、注意が必要だろう。
「折角のパーティーです。邪魔するドリームイーターは、しっかり撃破してしまいましょう」
そう言って、ふわり一礼するセリカ。そして彼女は、その後で目一杯ハロウィンを楽しみましょうね、と付け加えるのだった。
参加者 | |
---|---|
クロハ・ラーヴァ(熾火・e00621) |
メリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634) |
セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887) |
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994) |
ラピス・ウィンディア(シャドウエルフの刀剣士・e02447) |
城ヶ崎・響子(春日狂想・e03593) |
宇宙宮・護(宇宙警備オルスバン・e08516) |
有内・アナベル(かけだしディーヴァ・e09683) |
●
「ハッピー・ハロウィン!」
ステージに見立てたウッドデッキの上で、城ヶ崎・響子(春日狂想・e03593)がはしゃいだ声を上げた。落ち着いた雰囲気のカフェ、そのオープンテラスも、今日はパーティ仕様で飾り立てられている。
「うーん、音響も完璧ね」
ハロウィンカラーの魔女に扮した響子が手を振る先には、お札を貼り付け中華風の上衣を羽織ったビハインドのニーナ。手伝いという名目だが、その割には随分気合の入った仮装である。
「じゃ、最初の出演者は誰かしら?」
「はいはーい! 私達ですよっ!」
進み出たのはメリーナ・バクラヴァ(ヒーローズアンドヒロインズ・e01634)。小柄で可愛らしいピエロは、だが一人で舞台に立つ訳ではない。
「どーも、お約束だけどトリック・オア・トリート!」
身長に差のある相棒は、同じくピエロのルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)。笑顔の仮面から飛び出ているのは、黒豹の耳だろうか。
「トリートですか? ふっふっふ! ここに皆さんの顔のクッキーが――」
「おっ、ハロウィンらしくモンスターのクッキーだね」
少し形が崩れただけじゃないですかぁー! と騒ぐ相棒の頭をぽんと叩き、ルアが取り出したのは幾本ものクラブ。
「それじゃ、私達のジャグリング、見てくださいっ!」
いつしかメリーナの手にも同じものが現れて、二人の間を飛び交い始める。沸きあがる歓声。そして、容赦なく投げ込まれるクラブを捌ききったルアが、六本を手に構えてみせる。
「上手くいったら拍手よろしく!」
六本を同時に、凄まじい速さで投げ合う二人。息の合った彼らだからこその、圧巻のショウ。
「ありがとうございましたぁー!」
三本ずつを二人同時に受け止める。胸に手を当てて一礼するメリーナ。それを合図に拍手が鳴る中で、ルアもまた礼をしてみせた。
「お、おおっ、流石にあんな芸は持ってないぜ……」
忍者姿にインラインスケートの宇宙宮・護(宇宙警備オルスバン・e08516)。ドリンクを配って回る彼は、しかし内心ドキドキだ。
何故ならば。
(「ひ、人と話してるんだよな……」)
彼こそは、何処から見ても隙の無い、完全無欠の引きこもり。何故外に出ようと思った、というレベルなのだ。
(「引込み思案だって良いさ、一緒に楽しむ準備はOKだぜ!」)
だが、とにもかくにも護は一歩を踏み出した。未成年向けにジュースとお茶を選ぶ辺り、意外と彼も気遣いが出来ていたりするのである。
「ご静聴ありがとうございましたー」
「静聴どころか、実に素晴らしく盛り上がっていましたが」
歌声を披露した有内・アナベル(かけだしディーヴァ・e09683)に、セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)が苦笑交じりの賛辞を返す。実際、ストリートで鳴らしたアナベルの歌は、十二分に場を盛り上げていたのだ。
「わたしもひゅーひゅー言ってますし、ケルベロスハロウィンは無礼講ですよー」
「そう言って頂けると助かりますね」
アナベルの仮装は一族伝来の衣装だ。僅かに色の乗ったアッシュの髪に映える色彩。一方、その鮮やかさに内心感嘆するセレナは、黒一色の着物に模造刀を下げた侍姿だ。普段の騎士姿は仮装にならないという事らしい。
「経費で落ちるから、食べたい物を一杯用意しちゃったんですよねー。今ほどケルベロスになった役得を感じた事はないのだわ!」
有名店の限定パンプキンパイに挑みかかるアナベルに、私も甘い物は好きな方で、と微笑むセレナ。手にした南瓜のケーキは響子の用意したものだ。
「そのケーキは、温かいティーにも合いそうね」
細い声ながら会話に加わるペンギン……もといラピス・ウィンディア(シャドウエルフの刀剣士・e02447)。彼女の着ぐるみは、この会場でも異彩を放っていた。本人の表情に照れた所がないなら、なおさら。
(「一度出る事が出来れば、後はどうとでもなる」)
手ずから淹れた紅茶を振舞いつつ、そんな事を考えるラピス。なお、あのペンギンの手でどうやってカップを持っているのだろう、と密かに注目を集めている事に、彼女はまだ気づいていない。気づいていたら、どんな反応を返しただろうか。
「ふふ、年甲斐もなく楽しくなってしまいますね」
そんな仲間達を眺めるクロハ・ラーヴァ(熾火・e00621)は、賑やかな光景に知らず笑みを零した。
「これほど眩いものを、私は……」
世界はこんなにも華やかで鮮やかだ。四肢の炎が生み出す熱は、少しだけ年下の僚友達が笑いさざめくこの場さえも焼き尽くすや、否や。それすらも彼女には判らないけれど。
「……いえ、中年の感傷はこの程度にしておきましょうか。それよりも」
壁に預けた背中を浮かせ、言葉を切った。鋭く向けた視線の先には、南瓜の扮装をしたもう一人のゲストの姿。
「いらっしゃい、王子様――合言葉は?」
冗句じみた台詞と共に、クロハは仮装代わりの魔女の帽子を投げ捨てた。
●
「ちょうど、一曲終わったばかりです」
緊張走る会場。その中で、一人メリーナが明るい声を上げた。ピエロのズボンを摘んで、ちょこんと気取ったお辞儀をして。
「だから、一緒に踊りましょ、王子様」
突然、ぐん、と仕掛け人形の様に跳ね上がる。それを可能にしたのは旅芸人として培った身体のばね。高く頭上から、流星の如く蹴りを叩き込む。
「上手くいったら、拍手をどうぞ!」
「そう、ダンスパーティーの始まり。貴方と……私達の」
次いで仕掛けたのは、着ぐるみをいつの間にか脱ぎ捨てたラピス。彼女の二振りは攻守それぞれの起点となる。故に、中段に構えた右の一刀は、敵を斬る事に特化した刃だ。
「主役の登場で、やっと幕が上がるから」
幻惑の桜吹雪が彼女を包む。だが真に恐ろしきは幻ではない。半身の姿勢から一足で間合いを詰め、大振りの袈裟斬り。更に身体を捻って斬り上げる――その流れる様な型をデウスエクス相手に決めてみせる剣技こそが、この戦場で華を咲かせるのだ。
「……さぁ、命を懸けて踊りましょう?」
「意外と怖い性格なのね、あなた」
芝居じみた台詞回しにか、それとも無造作に決死を迫る胆力を指してか。冗談めかしながらも遠回しにラピスを褒めた響子は、負けじとケンスケに戦いを挑む。
「お父様に黙って持ち出したんだもの。これで活躍できなかったら後が怖いわね」
やたらと馬鹿でかい片刃の剣を力任せに振り回せば、機械仕掛けの歯が衣装ごとモザイクの身体を引き裂いた。露になった素肌も、隙間なくモザイクに覆われている。
「とりあえず、食べ物は大切にしないとね」
距離を取るべくバックステップを披露する響子。その手にはスイーツの盛り付けられた大皿を忘れない。ふと見れば、ニーナもホールケーキを後方に退避させていた。
「ああ、とっても助かりますー。食べられなくなったらがっかりですしね」
食べたい物のを集めたと言うだけあって、アナベルの食い気にはぶれがない。
「あ、もちろん、デウスエクスはお断りなのだわ。いくら無礼講でも限度があるのですよ」
パーティは後で続行すると暗に宣言して、彼女は長大なる銃を構える。
本来は癒し手たるアナベルだが、遅れたゲストに反撃の暇も与えず歓迎中なのだから、攻め手に乗るのが得策というもの。放たれた凍気の光線が、狙い過たずケンスケを射抜いて氷に閉ざした。
「ハロウィンだって祭りだぜ、恥ずかしくても飛び込んでしまえば楽しいもんさ!」
スケートでめまぐるしく滑りながら、護はエネルギーの矢を放つ。それは意識を胡乱にさせる惑いの矢。狙い澄ました一射が的中し、彼は誇らしげに弓を掲げ――次の瞬間、椅子に足を引っ掛けてすっ転んだ。
「……っ、いてて……、誰だよこんなところに椅子置いたの」
「それが、かの有名な出オチ芸ってやつだよね?」
ででで出オチちゃうわ! と叫ぶ護をよそに、ルアは魔力で発光する斧を振り下ろす。細身ながらもしなやかな獣人の身体から繰り出された一撃は、モザイクすら両断せんばかりの衝撃をケンスケに与えた。
「せっかくのハロウィンなのに、余計な茶々を入れるのはダーメ!」
彼の顔を覆っていた仮面は既に投げ捨てられ、黄金の瞳が爛と輝きを増している。君達が余計な事をしてくれてる所為で、俺達大変なんだぜ、と大げさに嘆いて。
「だーかーらー、悪い子にはお仕置きでーす!」
軽い口調。だがその奥底には真摯な色を滲ませて、黒き豹は牙を剥く。
「悪い子と言うには可愛らしい王子様ですけどもね」
気にしすぎるのは年頃故でしょうか、とクロハは思いを巡らせる。自分があの頃は……と思い出を手繰るには、彼女もまだ早すぎる年齢ではあるけれど。
「――悩みも夢も、彼の代えがたい宝ですよ」
それでも、眩しく輝いて見えるのは、かつて幸せだった時間の欠片がちくりと刺さるからか。ほろ苦く唇を歪め、彼女は両の拳の籠手を打ち合わせる。
「そこに介入するのは、いささか無粋かと……!」
両腕から溢れ出る地獄の炎を叩きつけるクロハ。そして身体に染み付いたヒットアンドアウェイ――しかし、そんな彼女を敵の放ったモザイクが追いかける。
だが。
「させません、騎士の名に賭けて!」
跳ねる銀の尻尾。後ろで結わえた髪を大きく揺らして割り込んだセレナが、指輪から生み出した光の剣でモザイクの弾丸を斬り裂いた。
「まだまだっ!」
しかも、彼女の攻勢はこれで終わらない。一息にケンスケへと迫り、今度は右手の実剣をぶん、と振り抜いた。刃の食い込む、ずしりと確かな手応え。
「そして、ケルベロスの名に賭けて! 我が名はセレナ・アデュラリア、貴殿を倒します!」
●
「ほら、こっちこっち。よそ見しないの」
軽妙に囃しながらも、斧と彼自身の野生とを武器としたルアの攻撃は、まるで獣の牙の様に鋭い。やや膂力に頼り気味ではあるものの、時に斧に籠めた魔力を解放して攻め手を変化させるやり方は、まるで動きを悟らせぬ熟練戦士のそれだ。
「あ、そーだ。飴ちゃんいる?」
何気ない素振りで放り投げた飴玉。それが敵の手に届くかどうかの瞬間、ルアは助走をつけて飛び上がり、脳天から強烈な一閃を見舞った。
「あーっ、勿体無いなぁ」
頭蓋を砕く打撃。だが当の本人は、それよりも無視されて地面に落ちた飴玉が気になるらしい。その様子に少し微笑んだメリーナは、けれどパーティと同じ様には騒がずに。
「……あなたは夢、寂しい影。影に零れた切なる想い」
それは、最も深い記憶の中で手を血に染めて、なお人の思いを伝える事を願った少女だからこそ、戦いの中で辿り着いた思考の果て。故に、決して彼を笑いはしない。貶しもしない。
――ただ、容赦も出来ないというだけの事。
「だからせめて、その散り際は鮮烈に」
裾に仕込んだ黒いスライムが、ケンスケを丸呑みにせんと顎を開く。もっとも、がばり、と捉えたのは半身だけ。それでも動きを縛るには十分だ。
「ウジウジ考えたって、自己完結しちまうだけだ!」
矢を放ちながら、何度も呼びかけていた護。程度は違えども、内側に引っ込んでいた、という部分には共感せざるを得ないのだ。
「でもな、ちょっと前に出るだけで、涙は引っ込んで、勇気が沸いてくるんだぜ!」
ああ、それは自分に言い聞かせた言葉。今日は勇気を出してここに居る。けれど、明日はどうだろう。
いや、明日から俺は変わるんだ。
「なあ、一緒に変わろうぜ!」
なんとなく寝て起きたら忘れそうな気がしないでもない誓い。だが、その決意は滾るマグマとなって、何故かケンスケの足下から吹き上がる。
「そうですね。それが思春期特有の、健全な成長過程です」
意図せず宇宙宮護・二十六歳に痛恨の一撃をぶちかましながら、クロハは一つ頷いた。先輩には時に後輩を導く義務がある。例えそれが、遠い日々への憧憬の裏返しでも。
「若き悩みも成長の種。無闇に奪うのは頂けない」
――ですから、私とも一曲お相手を。
クロハの四肢が、ふ、と陽炎の様にぼやけた。次の瞬間、彼女の地獄化した足が、鞭の様にしなって幾度もケンスケを打ちのめす。
「貴方が踊り、私達が奏でる……円舞曲」
パーティは楽しいかしら、と皮肉交じりに呟いたラピス。無表情なだけにクールな印象を与える彼女だが、しかし戦いへの熱を持たないわけではない。
「我欲するは……蒼穹の果てより召されし光の祝福……」
定められた祝詞を唱えれば、彼女の頭上に集まって煌く光。それは大地の神への祈り。瑠璃の瞳の奥に秘められた意思を神聖なる力へと変える、裁きと赦しの二面を持つ呪言。
「……目に見えぬ隷属を……解き放て」
頭上から降り注ぐ審判の光。それこそが彼女の敵を灼く神秘。速度と技量で戦いを組み立てるラピスが織り交ぜた、目くらましを兼ねた隠し玉なのだ。
流石にケンスケは強敵であった。少しずつダメージを積み重ね、手痛い反撃を喰らう繰り返し。それを耐え抜くことが出来たのは、必死に敵の注意を惹いたセレナと、治癒に力を注いだアナベル達の功績だろう。
「押してる感じなのだわ! もうすこし頑張るのですよー」
身体に流れる魔力を紡ぎ、方向付ける。そうしてアナベルが生み出したのは、シャドウエルフの秘儀たる魔法の木の葉。えい、と小さく押し出せば、セレナに纏わりついて淡く輝き、傷を癒すのだ。
「大技を残してるなら、そろそろ畳み掛けるのです」
大丈夫、破損したら後でしっかり直すのよー、などと言い出したのは、概ね食べ物の避難が終わったからか。そんな判りやすいアナベルの態度に笑みを一つくれ、セレナは愛剣を構えた。
「とはいえ、この身は盾ですから――代わりに、皆さんを守ってみせます」
時に攻撃を仕掛けてもいた彼女だが、ここは無理せず守りに徹する時。黒衣を羽織った白銀の騎士は、そう判断して盾を装備した肩を前に押し出した。
「パーティーを楽しみにしている人が大勢居るんです。邪魔はさせません!」
気合一声。気力を振り絞り、セレナは更なるケンスケの攻撃を耐え凌ぐ。
そして。
「お父様、お母様……力をお借りします」
響子が目を閉じると同時に、彼女の抱く魔力が急速に膨れ上がっていく。サキュバスの父とオラトリオの母、それぞれから受け継いだ流れが彼女の中で反発しながらも混ざり合って。
「ハロウィンを万全の態勢で迎えられるよう、力を尽くすわ」
響子の背には悪魔の翼。そして今、淡く輝く純白の翼が重なる様にして生まれ、大きく羽ばたいている。
「このパーティだって、まだまた楽しむつもりだもの」
そして、魔力が爆ぜた。永劫の悪夢が溢れるのは、時が止まる程に荒れ狂う氷の世界。その中心に取り残されたドリームイーターが、形を失って溶けていく。
「今度は本当のあなたで来てね、ケンスケくん」
それが激闘の終わり。メリーナが届かぬ言葉を優しい少年に捧げた時、南瓜の王子は完全に姿を消していた。
作者:弓月可染 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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