智龍襲来~腐食の霧

作者:八幡

●宝玉封魂竜
「螺旋忍法帖防衛線おつかれさま! みんなのおかげで螺旋帝の血族『緋紗雨』を保護することができたよ!」
 小金井・透子(シャドウエルフのヘリオライダー・en0227)はケルベロスの前に立つと話を始める。
「もう一人の螺旋帝の血族『亜紗斬』の居場所は分からないんだけど……十分な成果だったと思うんだよ!」
 防衛線の結果、保護できたのは緋紗雨のみであるが、多くの螺旋忍軍を退け螺旋忍法帖を守り通したケルベロスの活躍は、十分だったと言える。
「でも、螺旋帝の血族『イグニス』と同盟関係となったドラゴン勢力が、螺旋帝の血族『緋紗雨』を奪還しようと動き出した見たいなんだよ……相手の名前は、智龍『ゲドムガサラ』」
 智龍『ゲドムガサラ』……この名前に覚えのあるケルベロスも居るだろう。
 かつては八竜を日本へ差し向けた忌まわしきドラゴンの名だ。
「智龍『ゲドムガサラ』は、その秘術により『緋紗雨』が居る場所が分かるみたいなんだ……だから、まっすぐに『緋紗雨』を目指してくるよ」
 智龍の二つ名は伊達ではないらしい。謎の秘術により『緋紗雨』の居場所が分かると言う。
 だが智龍『ゲドムガサラ』本体が攻めてくるのであれば、あの忌まわしいドラゴンの首を狩る機会ではないだろうか。
「『ゲドムガサラ』は『宝玉封魂竜』っていう、定命化で死にかけていたドラゴンをゲドムガサラが『宝玉封魂法』で無理矢理生き延びさせたドラゴンの軍勢を率いているみたい」
 さすがに智龍。一体で突っ込んでくるような無謀はしないらしい。
「本当だったら死んじゃってるドラゴンたちだからか、骸骨みたいな姿になってるみたいだけど元のドラゴンの時に準じる戦闘能力があるんだよ」
 しかも準ドラゴン級となると宝玉封魂竜一体にしてもかなりの強敵だ。
「ゲドムガサラといっしょにくる宝玉封魂竜の数は多いから市街地とかでの防衛戦は危ない……だから、エインヘリアルによって要塞化されていた、天下の名城『飫肥城』で迎え撃つ作戦をすることになったんだよ! だから、みんなには螺旋帝の血族『緋紗雨』を保護して飫肥城に向かって、ゲドムガサラ率いる『宝玉封魂竜』の軍勢を迎え撃ってほしいんだよ!」
 何も考えずに市街地で戦闘すれば被害は甚大になるだろう……だが、確実に場所を突き止めてくるのならば、それに相応しい場所で迎え撃てば良いと、そういうことらしい。

●腐食の霧
 概要を説明した透子は、ケルベロスたちが内容を噛み砕く時間を置いてから次の説明を始める。
「『宝玉封魂竜』は、ものすごい数で攻めてくるから難攻不落の飫肥城でも守り抜くのは大変なんだよ。でも、『宝玉封魂竜』には、智龍『ゲドムガサラ』が直接指揮しない限り、力を完全に出せない欠点があるから前衛の宝玉封魂竜を倒したあと、敵本陣に切り込んでゲドムガサラを倒せれば、残る宝玉封魂竜を全部倒すことだってできるはずだよ!」
 つまりは接敵した一体目を素早く撃破しゲドムガサラを倒せば、この戦いは勝ったも同然ということだ。
 だが、宝玉封魂竜一体だけでも手強い上に数が多い……もし、一体目の後にゲドムガサラの首を狙うのであれば、相応の作戦と覚悟が必要だろう。
 いずれにしてもまずは一体目を撃破しなければ話は始まらない……先を促すように自分をみるケルベロスたちに頷いて、透子は対峙することになる宝玉封魂竜の説明を始める。
「みんながまず戦うことになる宝玉封魂竜は、腐った緑色の霧をまとう宝玉封魂竜だよ」
 腐った毒の霧をまとう……骸骨化体を隠すように霧をまとっている感じだろうか。
「攻撃手段は爪と尻尾……それと何でも溶かしちゃう霧のブレスを吐いてくるよ。それでね、この宝玉封魂竜はとにかく近い人から狙ってくるみたいなんだよ!」
 骸骨化してもドラゴンである。当然強力なブレスと、爪と尻尾は健在ということか……しかし、攻撃目標がある程度絞れると分かっているのであれば打てる手が格段に広がる。
 一通りの説明を終えた透子はケルベロスたちの瞳を真っ直ぐに見つめ、
「大変な戦いになると思うけど……みんななら絶対勝てるって信じてるよ!」
 激励するように小さく拳を握った。


参加者
ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)
立花・恵(カゼの如く・e01060)
ミチェーリ・ノルシュテイン(青氷壁の盾・e02708)
柳橋・史仁(黒夜の仄光・e05969)
嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)
リミカ・ブラックサムラ(アンブレイカブルハート・e16628)
富士野・白亜(白猫遊戯・e18883)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)

■リプレイ


 緑色の霧をまとった骨の竜が舞い降り、体に纏う霧と同じ色の息をまき散らす。
 霧の中に複数の人影が消えた事を確認した骨の竜、宝玉封魂竜は勝ち誇るように吠えるが――その緑色の霧の中から全身を鋼の筋肉で包み込んだかのような大男と、その男よりは小柄だが鋭い視線を持つ白衣の男がが飛び出してくる。
 二人の男、すなわちギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)と、嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)はそれぞれドラゴニックハンマーと、バトルガントレットを振るう。
 ギヨチネたちに驚いた宝玉封魂竜は思わず後ずさるが、そうはさせじと生命の進化可能性を奪う超重の一撃でギヨチネが宝玉封魂竜の前足をとらえ、一瞬動きの止まった宝玉封魂竜の胸元に陽治の卓越した技量からなる達人の貫手をねじ込んだ。
 胸元を覆う緑の霧を引き裂いて打ち込まれた陽治の一撃に宝玉封魂竜が苦痛を訴えるように空に向かって吠えようとするが、叫ぶよりも前に着弾した竜砲弾によって声を上げる事も許されない。
 宝玉封魂竜が忌々しく弾の出どころへ視線を向ければ、晴れ始めた毒のブレスの向こう側に砲撃形態のドラゴニックハンマーを手にした、立花・恵(カゼの如く・e01060)の姿があり、
「一夜で変わる、輝きも花も」
 恵の少し前で、柳橋・史仁(黒夜の仄光・e05969)がギヨチネたちへ向けて右手を差し出すと、闇夜で満ち欠けする月と花嵐の幻影が彼らを包み込んだ。
 だが、そんなものは意に介さぬと威圧するように一歩を踏み出す宝玉封魂竜の懐へ、富士野・白亜(白猫遊戯・e18883)が飛び込むと電光石火の蹴りを胸元の宝玉へ叩き込み、仰け反った宝玉封魂竜の頭蓋へ、リミカ・ブラックサムラ(アンブレイカブルハート・e16628)が同じく電光石火の蹴りをねじ込んだ。
 白亜とリミカの一撃によろめく宝玉封魂竜から彼女たちが猫のように飛び退くのと入れ替わり、ミチェーリ・ノルシュテイン(青氷壁の盾・e02708)はパイルに雪さえも退く凍気を纏わせて、宝玉封魂竜の足を貫く。
「敵戦力確認……データベース照合……火器管制システム、アップデート完了。最新パッチ、配信します」
 ミチェーリの一撃で氷の膜が張る足を強引に振り上げる宝玉封魂竜を見据え、リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)は己のグラビティでドローンの群れを操る。ドローンの群れは陽治たちの傷を癒すと宝玉封魂竜を取り囲むように展開した。


 宝玉封魂竜はリティたちを睨みつけて小さく唸り……突如背を向けたかと思うと、鞭のようにしならせた尻尾を叩きつけてくる。
 パイルバンカーを突き刺した姿勢のままでいたミチェーリは、そのままパイルバンカーを地面に突き立てて尻尾を受け、ギヨチネもまたカミツレを手にそれを受けとめる。尻尾を追って吹きすさぶ風が、その威力を示しているようだが……尻尾を振り切り、その勢いで再び正面を向いた宝玉封魂竜の目の前には、指先にグラビティチェインを凝縮させる陽治の姿があった。
「砕けちまいな……!」
 そして指を弾いて宝玉封魂竜の鼻っ面を叩くと、岩を砕く爆発的な衝撃によって宝玉封魂竜の体が仰け反った。宝玉封魂竜の尻尾の一撃は強烈だが、史仁が作り出した暗闇と光と花の幻想に目算を狂わされて、真の威力を発揮できていなかったようだ。それに引き換えリティのドローンによって宝玉封魂竜の次の姿勢を予測した陽治の一撃は、その顔面を的確にとらえた。
「こっちを向けよ!」
 陽治の上を飛び越え、仰け反る宝玉封魂竜の目の前まで飛び上がった恵が美しい虹をまとう急降下蹴りを宝玉封魂竜の頭に叩き込み、そのまま顔を蹴って後ろへ飛ぶ。後ろへ飛ぶ恵を追う様に状態を起こして怒りに満ちた目を向ける宝玉封魂竜の脇腹へ、白亜はドラゴニック・パワーを噴射し、加速したハンマー叩き込む。不意の一撃に身を捩る宝玉封魂竜は怒りの収まらぬ目で白亜を見やり、白亜は白い猫の耳を下に向けつつ威嚇し返すような視線を向ける。
「気の多い竜だな」
 猫みたいだなと宝玉封魂竜と白亜を見つめつつ史仁が祭壇から霊力を帯びた紙兵を大量散布する。散布された紙兵は白亜の周りと、その横を駆け抜けたリミカの周りを飛び回る。そしてリミカは、白亜の前に立つように宝玉封魂竜の前へ躍り出て、魂を喰らう降魔の一撃を肋骨の間へ叩きつけた。
『シャァ!』
 再びリティのドローンが展開される中、正面に居る邪魔ものを払う様に宝玉封魂竜がリミカへ向けて爪を振り下ろす。紙兵を文字通り引き裂きながら振るわれたその一撃は、吸い込まれるようにリミカの首筋へ向かい……、
「おいおい、女の子には優しくないといけないぜ」
 すんでのところで陽治が割り込みその爪を受け止めた。特殊な呼吸法によって増殖し全身を覆うように循環させた生命エネルギーでもって受け止めた爪だが、その爪は深々と陽治の腕を貫いている。もしあれがそのまま首筋に刺さっていたかと思うとぞっとしないが、陽治の傷も浅くはない。
「ありがとうロボ!」
 短く礼を言って後ろへ下がったリミカに続くように、宝玉封魂竜の肋骨を蹴飛ばし陽治は距離をとり、魔術切開とショック打撃を伴う強引な緊急手術で自らの傷を癒した。

 幾度か切り結ぶ……宝玉封魂竜の攻撃は確かに強力だが凌げないほどではない。それに比べて白亜たちの攻撃は確実に宝玉封魂竜の体を刻んでいく。
「急がば回れだロボ!」
 リミカの言うように確実に一歩一歩進む事こそが一番の近道となるのだが……、
「少し、急いだほうが良いな」
 周りに集まり始めた他の宝玉封魂竜たちと、遠目に見える他のケルベロスたちの様子を確認してミチェーリが青い瞳を細めた。
「大丈夫、もうすぐ終わる」
 そんなミチェーリへ何かを感じたのか白亜が耳を立てていると、
「夕映え輝く空に、燦たる不浄の断末魔を識る」
 幾度目かに放たれた毒のブレスの中を駆け抜けたギヨチネが宝玉封魂竜の目の前まで踏み込み、自分自身と宝玉封魂竜を結界に封じる。封じられた世界で展開されるは、体中を氷で包まれ、その胸元の宝玉を氷の杭で貫かれる宝玉封魂竜の姿。ギヨチネはいくつかの可能性の中から無作為に選ばれたその幻覚を与える事により宝玉封魂竜の魂へ打撃を与える。死の瞬間に耐えられる生物など稀だろう、ギヨチネの結界が解けると同時に宝玉封魂竜が悶えるように吠え、それと同時に宝玉に亀裂が入り始める。
「ん、すぐに従うといい」
 吠える宝玉封魂竜をボス猫のような威厳でひるませた白亜は軽やかに跳び、宝玉封魂竜の背を踏む。攻撃には思えない挙動だが……踏まれた宝玉封魂竜の体が俯せに地面に倒れる。倒れる瞬間、ギヨチネは一歩距離をとり、ギヨチネと入れ替わるように史仁とミチェーリが踏み込む。宝玉封魂竜の背中に居た白亜が猫のように地面へ降りるのと同時に、史仁は生命の進化可能性を奪う超重の一撃を叩き込み、その一撃を受けた宝玉封魂竜の体がみるみる氷に覆われていく。そしてミチェーリは走りながら冷気のオーラを圧縮・実体化させた氷の杭をガントレットに装着して、一つのパイルバンカーを完成させ――、
「この一突きで穿ち抜く! 露式強攻鎧兵術、“氷柱”!」
 氷の杭を、凍りゆく宝玉封魂竜の胸元へ正確な狙いで高速射出させると、氷の杭は宝玉封魂竜の胸元を貫いたのだった。


「さぁ、緋紗雨のもとへ急ぐぞ!」
 胸元の宝玉を貫かれた宝玉封魂竜は骨のように砕けて地面へ転がった……その姿を見た恵は、意気揚々と緋紗雨へのもとへ向かおうとするが、
「いっぱい来たロボ!」
 飫肥城を囲う様に展開する宝玉封魂竜たちの姿を見たリミカが声を上げる。
「……これは厳しいな」
 ミチェーリが再度周囲を確認すれば、すでに城を防衛するためにケルベロスたちが展開しており、宝玉封魂竜との戦いが始まっている。やはり時間が掛かりすぎた……とミチェーリは冷静に分析する。防御に寄ったリティたちの作戦は大きな被害を受けない代わりに、攻撃の手数が少なかった。防衛と言う長期戦を想定していたのだから、それは当然の選択なのだが――、
「真後ろにつかれましたわ」
 誤算は敵の動きの素早さだろう。それでも何とか緋紗雨のもとへ行こうとするリティたちだが、新手の宝玉封魂竜が真後ろから迫りくる。
 このまま緋紗雨のもとへ行けば後ろの敵を引き連れていく事になる上に着くまでの間、後ろから攻撃され続ける事になる……あるいはと、周囲を見回せばそこには一体目の宝玉封魂竜との戦闘で傷ついた体をおして戦い続けるケルベロスたちの姿がある。
 あるいは、宝玉封魂竜が移動する自分たちから矛先を別のケルベロスへ向けた場合、彼らが倒れる事になり、結果として戦線が崩壊しかねない。
「ここに留まりましょう」
 それだけは避けなければならないだろう。ギヨチネの言う様に、この場に留まり戦線を維持する。それが最終的には緋紗雨を守る事にもなるのだから。
「まぁ、仕方ねぇな。おいちゃん頑張っちゃうよ」
 ギヨチネの言葉に応じて陽治が反転し、
「さっさと倒して、先へ行くぞ!」
 恵は小さく息を吐いてからそれに倣う……裏がある事を隠さない奴は信用できると恵は考えているようだ。それ故に何としても彼女の傍で守りたいと……そのために目の前の敵を倒すと改めて決意した。
「行くぞ!」
 背中を追ってきていた宝玉封魂竜を前に、史仁がミチェーリたちへ闇夜で満ち欠けする月と花嵐の幻影の領域を展開し、
「目にものを見せて差し上げましょう」
 リティが己のグラビティでドローンの群れを操り、敵の情報を集め始めた。

 雷のブレスを吐く宝玉封魂竜を前に、史仁たちは先に倒した毒のブレスを吐く宝玉封魂竜と同じように戦いを進める。
 堅実な戦いをする史仁たちを前に、宝玉封魂竜は徐々に追い詰められてゆき……、
「これでとどめロボ! ……えっ」
 リミカが必殺の一撃を放とうとしたところで、宝玉封魂竜が後ろへ下がっていく。しかし、簡単に逃がすほどリミカも甘くはない、すかさず追撃するべくマスターコアを最大稼働させようとするが、
「新手ロボ!?」
 下がった宝玉封魂竜の代わりに別の宝玉封魂竜が割って入り、リミカから傷ついた宝玉封魂竜を守るように氷のブレスを吹き付けてくる。
「消耗戦をやる気か……」
 リミカの前に立ち、そのブレスを引き受けたミチェーリは、さらにその宝玉封魂竜を回復させている別の宝玉封魂竜を見てパイルバンカーを持つ手に力を籠める。
 攻城戦での我慢比べ、それを宝玉封魂竜の強さでやれる事の脅威は考えるまでも無いだろう……だが、いずれにしてもやれる事をやるしかないのだ。
「今度こそ倒すぞ!」
 史仁が縛霊手の掌から発射した巨大光弾を追うようにミチェーリは駆けて、宝玉封魂竜へパイルバンカーを突き立てた。


「オオオォォ!」
 幾度目の攻防か……もはや記憶すら曖昧となるほどに、入れ替わり立ち代わり攻めてくる宝玉封魂竜が吐いた炎のブレスを振り払う様に手を払い、恵は吠える。
 前衛も後衛も傷ついていないものなどない状況。だからこそ、己を仲間たちを鼓舞するように恵が吠えると、何処からともなく呼応するように「OH! スゴイ根性ヲ感ジマスヨ! ワタシタチモ負ケテラレマセンネ、オオオオッ!」という声が聞こえた気がした。その声に恵はふっと息を吐き、
「一撃をッ! ぶっ放す!!」
 全身に闘気を込めて、神風の如きスピードで一瞬のうちに宝玉封魂竜へ突っ込むとリボルバーを胸元の宝玉へ押し付け零距離からの一撃を放つ。
 宝玉封魂竜へ接近したのち、すぐさま離れる恵の様子を、リティはどこか遠くから見つめるような感覚にとらわれる……周囲に静寂が満ちている……とても、とても静かな世界だ。嗚呼、何て居心地の良い……と、リティの意識は内側に沈んでいく。
 だが、朦朧とする意識の中、「私たちは、私たちに出来ることを!」と誰かが叫ぶ声が聞こえた気がして、リティは泥濘に揺蕩う意識を引き戻す。
 そう、まだだ、まだ倒れるわけにはいかない。倒れる事など許されはしない。荒く息を吐き、世界と自分とを再び結びなおす。
「わたしにも、まだ出来ることがあります」
 それから恵が撃ち込んだ弾丸が内部で破裂し悶える宝玉封魂竜を静かに前を見つめながら、力強く言葉を紡ぐと再び己のグラビティでドローンの群れを操り始めた。
 意思は呼応し共鳴し合うのか、彼らは倒れない。
 白亜に向かい忌まわし気に振るわれた宝玉封魂竜の爪を、白亜に覆いかぶさるように自らの体を盾にしてギヨチネが受け止める。
 肩口を深く裂かれたギヨチネの体から血潮が噴き出し、体から噴き出す血液が隆々と盛り上がる筋肉を伝って流れ、地面を赤く染めるが、それでもギヨチネは倒れない、我が血を贄とせよと手にしたドラゴニックハンマーを掲げて駆ける。

 何体目の敵か……再び逃げた宝玉封魂竜と、それを庇う様に前に出て来た別の宝玉封魂竜を前に、ギヨチネたちは歯を食いしばる。
 他の誰かがつけた傷だろうか、宝玉封魂竜も無傷ではなく、その体には無数の傷がついている……だが、その状況でも一体も宝玉封魂竜を倒す事が出来ず。いつまで続くかも分からないこの攻防は確実に彼らの精神を削っていく。
 だが、それでも守ると決めた緋紗雨や、同じように戦い続ける周りのケルベロスたちのためにも、倒れるわけにはいかない。
「やれやれ……歳のせいかね。目が霞んでしょうがない」
 いかないのだが、それでも限界は来る……迫りくる灼熱の炎を前に陽治は天を仰いで大きく息を吐いた。そしてもはや腕を上げる事すら出来ないほどに消耗したのか、自らを守る事なく炎に焼かれる。
 前のめりに倒れる陽治へギヨチネが手を伸ばすが、ギヨチネも限界が近いのか膝をついてしまい、その手は陽治へ届かない。
 ミチェーリもまた、体にまとわりついた炎を振り払う気力すらないのかパイルバンカーを杖に体を支えるのがやっとな様子だ……自分たちを守ってくれていた陽治たちが倒れる中、同じく強烈な炎を受けた白亜は歯を食いしばって折れそうになる体を無理やり起こす。
 俯くな、目の前の敵を屠らなければ後は無いのだと、荒い息を吐きながらも骨が如き竜を睨みつける。
 ――と、不意に宝玉封魂竜たちの動きがおかしくなる。
 一糸乱れぬ動きは統制を失い、ばらばらと散発的な動きとなって……どうしたのかと白亜は恵と顔を見合わせていると、
「ゲドムガサラが倒されたんだロボ!」
 リミカが声高に宣言した。
「早く終わらせて休みましょう」
 リミカの言葉に、恵とリティは頷く。明らかな変化……これはゲドムガサラが倒されたと見て間違いないだろう。
 命令系統を失った群など、烏合に過ぎない。統制の取れない宝玉封魂竜をケルベロスたちは次々と狩り始めたのだった。

作者:八幡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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