智龍襲来~結ばれた絆を護るために

作者:飛翔優

●防衛戦
 足を運んできたケルベロスたちを出迎えたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)。メンバーが揃ったことを確認し、説明を開始した。
「螺旋忍法帖防衛戦の結果、螺旋帝の血族、緋紗雨の保護に成功しました。もう一人の血族、亜紗斬の所在は不明ですが、充分な成果だったと言って良いでしょう」
 しかし、螺旋帝の血族、イグニスと同盟関係となったドラゴン勢力が緋紗雨を奪還すべく動き出した。
「竜十字島からの刺客の名は、智龍ゲドムガサラ。ゲドムガサラはその秘術により緋紗雨の居場所を特定することができるらしく、まっすぐに緋紗雨を目指して進んできます」
 ゲドムガサラが引き連れるのは、宝玉封魂竜の軍勢。
 宝玉封魂竜は低迷家で死に瀕していたドラゴンを、ゲドムガサラが宝玉封魂法で無理やり生き延びさせたドラゴン。本来ならば死亡している状態であるためかその姿は骸骨のような状態となっているが、元のドラゴンの時に準じる戦闘能力を保持している。
「ゲドムガサラと共に襲撃に来る宝玉封魂竜の数は多く、市街地での防衛戦では大きな被害が出てしまうでしょう」
 そのため、ゲドムガサラの軍勢を迎え撃つにあたり最も適した場所。エインヘリアルによって要塞化されていた、天下の名城飫肥城で迎撃する作戦を行うこととなった。
「そのため、皆さんには緋紗雨さんを保護して飫肥城へと向かい、ゲドムガサラ率いる宝玉封魂竜の軍勢を迎え撃って欲しいんです」
 宝玉封魂竜は数の暴力で押し寄せてくるため、難攻不落の飫肥城をもってしても守り抜くのは困難。しかし、宝玉封魂竜はゲドムガサラが直接指揮しない限りその戦闘能力を発揮できないという欠点を持つ。そのため、前衛の宝玉封魂竜を撃破した後、敵本陣へと切り込みゲドムガサラを撃破することができれば、残る戦力を駆逐することも不可能ではないだろう。
「続いて、皆さんが戦うことになる宝玉封魂竜について説明しますね」
 大まかな姿は他と同じ、骸骨竜の体中に宝石が付着している……といった形状。特徴を見出すなら、付着している宝石が濃い青色をしている点だろう。
 戦闘においては溢れんばかりの力を存分に振るってくる。
 用いるグラビティは三種。敵陣を麻痺させる雷のブレス、相手に食らいつき加護ごと砕く、骨の翼をはためかせ防具ごと切り裂く風刃を敵陣にもたらす。
「以上で説明は終了となります」
 セリカは資料をまとめ、締めくくった。
「敵戦力、私たちの置かれている状況……決して油断はできません。どうか、全力での戦いをお願いします」


参加者
クロノ・アルザスター(彩雲のサーブルダンサー・e00110)
四之宮・徹(凡人な炎剣の贋作者・e02660)
揚・藍月(青龍・e04638)
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)
マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)
アドルフ・ペルシュロン(塞翁が馬・e18413)
ホルン・ミースィア(薄明の魔法使い・e26914)
アイシャ・イルハーム(七星極光・e37080)

■リプレイ

●雷竜降臨
 火の帳が夜を誘いはじめた空を眺め、マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)は思考する。
 緋紗雨が何を企んでいるのかは気にかかる。しかし、本星から強力なドラゴンが来るというのなら、その危険性は極力排除したい。その為にも、今は全力で緋紗雨の庇護を行おう……と。
「……緋紗雨に飫肥城を乗っ取られないと良いがな」
 表情は変えず背後に、そして左右に視線を走らせる。
 かつて、数多の戦乱を乗り越えてきた城がそこにはある。
 緋紗雨を、飫肥城を護るために集まった幾多のケルベロスたちが隣りにいる。
 正面へと視線を戻せば、茜色の空を煌めきが埋め尽くしていて……。
「戦闘モード移行、これより迎撃を開始する」
 チームメンバーに視線を走らせ、機械的に組み上げられたかのような巨大な剣を横に構えた。
 地獄の炎を走らせると共に大地を蹴る。
 降下してきた濃い青の宝石を宿す宝玉封魂竜めがけて跳躍した。
 骨色のあぎとが開かれる。
 ぱちり、ぱちりと火花が散りはじめ、科学的な臭いが漂いはじめた。
 意に介さず、マティアスは喉に炎の刃を食い込ませる。
 関節に阻まれ通らない。
 骨色の身体は赤き炎に抱かれた。
 熱としびれにも似た感覚を覚えながら、四之宮・徹(凡人な炎剣の贋作者・e02660)はマティアスと立ち位置を入れ替える。
 翼のつけ根を見据え、黒き刃と白銀の峰を持つ刀で地面を削り……弧を描くように、振り抜いた!
「……ギリギリで体をそらしたか。この力、数で押されれば無事ですまないだろう。だが、負けるつもりはない」
 背を向けたまま距離を取る。
 宝玉封魂竜は後を追わず、前衛陣に向けて雷を掃射してきた。
 地面が焼き焦げ不快な煙が立ち上る中、揚・藍月(青龍・e04638)が爆破スイッチを押し込んでいく。
「続く戦いもある。可能な限り消耗を抑え、けれど可能な限り速やかに、このドラゴンを打ち倒そう」
 爆煙に巻かれながら飛ぶボクスドラゴン・紅龍は左右に視線を送り、徹の治療を開始して……。

 骨の体を軋ませながら、宝玉封魂竜は飛ぶ。
 滑空と共に開かれたあぎとを、アドルフ・ペルシュロン(塞翁が馬・e18413)が横に構えた長柄のハンマーで受け止めた。
「ッ!」
 牙と牙の間に腕を滑り込ませ、両足に力を込めて体を支えていく。
 小さな歯が両腕に食い込んできた。
 血が滴る。
 痛みが重さを運んでくる。
 ジリジリと地面を削り後退する中、ライドキャリバーのカブリオレがエンジン音を唸らせた。
 炎を纏い向かい来る鋼の体が視界に移ったか、宝玉封魂竜はあぎとを開きアドルフから離れていく。
 自らの両腕を確認した後、アドルフは安堵の息を吐き出した。
「問題ねぇ。これならまだ、しばらくは耐えられる」
 オーラを溜めながら、ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)の善き霊による治療を受けながら、宝玉封魂竜との距離を詰める。
「もう少し自分につき合ってくれよ」
 情報による優位、練りに練った作戦。
 仮に予想外の事があったとしても、優位を保つことができれば乗り越えられる。
 アドルフがオーラを滾らせ鼻先に踏み込めば、宝玉封魂竜が翼を横に薙いできた。
 つかみ取り力比べへと持ち込む中、クロノ・アルザスター(彩雲のサーブルダンサー・e00110)が背後へと回り込んでいく。
「やー。うちらケルベロスって正義の味方だからねー。頼られたらNOって中々言えないのだわ」
 拳に稲妻を走らせ、無防備に見える背に向けて打ち付けた。
 尾の一振りで稲妻は離散する。
 されど勢いは弱まらず、宝玉封魂竜の表面を走っていく。
 僅かに骨色の体が固まった。
「今だよ、ライくん!」
 ホルン・ミースィア(薄明の魔法使い・e26914)が丸に羽の生えた光の精霊ライくんを解き放つ。
 骨の隙間に潜り込み濃い青の宝石を焦がす中、宝玉封魂竜の周囲には再びオゾンの臭いが漂いはじめた。
 すかさず正面に回り込みオーラで身を固めていくアドルフを見つめながら、ジュリアスは再び善い霊を呼び寄せる。
 竜のあぎとから放たれし雷流が、アドルフを焼く。
 藍月が余波を受けていたけれど、浅い。
「再び、アドルフさんの治療を行います。それから……」
 善い霊がアドルフのもとへ向かう中、クロノへと視線を向けた。
「クロノさん、藍月さんの治療をお願いします」
「わかったわ」
 頷き治療へ向かっていくクロノを見届けた後、ジュリアスは戦場へと視線を戻す。
 宝玉封魂竜と目が合った。
 そらさず、ジュリアスはわずかに目を伏せていく。
「しかしまあ、敵も完全敗北王子の案などよくのむ気になったものです」
 呆れた風に呟きながら、けれど……と首を横に振った。
 脅威であることに違いはない。
 螺旋帝の血族が信用できるかという懸念もあるけれど、今は思考の隅へと追いやろう。
 先に視線を逸した宝玉封魂竜が、アドルフから距離を取るかのようにはためいた。
 風刃だと判断したアドルフが大槌を横に構える中、アイシャ・イルハーム(七星極光・e37080)は宝玉封魂竜よりも空に近い場所にいた。
「大丈夫、この角度なら……!」
 怯える心を奮い立たせ、額に埋め込まれている宝石めがけて落下の勢いを乗せた蹴りを放つ。
 風刃が五十センチほど下を駆け抜けた。
 余波の突風すらも貫いて、つま先を宝石へと突き刺していく。
 宝玉封魂竜が体を軽く沈ませ、体重を支える足の指が一本砕け散った。
 苦悶の鳴き声が、空高く響き渡った。

 多くの攻撃をアドルフが、余波も紅龍が受け持ってくれている。
 時折隙間を潜り抜けてくる雷も、風もクロノらが癒やしてくれるから、藍月は意識の多くを攻撃に裂くことができていた。
 宝玉封魂竜がアドルフに噛み付いていく。
 長柄のハンマーと腕を差し出し受け止めていくさまを横目に、藍月は背後へと回り込んだ。
 左右に揺らめく尾に護られている背中を見つめつつ、脚に炎を宿していく。
 軽く前方へ飛び、尾の先端を踏みつけた!
 骨の砕ける音が響くと共に、宝玉封魂竜がアドルフから口を離していく。
 苦痛をこらえているかのように、身を捩る仕草も見せてきた。
「……」
 距離を取りながら、藍月は悲しげに目を伏せる。
 何時から忘れてしまったのだろう。ドラゴンが、竜は理の化身であった。
 自然と共にあり自然の在り方の化身であった。
 けれど……それは万象を己の身に宿すことで奢りと至ったのか、強さへの求道が全てのバランスを崩すか。
「如何に死地に命を懸けようと……貴殿らの生き方では……未来はないよ」
 見つめる先、徹の黒き切っ先が右翼の先端に埋め込まれていた宝石を貫き砕いた。
「っ! 手応えあり!」
「こちらも……!」
 アイシャが尾を踏み越え、つけ根の宝石に炎の蹴りを叩き込んでいく。
 冷たい音色と共に宝石と尻尾が砕けた。
 声にならぬか悲鳴を上げているかのように宝玉封魂竜が空を仰ぐ中、ホルンがライくんと蠢く闇の精霊ダーくん、ウイングキャットのルナを引き連れ歩み寄る。
「生きていたい、そんな姿になってまでも生きていたい。やっぱり死ぬことは怖いよね」
 でも……と、瞳を伏せていく。
「ゲドムガサラが言っていた言葉だけど、定命化は病じゃないんだよ? 当たり前の事なんだ」
 ライくんとダーくんが、ゆっくりとホルンの周囲をめぐりはじめた。
「生まれて、死んで。そして、向こうに持っていけるものはその間に起こった色んな思いでだけ。それが生き物のあるべき姿」
 ルナが立ち止まり、瞳を瞑る。
 ホルンは声音を変えていく。
「冬の凍寂。共する星の瞬き。夏の輝炎。木陰が癒す乾き。闇と光が溶け合って世界を創る魔法となる。気づけばこんなに簡単なことだったんだ」
 祝福と呪いは風に乗り、宝玉封魂竜を抱いていく。
 正負様々な意味を持つ光と闇、白と黒が螺旋を描き、次々と宝玉を曇らせた。
 やがて、同じ色をしていた瞳からも色彩が消え、全身がバラバラになって崩れ落ちていく。
 ただ静かに、ホルンはその躯を見つめていた。
「キミの命は何を成せたのかな? しっかりと生ききれた?」
 空を仰ぐ。
「ボクは看取りを司るヴァルキュリア、キミの魂が安らかに星の流転に巡るよう祈るよ。また会おうねっ」
 笑顔で別れを告げながら、ルナたちを引き連れ仲間たちのもとへと戻っていく。
 素早く治療が行われていく中、周囲の仲間たちも次々と宝玉封魂竜を撃破していくようだった。
 ある者たちは矛として、勢いを保ったままゲドムガサラを目指し進軍する。
 ホルンたちは盾として、第二波に備えて着々と準備を進めていく。
 そして――。
「……こちらが本命か、それとも……」
 マティアスが向ける視線の先、数多の宝玉封魂竜たちが編隊を組んでやって来た。
 退くわけには行かないから、マティアスは大きな声を上げていく。
「お前達は、何としても、ここで食い止める!」
 少しでも多くの宝玉封魂竜をひきつけ、飫肥城を緋紗雨を護るのだ!

●人の策、竜の策
 目の前に、三体の宝玉封魂竜が降り立った。
 それぞれ赤、緑、白にきらめいている。
 クロノは赤の宝玉封魂竜に主砲を突きつけた。
「力量は向こうが上、数もそこまで少ないわけじゃない。けど、だからこそ……ってね!」
 体の中心に狙いを定めてぶっ放しす。
 盾代わりにかざされていく骨の間を潜り抜け、背骨の当たりを打ち据えた。
 大きく揺らぐさまを横目に捉えながら、クロノは他の二体へも視線を向けた。
 今は、耐える戦い。
 力量で勝り、数も決して少なくはないドラゴンの軍勢を相手に、チャンスが訪れるその時まで。
「ドラゴンなんざに負けられない! みんな、最後まで気を吐いてくよ!」
 吐き出されていく炎を横目に、赤の宝玉封魂竜の顔のあたりに手をかざした。
 前触れもなくその周囲が爆発する中、白の宝玉封魂竜は氷混じりのきらめくブレスを吐き出していく。
 一方、緑の宝玉封魂竜が左側へと視線を送っていた。
 視線の先には、他のチーム――。
「よそ見するんじゃねぇ」
 ――徹が炎の翼を吹き上がらせ、質量の異なる二つの刀を握り滑空した。
 視線を戻した緑の宝玉封魂竜の毒のブレスをも切り裂きながら懐へ居たり、首に十字の火傷を刻んでいく。
 炎の翼が消えると共に胸を蹴り、飛び退いた。
「っ!」
 着地と共に、毒の残り香が肺を焼いてきた。
 額に脂汗を流しながら立ち上がれば、背後から暖かな力が流れ込んでくる。
 視線を向ければ、ジュリアスがオーラを注ぎ込んでくれていた。
「私だけでは治療が間に合いません。余裕のある方は、何らかのブレスを受けた方への治療を。また、自身の生存を最優先にしてください」
「……ああ」
 ジュリアスの言葉に頷き返しながら、徹は緑の宝玉封魂竜を睨みつける。
 視線が重なり火花が散る中、不意に、緑の宝玉封魂竜が羽ばたきはじめた。
「おい、待て! お前の相手は……」
「待て、少し様子が違うようだ」
 白の宝玉封魂竜に炎の剣を打ち込んでいたマティアスが徹を呼び止めた。
 彼らが見つめる中、緑と白の宝玉封魂竜が飛んでいく。
 ただ一体残った赤の宝玉封魂竜とアドルフがぶつかり合う中、その二体は戦場からやや遠い場所に待機している数体のもとへと向かい……。
「……向こうも作戦組んで行動してるってことだな。ここが勝負どころと見た」
 アドルフが一瞥する先、二体の宝玉封魂竜が治療を受けている様が見える。十分に体を癒やした後、再び戦場へと戻ってくるのだろう。
 それが自分たちの所なのか、それとも別の戦場なのかはわからない。
 別の宝玉封魂竜であっても同じだろう。
 何が来ても大丈夫なように、ケルベロスたちは身構える。
 耐えて耐えて耐え抜けば、きっといつか勝機が見えてくるはずだから……。

 黒の宝玉封魂竜の吐き出した酸のブレスを浴び、紅龍が一時的な消滅を迎えていた。
 前に立ち続ける者たちも、傷ついていない者はいない。
 切り傷、火傷、凍傷、毒の痕。
 一朝一夕では癒せぬ傷跡が痛みとなって前衛陣を蝕んでおり、いつ倒れてしまってもおかしくない状況だ。
 一方、今、この場にいるのは黒と白。
 アイシャが、翼の一部が欠けている白の宝玉封魂竜との距離を詰めていく。
「っ!」
 正面へいたった時、白き瞳に睨まれた。
 毅然と睨み返しながら跳躍し、喉元めがけて蹴りを放つ。
 喉仏と思しき骨を砕いた時、凍えるほどのブレスに吹き飛ばされた。
 膝が、肘が冷たくなっていくのがわかる。
 着地とともに氷の砕ける音が響き、左膝に激痛が走った。
 けれど……。
「まだ、大丈夫です! 耐えられます、私達なら……」
「そうだね。ずっと護ってもらっていたボクたちなら、まだ耐えられるよ」
 ホルンがダーくんを槍に変え、白の宝玉封魂竜めがけて解き放った。
 穂先が骨の翼に触れ、その色彩を黒く染め始めていく。
 苦悶の鳴き声が響く。
 翼をひろげていく白の宝玉封魂竜を護るように、黒の個体がケルベロスたちとの間に割り込んできた。
 黒の宝玉封魂竜はホルンらを見つめながら、ゆっくりと口を開き……。
「ちょっと、私を無視しないでよね!」
 クロノが懐へと入り込み、稲妻を打ち上げた。
 顎を打ち据えられ口を閉ざした黒の宝玉封魂竜は、唯一無二の中衛であるクロノを睨みつけてくる。
 不敵な笑顔で返しながら、クロノは拳を握り身構えた。
 さなかにはジュリアスが、アイシャに治療を施していく。
「……アイシャさんたちも、そろそろ」
「大丈夫です!」
 癒えることのない痛みを感じながら、アイシャは槍を握り姿勢を落とす。
 治療を終えて降り立ってくる赤の宝玉封魂竜も視界に収めながら、大地を蹴り――。
「っ!」
 ――着地と共に立ち止まる。
 宝玉封魂竜たちが、落ち着かない様子で周囲をうかがい始めたから。
「これは一体……」
「……状況が読めないのは少々怖いが、明らかにこれは作戦もなく狼狽している状態だ。なら、迷う必要はない」
 アドルフが痛みをおして駆け出した。
「はい!」
 アイシャも頷き、改めて大地を蹴る。
 馬に変身して突進していくアドルフの後を追い、螺旋刺突による空気のうねりをぶちかました。
 体中をきしませている黒の宝玉封魂竜の懐には、藍月が潜り込んでいく。
「我招くは生命生まれし原初にして今を生きる者の来訪を拒みし暗闇……深淵招来! 急急如律令!」
 結界を起動し、自分ごと凄まじい圧力を持つ水球の中に閉じ込め、刃の一撃を――。
 ――彼らがゲドムガサラの討伐成功を……それが、宝玉封魂竜たちの変化をもたらしたのだと確信したのは、それから数分後のこと。
 統制を失った宝玉封魂竜はみるみるうちに数を減らし、やがて、飫肥城に勝利の雄叫びが轟いた。
 むろんそれは、ケルベロスたちが奏でた力強いメロディで……!

作者:飛翔優 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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