智龍襲来~飫肥城迎撃戦

作者:そらばる

●智龍と宝玉封魂竜
 螺旋忍法帖防衛戦により、ケルベロス達は螺旋帝の血族『緋紗雨』の保護に成功した。
「今一人、螺旋帝の血族『亜紗斬』の所在は杳として知れませぬが、まずは十分な成果と申せましょう。皆様、お疲れ様でございました」
 戸賀・鬼灯(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0096)はケルベロス達を労い、次に顔を引き締める。
「さて、この『緋紗雨』の奪還を目論み、ドラゴン勢力が動き始めました」
 ドラゴン勢力は現在、螺旋帝の血族『イグニス』と同盟関係にある。
 竜十字島からの刺客の名は、智龍『ゲドムガサラ』。
 『ゲドムガサラ』はその秘術により、『緋紗雨』の居場所を特定できるようで、まっすぐに『緋紗雨』を目指して進軍してくるという。
「『ゲドムガサラ』が引き連れるは、『宝玉封魂竜』の軍勢。定命化により死に瀕した個体を、『宝玉封魂法』によって無理矢理生き延びさせている状態のドラゴンでございます」
 本来ならば死亡している事実を映してか、骸骨の如き姿をしているが、それでいて生前に準じる戦闘能力を保持している。
 『ゲドムガサラ』と共に襲来する『宝玉封魂竜』は、多数。市街地での防衛戦では、大規模な被害は免れない。
 そこで、『ゲドムガサラ』の軍勢を迎え撃つべく、最適なロケーションが用意された。
「『飫肥城』――エインヘリアルによって要塞化され、現在は皆様の手で取り戻された、天下の名城でございます」
 ケルベロス達は螺旋帝の血族『緋紗雨』を保護した状態で飫肥城へと向かい、当地にて迎撃戦を展開することとなる。

●骨となりし炎竜『赫火』
 『宝玉封魂竜』は、数の暴力で押し寄せてくる。難攻不落の飫肥城をもってしても、『緋紗雨』を守り抜くのは至難だろう。
「ですが、『宝玉封魂竜』には、智龍『ゲドムガサラ』が直接指揮しない限り、その戦闘能力を発揮できないという欠点がございます」
 すなわち、『ゲドムガサラ』の存在こそが、迎撃戦の鍵となる。
「敵方の前衛に構える宝玉封魂竜を撃破後、敵本陣に切り込み、ゲドムガサラを撃破する事が叶えば、残る戦力を駆逐する事も不可能ではございません」
 今ここに集ったケルベロス達の敵となる『宝玉封魂竜』は、生前の名を『赫火』。
 元は全身の鱗に絶えず炎を纏うドラゴンだったようだ。宝石を埋め込まれた骨だけの姿になった現在も、その名残の炎をたなびかせ続け、赤々と残像を引いて動き回るという。
 全身の炎を一極集中させる爆発のブレス、斬撃に炎を交える爪攻撃、炎の名残を鞭のように引く尻尾による薙ぎ払い、といった攻撃を行ってくる。
「イグニスの要請がドラゴン勢力を動かした……緋紗雨様の情報が裏付けられたと申して良ろしいでしょう」
 かくて智龍ゲドムガサラ直々の参戦と相成った。定命化により死に瀕したドラゴンすら戦力と化す恐ろしい敵が、やってくる。
「ゲドムガサラはもちろん、宝玉封魂竜も通常のドラゴンに準じる戦闘能力を保持しております。皆様、御仕度は抜かりなきよう、お願い致します」


参加者
昴・沙由華(ドキドキレプリカント天使・e01970)
ル・デモリシア(占術機・e02052)
矢野・優弥(闇を焼き尽くす昼行燈・e03116)
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
アルベルト・アリスメンディ(ソウルスクレイパー・e06154)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
カロリナ・スター(ドーントレス・e16815)
柊・詩帆(怠魔師・e26972)

■リプレイ

●骸骨竜、襲来
 宮崎県日南市。
 要塞化された飫肥城を、多勢のケルベロス達が囲い、守護している。
 見上げる空には、夥しいまでのドラゴンの影。
「ふむ、ドラゴンもとうとう物量作戦で来たか。こいつはかなり厄介な話だ」
 矢野・優弥(闇を焼き尽くす昼行燈・e03116)は小さく独白した。少なくとも今までの散発的、あるいは同時多発的な襲撃のようにはいかないだろう。
「すっごい数だねえ……ほんと、気を引き締めてかからないと、だね」
 アルベルト・アリスメンディ(ソウルスクレイパー・e06154)は感心と緊迫感をないまぜにしてぼやきながら、ちらりと傍らの相棒を心配そうに見やった。
 リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)は言葉ひとつなく、ひたと空を見据えていた。
(「俺はもう、貴様らを恐れない。……来い」)
 ドラゴンの群れをまっすぐに射抜くその視線には、ただならぬ因縁と、葛藤を経た覚悟が宿っている。
「五稜郭では守りきれなかったし、今回は守りきりたいね」
 カロリナ・スター(ドーントレス・e16815)は最奥部本陣にいる緋紗雨の存在を意識し、気合いを入れる。
「なんか色んな思惑からまっててめんどいかも」
 柊・詩帆(怠魔師・e26972)は、儚く控えめな印象を漂わせつつも、いかにも面倒臭そうにぼやいた。
「なるほど、楽な戦いですね」
 ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)は、不思議そうな視線を寄越してくる仲間達に、勇気づけるように笑顔を見せた。
「――撃てば当たる、という事です♪」
「ん。とりあえず殴って、あとで誰かが考えればいーよ?」
 詩帆ものんきに同意し、張り詰めた空気を適度に緩めていく。
「皆、豪気じゃのぅ。実に頼もしい限りじゃ」
 ル・デモリシア(占術機・e02052)は扇を扇いで愉快げに笑うと、鋭く視線を空へと返した。
 『宝玉封魂竜』の大群が迫り来る。次々とケルベロスの防衛線へと襲撃をかけてくるその群れの中に、赤々とした残影を引いて舞い飛ぶ影。
「来る……!」
 ケルベロス達が身構えた瞬間、眼前に降り立った炎纏う巨体が、蜻蛉を切って滞空した。
 骸骨の顎が上向けられた瞬間、全身の炎が、丸見えの口蓋へと集束していく。
 ――ゲシャアアアアアアァァア!!
 咆哮と共に、膨大な炎の塊が解き放たれ、ケルベロス達を爆発の津波で押し潰していく……!
 しかしそれは、前衛に届く前に、最前線に躍り出た二人によって防がれた。
「エレクトラ参上です! こう見えて私、丈夫ですよ!」
 特撮ヒロインよろしく、爆発の中で華々しくポーズを決める昴・沙由華(ドキドキレプリカント天使・e01970)。
「この先は、ボク達を倒してから行くことだね」
 炎の名残を払いながら、カロリナは糸のように細めていた目を見開き、挑戦的に笑みを浮かべた。
 全身に炎の残影を戻しながら、宝玉封魂竜『赫火』は不吉に喉を鳴らし、ケルベロス達への殺意を漲らせた。

●残火の赫火
 ミスラの祈りの言葉が、戦いの始まりを告げる。
「報復には許しを、裏切りには信頼を、絶望には希望を、闇のものには光を。許しは此処に、受肉した私が誓う。『この魂に憐れみを』」
 憐れみの賛歌。祝福を込めた力の加護が、仲間達に振りまかれていく。
 誰よりも速く敵へと肉薄しながら、リューデは死竜の姿に痛ましげに目を細めた。
「死者は、蘇るべきではない」
 心臓を地獄化して蘇った自分自身をも揶揄するように呟き、正確無比なスターゲイザーを叩き込む。自分は彼らとは違うと信じたいと、願いながら。
「リューデ! あんまり無茶しないでよ!」
 危なっかしい速攻にハラハラと声を上げながら、時空凍結弾で自陣に取って返す相棒をフォローするアルベルト。
「その血を少しもらおうか」
 ナイフ片手に斬り込んだカロリナは、血襖斬りでそつなく爆発のダメージを回収していく。
「火力で叩き潰してやろうかの。掠りでもすれば、ごっそり地獄行きな?」
 ルが背中のコンテナを開くと、自身そっくりの五分の一スケールデフォルメアンドロイド達がわらわら現れ、果敢に、健気に敵へと挑んでいく。
「エレクトラ、参ります!」
 依頼中の沙由華は変身ヒロイン『エレクトラ』! 拳に集めたエネルギーを持ち前の腕力に乗せて叩き付けるエレクトラ・ショックが炸裂する!
「あーうん骨だね? コペル。アレかじる?」
 対照的に、詩帆はマイペースにローテンションを崩さない。目を輝かせるオルトロスを傍らに、小さな体から撃ち出した轟竜砲が、正確な軌道で骸骨竜の芯を穿つ。
「真言龍滅、ペトリフィケイション」
 優弥は魔導書からシャーマンズカードを取り出し、掲げた。放たれた魔法の光線は、的確に赫火を射抜く。
 赫火は苦しげに身をよじり、叫喚じみた鳴き声を上げながら地に足をつけると、そのまま凄まじい速度で骨の尾を振るった。実態の尾よりも長く伸びた炎の残影が、後衛を薙ぎ払う。
「アルベルト!」
 残影を紙一重で回避しながら、リューデは声を荒げた。
「っ、大丈夫! こんなもん、屁でもないよ!」
 メタリックバーストの輝きの中から壮健な姿を現すアルベルト。決して小さなダメージではありえないが、防護も怠りないケルベロスの陣営は、この程度で崩れはしない。
 グラビティの応酬は激しさを増していく。沙由華は敵の行動阻害に、ミスラは炎の付与に専念。カロリナは味方の補助に力を割いて、忙しく治癒を振り撒くアルベルトをフォローする。リューデ、優弥、詩帆は堅実なダメージを撃ち込みつつ敵を弱体化させ、ルが問答無用の特大火力を叩き込む。
 骨と化した赫火の動きは、ひどく獣じみていた。痛みには脳に響く鳴き声で存分に叫び、状態異常の纏わりつく感覚には身震いを隠さない。その分、攻撃にも一切の容赦なく、獣の反射と鋭さで、ケルベロス達を攻め立てていく。
 炎を帯びた爪で抉られ、危ういところまで押し込まれながらも、ミスラは敢然と立ちあがる。
「っ……此処から先は私達の領域、化け物を通すことは出来ません」
 炎には、炎を。ミスラの両手に携える双槍が地獄の炎を帯びる。
「どうしても通りたくば――その首級、代価として置いて行って頂きます」
 地獄の炎に増幅された力を乗せて、極大のブレイズクラッシュが赫火の首元で炸裂した。骸骨竜の叫喚が、一際高々と木霊する。
「ここからが本番です!」
 沙由華が決然と声を上げ、敵の懐に飛び込んで降魔真拳を打ち振るった。それまでとは一味違う手応えが拳に残る。
 仲間達も続々と威力重視の戦術に切り替え、攻勢を強めていく。幻日灯火が、八大龍王が、静寂の獄が、Soulscraperが、ソウルサクリファイスが、赫火の偽りの命をみるみる抉り取っていく。
 骨が纏う炎が千切れ飛び、急速に火勢が失われていく。あたかも赫火の命の灯火そのもののように。
 赫火に最期を突きつけたのは、やはり特大の火力。
「まずは一匹目、じゃの!」
 ルの両腕からケルベロスチェインが伸び迫り、赫火の首を捕らえ巻きつくと、盛大に地面に打ち付けた。
 ガキゴキゴキッ、ゴキリッ……。
 骨の砕けるあっけない音を立て、赫火の命もまたあっけなく砕け散った。

●泥沼の戦い
 防衛線の流動は始まっていた。智龍ゲドムガサラを狙う班は続々と前に駆け出し、その最前線はすでに目視できない。
「では、我々は防衛班としてここをきっちり防衛して、螺旋のお姫様を護りきりましょう」
 優弥が確かめるように仲間達を見回し、皆も頷く。防衛に残る事は、事前に固めた全員の総意であった。
「相手はドラゴンじゃ、上空からの奇襲には注意せねばな。対空監視は怠るでないぞ!」
 ルは盾役に転向しながら、活き活きと声を張り上げる。
 一同は適度な距離や立ち位置を模索して移動しつつ、治癒とポジション確認を手早く済ませていく。消耗を完全に解消する時間的余裕はないが、継戦は十分に可能だ。
 空を埋め尽くす軍勢は、手隙になったケルベロス達を見逃さない。
「まったく、おちおち一休みもできないね」
 殺気が急速に迫り来るのを悟り、カロリナは前へ出る。ディフェンダー続行だ。
 宝玉封魂竜が一体、高速で向かい来る。骨の翼で制動をかけ、一息に吐き下ろすのは毒霧のブレス。
「ここは通しません!」
 同じく盾役続行の沙由華が前に飛び出し、詩帆を守護する。
「防衛戦なら、妾の得意とする所よの。引篭もれば、自宅警備員に及ぶもの無、よ」
 ルも優弥を庇い、早速の活躍ぶりを見せつける。
「さて、我々が倒れるのが先かゲドムガサラが倒れるのが先か……我慢比べと行きますか」
 優弥は再びペトリフィケイションからの堅実な攻撃を重ねていく。
 戦法は概ねそのまま、一同は毒の宝玉封魂竜と刃を交えた。竜の強力な攻撃をいなし、耐え、肉体を蝕む毒を散らしながら、弱体に弱体を重ね――再度、攻勢へ。
「堕ちろ」
 リューデの地獄化した心臓が、極限の集中状態を齎す。研ぎ澄まされた斬撃は、咆哮の牽制をも掻い潜り、寸分の狂いもなく敵の眼窩の、濁り色の結晶に突き立てられた。
 グギャギャギャギャッ!! 漆黒の凶悪な牙を並べた口蓋を開き、醜く吼えたてる毒の骸骨竜。またぞろ毒霧かと身構えるケルベロス達の眼前で、唐突に翼が翻される。
「逃げる気ですか!」
 ミスラのドラゴニックミラージュが毒竜の背に追い迫り――それは、割り入るように乱入した別個体の宝玉封魂竜に阻まれた。
「新手!?」
 あっけにとられるケルベロス達を尻目に、毒竜は瞬く間に敵陣へと後退していく。
 手間をかけて弱らせた毒竜は去り、目の前には無傷で元気に殺気と雷を迸らせる黄色の宝玉封魂竜。……もしや、こんなことが延々と続くのだろうか?
「もぅおうち帰りたい……ダメ?」
 詩帆がげんなりとぼやくのも、無理からぬ状況であろう。

●竜のいない空
 予感は的中した。
 ケルベロス達は一体一体の宝玉封魂竜と互角に渡り合ったが、敵は損耗が激しくなってくるとあっさりと身を引き、無傷の個体と入れ替わる。ケルベロス側の強化は引き継げるものの、敵への弱体は改めてかけ直し。泥仕合にも近い戦いに、心身の消耗は蓄積していくばかり。
「!? さっきの毒竜!?」
 雷竜、氷竜ときて、再び現れた毒竜に、ケルベロス達は驚愕する。漆黒の凶悪な牙。間違いない、同じ個体だ。
 だというのに、傷一つ、消耗一つ感じさせない。……後方に下がり、全ての傷を癒してから、再突入してきたのだ……!
 竜の入れ替わりに合わせて、リューデと入れ替わりに後衛へ下がったカロリナが、物騒に目を細める。
「なるほど、これを繰り返してたんだね……」
「これじゃきりがないよ!」
 もはや治癒にかかりきりになるしかないアルベルトは、悲鳴じみた声を上げた。これでは敵の数を減らすこともできず、防衛線が疲弊していくだけだ。
「緋紗雨さん? とかどーでもいーから帰ってゴロゴロしたい……」
 詩帆のてきとー節にも、普段以上の切実な響きが入り混じる。
「――諦めない。絶対に、ここは通しま――!?」
 二振りのゲシュタルトグレイブを手に敵の間近へと踊り出たミスラを、一瞬速く、毒竜の漆黒の牙が捕らえた。
 耳をつんざく甲高い絶叫。振り捨てられたその体を、カロリナが受け止め、即座に戦闘継続不能と判断、後方の物陰へと退避させた。
「皆、無事で戻ろう、ね……!」
 立ち上がる力もないミスラの姿に唇を噛みしめると、アルベルトは呼びかけ、献身的に治癒を振り撒いていく。
 相手に回復される事が目障りなのは、敵にとっても同じ事。毒竜は徹底して後衛を攻め立てる。
「……やらせはしない」
 盾役に転向したリューデは、己の命を投じる覚悟で、アルベルトの前に立ちふさがる。
「前線からの撤退も増えてきましたね……」
 優弥はシャーマンズカードを操りながら、神妙に呟く。今目の前にいる竜を出来る限り引き付けておくほかに、撤退に手を貸す余裕がないのが口惜しい。
 敵陣に進攻した戦力は、まだ半分以上が前線で踏ん張ってくれているはずだ。彼等を信じて、ケルベロス達は泥臭い戦いを凌いでいく。
 周囲からも、雄叫びが、苦悶の声が、ケルベロス達の耳に届く。他のチームも戦っている。諦めずに、ただただ、守り続けている。
 傷つき、癒し、傷つけ、逃げられ……時間の感覚もおぼつかなくなるような戦いを経て、どうしようもなく窮地に追い込まれていく防衛線。ケルベロス達の疲弊がピークに達しようという……その時。
 ――宝玉封魂竜達の挙動が、明らかに変わった。
 一糸乱れぬ連携が、あからさまに乱れを生じた。攻撃や立ち回りはてんでバラバラ、瀕死に追い込まれても撤退しようとしない。治癒が得意な個体も、自身以外の個体に回復を行わなくなった。
 それは、防衛線の全体で見て取る事が出来た。
 宝玉封魂竜の統制が、失われたのだ。
「ゲドムガサラが撃破された……!」
 防衛線全体に確信が駆け抜け、士気昂揚が爆発する。ケルベロス達は一斉に、鬱憤を晴らすように攻勢に転じた。
「一体ずつ、地へと叩き落して集中攻撃じゃ!」
 ある時は数を巻き込むミサイルを派手にぶちかまし、ある時はちびルル軍団を自爆させ、華々しく空を彩るル。
「だぁー! 骨のくせにしぶといとかめんどいよ!?」
 竜の攻撃にダウンしたコペルの仇をとるように、ゲンジツトウヒの不思議パワーを漲らせる詩帆。
「気になるなぁ……あなたの魂の味。少し……少しくらいなら味見してもいいですよね?」
 具現化した光の剣に降魔の力を乗せて斬り込み、雷の竜からグラビティ・チェインを強奪するカロリナ。
「古に伝わる八柱の龍王よ。汝が真名と血の契約において、我、優弥が命ずる。その力を我が眼前に示し、宝玉封魂竜を滅せよ」
 朗々たる詠唱にて八大龍王を顕現させ、荒れ狂う氷の嵐で炎の竜を追い詰める優弥。
「ちょっと早いけど、終わったねえ……」
「気を抜きすぎるなよ」
 戦いの合間に少しだけ休むように、背中を預け合って小さく笑い合い、互いに別方向へと飛び出していくアルベルトとリューデ。
「世に曰く、窮鳥懐に入らば猟師もこれを撃たず……と。頼られたからには緋紗雨さんは守り抜きます!」
 沙由華は晴れやかに断言し、エレクトラ・ショックを大地に叩き付け、押し寄せる宝玉封魂竜達を地に沈めた。
 立ち上がり、視線を馳せた先には、変わりなく佇む飫肥城の姿。
「次にあう時は敵味方かも知れませんね……でも。できる事なら、今日がお互いにとって良い未来に繋がりますように」
 ……かくて、統制を失った宝玉封魂竜はもはやケルベロスの敵ではなく、勢いを得た防衛線のケルベロス達により、ほどなく殲滅された。
 防衛戦は大勝利を収め、空から骸骨竜の姿は消えた。
 そしてそれは、智龍迎撃戦全体の成功をも意味していた。

作者:そらばる 重傷:ミスラ・レンブラント(チンポソムリエ・エキスパート・e03773) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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