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「緊急事態発生! 繰り返す、緊急事態が発生したよ! 大至急、『飫肥城』に向かって欲しいんだ!」
金色の瞳を強い不安で揺らしたゼノ・モルス(サキュバスのヘリオライダー・en0206)が、集まったケルベロスたちをヘリオンへ急き立てる。
「さあ、入って入って。事情と状況の説明は中でするから」
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ブレードが空気を叩く音と振動を壁越しに感じながら、ケルベロスたちはゼノの話にミミを傾けた。
螺旋忍法帖防衛戦の結果、ケルベロスたちは螺旋帝の血族『緋紗雨』を保護する事に成功した。
もう一人、螺旋帝の血族『亜紗斬』の所在は不明だが、充分な成果だったといえよう。
「だけどこれが、螺旋帝の血族『イグニス』をあせらせ、同盟関係にあるドラゴンたちを動かすことになっちゃったんだ」
竜十字島からの刺客の名は、智龍『ゲドムガサラ』。
ゲドムガサラとゲドムガサラが引き連れる『宝玉封魂竜』たちの目的は、螺旋帝の血族『緋紗雨』の奪還である。
「智龍『ゲドムガサラ』は、よくわかんない秘術で『緋紗雨』の居場所を特定する事ができるらしくって、まっすぐ『緋紗雨』を目指して進撃してくる。そこで急遽、ゲドムガサラの軍勢を迎え撃つのに最も適した場所……エインヘリアルによって要塞化されていた、天下の名城『飫肥城』で迎撃することになったんだ」
『宝玉封魂竜』は数の暴力で押し寄せてくる為、難攻不落の飫肥城をもってしても守り抜くのは困難と予想されている。ケルベロスたちの苦戦は不可避――。敗北もあり得る、とゼノは言う。
「でも、『宝玉封魂竜』には、智龍『ゲドムガサラ』が直接指揮しない限り、その戦闘能力を発揮できないという欠点がある。だから、前衛の宝玉封魂竜を撃破した後に、敵本陣に切り込んでゲドムガサラを撃破する事ができれば、残る戦力を駆逐する事も不可能じゃない」
最初にぶつかる敵、『宝玉封魂竜』は、定命化で死に瀕していたドラゴンを、ゲドムガサラが『宝玉封魂法』で無理矢理生き延びさせたものだ。
骸骨のような見てくれだが、ゲドムガサラと共にいるかぎり、元のドラゴン時に準じる戦闘能力を保持している。
「まともに戦っていたら押し負けてしまう。だから、前衛の『宝玉封魂竜』に火力を集中させて、できる限り迅速に倒すことが先決。倒したらすかさずゲドムガサラの元に走り、倒さないとダメだ」
決死の覚悟で望んで欲しい、と夢見るヘリオライダーは拳を固めた。
「みんながぶつかることになる『宝玉封魂竜』は、体の中にオパールを埋め込んだ『揺れ動く遊色の竜骨ドラゴン』だよ」
オパールは本来、幸運をつかさどる石だ。しかし、虹色の幻想的なうつろいを永遠のうちに閉じ込めた宝石は、死の縁に落ちたドラゴンに埋め込まれたことにより不吉な色合いを帯びた。邪悪なオーラを放ちながら、『宝玉封魂竜』に破滅の力を与えている。
猛毒を帯びた吐息は、すべてを枯らす。
暗い虹の破片を閉じ込めた爪は、聖なる鎧を易々と砕く。
破壊のエネルギーを秘めた太い尾は、敵を複数まとめて薙ぎ払う。
「鱗が落ちた、骨と腐肉のゾンビといえどもドラゴンはドラゴン。防御力も高いよ」
この『揺れ動く遊色の竜骨ドラゴン』との戦闘結果によって、ゲドムガサラの討伐に向かうか、その場にとどまって、次から次に攻め寄せてくる『宝玉封魂竜』から城と『緋紗雨』を守ることになるのかが決まる。
「……場合によっては『緋紗雨』をゲドムガサラに引渡して、手打ちに持ち込む必要に迫られるかもしれない」
そんなことはしたくない。したくはないが、地球と地球を愛する人々を守るためには選択せざるを得ない場合もありうるのだ。
「すべてはみんなの働き次第……ねえ、お願いだよケルベロス。みんなの地球を守って!」
参加者 | |
---|---|
天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355) |
西水・祥空(クロームロータス・e01423) |
伏見・万(万獣の檻・e02075) |
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716) |
エフイー・ジーグ(森羅万象身使いし機人・e08173) |
アシュレイ・ヘルブレイン(生まれたばかりの純心・e11722) |
イリス・ローゼンベルグ(白薔薇の黒い棘・e15555) |
ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051) |
●
それはいつから始まったのだろう。
デウスエクス来襲を知らせる声に顔を上げれば、空一面を覆い尽くすドラゴンの影。広げられる翼に膜はなく、一体では傾いた陽光すら遮ることはできないが、こうも数があるとさすがに地上も影で覆われる。
「来ましたか」
飫肥城天守閣を背に、氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は細長く筋状に伸びる光芒に目を細めた。
「忍者の次はドラゴン……。とにかく守り切りましょう」
ヒールドローンを展開し、自身を含む壁役の前に電子の盾を作り出す。
エフイー・ジーグ(森羅万象身使いし機人・e08173)はケルベロスコートの内側から真新しい鉢巻を取り出すと、額に当てた。風にたなびく赤い細布は、燃える闘志のしるし。頭の後ろできゅっと結べばたちまち戦闘モードに切り替わる。
「よし! がんばろう」
気合いを入れて、左の手のひらに固めた拳を打ちつけた。
「ふっ……」
西水・祥空(クロームロータス・e01423)は2人の後ろに下がって、一人静かに闘志を研ぎ澄ます。竜の進撃を阻むべく、トリックスターとなって、ひとつでも多く負荷を敵に与えるために。
「なんか色々ややこしいですけど、あの方は守るべき方だと思いました! ……ので、全力で守らせて頂きますよ!」
あの方、飫肥城天守閣に座す緋紗雨を守り抜くために組まれたチームでただ一人の主砲、ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)が熱く決意をぶち上げる。
天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)は城の見取図をケルベロスコートの内にしまった。足もとにケルベロスチェインで魔方陣を描き、魔障壁を仲間たちの周りに張り巡らせる。
「飫肥城天守閣までの攻撃ルートは収集した情報を照らし合わせると概ね4つ。敵が空を飛び続ければ意味がありませんが……私たちケルベロスが各要所をキープし続けることができれば、緋紗雨を守り通すことができるでしょう」
ともに防衛計画を練っていたイリス・ローゼンベルグ(白薔薇の黒い棘・e15555)が後を引き継ぐ。
「ええ。すくなくとも、混乱に乗じて城へ忍び込もうとする螺旋忍軍を無策にも通すことはないでしょう。いれば、の話ですけど」
「にしても、凄い数のドラゴンですねえ……。一体どれだけ投入してきたんでしょう?」
呟いたケイの前に一体の『宝玉封魂竜』が降り立った。
地響きとともに砂ぼこりがたつ。
「散れ!!」
伏見・万(万獣の檻・e02075)が怒鳴った。
ケルベロスたちは即座に反応、一旦散ってから戦いの為に再集結したときは、『宝玉封魂竜』――揺れ動く遊色の竜骨ドラゴンの前に三段構えの陣を展開していた。
「おっけーべいびー」
アシュレイ・ヘルブレイン(生まれたばかりの純心・e11722)が、バスターライフルの銃口を砂塵の向こうで揺れ動く遊色の宝石へ向けた。
砂ぼこりの薄い膜を切り裂いて、揺れ動く遊色の竜骨ドラゴンの鋭い鉤爪がケルベロスたちに襲い掛かる。
「地球の為に戦う覚悟はできている! 『奔れ、苦難を越えし覚悟の旋風……カーディナルガスト!!』」
凝縮したエネルギーがこめられたグラビティの波動風は、神や自然への祈りの音を高らかに奏でながら禍々しく曲がった龍の太い爪の先を折り、腐った身をあたりにまき散らした。
先手を取られた揺れ動く遊色の竜骨ドラゴンが怒りの咆哮をあげる。
ずしっと、前に一歩繰り出された後ろ足が大地を踏み割った。長い首を高みから一気に振り下ろしてドラゴンブレスを吐き散らす。
万は腰のベルトからスキットルの一つを抜き取ると、キャップを親指で回し飛ばした。ぐびり、ぐびりと喉を鳴らしながら活力の元を臓腑に流しこむ。空になったスキットルを背の後ろへ放り投げた。
首を鳴らしてにやり。
「さァてと、そんじゃァ精々気張ッかね」
純然たる戦いに向けて蓄えられていた力が、ドラゴニックハンマーから解き放たれた。唸りを上げて飛んだ竜砲弾が、揺れ動く遊色の竜骨ドラゴン右太ももに食らいつく。
骨を貫く激痛にたまらず振られた尾を、ルージュ・エノワールに身を包んだイリスを中心にかぐらとエフイーが脇を固めた三枚の楯が防ぐ。
「おあいにく様、対策はちゃんと練ってきているの。何があってもここは通さないわ!」
●
取るに足りないと見下していた相手から挑発されて、揺れ動く遊色の竜骨ドラゴンは錆びた金属をこすり合わせたようなひどく耳障りな音で吼えた。ぐるりと首をめぐらせ、高みからケルベロスたちの布陣を一望する。
――と開かれた顎門から毒の息が吐きだされた。
「イリスがいったこと、解っていないみたいね」
毒の息が吐かれるとほぼ同時に、かぐらは素早く下がってチーム唯一の回復役をガードした。
「そして……これも対策の一つ!!」
鋭く突きだされた手から、地球の輝きを秘めた蒼いサイコフォースが迸る。
揺れ動く遊色の竜骨ドラゴンは爆破の波動に身を戦慄かせると、上半身をねじまげた。右の前足が太い背骨の後に隠れる。
「爪が来る!」
エフイーは仲間たちを下がらせると、ドラゴンの前に躍り出た。
『正々堂々と拳で勝負だ!……だからその武器は壊させてもらうよ!』
爪が空気を切り裂く鋭い音と、かわさず正面から打ち砕きにきた拳が振り抜かれた音が響く。どちらの動きもおそろしく速い上に、一撃にこめられている力がかなり強い。
爪と拳がぶつかった。
空気がビリビリと震える。
「くう~、さすが……この一撃でお腹がペコペコになっちゃったよ」
刹那。
両者、弾かれたように腕を引く。
構えて待っていた祥空の前が開け、揺れ動く遊色の竜骨ドラゴンとの間に一本、射線が通った。
「“揺れ動く遊色の竜骨ドラゴン”は長いので……“オパールさん”にしましょう」
肩からまっすぐ伸ばされた腕の先から大自然の息吹を織り込んだ緑のフォースが放たれた。竜骨に埋められた宝玉へ向かって真っすぐ伸びていく。
意図を察したオパールの動きは素早かった。
ダメージを受けていない左の前足を前に出してサイコフォースを遮り、宝玉を守る。
「ふっ、引っかかりましたね」
不敵に笑った祥空の左サイドから、チェーンソーのけたたましい音が駆け込んできた。
「その腕、頂きますよ!」
ロージーはオパールの横手から、体に戻ろうとする左腕の関節部分に回転するチェーンソーを振り下ろした。
刃がわずかに張り付いていた肉を断ち、骨にはいっていく。
激しい振動に巨乳も揺れる。
ピンクの髪のヴァルキュリアは必死に揺れに耐え、顔に飛んでくる肉片や骨片、体液を、目を細くして防いだ。
どっ、と音がしてオパールの左腕が落ちた。
激痛による反射運動なのか、本能的な反応なのか。
ディフェンダーたちが動きに気づくよりも早く、オパールの尾が左から右へ大きく振られた。
遅れて天を割るような絶叫が開かれた顎門から迸る。
間髪入れず、毒を孕んだドラゴンブレスが、凶尾になぎ倒された仲間の元へ走るケルベロスたちの上に降り注ぐ。
(「盾は――」)
ケイは陣の最深部から、仲間たちが受けたダメージを推し量った。
むせび泣くオパールを前に、『爪』と『息』を防ぐ二枚の盾は歯を食いしばりながらも雄々しく立ちあがる。
(「まだ割れていない! ならば、矛の回復を」)
母はなる星に明日への希望を捧げ、ロージーの体に癒しのオーラを流しこんだ。
「さあ、立ち上がって。私たちは……私たちが倒れるわけにはいかないのです!」
立て直しの時間を稼ぐため、アシュレイはバスターライフルの引き金を引いた。時空のゆがみを伝える重力波がオパールを呑み込む。
「そのまま時のはざまで凍りついていなさい」
立て続けにイリスがフロストレーザーを放った。
オパールを捕える重力波を次々に凍らせて結晶化し、美しい花のような霜の棺を作り上げる。
いまのうちに、と万は気力溜めに入った。最前線に立つ二枚の楯に問う。
「どっちだ!」
「あ、こっち。頼みます」
癒しのオーラが頭を揺らすエフイーに撃ち込まれた。
かぐらが自分の後へヒールドローンを飛ばしてドラゴンブレスを浴びた仲間の苦痛を和らげる。
ぴしり、と氷が割れる音が場を走った。
「あーあ、せっかくの花を……愛でる前に散らすなんざぁ無粋もいいとこだぜ」
悪態をついた万を狙うように、砕けた時の牢獄からドラゴンクローが飛び出して来た。
「やらせないよ!」
毒を解かれた対爪の楯が即座に反応する。
横へ弾き流されたオパールの右前足を、盾のバックアップに前へ出ていた祥空が狙い、切る。骨の髄まで食い込んだ刃が、オパールを凍てつかせた。
ケイはまだダメージの抜けきれない仲間たちのために、サークリットチェインを発動させた。最前線の回復と防御力アップを図る。
オパールの気を散らそうと、アシュレイはバスターライフルを乱れ撃った。空気を凍てつかせて飛ぶ螺旋弾道はさながら回転ドリルのよう。オパールに当って骨に残っている肉をこそぎ取る。
「いけいけいけいけ、どんどんいけー!」
気合いが入りまくったアシュレイの攻撃に乗せられて、イリスと万が同時にグラビティ―を放つ。
「なあ……ちと聞くが、光を揺らせなくなったオパールは何になるんだ?」
「ただの石ころじゃないかしら。ということで、仕上げは貴女にお任せするわね、ロージー」
「はい、ばっちり決めますよ!」
力を削がれ、動きを封じられ、がんじがらめになったオパールの胸――宝玉を、唸りをあげて回転するチェーンソーの刃が砕き裂いた。
●
撃破の余韻に浸る間もなく、新たな『宝玉封魂竜』の影が空から落ちてきた。それも一つ、二つではない。
竜たちは得物を見定めるかのように、ケルベロスたちの頭上をゆったりと旋回しつづけいる。
「いまからが本番って感じ?」
エフイーは頬についた流血のあとを拳でぬぐいとった。
一息ついてまわりを見渡すと、城下町方面から、複数のチームが負傷者を肩で、あるいは背に負いながら城へ戻ってくるのが見えた。
木立の向こうからは、仲間の撤退を支援しているらしき他チームの戦闘音が聞こえてくる。
「あそこを見てください。ダメージを受けて下がった竜を別の竜が回復しています!」
祥空が指さす先では三体の竜が連携してケルベロスたちと戦っていた。ダメージを受けた竜の退避を別の竜が支援し、もう一体が回復にかかっている。
「たまらんなぁ。戦いが長引けば長引くほど、俺たちのほうが不利じゃねえか」
万は腰のベルトに手を伸ばしかけたが、途中でとめた。呑むのは竜どもを残らずぶちのめしたあとだ。
「やっと、こちらを認めて本気を出してきた……ということです」
かぐらは次の戦いに備えてヒールドローンに回復の指示を出した。
『宝玉』に知と力を与えている『ゲドムガサラ』は、いまだ健在。対してケルベロス側はざっと三分の一ほどが城郭内への撤退を余儀なくされていた。現時点で、である。
「ゲドムガサラ発見の信号弾があがったのを見た人、いますか?」
やはり回復のグラビティ―を回しながら、ケイが誰ともなしに問う。
「私は……見てません」
ロージーだけではない。チームの誰もがオパールとの闘いに必死で、周りを見ている余裕などなかった。
その時、アシュレイが明るい声を上げた。
「あがった! ゲドムガサラ発見の信号が、いまあがったよ!」
全員が天へ上る光に目を向け、ゲドムガサラと戦う者たちの武運を祈る。
「さあ、私たちも自分たちの役目をしっかりと果たしましょう。ただの一体も『緋紗雨』に近づけさせませんわ」
●
イリスが城郭内への移動指揮を執る。
傷の深いものを体力の高いものがカバーしながら走り戻る。特攻をかけてきた竜の尾をかわし、竜の爪をかいくぐりながら大手門を抜けて飫肥城内へ。
門を抜けてすぐ左へ折れ進み、北西の石段を駆け上がる。石段途中に土塀、踊り場があり、ケルベロスたちはあらかじめここを最終防衛ポイントと決めていた。
すでに城郭内に侵入した他の竜によって塀のあちらこちらが崩壊しているとはいえ、石段を上ることで得た高さと、土塀の遮蔽は一線戦い終えて消耗激しいケルベロスたちを有利にしてくれる。なにより、狭いたまり場に二体以上は入れないことがいい。
門を飛び越して、一体の『宝玉封魂竜』が石段下のたまり場に飛び込んできた。
「飛んで火にいる夏の竜、というやつね」
かぐらは鼻息の荒い竜を見下ろしながら、肩にかかった長い髪を手で後ろへ跳ねのけた。ディフェンダーとして、石段の最上でエフイーたちと並び立つ。たまり場にいる竜から見えるのはこの三人のみ。当然、敵の攻撃を一手に引き受けることになる。
火炎の息が石段をなめるようにして這い上がり、盾たちを包み焼く。
すかさずケイがサークリットチェインを展開してディフェンダーたちダメージを減じた。
「真っ赤な闘志の熱さなら負けないのです」
万とアシュレイが土塀の狭間から、無防備な竜の背を狙い撃つ。
「ディフェンス、交代します!」
悲鳴をあげて竜が門の外へ体を出した隙に、祥空とロージーが三人と一を入れ変えた。
先ほどとはまた別の個体が、門を壊して石段に突っ込んできた。
長い鼻面に全力で攻撃を叩き込む。
絶叫とともに巨大な顎門が開き、氷の息吹きが吐き出された。
刃のように冷たく固い風が二人の腕をズタズタにする。
かぐらとイリスが前に出て、下る二人をバックアップし、ケイの元へ送った。
同時に、回復を果たした火竜が再び突進してきた。氷竜の背を踏み台にして高く飛び、空で尾を振り抜く。
「俺がいる!」
エフイーによって火竜の攻撃はあえなく弾かれた。バランスを崩し、石段の下へ落ちる。
土塀を挟んでの一進一退の攻防が続いた。
銃声と仲間たちがあげる怒声、竜の咆哮が絶え間なく響き渡り、血なまぐさい風が土埃とともに流れてくる。
いつの間にか、石段を竜たちに奪われていた。
絶え間ない猛攻を受け、一体も倒せぬまま、じりっ、じりっ、と『緋紗雨』が座する本丸へ押さていく。
番犬たちの気持ちが折れそうになったその時、悲壮な色を帯びた天を割り裂く雄叫びが城郭内にとどろいた。
それは身体朽ちて魂となり果てようと、必ずこの戦いに勝利せんとする勇者の叫び。ケルベロスたちの矜持を刺激し、奮起を促す起爆剤となった。
血煙の向こうで、次々と仲間たちの魂の叫びがあがる。
「がんばろう!!」
息を吹き返した。奥歯を食いしばり、死力と技を尽くして竜たちと戦う。
どのぐらい凌いでいただろう、一糸乱れぬ連携で攻め寄せていた『宝玉封魂竜』たちの動きが突然、乱れ始めた。
ゲドムガサラがついに堕ちたのだ。
「さて、さんざんやってくれたな。今度は俺たちの番だ」
火竜と氷竜の濁り腐った目に怯えの色が差す。
ケルベロスたちの猛反撃が始まった。
作者:そうすけ |
重傷:氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716) エフイー・ジーグ(森羅万象身使いし機人・e08173) イリス・ローゼンベルグ(白薔薇の黒い棘・e15555) ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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