「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)の表情からは、些かの緊張が窺えた。
「螺旋忍法帖防衛戦の結果、螺旋帝の血族『緋紗雨』の保護に成功しました。もう1人の螺旋帝の血族『亜紗斬』の所在は不明ですが……まずは、充分な成果と言えるでしょう」
ケルベロスの一手に、螺旋帝の血族『イグニス』は即応する。イグニスと同盟関係となったドラゴン勢力が、螺旋帝の血族『緋紗雨』を奪還すべく動き出したのだ。
「竜十字島からの刺客の名は……智龍『ゲドムガサラ』です」
智龍『ゲドムガサラ』は、その秘術により緋紗雨の居場所を特定出来るようだ。真っ直ぐに緋紗雨を目指している。
「そして、ゲドムガサラは、『宝玉封魂竜』の軍勢を率いています」
『宝玉封魂竜』とは、定命化で死に瀕していた所をゲドムガサラが『宝玉封魂法』で無理矢理延命したドラゴンの事だ。
「本来ならば死亡しているドラゴンです。その所為か、今は骸骨のような姿となっていますが、往時に準じる戦闘能力を保持しています」
ゲドムガサラと共に襲い来る宝玉封魂竜の数は多い。市街地での防衛戦では、被害が甚大となるのは確実だろう。
「そこで……エインヘリアルによって要塞化されていた、天下の名城『飫肥城』にて迎撃する事になりました。螺旋帝の血族『緋紗雨』さんを保護して飫肥城に向かい、ゲドムガサラ率いる『宝玉封魂竜』の軍勢を迎え撃って下さい」
タブレット画面をスクロールさせ、創は粛々と迎撃作戦の概要を述べる。
「『宝玉封魂竜』は、数の暴力で押し寄せてくる為、難攻不落の飫肥城を以てしても守り抜くのは困難です」
しかし、宝玉封魂竜には、ゲドムガサラが直接指揮しない限り、その戦闘能力を発揮出来ないという欠点がある。
「まず前衛の宝玉封魂竜を撃破した後、敵本陣に切り込み、ゲドムガサラを撃破出来れば……残る戦力の駆逐も不可能ではないのです」
上手く切り込めればゲドムガサラと対峙出来るが、機会を逸すれば、次々に攻め寄せる宝玉封魂竜から飫肥城を守る事になるだろう。
「まず、皆さんに戦って戴く『宝玉封魂竜』は……元は雷竜だったようです」
体内に宝石を擁した骨ばかりの竜躯は、バチバチとスパークしている。細長い大口から雷撃を吐き散らし、鋭利な爪を振るい、長大な尾で敵群を薙ぎ払うようだ。
「イグニスの次の手がドラゴンとは……緋紗雨さんの情報が裏付けられた形になりましたね」
定命化して死に瀕したドラゴンすら戦力化してしまう――智龍『ゲドムガサラ』の手腕は、けして油断出来ない。
「敵はドラゴンに準じる戦力を保持する宝玉封魂竜の軍勢です。名城、飫肥城で迎撃するにも、限界があります」
状況によっては、緋紗雨をゲドムガサラに引渡して手打ちとする選択も必要かもしれない――冷徹を口にしながら、創は徐にケルベロス達を見回す。
「ですが、私は皆さんが激戦を制すると信じています。皆さんの健闘を、ヘリオンよりお祈りしています」
参加者 | |
---|---|
福富・ユタカ(殉花・e00109) |
ゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186) |
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393) |
橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125) |
リュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550) |
永代・久遠(小さな先生・e04240) |
鴻野・紗更(よもすがら・e28270) |
雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140) |
●攻勢への傾斜
宮崎県日南市――飫肥城。かつてエインヘリアルの要塞と化した天下の名城は、今やケルベロスの護りの要。本陣を死守せんと、ケルベロスのチームが幾重にも布陣されている。
「いざ、参りましょうか」
逸る様子もなく1歩踏み出して、鴻野・紗更(よもすがら・e28270)はすぐに傍らの少年を気遣う。
「ファーレンさま、御気分は如何でございますか?」
「う、うん……平気、です」
(「大丈夫、大丈夫……」)
張り詰める緊張感を少しでも紛らわせようと、リュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550)は風のボクスドラゴン、クゥを抱き締めている。
「来ましたね」
武者震いの暇もなく――永代・久遠(小さな先生・e04240)の視界に、宝玉擁する骨竜の大群が。「イグニス」と同盟を結び、螺旋帝の血族「緋紗雨」を奪わんと襲来した智龍「ゲドムガサラ」率いる「宝玉封魂竜」の軍勢に違いない。
「これは確かに……壮観でござ」
押し寄せる骨竜の軍勢を前髪越しに透かし見て、福富・ユタカ(殉花・e00109)は苦笑を浮かべた。迎え撃つケルベロス全員の武運を祈るように、刹那、その橙の瞳を硬く閉じる。
「流石に圧巻、だね。でもココで負ける訳にはいかないんだよね」
今日も黒いジャケットにゴーグルがトレードマーク。ゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)の常の笑顔が不敵を帯びる。
「頑張ろうな、リューズ!」
「……」
足許のウイングキャットのツンとした無反応までがお約束。飼い主はそろそろ泣いて良いかもしれない。
「何だか凄く面倒な事になってるよね~」
ムゥと唇を尖らせる水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)。何故、エインヘリアル第五王子は、あの時素直に倒されなかったのか。
(「どんな原理か、凄く不思議だよね」)
ともあれ、今は目の前の脅威の排除が先。大群の攻勢を凌ぎ、その間に大将を狙う。さして複雑でない作戦だが、激戦は予想に難くない。
「でも、死ぬのが嫌だから戦わないって訳にはいかないでしょ」
雨宮・利香(黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140)はいっそ愉しげに唇を歪める。常の気だるげな様子から一転、強気な表情で妖刀『供羅夢』を構える。
「私なら……私達なら絶対いける! みんな、頑張ろ!」
彼らが目指すは骨竜に非ず。大軍の向こうに坐す首魁、智龍ゲドムガサラ!
「それじゃ、ドラゴン狩りと行きましょうか!」
ドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させる橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)。肩を並べるテレビウムの九十九も、赤柄の十徳ナイフを掲げる。
「追い詰めたのは窮鼠じゃ無く、恐ろしい番犬だって見せてやるわ!」
●雷竜の厄
バチバチィッ――!!
爆ぜるような音が轟く。真っ直ぐに突っ込んできた宝玉封魂竜は、骨ばかりの全身に雷気を漲らせる。内包する宝玉が禍々しく輝いていた。
「っ!」
前衛に吐き散らされるサンダーブレス。芍薬は咄嗟にユタカを庇う。ビリビリと全身をショックが襲う。
「プログラムインスト――っ!?」
赫奕不滅修復システムを起動しようとした芍薬の挙動が止まる。発動も稀の筈のパラライズ、よもや初撃から動きを阻むとは。
「ジャマーか、厄介な」
顔を顰めるユタカは鋼の鬼と化して打ちかかるも、骨竜は長大な体躯を泳がせてかわす。
すかさず、薬剤瓶を放り投げた久遠は、空中で撃ち抜きメディカルレインを撒布。九十九は芍薬へ応援動画を流す。
「リューズ! 清浄の翼!」
中衛に立つウイングキャットに声を掛け、ゼロアリエ自らは轟竜砲をぶっ放す。見た目はアンデッドめいて、その実、往時の戦闘力を保持する宝玉封魂竜は明らかに格上の敵。足止めからがセオリーと言える。だが、サーヴァントと魂を分け合うが故、厄付けにも仲間の強化にも些か分が悪い。
一方で、紗更が同じく狙い付けて放つのはバスタービーム。他に用意したグラビティはフロストレーザー、サイコフォースと、長期戦向けとも言えようか。
智龍を目指すならば、寧ろ短期決戦を狙いたい所。クゥの属性インストールで雷気も掃われ、リュートニアは時空凍結弾を放つ。
「折角来たんだしちょっとだけ涼んでいかない? 涼み過ぎて凍っちゃったらごめんね~」
軽口を叩く蒼月も、螺旋氷縛波でまず氷漬けを狙う。
「雷竜? へぇ……前座にしちゃ丁度いいじゃん? 私的に!」
黒雷操る鹵獲術士として、利香のライバル心が刺激された模様。
「黒き雷光……確実に仕留める! 聖破烈衝刃!!!」
初撃から得意技が奔る。妖刀に黒き雷光を宿し、全力で振り下ろす。爆ぜた魔力が炎雷となって更に骨躯を灼いた。
ブンッ――!!
雷気帯びた長大な尾は、鞭の如き。唸りを上げて前衛に浴びせられる。打たれれば、電気ショックが動きを鈍らせ、或いは雷爪が強化を消し飛ばす。
「くっ!」
時に多を巻き込みながら、標的はユタカか。眼力はデウスエクスにもある。雷骨竜はどうやら敏捷に長けており、防具耐性も鑑みての命中率から判断したようだ。又は、範囲攻撃の効率も兼ねて。
骨竜の攻撃を前衛が引き受ける間に、スナイパー達が次々と穿つ。
「治癒弾、ロード完了! いきますよーっ!」
ユタカへメディカルバレットを撃ちながら、久遠は満足げに翠眼を細める。範囲攻撃はけして侮れぬが、蒼月のフローレスフラワーズとリューズの清浄の翼、ジャマーの範囲キュア&BS耐性でほぼ対応出来よう。集中攻撃を被るユタカには、久遠がヒールを注ぎ続けている。後は、一刻も早く――じわりと骨竜の動きの鈍化を見て取るや、ケルベロス達は一気呵成に打って出る!
「お帰り下さいませご主人様、なんてね♪」
芍薬のクイックドロウ&九十九の凶器攻撃。ユタカのジグザグスラッシュが、正確にその軌跡をなぞっていく。
リュートニアのグラインドファイアが熾した炎は、すかさずクゥのボクスブレスが更に炎上させている。
(「今は……回復より攻撃が先」)
やはり久遠がクイックドロウを放てば、蒼月はチェーンソー剣を以て更に骨を砕かん勢いで抉り込んだ。更にダメ押しとばかり、利香の絶空斬が閃く。
――――!!
怒れる雄叫びを上げ、宝玉封魂竜は雷吐き散らさんと大顎を開ける。
「そんな電撃、打ち負かしてみせるよ! 覚悟してよね!」
ブレスの直前、ゼロアリエは思い切りよく、最大火力のアイスエイジインパクトを叩き付けた。続いて、リューズは尾のリングを器用に飛ばす。
「どうぞ、このままおやすみなさいませ」
最後に紗更は、真っ向から骨竜を見詰める――精神の極限までの集中の果て、爆発を起こし瓦解していくその様を、物静かな挙措を崩さずに眺めていた。
「さあ、香辛料ドラゴンを倒すわよ!」
「おう!」
比較的首尾よく決した第1戦。利香の掛け声にゼロアリエが笑顔で頷いたその時。
ウオォォォンッ!
耳をつんざく雄叫びが、後衛に爆ぜた。
●風竜の敏
ポジション変更の暇も無かった。横合いから突進してきた2体目の宝玉封魂竜は、気流を纏う。元風竜、だろうか。
「邪魔だよ、退いて!」
凜と言い放った蒼月は、螺旋を手繰りながら――眼力が示す命中精度に愕然とする。
(「こいつ……!」)
勢いのまま、放った螺旋氷縛波は掠りもせず空を切る。
「黒き雷光……っ!」
常ならばそうは外さぬ利香の黒雷までもが、長首の一振りに回避されようとは。
「キャスター、でございますか」
息もつかせぬ第2戦目。敵のポジションは恐らく、紗更の見立て通り。
「皆さん、足止めを!」
浴びせられた轟音で、防具に細かな亀裂が入った。このまま大ダメージを被るのを避けるべく、ライトニングウォールを編む久遠。そうして、仲間に声を掛けてハッとなった。 どんなに強力な攻撃も、命中せねば無為となる。反撃の起点となる足止め技を用意したのは、ゼロアリエ、芍薬、リュートニアの3名。何れも、使役修正を被っている。ジャマーたる蒼月を始め、ジグザグ技で殖やすにも、まず基幹となる厄の付与が先。更には、見切りで連打も難ければ。
――――!!
次に風骨竜が気刃を放ったのは、スナイパーの内でも、ドラゴニックハンマーを砲台の如く構えるゼロアリエ。標的の選択に、躊躇は全く無かった。
「お見通しって事?」
顔を顰める芍薬。智龍健在の限り、宝玉封魂竜の群れは烏合の衆に非ず。すかさず同胞の穴埋めをした2体目は、先の戦いぶりをつぶさに観ていたのだ。
一転、劣勢に立たされるケルベロス達。だが、ここで怯んでは智龍に到底届かない。
「……」
沈着の表情のまま、バスタービームを放つ紗更。だが、スナイパー1人が痛撃したとして、全体の火力アップには繋がらない。
ケルベロスの攻撃を受け流し、かわし、風骨竜は只管にゼロアリエを狙う。時にリュートニアが庇い、久遠のヒールが注がれるも……ドラゴンの火力を一身に浴びる事となれば。
「が……は……っ!」
血風舞い、ゴーグルのバンドが千切れ飛ぶ。竜巻の如き突撃は重く、全身を切り裂かれ、ゼロアリエは金色の双眸を見開き崩れ落ちる。魂同じくするリューズも姿を消す。
辛うじて、竜砲弾の置き土産が間に合ったのが幸いだった。その一穴をこじ開けんと、ありったけのジグザグ技が注がれる。その間に、次なる骨竜の標的となったのは――回復の要。
「く……」
思わず、唇を噛むユタカ。風を操るだけあって、2体目の攻撃は遠くまで届く。クラッシャーの身でその射線を遮る事も、挑発の技の持ち合わせも無ければ、ドラゴンの標的を逸らすには至らない。
「……っ……っ」
苛烈なる集中打を、久遠は自らのヒールで凌ぎ続ける。その回復量はウィッチドクターに相応しく、更に芍薬達が盾となり、その間にも風骨竜の機敏を遮らんと懸命に攻撃するケルベロス達。
だが、骨竜を的に堕とす前に――回復不能ダメージの蓄積スピードが上回る。
「申し訳、ありません……」
直截の交戦で敵との距離感が縮まれば、それだけ視野も狭まる。俯瞰的視点に依る戦況分析は、自身が標的になって尚続行するのは難しい。
全体を生かす事に注力し切れず、久遠は忸怩たる思いで膝を突く。
残るメディックはボクスドラゴンのみ。俄かに敗北が現実味を帯びる。
「……っ!」
ギロリと睨み付けられ、思わず息を呑むリュートニア。案の定、竜巻突進が少年を抉る。
「これなら、あと少し……!」
咄嗟に癒しの弾丸を自らに撃つ。対照的にクゥの風は心地好く、再び駆ける力が湧いた。
――――!
だが、風骨竜は1度標的を定めれば執拗に狙い続ける。ディフェンダー故に、先の2人より長く立つ事は出来た。しかし、癒し手不足の現状、他がヒールを補えば火力が落ちる。攻防の均衡を取って凌ぎ切るには、リュートニアの体力は今1歩及ばず。
「しつこいのは、嫌いです……」
閃く竜爪が2度、小柄を貫く。込み上げる苦さを呑み、堪え切れず膝を折った。
●激闘の末に
小さき緑の風竜が掻き消えた。クゥの消失はリュートニア戦闘不能の証――盾の一角を崩され、いよいよ癒し手も無い。芍薬や利香の脳裏に過る二文字……だが、その身を衝動に任せる前に、やれる事は全てやる!
苦戦を強いられる一方で、風骨竜とて無事ではないのだ。耐えに耐えた末、漸くケルベロスの攻撃も届き始めている。
――――!!
ここまで来れば、どちらが先にやられるか? 我慢比べの様相で歯を食い縛り、芍薬のハンマー砲が火を噴く。すかさず、利香の絶空斬がその軌道を正確になぞった。更に蒼月のチェーンソー剣も唸りを上げる。ケルベロスらの攻撃の度、紗更が放つ光線に依る凍結が骨と宝玉に浸透していく。
「行ける!」
比較的不得手のサイコフォースの命中に、ユタカは思わず快哉を叫んだ。反撃の体勢が、漸く整ったと実感する。
長かった……渾身の重撃を浴びせ掛けるケルベロス達。勢いよく爆破スイッチを押す芍薬の遠隔爆破が満を持して竜躯に爆ぜ、唯一残ったサーヴァントの九十九も十徳ナイフを手に突撃する。
――――!!
「あれ? もう少し一緒に遊ぼうよ~」
じわじわと積み上げてきたプレッシャーが、骨竜の竜巻の軌道を逸らす。頬を掠める風圧にクスリと笑む蒼月の視線の先に、大きな影。肥大化した幻影は牙を剥いて骨竜に喰らい付く。
「この期に及んで……逃がさねぇよ」
ユタカの眼差しは明確な殺気を帯びて、より鋭く輝く。眼光に射抜かれ、砕ける宝玉の紅すら橙に染まって見えるよう。
「こちらも少し、痛いかもしれませんね」
轟く絶叫に紫の双眸を細め、慇懃な挙措で身に宿したグラビティ・チェインを掌へと集める紗更。裂帛の気合いと共にドラゴンへ叩き付ける。
「骨の癖してムカつくのよ! とっとと倒れなさい!」
これまでの苛立ちを晴らすように叫ぶ利香の刃が、バチバチと爆ぜる。一転、キッと真剣な面持ちで振り下ろされた全身全霊の黒撃は、風の流れを裂き骨と宝玉諸共に粉々に砕き割った。
2戦目、ギリギリの攻防を制し――取り急ぎ、倒れた3人を診て回る紗更。久遠とリュートニアは少し休めば大丈夫だろうが、ゼロアリエは暫く病院の厄介になりそうか。
「ゲドムガサラは……」
荒く息を吐き、首を巡らせる芍薬。まだ智龍は健在のようだが、チームの撤退条件は充たしてしまっている。
「ここは退かないと、ね?」
蒼月の言葉に否やは無い。暴走してでもと言う者がいれば平手打ちで止めるつもりだったユタカは、内心で胸を撫で下ろす。
「……ネジ何本、足りなかったのかなぁ」
「急ぎ本陣に。今は身体を休める事がハートさまの仕事でございましょう」
青息吐息のゼロアリエに肩を貸す紗更。久遠は利香、リュートニアは蒼月が支えて飫肥城へ撤退を開始する。
程なく、一糸乱れぬ連携で攻め寄せていた宝玉封魂竜の動きが、見る見る稚拙となっていく。
「撃破出来たようですね」
リュートニアが肩越しに見やる先は判然とせずとも。ケルベロスが智龍との決戦を制したのは明らか。
「私達が手こずるなんて……!」
思わぬ横槍で、結局、智龍に挑めなかった。悔しそうな利香の呟きに、久遠も唇を噛んで俯く。
ゲドムガサラは倒されたが、まだ周囲は乱戦模様。芍薬と九十九、ユタカが周囲を警戒するも、負傷者伴う撤退は宝玉封魂竜の格好の餌食。雄叫び轟くや、1体が喰らい付かんと突っ込んで来た時。
「こっちだよ! もう大丈夫、ぼくが……ぼく達が守るから!」
黒髪を揺らし、骨竜の顎をシャドウエルフの少女が遮った。自身も満身創痍ながら、大顎を押し返して笑みを浮かべる。
謝意を告げ、防衛チームの援護の間に城内へ駆け込むケルベロス達。
「ここは意地でも通さないよ」
勇ましい声に背中を押され、斯くて8人は無事、飫肥城に撤退を果たす――緋紗雨を護り切り、智龍も撃破した。全体の戦果は勝利。
それでも。或いは、各人の心中に何か去来したかもしれない。
作者:柊透胡 |
重傷:ゼロアリエ・ハート(紅蓮・e00186) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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