智龍襲来~飫肥城防衛線を死守せよ!

作者:沙羅衝

「みんな、もう螺旋忍法帖防衛戦の結果は聞いたかな?」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、集まったケルベロス達に向かい、話し掛けている。絹が話している螺旋忍法帖防衛戦の結果とは、金沢城で螺旋帝の血族『緋紗雨』を保護する事が出来たという事だ。
「まあ、もう一人の螺旋帝の血族『亜紗斬』ちゃんの居場所は全然分からんねんけど、良かったんちゃうかな」
 敵を引き寄せ、一網打尽にできるという少し賭けのような作戦ではあったが、成果が出たことで絹のテンションも心なしかあがっている。だが、その奥に少し困った表情も見せる。ケルベロスの一人がそれに気がつき、尋ねた。
「ま、今回集まってもろたんも、打ち上げパーティをするわけやない……のは分かるわな。実はや、螺旋帝の血族『イグニス』と同盟関係となったドラゴン勢力が、螺旋帝の血族『緋紗雨』ちゃんを奪還すべく動き出したみたいやねん」
 ざわつくケルベロス達。そして、そのざわつきは更に大きくなることになる。
「ドラゴンが襲ってくる。その刺客は、智龍『ゲドムガサラ』や」
 その名を知っているケルベロスが、愕然の表情をする。まさかそんな大物が出てくるとは思っていなかったのだろう。
「ええか、続きや。智龍『ゲドムガサラ』は、なんやようわからん秘術で『緋紗雨』の居場所を特定する事ができるらしくてな、まっすぐに『緋紗雨』を目指して進んでくる。しかも、『宝玉封魂竜』ちゅうドラゴンも引き連れてくるわけや。
 このドラゴンはな、定命化で死に瀕していたドラゴンを、ゲドムガサラが『宝玉封魂法』ちゅうやつで無理矢理生き延びさせたドラゴンやねんて。本間やったらとっくに死んでる状態やねんけど、骸骨のような姿をして襲ってくるみたいや。想像してるやろけど、力も元のドラゴンとかわらん。襲ってくるドラゴンは軍勢っちゅうくらい多いらしいから、市街地なんかで防衛戦は出来へん。
 そこでや、ゲドムガサラの軍勢を迎え撃つのに最も適した場所を探した結果、エインヘリアルによって要塞化されてた、天下の名城『飫肥城(おびじょう)』で迎撃する作戦をすることになった。みんなには、螺旋帝の血族『緋紗雨』ちゃんを保護しながら飫肥城に向かって、飫肥城でゲドムガサラ率いる『宝玉封魂竜』の軍勢を迎え撃って欲しいっちゅうことや」
 ケルベロス達のざわつきは、収束しようとはしなかった。絹は暫く思い思いに話してもらい、少し落ち着いた所で説明を続けた。
「言うても、『宝玉封魂竜』は、数の暴力で押し寄せてくるから、難攻不落の飫肥城をもってしても守り抜くのは困難やろ。でもな、『宝玉封魂竜』は、智龍『ゲドムガサラ』が直接指揮せえへん限り、その戦闘能力を発揮できへんっちゅう致命的な欠点があるんや。せやから前衛の宝玉封魂竜を撃破した後は、敵本陣に切り込み、『ゲドムガサラ』を撃破する。これができれば、残る戦力を駆逐する事も不可能やない。
 ……ちゅうても、『ゲドムガサラ』を撃破ちゅうのも並大抵にはいかんやろけど、チャンスでもあるわけやな」
 確かにこれはチャンスだ。だが、強いドラゴンを率いる『ゲドムガサラ』の強さも容易に想像できた。
「んで、ひとまず、や。まずは最初の『宝玉封魂竜』を倒さなあかんのは確定や。今回皆の相手となる『宝玉封魂竜』は雷のブレスと爪と尻尾で攻撃してくるで。上手いこと作戦考えてやらな、この『宝玉封魂竜』さえもままならんやろ。外見はさっきもいうたけど、骸骨ドラゴンや。雷を纏ってるっぽくて、終始バチバチ言うとる。気ぃ抜いたらあかんで」
 絹が説明を終えると、ケルベロス達は静かになった。確かに覚悟を決めたようだった。
「ここまで来たら、やるしかない。うちはいつも言うてるけど、ご馳走作って待ってるしか出来へん。でも、信じてる。きっちり勝って、きっちり帰ってくるんやで! 頼むな!」


参加者
月見里・一太(咬殺・e02692)
御子神・宵一(御先稲荷・e02829)
リン・グレーム(銃鬼・e09131)
ソル・ログナー(鋼の執行者・e14612)
セラ・ギャラガー(紅の騎士・e24529)
エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)
リィナ・アイリス(もふもふになりたいもふもふ・e28939)
サラキア・カークランド(水面に揺蕩う・e30019)

■リプレイ

●戦いの序曲
「ガアアアアア!!!!」
 ケルベロス達の前には、絹から情報のあった宝玉封魂竜が叫び狂っていた。
「ドラゴンに遭うのは初めてだから、もっとカッコいいのを期待したんだけど……」
 セラ・ギャラガー(紅の騎士・e24529)の日本刀を一閃する。ドラゴンはドラゴンでも、骨のドラゴンである。格好良いかどうかは人それぞれだが、少なくとも彼女はもう少し、ドラゴンドラゴンしたドラゴンを想像していたらしい。
「強大な敵ですが、だからこそ私達が戦わなくてはですね!」
 エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)が『第二星厄剣アスティリオ』で地面に守護星座を描き、前を行くケルベロス達に力を与える。強敵であろうとも、彼女のハイテンションはいつもと変わらない。
「……出来れば、早く倒したいの…。それで、早く、本陣へ、切り込めれば……」
 リィナ・アイリス(もふもふになりたいもふもふ・e28939)は、素早く倒す為の重要な事をわきまえていた。まずはこちらの攻撃を確実に当てること。その為に、オウガメタルから光の粒子を前衛に与え、確実にダメージを与える方法を取った。
 補助の力と、こちらからの攻撃の効果は、宝玉封魂竜の力を確実に削っていっていた。
『……捉えました。』
 御子神・宵一(御先稲荷・e02829)の斬霊刀『若宮』が、敵が怯む隙も与えようとしない攻撃を繰り出す。宝玉封魂竜の振り回した骨の尻尾を弾き、その隙を付いて胸に輝く巨大な宝石に切りつける。
「ケルベロス、月見里一太が問う! 自我があるなら名乗りやがれ!」
 月見里・一太(咬殺・e02692)が、宵一の弾いた尻尾の先を腕をクロスさせて受け止め、問いかける。しかし、宝玉封魂竜は聞こえた様子もない。
「なら、名無しとして死ね!」
 そう吐き捨てるように叫び、轟竜砲を打ち込む。
「見た目の割りに意外と、脆いのですかねー? リン様、ソル兄様。一気に片付けてしまいましょうー」
 サラキア・カークランド(水面に揺蕩う・e30019)は既に十分にダメージを与える事ができると判断し、白髪をなびかせながら『錆び付いた大弓』で物質の時間を凍結する弾丸を精製し、放つ。
 すると、その弾丸にあわせ、リン・グレーム(銃鬼・e09131)がフロストレーザーを放った。
 その二つの弾丸が空中で混ざり、宝玉封魂竜の胸にある宝石に直撃すると、そこから氷が幾重にも発生し、動く宝玉封魂竜を傷つけていく。
『希望よ光れ。願いよ輝け。誓いよ導け。我らが世界を見よ、絆に誓え!この身に宿りし想いの全てを使って、俺達は共に未来を拓く!』
 勝機と見たソル・ログナー(鋼の執行者・e14612)が魔人降臨の焔と、絆の焔を融合させる。
 その白き希望の焔が宝玉封魂竜の宝石を打ち抜いた時、断末魔を上げながら竜の骨を繋いでいたグラビティが弾けて崩れ落ちた。
 歓喜の雄たけびを上げるケルベロス達。だがそれは、これから起こる長い戦いの始まりであった。

●誰も、死なせない
「行けるか? 行けるやつは行くぞ!」
 ソルがそう言い、周りを見渡す。
「大丈夫、余りダメージは無い。このまま行こう」
 セラが言うように、ケルベロス達にダメージはさほど無かった。最初の作戦が功を奏したのだろう。
「一太様。いつでも交替いたしますので、ご無理はなさらずに!」
 エストレイアが、一太にヒールを施しながら言う。その声に握り拳を作り、まだ行けるという合図を返す一太。
 その隣で、いつでも代わる事ができるという表情を作り、こくこくと頷くリィナ。
「では、行きましょう」
 宵一がそう言うと、ケルベロス達は次の戦いに向け、走り出した。目標は勿論。智龍『ゲドムガサラ』だ。
 ケルベロス達は連戦を想定し、前衛を戦闘ごとに変えるという作戦を取った。何戦あるか分からない戦いに対し、ダメージを分散させようという事からだった。
 防御に自信のあるメンバー一人にダメージを集中させるというのも一つの作戦だが、この作戦の利点は、全体に満遍なくダメージがいってしまう恐れがあるが、誰一人倒れないという事だ。倒れなければ、次の仕事ができるのだ。
 あちらこちらからグラビティの轟音が響いている。戦いは激戦の様相をかもし出し始めていた。それでも、ケルベロス達は目標に向かって走る。すると、前方やや斜めの方向で戦闘が行われてる現場が見えた。
「ソルさん……あれ」
 リンが走りながら指をさした方向には、一つのケルベロスチームが宝玉封魂竜からダメージを受けている所だった。
 ソルはその中に、知り合いの顔を確認し、その足を止めた。
「……どうする?」
 ソルは迷った。このまま突き進んでゲドムガサラをいち早く撃破したいという思いと、知り合いを助けたいという思いが交錯する。
「ソル兄様が迷っていらっしゃるということは、そちらに進めということではありませんか?」
 サラキアは信頼している兄貴分に対して、そう提案する。
「俺の知り合いも……いますね」
 宵一もそう言って足を止める。
「私は、みんなに従うわ」
 セラはその雰囲気を察して、日本刀を握りなおした。
「私は、……みんなのこと。守りたい」
 リィナも、どんな状況でも対処する意思は固そうであった。
「……状況を冷静に判断すると、だ。あちらはどうも二体目で、今交戦中という事は、俺たちよりも一体目を攻略するのが早かった。
 つまり、俺たちよりも、攻撃に特化したチームなんだろう。
 一方、俺たちは言うなればバランス型だ。そして俺たちだけが、本陣に向かっている訳でもない。
 そうすると、本体を攻略するのに大事なのは、……あっちだな。
 知り合いも居る。ならば話は簡単だろう」
 一太はそう言って黒狼の耳を後ろに畳み、駆け出した。
『我は獣。故に、ただ獣として――咬み殺す』
 己の牙にグラビティを込めて、今まさにもう一撃を加えようとしていた宝玉封魂竜の喉笛を掻っ切る。
「前座はお呼びじゃねェンだよ!」
 更にソルがバトルオーラで横っ面を殴りつけ、宵一が斬霊刀で神速の突きを繰り出す。
「ティアクライスのエストレイア、ここに参上致しました!」
 エストレイアがヴァルキュリアブラストで突っ込み、リィナがトラウマボールを投げつける。
 そして、リンがそのケルベロス達の一団に居る弘前・仁王を一瞥し、バスターライフルの引き金を引きながら、宝玉封魂竜の前に立つ。
「仁王さん。ここはあっしらに任せて、行ってくださいっす」
 その言葉は信頼のそれであり、戦場での意思そのものだった。その視線の意味を受け取った仁王は、躊躇う事無く宝玉封魂竜に背を向け駆け出す。
「恩にきるんだよ。必ずゲドムさんを止めてみせるよ!」
 最後に残ったルリナ・ルーファがそう言い残し、そのケルベロスの一団は徐々に見えなくなっていった。
「グ……。アア……!」
 だが、宝玉封魂竜が、その逃走を阻むべく前方に体重を移動させていく。
「……ハ。砕いてやるよ、骨屑」
 一太がドラゴニックハンマーから竜砲弾を放ち、その体重の乗った前足を吹き飛ばす。
『あはっ、決して逃しませんよー?』
 そこへ、追い討ちをかけるようにサラキアが死神の幻影で、その前足の傷をえぐるように攻撃させる。
「さあ、お相手するっす」
 リンはそう言ってバトルオーラを全身に張り巡らせた。
(「誰も死なせはしない、この腕が、脚が、指すらも動かなくなってしまってでも、必ず守ってみせる」)

●仲間
 ケルベロス達は、仁王達の宝玉封魂竜を受け持ち、撃破するも、再び前に宝玉封魂竜が現れていた。相手は既にダメージをかなり受けている状態だったが、向かってきた為に相手をせざるを得なかった。恐らくは何れかのケルベロスにダメージを与えられ、回復の為に撤退してきたのだろう。
「ッハ、此方ばかり目をやったら、……サラキア!!」
 ソルが宝玉封魂竜の攻撃を受け、膝をついた時、サラキアの『錆び付いた大鎚』から時空凍結弾が放たれ、既にぼろぼろの宝玉封魂竜の胴体部分から氷が発生する。
 ソルのダメージはかなりのモノだった。他のメンバーは前衛と後衛を入れ替わっていたが、彼だけは前に立ち続けていたからだ。
『祈りを捧げます。かの者に、守りの加護を!』
 エストレイアがソルに祈る。すると、わずかではあるが傷が塞がる。しかし、それ以上は回復することが出来なかった。累積されたダメージが大きすぎるのだ。
『わが攻撃、光の如く、悪鬼羅刹を貫き通す』
 セラの指先から光の矢が出現し、狙い済ませた一撃を放つ。リィナの放つオウガ粒子の力と相まって、その急所を貫く。
『魔法なんて程遠い、魔術なんて程高等なものではない。これは只の種も仕掛けもある手品。さぁお立ち会い、見逃さないようにしっかりと…ね』
 後衛に移動していたリンが、荷電流を流し込んだ弾丸を撃ち込むと、その宝玉封魂竜は消滅していった。
「動けるか?」
 一太がソルに問うと、彼は力を振り絞って立ち上がり、ふうと息を吐く。
「ああ……。行ける。それに後少しだろ……」
 ソルがそう言うと、一行はそのまま黙って動き出した。
 目標は、耳を澄ますことも無く聞こえる激しい音のする方向。宵一が双眼鏡で確認したその先、飫肥駅に向かう。
 一行が走ると、駅はすぐに目の前に迫ってきた。
「……あれ、は」
 先頭に立ったリィナの見据えた先に、幾つかのケルベロスのチームが見えた。そのリィナの横に全員の回復を終えたエストレイアが並ぶ。
 集まっていたケルベロス達は、こちらに気がつき、真剣な表情で頷いた。決戦。その事を全員が一瞬にして理解する。
 駅周辺に居たケルベロス達と一つとなると、突然大きなグラビティがはじける音が響いた。近い。ケルベロス達は合流した他のチームのメンバーと共に意を決して駆け出した。
 見るとどのチームも慢心相違であったが、目的は同じだ。さほど会話をする必要はない。
 そうだ、我々はケルベロスという仲間なのだ。
「さあ、参りましょう!」
 エストレイアはその事を感じ、なんともいえない頼もしさを気合の言葉に代えて走った。

●たどり着いたゴール
 音がする方向に向かい駅を抜けると、公園に出た。そして、一際大きなドラゴンが攻撃を加えているのが見えた。智龍『ゲドムガサラ』の姿だ。
 だが、様子を確認した何人かが、知り合いの姿を見つけてその名を叫んだ。その視線の先には、既に何人かが倒れていたのだ。その事を瞬時に把握したケルベロス達は、すぐに行動に移した。己の武器を確認し、構える。
 隣でラプチャー・デナイザのチームが一つになり、呼応し、グラビティを集中させている所が見えた。
「皆様方、聞こえてたでござるな!? 友の危機、見過ごせぬのは同じはず……総員、砲撃用意でござる!!」
 ラプチャーの声に、皆が一斉に頷く。
「力を合わせる……ですか。俺たちも、行きましょう」
「へへっ。最後の力、全部込めてやるぜ!」
 宵一とソルがありったけの力を己の武器に纏わせ、サラキアが無言で続く。
「ここが……勝負所だな」
「絶対に、外さないっすよ」
 一太とリンがバスターライフルを構え、狙いを研ぎ澄ます。
「……みんなのこと、守って、見せる……」
 リィナがメンバーの最前列に立ち、オウガ粒子を放出する。
「いけ……ッ!」
 ラプチャー達が大きなグラビティを打ち放つと、その攻撃を皮切りに、幾つものグラビティがゲドムガサラに突き刺さっていく。
「貴様の魂、貰い受ける!」
「私が皆様を支えます、守ります。メイド騎士は伊達や酔狂って名乗っている訳ではありません! 参ります!」
 そして、セラとエストレイアの二人のヴァルキュリアが光を放ち、駆け抜ける。
 大きなグラビティの奔流がゲドムガサラを襲う。
「直撃……しました」
 その様子を最前線で武器を構えながら、じっと見ていたリィナが呟く。
 すると、接敵しているケルベロスが起き上がっていた。
 我々の攻撃が、諦めかけていたケルベロスの背中を押したのだ。
「……いけ!」
 その姿を見たソルが、倒れこみながら空に向かい拳を突き上げる。
 そして、そのケルベロスがドムガサラの首を落としたのだった。

 ゲドムガサラが倒れた後、動ける他のケルベロス達は、宝玉封魂竜の残党狩りや飫肥城に向っていった。
 指揮官を失った宝玉封魂竜は、それ程労せずに駆逐されていくだろう。
「我々は、どうしますか?」
 宵一が視線の先にある飫肥城を見て言う。
「無理、だな」
「ですよね」
 一太の声に、宵一は双眼鏡を懐に仕舞いこんだ。
「悪い。大体俺のせいだな」
 ソルはそう言いつつも、反省など欠片も無い表情で言う。彼はまだ倒れこんだままだ。場所だけを公園の木陰へと移していた。
「ソルさんが無茶するからっすね」
「でも、それがソル兄様ですから」
 仲の良い二人が少し笑いながら、その倒れこんだケルベロスを見る。
 ソルだけではなく、ほぼ全員がダメージを受けている。回復に時間がかかるのは分かりきっていた。
「それ、じゃあ……、この辺り……ヒール、していくの」
 リィナの言うように、この駅周辺はボロボロの状態だった。少しでも早くこの地域を元に戻したい。彼女はそう願ったのだ。
「私もそうしよう。エストレイアもどうだ?」
「勿論!」
 セラがそう言うと、エストレイアは頷いた。
 飫肥城から聞こえてくるグラビティの音が、段々と少なくなっていた。程なく作戦は完了するだろう。
 その間、一行はその音を聞き、飫肥城を見つめた。
 誰も喋らなかった。
 誰かが口を開こうとしたが、言葉にはならなかった。それは今の感情を言葉に出すと、どれも陳腐なものに思えたからだ。
 達成感といえば、それまでだが、何処か違って思えた。
 ケルベロス達はそれぞれが同じ事を思ったのか、ただ仲間と顔を合わせ、そして笑ったのだった。

 木漏れ日と共に、蒸し暑い空気が一行を包み込んだ。それは、無事に日常へと戻ってきた事を感じさせた。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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