智龍襲来~宝玉の軍勢

作者:林雪

●来襲・宝玉封魂竜
「皆が頑張ってくれたおかげで、螺旋帝の血族『緋紗雨』は保護する事が出来たよ。もう一人の『亜紗斬』も気になるところではあるけど、まずは差し迫った問題からいこう。ドラゴンが動いてるよ」
 ヘリオライダーの安齋・光弦が珍しく真顔で説明する。
 螺旋帝の血族『イグニス』と同盟を結んだドラゴン勢力が『緋紗雨』を奪還しようと刺客を差し向けてきたのだ、という。
「敵は智龍『ゲドムガサラ』。ゲドムガサラはなんと秘術によって緋紗雨の居場所を特定出来てしまうようで、真直ぐに緋紗雨目がけて進軍してくるだろう……『宝玉封魂竜』の軍勢を引き連れてね」
 『宝玉封魂竜』とは、定命化で死に瀕していたドラゴンを、ゲドムガサラが『宝玉封魂法』という方法を用いて、本来ならば死亡しているものを骸骨に似た姿で無理矢理生き延びさせたというドラゴンである。
「骨だけみたいになっちゃってるけど、戦闘能力は元のドラゴンの時と同じ強敵だ。こいつが相当な数の軍勢で現れるから、市街地で迎え撃てばまず甚大な被害が出てしまうことは間違いない。そこでね」
 今回の作戦で敵を引き付けるのは『飫肥城』。
 エインヘリアルによって要塞化されていた、天下の名城である。
「みんなは緋紗雨さんを保護して、飫肥城に向かって、ゲドムガサラ率いる『宝玉封魂竜』軍を迎え撃って欲しい。本当に、休む暇もないけど……君たちにしか出来ない事なんだ」

●大軍勢
「正確な数までは把握出来ていないけど、とにかく『宝玉封魂竜』は相当の大軍で押し寄せてくる。まともに全部とやり合うのは無理だ。……でも、ちゃんと弱点がある。あいつら智龍『ゲドムガサラ』が直接指揮しないと戦闘能力を発揮できないらしい」
 つまりゲドムガサラさえ倒してしまえば、残り戦力は駆逐出来るのだという。
「前衛の宝玉封魂竜を撃破した後、素早く敵本陣に切り込むんだ。そうすればゲドムガサラの元へ行ける。最初の宝玉封魂竜との戦いが鍵になる」
 宝玉封魂竜1体を撃破した後本陣で大将を狙う、ハードな闘いである。
「君たちのチームで戦う個体は、凍てつく息を吐くアイスドラゴンの成れの果てだよ」
 骨格は青白く光り、体の中に剥き出しの乳白色の宝玉が見える、不気味な姿。
「重ねて言うけど、骨になっててもドラゴンだ。強敵だよ。ゲドムガサラに挑むことも考えて余力を残したいところだけど、こいつを相手にあまり手間取るわけにもいかない。勿論、ブレスの他に爪と尻尾の強烈な打撃も脅威だ」
 最低限の体力を確保しつつも、積極的に攻撃をかけていきたいところである。戦いの結果が、ゲドムガサラへの道を開く。
「ドラゴン、イグニス、螺旋忍軍……色んな思惑が動いてるけど、まずは緋紗雨さんを守って様子を見たいところだ。智龍ゲドムガサラが直々に出て来るなんて、本当ハードだけど。頼んだよ、ケルベロス!」


参加者
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)
狼森・朔夜(迷い狗・e06190)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)
コール・タール(マホウ使い・e10649)
四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)

■リプレイ

●対ダスト戦
 空を覆いつくす敵の襲来に、ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)が妙に明るい声を出した。
「ここまで来ると笑い事だね。いっそ楽しくなってきた!」
「ドラゴン共の方は、必死のようだな」
 応じるソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)の言葉にも不敵さこそあれ、怯えの色は微塵もない。この仲間内の空気が、火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)は嫌いではない。戦うならば、不敵に。そして、勝つ。そういう方が、彼女の性にあっているのだ。
「緋沙雨ちゃんが何を考えてるかは判らないけど、忍軍のゲートをドラゴンに渡すわけにはいかないな」
 そう言ってひなみくの緑晶が見据えるのは、まだ姿の見えぬゲドムガサラである。
「攻めることで人々に恐怖をもたらし、結果として竜に利益を与えているんでしょうから、向こうは一石二鳥ということかしら……そう考えると、あまり調子付かせたくはないわね」
 四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)も極めて冷静に、だが内なる高揚をどこか抑えきれていない様子でそう呟いた。
「……来たな」
 狼森・朔夜(迷い狗・e06190)がそう言って素早く立ち位置を変えたのを合図に、ケルベロスたちは戦闘配置についた。攻守のバランスを取りつつ、高火力の攻撃を揃えて本陣を狙う気概が見受けられる陣形。絶対に倒すために張り巡らされた罠の中に、宝玉封魂竜は狙い定めて飛び込んで来た。恐らくは、ケルベロスを見つけるや殺せとゲドムガサラの命を受けているのだろう。
 青白い骨だけの身体の奥に、乳白色の宝玉。よく見れば骨の表面から冷気の粒が立ち昇り、まるでホコリを撒き散らしているようにも見える。この個体が『ダスト』と呼ばれる理由はこれのようだ。
「……」
 コール・タール(マホウ使い・e10649)は目の前の敵の姿を凝視する。一体こんな、醜悪な骨だけの姿にまでなって生き長らえているのは、仲間を思う故か、それとも道具として使われているだけか。
「なんでもいいか。殺す敵だ」
 コールの思うところを察したらしきシア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)が頷いた。
「この敵といい、緋紗雨さんの位置を把握する術といい、ドラゴンは未知のカードを沢山持っていらっしゃるわね」
 そう言い、愛刀・野紺菊をスラリと抜くシアの姿が美しい。何となくその姿を見届けてからうっすらと微笑んだイリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)も、冽刀・風冴を合わせて抜いた。
「皆さんとご一緒なら、最後まで戦い抜ける気が致します」
 笑顔の余韻のみを残し、イリスが先陣を切って飛び出した。
「銀天剣、イリス・フルーリア―――参ります!」
 刀の切っ先を真直ぐにダストへ向け、そのまま初手へと転じた。
「ソロさん、畳み掛けて頂けますか」
「任せろ、あの骨をゴリゴリ削ってやる」
「灼き尽くせ、龍の焔!」
 イリスが放った炎がダストへ襲いかかる。逆巻く炎に骨の身を炙られて、不服げな声を出したダストの鼻ッ先に、ソロが跳んでいた。
「全ての命の源たる青き星よ……」
 振りかぶったのは、身の丈を越える光の刃である。
「一瞬で良い……私に力を貸してくれ!」
 青き光がソロの力となり、渾身の一撃がダストの額へさく裂!
『ゴギャアッ』
「ペレ、いいね。みんなを頼んだよ」
 大技が幸先よく決まり、続くノーフィアの表情も凛として強い。ボクスドラゴンのペレを回復役として飛び回らせつつ、自分もまた夜空の色の翼を広げた。
「黒曜牙竜のノーフィアより、宝玉封魂竜のダストへ、牙と誇りの祝福を!」
 右腕に鋼の竜の力を宿らせ、巨大な爪で先にソロが割った敵の額へ、打撃として竜の鉄槌を振り下ろした。
「顕現せよ、汝鋼の鱗持ちし竜。我が一肢と成りて立塞がる愚者へと鉄鎚を打ち下ろせ!」
「―――皆、殺す。お前らが戦う意志を見せ続ける限り―――」
 ケルベロスたちの連撃は止まらない。今度はコールが惜しみなく大技を繰り出した。展開された魔法陣から、巨大な戦斧が砲弾の代わりに射出され敵に命中する。巨体がバランスを崩し、支えようとした足元を、シアの斬撃が正確な狙いで薙ぎ払った。
「足元注意、ですわ?」
 ズゥン、と地に倒れ、怨嗟の声を上げるダスト。
「っしゃあー! いい調子だよ! これなら」
 ゲドムガサラの元へ行ける、と、ひなみくがガッツポーズを取りつつ、オウガ粒子の輝きで仲間を包んだ。主が癒し手に徹する分を補うが如く、ミミックのタカラバコが偽の財宝を撒き散らして奮戦。
 いきなりの猛攻に、ダストは何が起きたのか理解出来ずに暴れ出した。子供が地団太を踏むように尻尾を地面に叩きつけ、苛立たしげな咆哮を上げる。その不規則な動きを巧みに読みつつ、朔夜が瞬時に距離を詰めた。
「喰らえ!」
 朔夜の放った蹴りは星の煌きとともにダストの後足を穿つ。上がる悲鳴。そこへ玲斗の静かな闘志を乗せた日本刀の一閃。
「光陰逝水。切れ味はいかがかしら。……、……!」
 次の瞬間、太い骨の尻尾が撓うのが見えて、玲斗は咄嗟に刀を鞘に納めつつ身を小さくし防御を固める。
『ガァッ!』
 ブン! と振り回された尻尾が、近距離で攻撃に当たるソロ、イリスに襲いかかる。鞭のような一撃はノーフィアと玲斗をも巻き込み、ソロを庇う位置に飛び込んだタカラバコは、いきなり大きなダメージを浴びることとなった。
 壁役としての役目を果たしている自身のサーヴァントを誇りに思う反面、やはり大切な家族が傷つく様は見るに忍びない。グッと込み上げるものを耐えて、ひなみくは前を向く。
「タカラバコちゃんっ……、……最後の最後まで、頑張って!」
「助かった、恩に着るぞタカラバコ」
 上手く庇われたソロは既に次の一手へと体勢を転じていた。一瞬先んじて、イリスが斬りかかる。
「光よ、彼の敵を縛り断ち斬る刃と為せ! 銀天剣・零の斬!!」
 イリスの剣が輝き、また白い翼にも光が集まる。銀天剣が敵を裂き、悲鳴を上げるダストに向かって、翼より出でた数十本の光の刀の分身が容赦なく突き刺さり続けた。その傷が敵の動きを鈍らせていると見て取ったソロが、そこを狙って傷口を広げていく。その間、ノーフィアとペレは戦場を自在に駆け巡り、正に攻守一体を体現してみせた。
「……なかなか暴れてくれる」
 コールが黒い弓を構えて敵を狙いつつ、冷静に戦況を見る。味方の攻撃は正確かつ強力だ。攻め切れば勝てる相手だとは思う。が、敵もかなり攻撃的に攻めてくる……と言うより、防御に割く力を全て攻撃に当ててきている、という印象を受ける。
 油断していないのは皆同じ。先の複数相手への攻撃ですら、あの威力だったのだ。恐るべきはあの鉤爪、と、シアは蹴りを放つ瞬間それを意識した。あの爪を壊せれば、と思うが、部分を狙うよりは今は確実にダメージを与える方を選ぶ。
 朔夜もフロスト・ランスナイトを召喚し、ダストの骨を芯から凍りつかせるような突撃をかけさせた。
「氷の竜だからって氷に強いわけではない、みたいだな」
 骨の端々にダスト自身が発するものとは別の冷気が残り、じわじわと蝕んでいく様を、朔夜はじっと見届ける。細かな積み上げが後々ものを言ってくるのだ。
 ケルベロス有利で進む戦場であっても、やはりひなみくの表情は緊張に満ちている。今の優位など、一撃でひっくり返されかねない。ドラゴンとは、そういう類の敵である。次の戦場を思えば、体力には余裕の欲しいところだ。
「光以て、現れよ」
 同じことを感じたらしい玲斗が攻撃の手を止め、光の術式を用いて己を含めた前衛組を癒しつつ、ひなみくに視線を送る。
「連戦になるものね。焦らないでやりましょ、火倶利」
「……うん! そうだね」
 この局面でも、互いに目指す場所が同じだと思える心強さに、ひなみくが笑顔を見せる。だが次の瞬間、ダストの野蛮な鉤爪が、イリスに向かって振り下ろされる。シアが思わず叫んだ。
「危ない!」
 避けきれない、と覚悟したイリスがダメージを少しでも軽くしようと武器を体の前に出し、ぐっと身を固くした。
「そう、そのまま動かないでね」
 そこへふわりと身を割り込ませたのは、ノーフィア。翼と体を上手く使い、打撃の威力を皮一枚で避けた……と言っても、勿論無傷なわけではない。
「届け、届け、音にも聞け。癒せ、癒せ、目にも見よ」
 即、最も回復の大きい術の準備に入るひなみく。サポートするべくノーフィアも軽やかに舞い、戦場には花のオーラが降り注いだ。大きな攻撃に対し、複数で一気に治療に当たれるのもこのチームの強みであろう。
 そして冷静にして強力な、狙撃班。
「お前の戦う意志、その命ごと折ってやる」
 その宣言とほぼ同時に、コールの魔法陣から撃ち出された戦斧がダストの胸部を貫き、宝玉に至った。グシャンと嫌な音を立てて玉は崩れ、骨の身体も崩れ始める。撃破成功である。
「やったぁ! これで……え?」
「な……!」
 たった今倒したはずのダストが立ち上がったのかと錯覚したが、宝玉の色が違う。
 ケルベロスたちの目の前には、炎の宝玉を胸に宿した二体目の宝玉封魂竜が立ちはだかったのである!

●伏竜
「ちぃっ、邪魔だ!」
 コールが威嚇に矢を放つが、現れたドラゴンは退く気配を見せない。
「こいつに構っている暇は……!」
 イリスもその表情に焦りを浮かべる。
 その時。彼方の空に光弾らしきものが上がる。見上げたひなみくが思わず叫ぶ。
「緑!」
 それが何を意味するのかは、全員が承知していた。
「駅の方角、みたいですわね」
 とシアが素早く確認する。
「早いところが智龍に接触したか……」
 ひなみくが瞬時に様々に思いを巡らせた。一体、何チームが辿り着いているのか、ゲドムガサラの力は決して侮れない筈、一刻も早く自分たちもそちらへ向かわなくてはならない。しかし。
『ギャアッ!』
「てめぇも倒さなきゃ進めねえってことか」
 朔夜が爛々と金目に闘志を漲らせてそう言った。
 まさかの、二体目のドラゴンとの連戦。その事実は少なからずケルベロスたちを戸惑わせた。やってやれないことはないが、その先に見据えていたゲドムガサラとの相対は絶望的である。
 とは言え、目の前の敵を放り出すわけにもいかない。
「……やりゃいいんだろ。シンプルだ。キッチリ終わらせてやる」
 コールが事もなげに言い放つ。この一言が、仲間たちに流れかけた迷いの空気を払拭した。
「今までも、こんなことは沢山あった……今回も乗り越えてみせるさ」
 ソロが強気にそう言えば、イリスも剣を構え直す。
「……改めて、銀天剣、イリス・フルーリア。参ります!」
 ソロとイリス、このふた振りの双剣が、精度威力ともに高い攻撃を叩きこむ、文字通りチームの大いなる武器であることは間違いない。ただしそれは敵も解っているらしく、執拗にふたりを狙ってくるが、敵の強烈な一撃には盾役の玲斗、そしてノーフィアが体を張り続ける。
 手数は、ダストとほぼ変わらずだったと言える。攻撃が確実に決まる中、着実な回復、そしてじわりじわりと敵を蝕む炎や氷。
「……行け」
 朔夜の低い命を受けて、召喚された狼たちが吼え、次々と炎竜へ食らいつき始めた。先のダスト戦で要領を掴んだこともあり、また、依然高い命中を誇る攻撃で積み重ねた炎や氷を、狼たちはその牙で押し広げていく。朔夜は群れのリーダー然として、その様子を見届けた。
『ギャオォッ!』
 炎の息を吐き、己の強さを誇示してくるこの個体は、どうやらダストよりも更に凶暴なようである。
「相手が強いほど燃えるというもの。勝負だ、ドラゴン!」
 ソロが言い放って光の刃を構える。今一度、力を貸して欲しいと祈る気持ちを声に乗せ、斬りつける!
「うおぉおおぉっ!」

●ゲドムガサラ撃破!
 ゲドムガサラの進軍は、飫肥駅付近の日南第一公園で食い止められていた。
 二体目との戦闘の際に、タカラバコが消滅。盾役のひとり、ノーフィアが二発の爪と炎のブレスを仲間の代わりに受け止め、戦闘不能に陥っていたが、意識はある。玲斗とひなみくに、左右から支えられての現場到着である。
「まずい……!」
 その戦場を一目見て、ひなみくの顔色が変わった。目の前でまた一人、ゲドムガサラに仲間が倒される。単眼に、飛びぬけて大きな体。果敢にゲドムガサラに挑んだチームは、ほぼ壊滅状態である。
 その時。
『いけ……ッ!』
 見れば、自分たちと同じように連戦をかいくぐったチームが、ゲドムガサラ目がけて全員攻撃を仕掛けんとしているところだった。
「なるほど、こっから撃ちゃいいのか。頭いいな」
 コールがあくまで淡々とした様子を崩さず、黒弓に矢を二本番えて思い切り引いた。シアがそれに続いて空花乱墜を肩に構えつつ、皆を気遣う。
「無理はなさらないで下さいませ皆様。我々狙撃班は体力に余裕がありますので」
「そう言われても、じっとはしていられないな」
「ですね」
 ソロとイリスが一瞬視線を合わせてそう答え、敵を見据えて攻撃の構えを取る。
「折角ここまで来たんですものね……一撃、くれてやらないと」
 少し待っていて、と、ノーフィアをその場に座らせ、玲斗もロッドをぴたりと智龍に向けた。朔夜もロッドをオコジョの姿に戻し、行ってこい、とその愛らしくも凶暴な鼻先を突っついた。回復役のひなみくも攻撃に加わっての、斉射。
「初めまして、御機嫌よう。……緋紗雨さんの所には行かせません」
「ゲドムガサラ……お覚悟!」
「喰らえ!」
 最前線で傷ついた仲間を助ける為に、そしてケルベロスとして一歩も退かない意志を見せつけるために。思いを込めた技が軌跡を描き、そして命中する。呪いの悲鳴を上げ、ゲドムガサラが怯んだ。そこへ接敵していたチームのひとりが跳びあがり、一閃。
 智龍ゲドムガサラは、ケルベロスの手によって討ち取られたのである。
 巨敵が倒れ、辺りは歓喜の声に包まれる。
 だがこちらの被害も甚大ではある。手当ての手伝いを、と駆け出そうとしてひなみくがくるりと振り返る。
「ノーフィアちゃん、大丈夫かな?」
「ん、私は平気ー。行ってあげて」
 ひらひらと手を振るノーフィアは確かに既に元気そうである。
「私が看るわ」
 そのノーフィアの肩に手を添える玲斗も、青い瞳に穏やかさを湛えていた。
「わかった、よろしくね!」
「お願い致しますわ」
 と頷くひなみくに続いてシアたちも駆け出した。歴史的勝利の瞬間に立ち会えた事を誇りに思う暇もなく、仲間たちの安否を気遣うケルベロスたち。この絆こそがきっと、次の敵に立ち向かい続ける最大の武器となるのだろう。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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