●ミックスレストラン
社会人たちが行き交うビジネス街。様々な飲食店が軒を連ねているビルの一角にある小さな小さなフロアの中。たった一つだけ残されている電灯の下で、一人の男性がうなだれていた。
「やっぱ、勢いだけじゃだめだったのかなぁ……はぁ」
男性が視線を向ける先、主にジュースやスムージーなどを作るミキサーが数台。磨き抜かれたガラスの中、刃を輝かせていた。
「美味い、と思ったし、かつての俺みたいな忙しい社会人に最適だと思ってんだが……」
誰にともなく男は語る。
昔、あまりにも忙しくて買って来た弁当を食べる暇もなかった時、ふと魔が差して全部をミキサーの中に放り込んで混ぜてみた。
美味かった。
これなら、美味しく食べれて栄養も取れる! と意気込み店を開いた。
「けど、一回くらいは覗きに来る方もいたが……どう見ても面白半分だったよなぁ。……はぁ、もう少し考えときゃ。けど、美味かったしなぁ……」
漏れ出るため息。
口を開くたびに紡がれていく後悔。
背後に感じた誰かの気配。
「……え?」
振り向く先、一人の女性が立っていた。
女性は男性が驚いているさまを見つめながら、ゆっくりと歩みよっていく。
戸惑う胸に一本の鍵を突き刺していく。
「あ……」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの後悔を奪わせてもらいましょう」
鍵を引き抜けば、男性はゆっくりと倒れ込んでいく。
代わりに割烹着姿の男が一人出現した。
物静かに佇む割烹着姿の男は、瞳がモザイクに覆われていて……。
●ドリームイーター討伐作戦
足を運んできたケルベロスたちを出迎えたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、メンバーが揃ったことを確認した上で説明を開始した。
「自分の店を持つという夢、叶えるために努力されている方もいるかと思います。そして、その夢を叶えたのに、店を潰してしまって後悔している方がドリームイーターに襲われてその後悔を奪われてしまう……そんな事件が起きてしまったようです」
後悔を奪ったドリームイーターはすでに姿を消している様子。しかし、奪われた後悔を元にして現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしているようだ。
「ですので、この現れたドリームイーターによる被害が出る前に、撃破してきて欲しいんです」
このドリームイーターを倒すことができれば、後悔を奪われてしまった被害者も目を覚ましてくれることだろう。
セリカは地図を取り出し、ビジネス街の一角を指し示した。
「現場となるのはこのビルの三階の隅にある、小さなフロア。被害者の方が店を開いていた場所になりますね」
ドリームイーターはこの場所で、かつて被害者が開いていたものと同じような店を営業している。
「内容は……そうですね……少々言葉に迷いますが……」
被害者は男性。
かつて、仕事が死ぬほど忙しかった時、弁当の中身をミキサーに放り込んで一つにし、飲んだ。それが素晴らしく美味いと感じ、勢いのままに脱サラし、資格などを取ってレストランを開いた。
もちろん、内容はミックス。普通の店ならば定食やセットとして出されそうな料理をミキサーにかけ、飲み物にしたものを提供する。
忙しい社会人に十秒チャージ、そんなキャッチコピーの店だったそうな。
「一応、元となる料理そのものは美味しかったみたいですが……客足はほぼないと言ってよく、一ヶ月も経たずに店は潰れてしまった。その後悔をドリームイーターに奪われた、という形になりますね」
先程説明したように、ドリームイーターはそういった店を開いている。方法としては、店に乗り込んでいきなり戦闘を仕掛けることも可能だ。
「一方、一通り店のサービスを受け、そのサービスを心から楽しんであげれば、ドリームイーターは満足して戦闘力が減少するという特徴もあるみたいです。また、その場合、被害者の男性も後悔の気持ちが薄れて前向きに頑張ろうという気持ちになれる、という効果もあるみたいですね」
どうするかは任せると告げた後、戦闘能力の説明に移行した。
今回のドリームイーター。割烹着姿の男性で、瞳がモザイクになっているという特徴を持つ。
戦闘においては妨害特化。
心を奪うハンバーグセットドリンク、ミキサーの刃を飛ばし防具ごと切り裂く、自ら特製オムライスドリンクを飲んで傷を癒やし毒などを浄化する、といった行動を取ってくる。
「以上で説明を終了します」
セリカは資料をまとめて締めくくった。
「多くのことは皆さんに任せる形となりますが……後悔を奪われてしまった被害者のためにも、ドリームイーターを倒して事件を解決させてあげてください。どうか、よろしくお願いします」
参加者 | |
---|---|
キャスパー・ピースフル(壊れたままの人間模倣・e00098) |
霧島・絶奈(暗き獣・e04612) |
ヴィンセント・ヴォルフ(銀灰の隠者・e11266) |
艮・鬼怒(無影の凶梟・e13653) |
灰縞・沙慈(小さな光・e24024) |
ペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224) |
ルーニア・リステリアス(微睡はいつまでも・e37648) |
王・美子(首無し・e37906) |
●フード・ドリンク
灰色の景色を嫌ったか太陽の光は届かない。
落ち着いた温もりを醸し出す橙色の電灯が通路やカウンター席を包み込んでくれている、小さな小さなレストラン。
ケルベロスたちはカウンターに着席。滞りなく注文を終え、料理? が運ばれてくるのを待っていた。
奥にある調理場から聞こえてくる油の音、どことなく香ってくるようにも思える肉の香り。
キャスパー・ピースフル(壊れたままの人間模倣・e00098)は表情をほころばせる。ミミックのホコロビも期待している様子でカタカタと合わせ目を鳴らしていた。
それから五分ほど経った頃、キャスパーの微笑みは曇る。
高らかに響くミキサーの音色を聞いたから。
他のケルベロスたちも概ね似たような反応を見せる中、店主がお盆に三つのビールジョッキを乗せてやって来た。
調理手順や機械の関係上、他の注文はもう少しかかってしまう。
そんな説明を受けながら、キャスパーは注文の品だと言うビールジョッキを受け取っていく。
もちろん中身はビールではない。
白とも灰色ともいい難い色彩を持つ意味不明な液体だ。
「これが、ハンバーグセット……」
ごくりと生唾を飲み込み顔を近づけた。
香りの強いデミグラスソースを用いたのだろう。食欲を誘う酸味に少々の甘い香りが混じっている程度。
「……」
意を決して口をつける。
ゆっくりと液体を流し込んでいく。
酸味が口の中に広がった。
とうもろこしのような甘みと野菜のような青臭さが舌の上を転がり始めていく。
後は肉、とにかく肉。
牛と鳥がデミグラスソースとコーンポタージュスープにまみれながら、粘着く腐葉土の上で決闘を……。
「……」
キャスパーは遠い場所を見つめながら、一気に胃の中へと流し込んだ。
色彩の薄れたビールジョッキを置くと共に、呆然と天井を仰いでいく。
「うう、できれば原型のまま食べたかったな……」
「……」
隣では、灰縞・沙慈(小さな光・e24024)が瞳の端に涙を浮かべながらこくこくと飲み続けている。
喉に何か引っかかるものを感じるけれど、いろいろな味がいっぺんでわけがわからないけれど……食べ物は粗末にしちゃダメだと、おにいちゃんに教わったから……。
一方、王・美子(首無し・e37906)は黒とも茶色とも判別がつかない液体を前にちらちらと調理場の方角をうかがっていた。
聞こえるのはミキサーの駆動音。
調理はすでに最終段階。いつ、店主が新たなドリンクを運んできてもおかしくないだろう。
「……」
せっかくメイド服をバッチリ着込んできたと言うのに、今の段階では目の前の脅威を乗り越えるための隙がない。かといって、全員のドリンクが揃うまで待つのは不審がられる可能性もある。
「……畜生、上等だ!」
メイドに似合わぬ決意の光を瞳に宿し、美子はビールジョッキを掴み取った。
直飲みの覚悟はできていると、勢いのままにかっこんだ!
内容は、ミックスグリルセットドリンク。
本来ならハンバーグとソーセージ、チキンステーキを一度に楽しめる一品だ。
デミグラスソースの酸味とコーンポタージュスープの甘み、野菜の青臭さが混ざり合い、粘着質なライスが母体となって全てを受け止める。
牛も、豚も、鳥も、無秩序に混ざり合いながら苦味以外に満たされた海へと飛び込んでいく。
「……」
何度もえづきそうになるのを必死に抑え、美子は喉を震わせていく。
飲み干すと共にビールジョッキを机に叩きつけ、ゆっくりと顔を伏せていく。
隣に座る霧島・絶奈(暗き獣・e04612)の感想も概ね変わらない。
表情こそいつもと変わらぬ様子だったけど、口の端はどことなく引きつっていた。
オムライスセットドリンクは、香りこそケチャップソースが覆っていてくれた。けれど、もしも形を成していたならばふわふわでとろとろだっただろう玉子が、全ての物質と混じり合うことによって不快感を催すとろみをドリンク全体に与えている。
彼女たちが苦しんでいる頃、最後のドリンクが運ばれてきた。
待ってましたとばかりにがっついていくホコロビを横目に、キャスパーは立ち去ろうとした店主を呼び止める。
犠牲者は最低限で良い。
「これちなみにどんなミキサーを使ってるの?」
仲間たちが美味しい時間を過ごすために、店主の注意をひきつけておこう。
ネットで話題になった事がある、食べ物や氷はもちろん、ボールペンや小さな機械なども粉砕できる外国製のミキサー……と店主が語る中、艮・鬼怒(無影の凶梟・e13653)は未だ口をつけていない仲間たちへと向き直った。
青ざめた表情を浮かべている美子と手分けして、仲間たちのドリンクにおいしくなあれ。
最後に自分が頼んだ和風ハンバーグセットドリンクに施して、改めて取っ手を掴み取った。
力を用いても色は変わらない。
玉ねぎと醤油を基礎とした和風ソースの香りさえも味噌の匂いが包み込んでいる焦げ茶色と思しき液体を見つめながら、小さく頷き飲みはじめた。
舌触りも最悪なことに違いはない。
喉越しが著しく悪いことも違いはない。
ただ、味噌汁の香りに違わぬ味わいは、どことなくほっとするたぐいのもの。
瞬く間に飲み干して、静かな息を吐き出していく。
視線を感じ、店主の立つ方角へと向き直った。
「美味しかったよ、ごちそうさま。ところで、最初にドリンクにした弁当は何だったの?」
コンビニの幕の内弁当……との返答がなされる中、ペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)もまた滞りなく飲んでいる。
力を用いて美味しいドリンク。
見た目違わず、きっと消化にも良いのだろう。
一方、ヴィンセント・ヴォルフ(銀灰の隠者・e11266)もまたドリンクを飲み進めていた。
頼んだのはパンケーキセットドリンク。
メープルシロップの香りが心地よく、色合いもパンケーキの生地に似ている……他よりも幾分マシな物体だった。
最初に口をつけた時には、甘いパンケーキとコーンポタージュスープが喧嘩しているさまが見えた。
力を用いた今は双方が和解し、協力して落ち着いた甘みを作り出しているように思える。
「……」
飲み干し口を外すとともに、安堵の息。
ハンカチで口元を拭いながら周囲に視線を送れば、同様に飲み終えたらしいルーニア・リステリアス(微睡はいつまでも・e37648)が落ち着いた笑顔を保ったまま肩の力を抜いている。
残る仲間たちのビールジョッキも、すでに空。
たくさんの客が飲み干してくれたのが嬉しいのか、店主の顔もニコニコ笑顔。ケルベロスたちはごちそうさまや感想を投げかけながら、一人、また一人と立ち上がっていく。
目の前の店主を……瞳がモザイクに覆われているドリームイーターを打ち倒し、本物を取り戻すため。
本物が、後悔を次の糧にできるように……。
●瞳の中は曇り空
沙慈は思う。
確かに、飲み物としても食べ物としても色々と未成熟なドリンク。大人向けなのか、自分にとって十秒チャージとはならなかった。
けれど……。
「私みたいな子でも美味しく飲めたよ!」
健気な言葉を伝えながら、ドリームイーターの足元へと潜り込む。
勢いのままに竜の爪を突き出せば、ドリームイーターは跳躍。
すかさず、距離を詰めていた鬼怒が殴りかかる。
クロスした腕で防ぎながらも、勢いは殺しきれず調理場の方角へと吹っ飛んでいくドリームイーター。
その脇腹を一発の弾丸がかすめて消えた。
担い手たる美子は構えを直しながら口元に手を当てていく。
「……クソッまだ胃からこみ上げてきやがる……」
「さあ、我々に挑んだこと……後悔させてやろう」
直後、ペルが間合いの内側に踏み込み蹴りを放つ。
片腕で受け止めながら、ドリームイーターは虚空に生成したビールジョッキを沙慈に差し出してきた。
白とも灰色とも思しき液体は、おそらくハンバーグセットドリンク。
「……」
受け取り、沙慈は飲む。
涙を流しながらも、もったいないからと一気に胃の中へと押し込んだ。
ウイングキャットのトパーズが翼をはためかせ、沙慈を応援し続ける。
満足げな表情を浮かべるドリームイーターに、襲いかかるのはホコロビの牙。
一方のキャスパーはルーニアからの要請を受け、沙慈の治療を開始した。
「僕もさっき飲んだけど……うん、すごい味だったよね、うん」
「……」
こくりと頷きながら、口を離していく沙慈。
精神的にも肉体的にも、戦線復帰にはもう少しだけ時間が必要だろう。
隙間を埋めるため、彼女への追撃をさせぬため、ペルは拳に白雷を宿していく。
「さてさて、今もなおそのドリンクを提供してくれるみたいだが……あいにく、すでに腹は満ちていてな」
口の端を持ち上げながら床を蹴り、懐へ入り込むとともに拳を放つ。
土手っ腹を打ち据えれば白き雷がほとばしり、ドリームイーターの全身を焼き焦がした。
それでもなおミキサーの刃が発生する。
ペルは裏拳を放ち、その全てを叩き落とした。
「早く食べたい思いでミキサーだろう? 我もお前を早く倒したくてな……」
声を弾ませ蹴りを放ち、ドリームイーターをカウンターへと追いやった。
立ち上がろうとしてよろめく隙を見逃さず、ケルベロスたちは攻撃を注ぎ込んでいく……。
ミキサーの刃を受けたホコロビの治療を行いながら、ルーニアは安堵の息を吐く。
満足させる事ができたのだろう。沙慈は念のために序盤は全力を注いだけれど、今は攻撃による悪影響はルーニアだけで浄化することができている。もちろん、ダメージそのものはそれなりに重いから、時に仲間たちに声をかけ治療補助を要請した。
ケルベロスの側に大きな被害がなく、余裕を持って戦えている状況。
浮かんでくるのはドリームイーターの瞳を覆い隠しているモザイクのこと。
「……」
何故、瞳が欠損したのか。
あるいは、後悔の主が料理を正常な視点で見られなかったことに起因しているのかもしれない。あるいは、近視眼的に事を進めた結果、後悔する状況に陥ってしまったからかもしれない。
様々な仮定を巡らせながら、ルーニアは仲間たちを支えていく。
故に動きを淀ませることなく、ヴィンセントは龍の幻影を解き放った。
「……忙しい時、集中してる時は、ご飯を食べる時間が惜しいとか、急ぐ時ってあるから、わからなくもない、けど。ゆっくりご飯が食べられたら、一番良いんだろうな」
嘆息にも似た言葉と共に、龍の幻影はドリームイーターを飲み込んだ。
腹の中で炎上していく中、絶奈が操る液体的な得物が両腕を拘束する。
「皆さん、総攻撃を」
「わかったわ」
絶奈が縛る力を強める中、ペルが跳ぶ。
鎌に虚ろなオーラを走らせながら、大きく振りかぶっていく。
「ファミレスとかで色んなジュースを混ぜる学生どもも大概ではあるが、果物や野菜ならともかく弁当そのものをミキサーにかけるとは中々奇天烈なもの。店までやるのは早計だったな……クク」
勢いのままに振り下ろし、ドリームイーターを斜めに裂く。
それを皮切りに打撃が、斬撃が殺到しドリームイーターの体を浮かばせた。
テレビウムの凶器に撃ち落とされ地面に落ちていくドリームイーターを、絶奈は静かな瞳で見つめていく。
深い息を吐き出すとともに、眼前に幾層にも重なる魔方陣を展開した。
「……今此処に顕れ出でよ、生命の根源にして我が原点の至宝。かつて何処かの世界で在り得た可能性。銀の雨の物語が紡ぐ生命賛歌の力よ」
巨大な槍にも見える輝きの一部を召喚し、ドリームイーターへと突きつける。
モザイクの向こう側を見つめながら、狂気的な笑顔を浮かべ――。
「……」
――貫き、霧散する。
輝きと共に、ドリームイーターが。
ひとかけらの粒子が店の奥に向かっていくかのような軌道を描いた時、絶奈は瞳を伏せ――。
●新しい未来に備えるため
店主は調理場近くの扉の向こう。バックルームと思しき場所に、一人寝かしつけられていた。
事後処理を終えたケルベロスたちは店主の介抱を行っていく。
程なくして目覚めた店主が何らかの反応を見せる前に、美子が両肩をガシッと掴み取った。
「良いか、混ぜるな。弁当を混ぜるな。食の豊かな国なんざ握り飯食ってバナナ食ってシリアルとサプリ摂って寝ろ!!」
「……え?」
混乱した様子で瞳を見開く店主から手を話し、美子はバックルームから立ち去っていく。
扉が閉まる音が響いた時、鬼怒が一通りの説明を行った。
合点がいったのだろう。店主は肩を落としてうつむいていく。
見つめながら、鬼怒は落ち着いた調子で言葉を続けた。
「まあ、弁当食べる暇もないくらい忙しい人が、店をわざわざ訪ねるっていうのもおかしな話じゃない? 商売として、かみ合ってなかったんじゃないかと思うよ」
何より、ミキサーにかける前の料理を作る時間もある。
「それに、食べる物は見た目や何かも重要だからね。食べてみれば問題ないとはいえ、食べたいと思えるような見た目じゃないっていうのは痛いところだろう」
ドリンクは、たとえ美味しかったとしても飲むのには中々勇気のいる一品だ。
だから沙慈は提案した。
「もしお店を続けるなら普通のご飯が食べたいな。普通ならとっても美味しいと思うよ」
仲間たちの感想を聞く限りでは、もとのままならば……というきざしはあったのだから。
店主は視線を落としたまま動かない。
表情を見せず、ヴィンセントは口を開く。
「まあ、今は休息が必要。ゆっくりとするといい。料理自体は美味しそうだったのだからな」
「そうですね。心も体も疲れを癒せば、きっといい考えも見つかると思いますよ」
絶奈もまたはっぱをかける。
疲れて、正常な視点を失っていたがゆえの後悔なのだろうから。
震えながらも顔を上げ始めていく店主の手を、ルーニアがぎゅっと握りしめた。
「わたしも、もともとの味はきっと美味しいのだと思う。だから、普通の料理ならばファンにもなり得たかもしれん」
「……」
瞳を震わせながらも、店主は頷いた。
少し休んで考えてみる、そこから再出発できるなら、また……と。
そんな光景を見守っていたキャスパーは、表情を綻ばせた。
「その時はまた、頑張ってね! 教えてくれれば……混ぜるのはちょっと勘弁だけど、でも、来るよ!」
油の音、肉の香り。
それは普通に食べるのならば美味しいもの。
普通の名店の新たな誕生を夢見ながら……今は、心も体も休めよう。心身ともに健全でなければ、再び判断を誤ってしまうやもしれぬのだから……。
作者:飛翔優 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年6月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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