ビルシャナをやっつけて甘いお菓子を食べる話

作者:さわま

●スイーツ男子絶対許以下略
「スイーツなんて軟弱なモノを好んで食べる男は絶対許さぁアアアン!!!」
 ここはとあるケーキバイキングのお店。この手のお店には珍しく男性割引フェアというのを今日から行っており、多数の男性客が訪れていた。
 そんな店に突如として怒れるビルシャナが現れたのだ。
 ビルシャナは目につくものを手当たり次第に破壊していった。
 飛び交う悲鳴、砕け散るテーブルに椅子。
 宙を舞ったケーキが床にグチャリと落ちる。
 全てを破壊しつくすまでビルシャナは暴れ続けるのであった。

●ビルシャナをやっつけて甘いお菓子を食べる話
「みんな大変だ。スイーツ男子絶対許さない明王の出現情報を掴んだよ!」
 開口一番、メモ帳を手にしたヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)が集った仲間たちに言った。
「ビルシャナがとあるケーキバイキングの店を襲撃する事が判明したのだ。事前に察知できたのはヴィルフレッド殿の調査のおかげだ」
「何たって僕は情報屋だからね。これくらい朝飯前さ!」
 お礼をいう山田・ゴロウ(ドワーフのヘリオライダー・en0072)にヴィルフレッドは得意そうな顔をみせた。

「襲撃するのはビルシャナ1体、信者とかはいないみたい。ぼっちなのは好都合だね」
「襲撃のタイミングも判明しているので、今回は人払いした店内で待ち受ける事ができる」
 詳しい状況の説明を進めるゴロウとヴィルフレッド。
「ビルシャナはさほど強くはない。貴殿らであれば苦戦する程の相手でも無いだろう」
 ゴロウはケルベロスたちに信頼の目を向ける。
「問題があるとしたら、ビルシャナ襲撃のせいでお客さんが来れないとなるとフェアの為に用意したケーキが無駄になっちゃう事かな? お店の売り上げ的には大ダメージさ」
 ヴィルフレッドが「だからさ」と、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「戦いの後で、みんなでお店の売り上げに貢献するのもいいんじゃないかな?」

「ビルシャナ撃破後に、知り合いを誘ってケーキに舌鼓を打つのも悪くない話だろう。貴殿らであれば上手くやってくれると信じている……よろしくお願いしますだよ」
 ゴロウがペコリと頭を下げた。


参加者
鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)
ヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)
シェリン・リトルモア(目指せ駄洒落アイドル・e02697)
神崎・ララ(闇の森の歌うたい・e03471)
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)
綾崎・渉(不屈のガンスリンガー・e04140)
キール・アディントン(若干ぐれたシャドウエルフ・e19745)
アイカ・フロール(気の向くままに・e34327)

■リプレイ


 ケルベロスとビルシャナの戦いは決着を迎えようとしていた。
「オノレェ……、スイーツ男子などという軟弱者に天罰を……」
 息も絶え絶えといった様子のビルシャナが毒付く。『軟弱者』という響きに、キール・アディントン(若干ぐれたシャドウエルフ・e19745)は微かにムッとした表情を見せたが、それはすぐに消えた。
「遺憾ですね。甘味を口にすると快感中枢が刺激され、脳内でエンドルフィンが分泌されて多幸感が生まれます。男だって幸せな気分になりたいときがあって然るべきです」
「キールの言う通りだ。甘いものを楽しむ権利は、老若男女問わず誰にだってあるんだぜ」
 ニヤリと笑う鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)。
「そう、スイーツとは老若男女……いいえ、人でなくても幸せにしてくれる素敵なものなのです。ねっ、ぽんず!」
 アイカ・フロール(気の向くままに・e34327)の力強い言葉に、相棒のタヌキ……もといウイングキャットのぽんずは「なー」と気の抜けた声で鳴いた。
「という訳で、さくっと倒されてください。私たちはケーキを頂きにきたのですから!!」
 アイカはビシッと人差し指をビルシャナに向ける。身構える敵に、ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)と綾崎・渉(不屈のガンスリンガー・e04140)が攻撃をしかけた。
「君との戦闘なんて本当は三行で充分なんだけどね。確かにスイーツだけじゃダメだけどスイーツは大事なんだよアタック!」
「邪魔なので速攻で落とさせてもらうぞっ……くらえスイーツ肯定拳!」
 仲間たちに続くべく、白いエレキギターを手にヴィヴィアン・ローゼット(色彩の聖歌・e02608)が、隣に立つ神崎・ララ(闇の森の歌うたい・e03471)の方に顔を向けた。
「ララちゃん、あと少し、一緒に頑張ろうね!」
 見ればララも白いアコースティックギターを手にしていた。互いに頷き合った2人は、息を合わせてギターを奏で、グラビティを込めた歌声を戦場に響かせる。
「グヌヌゥ……」
 激しい攻撃に呻くビルシャナの目に、二本のライトニングロッドを左右の手に持ち、天に掲げるシェリン・リトルモア(目指せ駄洒落アイドル・e02697)の姿が映った。
「好きな食べ物は人それぞれですが、人の好きなものを悪く言うのはダメですよ! 空間魔法陣-雷胴-展開!」
 シェリンの目の前の空間に光輝く魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣めかげて、シェリンはロッドを太鼓のバチのように叩きつけた。
 ――ドォン!
 衝撃で振動する魔法陣から雷が放たれ敵を穿つ。
「さぁ響かせますよ――『雷太鼓・断高弾(イカヅチダイコ・ダンダカダン)』!」
 2本のロッドが激しく魔法陣を乱打する。魔法陣から雨あられのように撃ち出された雷弾が強かにビルシャナを打ち据えた。
「いくぜアカッ、『フェルカエンテクス』!!」
 ヒノトが放った炎弾にビルシャナが盛大な火柱に包まれる。すかさず逆手にナイフを構えたキールがビルシャナに音も無く接敵する。
「深い夢に堕ちなさい――『胡蝶ノ暗黒郷(コチョウノディストピア)』」
 キールの低い呟き声。ビルシャナの視界を蒼い蝶が横切り、ナイフがきらめいた。
「任務完了です」
 絶命したビルシャナを見下ろし、キールは胸元のリボンタイをクイッと締め直した。


 後片付けを終えたケルベロスたちの元に彼らの知り合いが次々と合流していった。
「依頼、ご苦労様だな、ヴィヴィアン」
 恋人の水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)を前にどこか落ち着きの無い様子を見せるヴィヴィアン。そんな彼女に鬼人と仔竜のアネリーは顔を見合わせ首を傾げた。
「えへへー、友達の前でデートとか、ちょっとくすぐったいというか……」
 恥ずかしそうなヴィヴィアンがチラリと友人のララの方に視線を移す。
 そして「ええっ!?」と驚きの声をあげた。
「お疲れさま、ララ。怪我はない?」
 ルテリス・クリスティ(時護りの礎・e13440)の心配そうな顔に、ララは「大丈夫」と嬉しそうに笑う。
「ララちゃんもデート……だったんだ」
 幸せそうなララとルテリスを見てヴィヴィアンは大きな目をパチクリとさせた。

 恋人や友人とケーキバイキングへと向かう仲間たちを見送り、渉は息をついた。
「さてと……どうするかな?」
「ケーキを食べていかれないのですか?」
 シェリンに声をかけられ、渉は慌てて首を振った。
「いやいや、折角の機会だし、お店に貢献するのはケルベロスの責務だし、しっかり食べていきますとも」
 甘いものは大好きな渉であるが、年頃の男子としてはこういった店に1人で入るのは中々抵抗があるものなのだ。今回は渉にとって美味しい依頼といえた。
「でしたら一緒に回りませんか?」
「ああ、いいよ。男のスイーツ巡りを堪能しようか?」
 シェリンの誘いに渉は笑って答えた。


「ぽんず、全種類制覇を目指しましょう」
 アイカの声にぽんずはコクコクと頷き、目の前の光景へと目を移した。
 陳列された色とりどりのケーキたち。どれもこれも美味しそうだと、ぽんずはキョロキョロと首を巡らせる。そんな様子にアイカはクスリと笑みをこぼす。
「ふふふ、慌てなくてもスイーツは逃げませんよ。まずはどれにしましょうか」
 少し悩んだ末にアイカはフルーツの沢山入ったロールケーキを自分の皿に載せた。
「やっぱり大好きなフルーツロールからいきましょう。フルーツロール万歳です」

「どちらが多く食べられるか、ワタシと勝負なのよ!」
 ふふふのふー、と笑みをもらすエルピス・メリィメロウ(がうがう・e16084)に、ヒノトは自信ありげな顔を見せた。
「へっへっへ、このために食事は抜いてきたんだ」
 どうだとばかりに胸をはるヒノトにエルピスはニンマリと目を細める。
「ワタシも朝ごはんの牛丼を抜いて来たから沢山食べれるの。ヒノトにも負けないのよ」

 ヴィルフレッドと白銀・ミリア(白銀の鉄の塊・e11509)、日乃森・タマ(見習い鎧装騎兵・en0153)の3人の座るテーブルは沢山のスイーツの乗ったお皿で隙間なく埋め尽くされていた。
「まさか僕のオススメを全部持ってくるなんて思わなかったよ」
「へへへ、全部おいしそうだったからな。どれから食べっかなー」
 スイーツに詳しいヴィルフレッドが次から次へとオススメを挙げたところ、ミリアはそれらを全部取ってきたのだった。
「ヴィルフのイチ押しはずっぱいんぐれーぜ、だっけ? これからいくか!」
「自分はすっぱいの苦手なんっすよ」
 揚々と食べ始めるミリアに対して顔を曇らせるタマ。ヴィルフレッドがクスリと笑った。
「ズッパはイタリア語でスープという意味だよ。スープはもともと固くなったパンを煮汁やワインなどでふやかしたものを示す言葉だったんだ。このスイーツはリキュールを染み込ませたスポンジとカスタードを重ねて作るからそういう名前がついているのさ」
 へぇ、と感心した様子のタマに得意そうに話を続ける。
「ちなみにイングレーゼはイギリス風という意味で、これはフィレンツェの……」
「やわらかくて甘い! のってるサクランボやメロンと一緒に食べると最強だなっ!」
 ミリアの嬉しそうな声。薀蓄の披露を遮られる形になったヴィルフレッドが軽く頬を膨らませた。
「ほら、ヴィルフも早く食べてみろよ」
 無邪気なミリアの笑顔にやれやれと苦笑したヴィルフレッドがスプーンを口へと運ぶ。
「本当だっ! うん、これは中々のクオリティだね♪」
 忙しなく口を動かしてスイーツと友人とのお喋りに興じるのであった。


「前半は期間限定モノを中心に攻略しよう。あまりガッツリいかずにたくさんの種類を少しずつ。甘いものは別腹とはいえ、有限には違いないからね」
 メロンのケーキを平らげた渉が紅茶を一口飲む。シェリンは攻略という響きにどこかワクワクしたものを感じつつ、桃のタルトを口に運んでいった。
 スイーツバイキングにおいてやはり女性よりも男性の方が格段に食べる量が多いのだそうだ。それは男女の身体差もあるのだろうが、渉のように店に入りにくい男性のこういった機会を無駄にしたく無いという心理的側面もあるのではないだろうか。
 タルトを食べ終えたシェリンが幸せそうに紅茶を口に含む。
 無糖のアールグレイ。
 渉の用意してくれたものだったが、程よい苦味とベルガモットの香りが口の中の甘みをリセットしてくれた。これならいつもより食べられそうだ。
「ボクは、次はラズベリーのタルトにいこうかと思いますよ」
「それは美味そうだな。良かったらシェアして食べないか?」
「はい、喜んで」
 シェリンが笑顔で頷いた。

「いざ尋常に勝負っ! いただきます!」
「いただきますなのよ!」
 ヒノトとエルピスの弾んだ声。2人は楽しそうに目の前のケーキに舌鼓を打っていた。
「んんー美味い! このレアチーズケーキ。お店のオススメだけあるぜ!」
 ヒノトがエルピスに笑顔を向ける。ヒノトの皿の上には薄切りにされた桃が花のように飾られ、桃のソースのかかったレアチーズケーキがあった。
「見て見て、こっちもスゴイのよ!」
 答えるエルピスの皿の上には丸ごと桃の果実が乗っていた。
「丸ごと桃ケーキ! 桃の中にクリームが詰め込まれているのよ」
 エルピスが桃にナイフを入れると桃の中からクリームが姿を現わす。
「おっ!? そっちも美味そうだな」
「ヒノトのも気になるのよ」
 お互いのケーキに釘付けになる2人。顔を見合わせ、どちらからとも無く口を開く。
「半分こ、する?」
「へへ、賛成だ!」
「これは勝負とはノーカンなのよ」
 お互いのケーキを食べ合いっこするヒノトとエルピスであった。


「うん。美味しい」
 ビハインドのフィルマと一緒にケーキをモグモグと食べるキール。戦闘時とは打って変わった年相応の少年らしい横顔をフィルマに見せていた。
「次はチョコケーキにしよっ」
 空になったお皿を片付けて、キールが好物のチョコケーキへと目を向ける。すると、意図を汲み取ったフィルマがケーキを皿に取ってキールの方へと持ってきた。
「フィルマ、ありがとう」
 皿を受け取ろうとするキールに、フィルマは器用にケーキを切り分けると、フォークに突き刺してキールの口元へと持っていった。
「うわぁっ、自分で食べられるからいいよ!」
 顔を赤くしたキールが子供っぽい悲鳴をあげる。そして、ケーキをあーんさせようとするフィルマから慌てて逃げ出していった。

 様々な旬のフルーツが宝石のように飾られたケーキ。ヴィヴィアンは食べる箇所によって変化するそのケーキの味わいを、一口一口楽しんでいた。
「珈琲に合いそうなスイーツを何個か見繕ってきたぜ」
 振り向くと追加のスイーツを取りに行っていた鬼人の姿があった。
「鬼人も楽しんでるようで良かったわ。せっかくの機会だから遠慮なく食べてね」
「ま、なんだな。これもケルベロスとしての仕事っていうか、な。客として被害にあった店に貢献しておかなきゃいけないよな。うん」
 照れ隠しからか、しどろもどろの鬼人に思わずヴィヴィアンはクスクスと笑ってしまう。
「……男が甘い物を食べる時には、結構、言い訳が必要なんだよ」
 鬼人がバツが悪そうにポリポリと頬を掻き、取ってきたパンのような見た目の焼き菓子を口に運んだ。
「これか? クイニーアマンだよ。前に一度食べて美味かったからさ。食べてみるか?」
 クイニーアマン。バターをふんだんに使ったフランスの焼き菓子である。鬼人が差し出したそれを、ヴィヴィアンはいそいそと手に取り口へと運んだ。
「初めてなのになんだか懐かしい味がする……不思議」
 表面のサクッとした食感と素朴なバターの風味にヴィヴィアンが感想を口にする。
(「今度、自分でも作ってみようかな……」)
 美味しそうにクイニーアマンと珈琲を口にする鬼人を眺め、ヴィヴィアンは密かに考えを巡らすのであった。

 一心不乱にケーキをがっつくぽんずに、アイカがニッコリと微笑んだ。
「もう、ベッタリとクリームがついていますよ」
 顔を上げキョトンとした様子のぽんずの口元はクリームで真っ白になっていた。それをアイカが優しく拭ってやると、ぽんずは気持ち良さそうに目を細めた。
「甘いものがいっぱいで……本当、幸せですねー」
 次はどれを食べようか。ぽんずとの幸せな日常をアイカは存分に堪能していた。

「結局たくさん持ってきちゃったね。食べ切れるかな?」
 テーブルの上に置かれた色取り取りのケーキ。はにかむ目の前のララ。
「ねぇ、ルテリスはどんなケーキが好きなの? 私はりんごかさくらんぼを使ったフルーツケーキが好きよ」
 また1つ彼女の好きなものが分かり、ルテリスの顔には自然と笑みが零れた。
「僕? 僕は……今の時期なら桃を使ったケーキかな」
「そうなんだ……」
 皿の上のケーキにララはどこか真剣な目を向ける。その澄んだ茶色の瞳にルテリスは思わず見惚れてしまい、ポロリと本音が零れた。
「ここのケーキも美味しいけど、僕が一番好きなのはララの作ったケーキだからね」
 顔を上げるララと目が合う。
 ララはクスリと微笑み、何か言いたげな視線をルテリスへと向けた。


「ま、まだまだいける……でも甘いものじゃなく塩っぱいものも必要か」
 お腹をさすり少し苦しそうなヒノト。一方のエルピスはまだまだ余裕そうに見えた。
「ふふふのふー、ワタシは甘いものだけでも平気なの」
 すると突然。何かに気づいたエルピスが驚きの声を上げた。
 何事かとヒノトもエルピスの視線の先へと目を移す。そして大きく目を見開いた。
「あれって、ローストビーフってやつじゃないか!?」
 ヒノトが首をかしげる。どうやら男性向けのフェアという事でお店が特別に用意した品のようだ。
「とっても美味しそうなの……でもゼッタイにお腹にたまるの!」
 お肉大好きなエルピスであるが、朝食を抜いたせいで今日はまだ一度も肉を食べていなかった。抗いがたい誘惑にエルピスの耳と尻尾がピクピクと動く。
「食べたい物を食べるのがバイキングだろ?」
 困り顔のエルピスにヒノトがニンマリと笑った。

「ダメだー、もう入らねーぜ。というわけで、後はまかせた!」
 椅子にグデっと寄りかかるミリア。まだテーブルには取ってきたスイーツの3分の1くらいが残っていた。
「もう。食べるのはいいけど完食してよね!」
 ニヘヘと笑うミリアに小言を呈しながらも、ヴィルフレッドは残ったスイーツをパクパクと片付けていった。
「というか君、少食だったんだね……ほら、これを飲んでお腹を落ちつけて」
 どこからとも無く取り出した胃薬とお水をミリアへと差し出す。
「サンキュー、準備がいいじゃん♪」
「僕は情報屋だからね! これくらい当然さ」
 得意そうなヴィルフレッドにミリアが情報屋と関係あるのかと首をひねる。
「……ミリア、ありがとう。最近色々とあってさ、良い気分転換になったよ」
 ほんの一瞬だけ、生意気そうな少年の顔がミリアには大人びてみえた。

「そういや、アネリーって甘い物、好きなのか。今度、三人で珈琲を飲む時に用意するお菓子の参考にな?」
「アネリーもあたしも、フルーツいっぱい、クリームいっぱいのあま~いお菓子が好きなの。アネリーは特にブルーベリーが好きかな」
 そういって鬼人とヴィヴィアンは、嬉しそうにブルーベリーケーキを頬張る仔竜へと目を向けた。
「アネリー、美味しい?」
 アネリーに優しく微笑むヴィヴィアンを見て、鬼人が目を細める。
「また鬼人が淹れた珈琲飲むの、楽しみ♪」
 幸せそうに恋人とスイーツを楽しむヴィヴィアンであった。

 1つ1つのケーキを目と舌でゆっくりと味わう。ララとルテリスの周囲にはゆったりとした時間が流れていた。
「随分と真剣にケーキを眺めていたよね、ララ」
 紅茶を口にしてひと息ついたルテリスがララに話しかけた。
「ウェディングケーキを作る時の参考にしようと思ったの」
 ニッコリと微笑んだララが、先ほどと同じ視線をルテリスへと向けた。
「……ララの作るウェディングケーキ……それは僕も楽しみだ」
「ふふっ、私が結婚したいと思うのは一人だけよ」
 真っ直ぐにルテリスを見つめるララ。顔が熱くなるのを感じ、ルテリスは残っていたケーキを慌てて口に運んだ。
 甘い甘い味わいが、ルテリスの口の中いっぱいに広がっていった。

「後半は和スイーツ中心に、ってね」
 抹茶や小豆などの和風素材を使ったケーキのコーナーを渉とシェリンは物色していた。
「飲み物はどうしますか?」
「煎茶や抹茶があればそれを頼むよ」
 シェリンに飲み物の準備を任せ、和スイーツたちに渉は目を光らせる。
「やっぱり抹茶ロールは外せないよな……って、あれは」
 ふと、別のコーナーに追加で運ばれてきたティラミスが目に止まった。
「くっ、とても気になる……!」
 悩ましい選択肢が増え、頭を抱える渉であった。


「もう腹いっぱいだ。ごちそうさま!」
「むー、ワタシもお腹いっぱいなのよ」
 2人の勝負は、エルピスが結局ローストビーフをおかわりまでしてしまい、僅差でヒノトの勝ちという結果になった。

「ふぅ、幸せな時間だった」
 店を出て満足そうな顔の渉。仲間たちも同じような顔をしていた。
「……こういう依頼、また無いものかなあ」
 渉の呟きに仲間たちがウンウンと一斉に頷いた。

作者:さわま 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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