「螺旋忍法帖防衛戦に参加した人はご苦労さんやったで。聞いてるかもしれんけど、みんなが頑張ってくれた結果、螺旋帝の血族『緋紗雨』さんを保護する事に成功したんや。もう一人の螺旋帝の血族『亜紗斬』の所在は不明やけど、まずは、上々の成果やろう」
螺旋忍法帖防衛戦の労をねぎらう杠・千尋(浪速のヘリオライダー・en0044)だったが、
「けど、喜んでばかりはおられへん。螺旋帝の血族『イグニス』と同盟関係となったドラゴンの勢力が、螺旋帝の血族『緋紗雨』を奪還しようと動き出したみたいや」
と新たな脅威について説明を始めた。
「竜十字島からの刺客の名は、智龍『ゲドムガサラ』。ゲドムガサラはなんや知らんけど、緋紗雨さんの居場所がわかるみたいで、真直ぐに緋紗雨さん目指してきよる。
しかもゲドムガサラ1体だけやあらへん。『宝玉封魂竜』の軍勢を引き連れてきよるんや」
千尋の説明にケルベロス達から質問がび、
「宝玉封魂竜は定命化で死に掛けとったドラゴンを、ゲドムガサラが『宝玉封魂法』で無理矢理延命させたドラゴンの様や。ほんまやったら死んどる訳やから、その姿は骸骨みたいになっとるんやけど、戦闘力は元のドラゴン時のままっちゅー厄介な竜や。
ゲドムガサラが率いとる宝玉封魂竜はぎょーさん居るから、市街地で防衛戦やったら被害が広まってまいよる」
質問に答えて説明を続ける千尋の言葉に、神妙に頷くケルベロス達。
「そこでや。ゲドムガサラの軍勢を迎え撃つのに最も適した場所は無いんかと検討した結果、エインヘリアルによって要塞化されとって、この前奪還した『飫肥城』で迎撃する事にんったんや。
みんなには緋紗雨さんを保護して飫肥城に向かい、飫肥城でゲドムガサラ率いる宝玉封魂竜の軍勢を迎え撃って欲しいんや」
と説明を続ける千尋の口元に八重歯が光る。
「宝玉封魂竜は数の暴力で押し寄せてきよる。そのままやったら難攻不落の飫肥城をもってしても守り抜くのは困難やねんけど、宝玉封魂竜には、『ゲドムガサラが直接指揮しないと、その戦闘能力を発揮できない』っちゅー欠点があるんや。宝玉封魂竜を撃破して敵本陣に切り込んで、ゲドムガサラを撃破する事ができたら、残る宝玉封魂竜らを駆逐する事も不可能やあらへん」
この戦いの要諦について説明した千尋が笑顔を見せる。
「みんなにはこっちから攻めてくる紅い宝玉封魂竜を狙って欲しいんや。
紅い骨に皮だけとなった体にぼろぼろになった被膜のついた翼。胸の真ん中に宝玉がついとる感じの外観をしとる。長い竜尾を振り回し臭い匂いのするブレスを吐きよる。断末魔の如き咆哮も脅威や。死に掛けみたいな外観に騙されたらアカンで」
と相対する宝玉封魂竜について説明を続ける。
「ゲドムガサラが直々に出てくるとは油断できんな」
「だが、出向いて来たとあれば討ち取るチャンスじゃないか!」
ケルベロス達にざわめきの様に声が広がるが、
「なんにせよ、厳しい戦いになる。気合を入れていかないとな」
という誰かの声に皆は大きく頷いたのだった。
参加者 | |
---|---|
ノル・キサラギ(銀架・e01639) |
弘前・仁王(魂のざわめき・e02120) |
ラティクス・クレスト(槍牙・e02204) |
ルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208) |
神宮寺・結里花(目指せ大和撫子・e07405) |
ドラーオ・ワシカナ(栄枯盛衰歌龍エレジー・e19926) |
唯・ソルシェール(フィルギャ・e24292) |
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973) |
●焦燥
酸い臭いのする焔のブレスが、仕寄るケルベロス達を押し返す様に叩き付けられる。
「そんなのっ、全然効かないんだよっ、メタルさん!」
「前座風情が、お呼びじゃないんだよ三下!」
直ぐ様ルリナ・ルーファ(あったかいきもち・e04208)がオウガ粒子を放出して抗すると、そのブレスを振り回した槍で裂き、風靴で地面を蹴って一気に距離を詰めるラティクス・クレスト(槍牙・e02204)。
「ラティ、上!」
そのラティクスを呼ぶ声に、槍の柄を頭上で水平に構えると、ラティクスの背、そしてその柄を足場にノル・キサラギ(銀架・e01639)が跳ぶ。
「ほっほう、高いのぅ」
ブレスに番傘をかざし、その姿に目を細めたドラーオ・ワシカナ(栄枯盛衰歌龍エレジー・e19926)も、竜翼を広げてノルを追うと、首をもたげた竜が2人に視線を向けるが、
「そこです!」
呪詛を塗り込んだ『渡鴉の装束』の裾を揺らした霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)が具現化させる黒太陽が、竜の目を焼く様に絶望の黒光を浴びせ、それに目が眩んだ竜にノルとドラーオが重力を宿した跳び蹴りを見舞い、竜はその痛みを払うかの様に首をくねらせる。
「神宮寺流戦巫女、結里花! 推し通ります!」
「誰が本懐を遂げようとする……その助けが出来るというのは、この上なく喜ばしいこと……舞い散れ!」
更にくるっと回した巨大な木槌『白蛇の咢』を肩に担いだ神宮寺・結里花(目指せ大和撫子・e07405)と、闇夜に舞う白銀の羽をモチーフにした黒地の義骸装甲に身を包む唯・ソルシェール(フィルギャ・e24292)が畳み掛け、結里花がそれを叩き込む間にソルシェールが純白の羽根舞い散らせる。
「この一撃、この牙、ゲドムガサラに届かせるまで……行きますよ相棒」
余勢を駆る形で、弘前・仁王(魂のざわめき・e02120)が箱に入ったままのボクスドラゴンと共に突っ込んで鎚頭を叩き込むと、仰け反った形になった竜は、その体勢のまま長い竜尾を薙いで眼前のケルベロス達を薙ぎ払った。
ケルベロス達の瞳はこの宝玉封印竜を操る智龍ゲドムガサラを見据えており、一刻も早くここを突破すべく、立ち塞がる紅の宝玉封印竜に前のめりな戦いを挑んでいた。
だが宝玉封印竜も負けてはいない。
眼前のケルベロス達を屠ろうと、酸のブレスを吐いて竜尾を大いに振るう。
それに対し、連携の取れた動きで確実にダメージを蓄積させてゆくケルベロス達。
「くおおおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉ!」
次々と穿たれる攻撃に鎌首をもたげた竜の、天を仰いで上げた耳をつんざく咆哮。
視界の端では別の仲間達が別の宝玉封印竜と激しい攻防を繰り返している。
「その口から吐いていいのは弱音だけだ」
「まったくです。直ぐにその咆哮を断末魔に変えてあげましょう」
咆哮する口に狙いを定めた和希が、構えた『アナイアレイター』の引き金を引くと、放たれたエネルギー弾が爆ぜ、赤いリボンで留めたツインテールを踊らせた結里花が、それを後押しする様に気咬弾を飛ばすと、それを追う形で距離を詰めたドラーオが、ジグザグに曲がった刃で斬り付けた。
「……たいした事ないと思っとるじゃろう? じゃがこれは毒……気がつけば致死となる猛毒の一手じゃ」
不敵に笑って跳び退くドラーオと入れ替わる形で押し出す前衛陣に、浴びせられる酸のブレス。
「何度も同じ攻撃を食らって対策しないとでもお思いですか?」
「やっぱりラティさんの居る前への攻撃が多いんだよ。鎖さん守って」
だが、直前に仁王が掲げた黄金の果実の輝きが、鎧や衣服を傷める酸の威力を軽減させ、ルリナが前衛にケルベロスチェインを展開して守りを固める。
その後押しの間に、仁王のボクスドラゴンが放つブレスと共に3人が距離を詰めた。
「ノルくん、ラティさんがんばってー!」
後ろから響くルリナの声に、口角を上げてアイコンタクトを交わしたノルとラティクス。
「跳べ、ノル、ソルシェール!」
雷槍を地面に突き立てたラティクスの声にノルが跳び、
「跳ぶよりここは……」
ソルシェールは全身を光の粒子に変えて一気に宝玉封印竜へと突っ込む。そこに薙がれる竜尾。
半呼吸遅れてラティクスも槍の柄を利用して跳び、その下をかすめた竜尾が突き立てた槍を弾き飛ばす。くるくると回転しながら宙を舞う槍を掴んだノルがラティクスに投げ寄こし、そのまま流れる様な動作で『蠍の火』の赤く燃える刃を構えると、
「手こずらせてくれたけど、そろそろ退場してもらえるかな?」
その刃をジグザグに変え、今しがたソルシェールが突き抜けた宝玉封印竜にその刃を叩き込む。
そこにラティクス。
「良く頑張った方だ。誉めてやるぜ三下っ!」
迅雷の如く繰り出された雷槍《インドラ》の穂先が、的確に竜の胸にある宝玉を貫いた。
「ウゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴオ……」
次の瞬間、宝玉封印竜が呻きその体が痙攣すると、止まっていた時が再び動き出したかの如くその全身が朽ちはじめ、ぼろぼろになって崩れ落ちた。
「摂理が正しく……」
それを見て和希が口を開くが、それを遮る様に緑の信号弾が上がる。
方向としては日南第一公園のある方角だ。
「見つけたみたいっすね、急ぐっす!」
結里花の声に顔を見合わせ決意を胸に頷き合うと、一行はドラーオの用意した迷彩柄の布を被り、その方向目指して駆け出した。
●僥倖
信号弾の上がった場所に向って駆ける一行。
焦る気持ちと宝玉封印竜の巨体から、周囲への警戒が疎かになっていた感は否めない。不意に横合いから、吹き飛ぶ瓦礫と共に浴びせられたブレス。
そのブレスの向こう。己の吐いたブレスを追い掛ける様に、建物をその巨体で潰して現れ距離を詰めて来る新たな宝玉封魂竜の姿。
「ここで2体目とは……届きませんか……」
その竜の姿に和希が目を細め、他の者達も舌打ちしながら戦闘態勢を整える。
だが次の瞬間、自分達に横撃を見舞った宝玉封魂竜に更に横撃を見舞ったのは一太の牙。それを先途と後続部隊のケルベロス達が踊り掛ってゆく。
「援軍でございますか!」
ソルシェールの上げた声色が喜びの響に彩られ、
「仁王さん。ここはあっしらに任せて、行ってくださいっす」
バスターライフルの引き金を引きつつ上げた声の主……リンと仁王の視線が交錯すると、頷いた仁王は躊躇う事無く宝玉封魂竜に背を向けて駆け出し、仲間達もそれに続く。
「恩にきるんだよ。必ずゲドムさんを止めてみせるよ!」
最後に振り返ったルリナがそう言葉を残し、一行はこの宝玉封魂竜を彼らに任せ、仲間がゲドムガサラと戦っているであろう、日南第一公園へと急ぐ。
●智龍
自分達以外にも2つの部隊がほぼ同時に到着したが、
「あっ……」
ノルが上げた声を掻き消す様に、ゲドムガサラの角から黒い雷撃が放たれ、相対していた部隊の一人が崩れ落ちた。戦っているのは1部隊……いや、倒れている者達を見るに2部隊か? だがどちらの部隊も壊滅しつつあった。
「助けないとだよ」
少し涙目のルリナが駆け出そうとするが、
「待つんじゃ。別の部隊が救援に向った。ここは一気に智龍めを狙うのじゃ」
そうドラーオが押し留める。彼の言う様に別の部隊が、戦っている部隊を援護する様に動くのが見えた。
「弘前殿、行きましょう」
和希が銃口をゲドムガサラに向け声を上げ、皆の視線が交錯して頷き合いゲドムガサラに向って攻撃を始めると、もう1部隊も同じ様な判断をしたのか、ゲドムガサラに向って攻撃を始める。
その単眼を動かし新たな敵の接近を把握したゲドムガサラの巻物の文字が蠢くと、文字が闇の獣と化して後衛陣に襲い掛かる。
「そちらですか!?」
「! こっちに来るの!?」
前衛にオウガ粒子を放出したソルシェールの脇を抜け、闇の獣達は後衛陣に向って牙を剥き、驚いたルリナが慌てて鎖の守りを展開させる。
「やらせないんだよ!」
「ちっ、縛れ《魔眼》! 叢雲流牙槍術、参式・睚眦!」
そのルリナを前衛に回ったノルが庇い、庇い損ねたラティクスは闘気を球状に圧縮して智龍に飛ばす。
「これはなかなか、流石といったところです」
喰らったダメージと共に体を蝕む毒に少しだけ眉を顰めた和希が、黒太陽を具現化させて反撃を試みる。他の部隊からも次々と攻撃が飛び、
「私たちの因縁に決着を付けるチャンス……この機を逃す訳にはいきません。使える相手が限られる技ですが、できないことはないのですよ?」
ボクスドラゴンと目配せし合った仁王も、無手幻葬・尸咲をもって智龍を狙い、
「年長ジジイにも少しは活躍させて貰わねばな……」
「最初から全開よ! 迅きこと、雷の如く! はためけ! 雷装天女よ!!」
髭をしごいたドラーオが宙を舞って蹴りを見舞い、ソルシェールの放出したオウガ粒子によって超感覚に覚醒した結里花が、吶喊して連続攻撃を見舞う。
他の部隊からも攻撃を受けた智龍の巻物の文字が蠢き、今度は人の影の姿となって哄笑しながら襲い掛かって来る。……その対象はまたも後衛。仁王はノルが庇ったものの、
「くっ……」
「きゃっ!」
連続の攻撃に和希の口から小さな呻き声が漏れ片膝をつき、悲鳴を上げたルリナは血を吐いて崩れそうになる体を剣に預けて支え、懸命に回復を飛ばす。そんな中『黒曜壁』を掲げて距離を詰め、
「少しでも多く……削る!」
仁王が思いっきり鎚頭を叩き込み、
「今も宝玉封印竜と戦ってくれているみんなの想いも乗せて、噛み砕け、白蛇の咢!」
「手をこまねいても蹂躙されるだけ、ここは攻めの一手です」
仁王に続いた結里花も同じ様に木槌を振るい、後衛陣を一瞥したソルシェールが、皆の攻撃により智龍の体に穿たれた傷に、的確に『ミストルティン』を突き入れた。
次々と穿たれる攻撃に身を捩った智龍の巻物の文字が蠢くと、またも闇の獣となってケルベロス達に牙を突き立てる。……襲われたのは三度後衛。
「……ご、めん……」
「ルリナァ!」
後ろを庇って襲い掛かろうとする闇の獣に槍を突き立てたラティクスは、その脇を抜けた別の獣に喰らい付かれ謝りながら崩れ落ちるルリナに向って叫び、
「省みる暇があるなら一撃でも多く敵に!」
闇の獣に穿たれ血反吐を吐きながら駆け戻ろうとするノルを叱咤した和希も、最後の力でアナイアレイターの引き金を引くと、その反動を堪えきれず仰向けに倒れた。
「白き闇。煌めく死。天穹渡る生者嘆く慟哭。北の端より至るは氷霧の主。天翔ける霜の鳳。その翼下に禊の風吹雪かん。凍結せし墓標を穿て!」
その和希の言葉を背に、ドラーオが紡ぐ詠唱に呼応し智龍に降り注ぐ無数の雹塊。
「俺たち全員……全力で切り開く……行って来い!」
肩で息をする仁王に溜めた気力を飛ばしたノル自身も、既に足を引き摺っていた。
そんな中、気を吐いたのはソルシェールと結里花。
「後ろも横も考えません。ただ、前あるのみです」
「伸びろ、如意御祓棒!」
眉を吊り上げたソルシェールの繰り出すヤドリギの意匠の入った槍が、智龍に穿たれた傷を抉る様に突き入れられ、その槍を引いた同じ傷に結里花の伸びた如意御祓棒が突き入れられた。
「流石に苦しそうね。でも神宮寺流戦巫女、結里花の力、こんなもの……」
悶える智龍を見上げた結里花の瞳に、智龍の背にある毛が闇を纏って逆立つのが映り、考えるより早く瞬間的に跳び退いたのは本能だったのだろう。だが、跳んだ結里花の足が地面に着くより早く、智龍の角から放たれた黒い雷撃が結里花を撃ち、白蛇の髪飾りと赤いリボンが吹っ飛ぶと、断末魔すら上げる間もなく、ばらばらになった髪と共に地面に叩きつけられる結里花の体。
「くっ……考えろ……考えろ」
轟龍砲を撃ち放ちながらノルが思考を巡らせる。智龍の攻撃がこちらに向いた隙を突く形で、他の2部隊の攻撃が次々と飛び智龍の力を削いでいるが、あの雷撃の威力を目の当たりにすると、一刻でも早く倒さねばと気持ちだけが焦る。
「流石に手強いのぅ……」
「考える隙も与えない様に攻撃を続けるだけです」
汗をぬぐうドラーオの言葉に頷いた仁王が、ボクスドラゴンの吐くブレスに合わせて地面を蹴る。それらあらゆる方向から叩き込まれるケルベロス達の攻撃に、うねる様に体を動かした智龍の巻物から三度踊り出る闇の獣たち。
「何をしてやがるッ!」
今度は前衛陣に襲い掛かり、自身に向って来た獣を突き殺したラティクスは、倒れる結里花を貪り食おうとする獣に、怒りをぶつける様に闘気を叩きつけ、ハッとして同じ様に倒れる和希とルリナの方を見遣ったが、彼らの体は無事であった。
「疾くと……舞い散れ」
その間にも翼を広げて舞い上がったソルシェールが、純白の羽根を降り注がせて智龍の身を削る。そのソルシェールをギロリと単眼で睨んだ智龍の毛が闇を纏って逆立つ。
「いかん! 逃げるんじゃ!」
「ソルシェール!」
ドラーオとノルの叫びが智龍の角から放たれた雷撃の轟音によってかき消され、
「……ッ!」
ソルシェールの体は、白い煙を上げながら激しく地面に叩き付けられた。
●託望
「ラティ……」
足を引きずりながらノルの声。
眼前で激しい戦いが続いており、4人も攻撃の手は緩めていないが、ソルシェールに結里花、和希にルリナと半数が戦闘不能に陥っていた。
(「まだ戦えるか……いや、しかし……あの闇の獣は倒れた者にも食らい付く……それにノルも限界か……」)
何を考えているのかノルを見つめるラティの瞳は澄んだ彩を放っており、キッと顔を上げて残る者達に向き直る。
「仁王、ドラーオ、後は任せた。あちらの部隊に合流してくれ。オレとノルは4人を連れて下がる」
雷槍を持つ手にグッと力が込められる。
まだ戦いたかった……だが、ノルはあと一撃を耐えれはしないだろうし、次の攻撃でルリナの体が闇の獣に貪られる状況も十分考えられた。
「その想い確かに」
「あぁ、私達の因縁、今日ここで決着を付けて見せる」
頷くドラーオと仁王。
「無理しないで……ってそれが無理か、必ず成し遂げてね」
「頼んだぞ!」
ノルが気力で、ラティクスはルナティックヒールで2人を癒すと、仁王とドラーオは攻撃を繰り出しながらもう1つの部隊へ合流し、それを見送りながら、倒れた仲間達に肩を貸す形で担ぎ上げる。
「頼んだぞ」
もう一度……振り返らず想いだけを2人と、そして撤退を援護してくれる他部隊の仲間達に託し、その勝利を願いラティクスとノルは、倒れた仲間の体を支えながら撤退するのだった。
作者:刑部 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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