智龍襲来~千歳緑嵐

作者:七凪臣

●勝利と危機と
 螺旋忍法帖防衛戦の結果、ケルベロス達は螺旋帝の血族『緋紗雨』を保護する事に成功した。もう一人の血族『亜紗斬』の所在は不明だが、成果としては十分と言えるだろう。
 しかし。
 螺旋帝の血族『イグニス』と同盟関係となったドラゴン勢力が、緋紗雨を奪還すべく動き出したのだ。
 竜十字島より飛び立ったドラゴンの名は、智龍『ゲドムガサラ』。秘術を用い、緋紗雨の居場所を探知できるドラゴン。他には目も呉れず緋紗雨を目指す、ケルベロスの敵。
 そしてゲドムガサラは、定命化で死に瀕していたドラゴンを『宝玉封魂法』で無理に生き延びさせた『宝玉封魂竜』の軍勢を引き連れている。
 骸骨のような姿であるのは、本来ならば既に死んでいるからか。けれどその力は在りし日に準じた侭。ゲドムガサラに加え、多数の宝玉封魂竜を迎え撃つ防衛戦を市街地で行えば、大きな被害が出てしまうのは間違いない。
「ですから、迎撃作戦は『飫肥城』で執り行う事となりました」
 飫肥城。それはエインヘリアルによって要塞化されていた、天下の名城。
 そしてリザベッタ・オーバーロード(ヘリオライダー・en0064)は言う。
 螺旋帝の血族『緋紗雨』を保護し、飫肥城へ赴き、そこでゲドムガサラ率いる『宝玉封魂竜』の軍勢を迎え撃って欲しいと。

●飫肥城迎撃戦
 難攻不落の飫肥城であっても、数の暴力で押し寄せる宝玉封魂竜から守り抜くのは困難だ。
 されど宝玉封魂竜には、智龍『ゲドムガサラ』が直接指揮しない限り戦闘能力をフルに発揮できないという欠点がある。故に前衛の宝玉封魂竜を掃討した後、敵本陣へと切り込みゲドムガサラを討ち取れば、残る戦力の駆逐も夢ではない。
「皆さんに相手取って頂きたいのは、緑の宝玉を体中に収め、木枝の広がりのような翼を持つ個体です」
 初手の迎撃が全ての始まり。ここを上手くこなさねば何も始まらないと、リザベッタは一体の宝玉封魂竜について語る。
 松葉のように濃い緑の宝玉を宿した宝玉封魂竜は、羽ばたき一つで嵐を巻き起こし、地面を叩くことで大地を槍に換え、枝を飛ばすように骨を操り敵を穿つ力を持つという。
「名は不明です。けれどその色は、まさに千歳緑。なので千歳緑と呼ぶことにします」
 ある意味、ドラゴンに似合いの呼称を定め、リザベッタはケルベロス達に飫肥城迎撃戦の命運を託す。
「死にゆく同胞すら戦力に換える智龍ゲドムガサラは、恐るべき敵です。かのドラゴンの思惑を挫く為にも、皆さんよろしくお願いします」


参加者
鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)
マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)
月織・宿利(ツクヨミ・e01366)
安曇野・真白(霞月・e03308)
天見・氷翠(哀歌・e04081)
ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)
凍夜・月音(月香の歌姫・e33718)

■リプレイ

●序
 真白き拵えの刃を音も無く抜き放ち、月織・宿利(ツクヨミ・e01366)は千歳緑の懐へ飛び込んだ。
「華よ、散るらん」
 定めた狙いは、抱く緑の宝玉の一つ。宿利の鋭い舞に、ぎぃんと固い剣戟と共に光が刹那の花と弾ける。続き、主が振るう日本刀に似た色の毛並のオルトロス――成親が神器の瞳で一瞥した。が、それをものともせず、骨の翼が大気を掻く。
 ――ヴォォオ。
「銀華っ」
「させないわ」
 巻き起こった緑の嵐に、安曇野・真白(霞月・e03308)の声に反応したボクスドラゴンと、マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)が立ち向かう。
 盾として体を開いた一人と一体は、荒れ狂う風を幾らか防ぐ壁となり。生じた気流の隙間を、高く結い上げた髪を尾のように靡かせ鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)は走った。
「速攻あるのみ!」
 駆け至る、骨だけの姿になった龍の側面。そうして放たれた氷結の螺旋は、あばらの曲線の少しを凍て付かせる。
「私の身体……砕けると思わないことね!」
 そして嵐を正面突破した――つまり、直撃を受けた――ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)は、喰らった痛手の返礼とばかりに宝玉封魂竜の足元にある硬質な輝きへ、エクスカリバールを叩き付けた。
 敵の初手でダメージを負ったのは、マキナと銀華とジェミ。被害の状況を即座に判断した天見・氷翠(哀歌・e04081)は、シズクとジェミが作った流れに乗り、僅かに青味がかった白翼をふわりと背に広げると、優美な細身剣の切っ先を地面へ向ける。
「今、癒すよ……」
 優しい光を放った守護星座は、傷を治すと同時に自浄の加護も齎し。その両方の恩恵に与ったマキナはフェアリーブーツの踵を鳴らす。
(「螺旋忍軍のゲート特性が故の、ドラゴン勢力との同盟……陰にいるイグニス」)
 気になる点は数多。されど、思惑を阻止し地球を滅亡させない為に、今最優先すべきは――。
「ゲドムガサラを討つこと」
 ダモクレスでありながら、地球の寛容さに魂震され心を得たマキナは信じる未来を力に換え、星を象るオーラを蹴撃として千歳緑へ見舞う。
 爆ぜる、力の耀き。小麦色の肌から薄皮が剥げるように、骨の表層がさららと砂と零れた。
 思惑が混ざり合う戦場は、遭遇の直後から熾烈を極める。
「よくぞ参った! だがここより先へは一歩たりとも進ませぬ! 一歩たりとも退かせもせぬ! ここが終点と心得い!!」
 黒い翼で低空を翔け骨竜へ肉薄した服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)は、拳を振り下ろす勢いのまま、パイルバンカーから雪さえも退く凍気を纏わせた杭を打ち込む。
 さぁっと走る冷気に、名前の通りの深い緑が白みを帯びた。
 永遠の緑、千歳の緑。悠久の命に似合いの色。
 煙る白の下、胎動の証のように光る緑を見据え、真白は拳を固めて獣のしなやかさで敵へ肉薄する。
(「死ぬことは、きっと恐ろしいこと――でも、このような姿で使役されてまで、貴方は生を望んでらしたのでしょうか」)
 過った疑問に応えを与えるモノはない。故に真白は、銀華がジェミへ回復を送るの波動を感じつつ、己が出した結論で千歳緑へ牙を剥いた。
「どうぞ、ここで生の呪縛から解かれますよう。そのお手伝い、させて頂きます」
 重力を集中させた拳で、真白はあばら骨を立て続けに二度、叩く。
 小柄な少女が繰り出す思わぬ強打に、千歳緑が鑪を踏む。その時、凍夜・月音(月香の歌姫・e33718)の体は宙に在った。
 月音自身、デウスエクスと組む現状はいささか気乗りしない処。されど、情報という報酬があるなら、話は別。
(「貰った代金相応の働きはしないとね」)
 ビジネスライクに割り切った女は、流星となって千歳緑を頭上から襲う。
「とても大きな体ね。良い的になるわ」

 無明丸は、元より力比べが好きな性質。
「いざと覚悟し往生せい!」
 強敵を前に眼を歓喜に濡らし、自らの体から失われてゆく血など微塵も気にかけず、無明丸は時空さえ凍てつかせる弾丸を喜々と撃つ。
(「千歳緑さんの狙いの一つは、服部さん……?」)
 打ち合い、千歳緑もケルベロス側の布陣を読んだのだろう。真っ先に、巨大な骨の切っ先を無明丸へ向け。その事で敵の狙いを察した氷翠は、懸命に血みどろの無明丸へ癒しを注ぐ。
「……世界も心も引き裂いて、争いは続く……誰も、何も、喪われないで欲しいのに……」
(「本当に、松葉のような綺麗な緑色」)
 氷翠の愁いが転じた水の粒の耀きが、無明丸を満たす月となる中。不思議な竜の鮮やかな輝きに、宿利は意識を集中する。それは意思で、距離ある敵を爆ぜさせるグラビティ。
 しかし、思いの侭に力を振るった宿利は叫ぶ。
「成親!」
 呼ばれ、白いオルトロスは疾駆する。避けた大地から、氷翠を守る為に。

●破
 ほうき星の軌跡のように銀の髪を靡かせ、マキナは戦場を駆けた。
 第一標的の無明丸に加え、千歳緑は第二の獲物として氷翠を択び嵐を、大地を、骨を繰り。彼女らを守らんと盾役達が奮戦する。結果、まずは成親が白毛を埃に塗らせ力尽きた。
「ドラゴンとの戦いは心得ているわ。私の役目は耐える事、よ」
 私に心を与えてくれた地球の人々の為にも。全霊をかけて!
 大気を裂き飛翔した骨槍に左手を呉れたマキナは、そのまま右手を振り被る。
「攻撃力は低くとも、積み重ねで……」
 擡げた千歳緑の頭へ、無数の釘が生えた一打を叩き込む。衝撃に骨竜を覆う氷の白や炎の赤が激しく散り、強度を増した縛めに千歳緑を構成する深緑が警鐘のように明暗に揺らいだ。
 そこへ――。
「ぬぅあああああああーーーッッ!!」
 乾ききらぬ朱に身を染めた無明丸が飛び込む。握り締めた歪な刃の閃きは、千歳緑に穿たれた傷を抉じ開け、生かされ続ける竜を死へ導く呪いで雁字搦める。
(「……」)
 真白が掲げた光剣が骨と骨の狭間の玉の一つを砕くのを見つめながら、氷翠は人知れず唇を噛んだ。それは、敵の殺意に晒される恐怖からではなく。己が命を狙う敵への哀れみ故。
(「ドラゴンさん達にも生きて欲しい――けど」)
 生まれや思惑が何であろうと。命を命として捉える氷翠の心は、屠る行為に涙を流す。しかも今回の相手は、死さえ冒涜された姿の相手。
(「彼らの幸せって何だろう……」)
 内側を探しても得られぬ解に胸を焦がし、悲し気な娘は、それでも果敢に癒しの力を練り続ける。

 姿形は冥府に足を踏み入れようと、ドラゴンはドラゴン。健在な圧倒的な破壊力は、過ぎる時間を錯覚させるほど。
 けれど千歳緑に相対するケルベロス達は、着実に終焉の糸を手繰り寄せていた。
「足技も悪くないけれど……」
 折れ落ちた巨大な骨を跳躍台代わりに踏みつけ、影に生きる者の身軽さで千歳緑の懐の裡へ文字通り入り込んだ月音は、恩讐込もる短刀を涼やかに捌く。
「やっぱり慣れた得物が一番ね」
 シュッと透明に鳴いた剣閃に、罅入っていたあばら骨が数本まとめて地に落ちる。
 巻き起こる、土煙。それを搔い潜り、宿利も千歳緑の真下へ切り込んだ。
「手繰り、たぐる……」
 今より先の未来を紡ぎ、手繰り寄せるよう。父より剣の道を継いだ娘は、命咲かす刃をひらり躍らせる。
 刻より出ずる万葉の死――一閃が二閃を呼んだ可憐でありながら苛烈な斬撃は、象る名に相応しく、心の臓が如き千歳緑最大の宝玉に鋭い疵を刻んだ。
 ――オ゛オ゛オ゛、ォオ。
 慟哭代わりに大気が震え、周囲の緑がさざめく。
 千歳緑の命は臨界に達している。けれども手招く深淵から逃れようとするかの如く、残り少ない骨を無明丸へと投じた。
 風を裂いた先鋭な切っ先が、マキナや銀華の壁をすり抜け無明丸を穿つ。飛沫く血は、鮮やかに。だが、足元に散った朱ごと世界の色を塗り替えるように、シズクは闘気を燃やす。
「お前だけは、何があっても確実に倒してみせるんだよっ!」
 赤い眼で緑を射抜き、シズクは二振りの斬霊刀を一気に振り抜いた。
 ――ヴォオオ、オ゛、オッ。
 迸った波動に巻かれた千歳緑の身体が、千々に砕ける。残ったのは、背骨や頭部、形を成す『骨組み』ばかり。
「これが、私たちの……」
 機を捉え、ジェミは的を瞳に捕らえる。
「ありったけ!!」
 無駄な動作なく、ただ目的を達する為に放たれた礫は、全てを貫き壊す力と化し。千歳と続く緑へ永遠の終わりを齎した。

「成親の事はわしに任しておけ」
 負った傷は癒えども、蓄積した疲労は看過できず。余力が常の半分を割り込んだと判断した無明丸は、辛うじて意識を取り戻した成親を腕に抱き、後の戦線を同胞に託す。
 八人の女たちと、二体のサーヴァントで迎え撃った千歳緑戦は終えた。
 けれど押し寄せる宝玉封魂竜の波は未だ収まらず、ゲドムガサラの健在もそれで知れる。
「お願いするね――成親、また後で」
 手に馴染む毛並をそっと撫で、成親に暫しの別れを告げ宿利は――七人の女たちと一体のボクスドラゴンは再び走り出す。

「っ、これ以上はっ」
「回避不能でございますっ」
 駆け乍ら仲間の傷を癒そうとしていた氷翠と真白は、行く手を阻む新たな骨竜に息を呑んだ。
「連戦上等!」
 爛々と輝く赤は、ケルベロス達の命を啜らんと禍々しく燃える。しかしシズクは微塵も怯まず、むしろデウスエクスへ加速する。
「この先に進めるかどうかは俺達の覚悟次第だ!」
 高らかに吼え、負けず嫌いの女は二刀の刃を構えて二体目の宝玉封魂竜へ先陣切って喰らい付く。
「どんな姿になってもドラゴンには違いない。俺達の全力、見せてやろうぜ!」

●急
 元より余力に劣る銀華が戦線を離脱するのは早かった。だが、銀華の残した自浄の加護が、盾役へ立ち位置を変えた宿利やジェミ、そして高火力を誇るシズクを守る。
 万全から一人と二体を欠いたケルベロス達は、千歳緑戦の疲れを忘れたかのように奮戦した。
 癒しこそ、長く戦う時の要。つまり氷翠を守り抜けるかが、運命の分かれ目。だからジェミと宿利は、髪を振り乱し、足を叱咤し、生に繋ぎ止められた竜の猛攻に必死に我が身を晒した。
 勝利を、もぎ取る為に。
 ――先に綻びが生じたのは、連携の波に乗り損ねた宿利の方だった。
(「覚悟は、出来てる」)
 風を渦巻かせ迫る骨組みの竜を正面に捕らえ、宿利は大地を踏み締める足に力を込める。
(「私に出来ることを。悔いの残らぬように、全力で」)
「月織さん……っ!」
 今にも泣き出しそうな氷翠の声に、宿利は振り返り、微笑む。
「必ず成功させて、次に繋がる道をつくって、帰ろうね」
 直後、赤き宝玉封魂竜の突撃に宿利の体躯は花弁のように宙へ舞った。

 冴えた眼差しで戦況を直視して、月音は思案する。
 じわじわと手足を捥がれるように、立てる同胞が減る中。如何にして勝つかを。
「可能な限り、敵の防御力を削ぎましょう。足は私が止めるわ。真白はシズクの攻撃力を上げて」
 効率よく最大火力を叩き込む、それは短期決戦の定石。無明丸がいれば、より回りは良かったろうが。いないものは、仕方ない。
「さあ、殺し合いましょう?」
 白糸にも似る髪を風に煽らせ跳躍した月音は、星を奏でて骨竜を蹴り据えた。ズンっと重くなった体に、デウスエクスの動きが僅かに鈍る。されど漲る波動は未だ健在。
 しかし。
 受肉し、しなやかに鍛えた体躯を撓らせ、二体目のドラゴンへ駆けたジェミは高らかに言う。
「大丈夫。ちゃんと効いてきてるよ!」
 かつて対峙した毒と水のドラゴン戦と『今』を照らし合わせ、ジェミは振るった得物ごしに伝わる手応え『未来』を確信する。
 けれど、その未来を現実にする絶対条件は、氷翠の健在。
「のど乾いて来ちゃったけどね……まだまだ、いくよ! ここからが、ケルベロスの底力!」
 ツーテールの赤髪を炎と躍らせ、ジェミは宝玉封魂竜の動きを先読み、盾としてドラゴンの自由を阻む。
 最後は、気力。
 尽きぬ闘志は、何物にも代え難く勝利を招く。

 ここでゲドムガサラを討たねば、緋紗雨を守り抜かねば。
(「どうして、今さら……」)
 五稜郭で縒った運命の絲を胸裡で紡ぎ、真白は歯を食いしばる。
(「真白は何の為に、あの方を弑たのか――」)
 脳裏に蘇るのは銀の色。だが込み上げるものを懸命に抑え込み、真白は月を呼ぶ。
「鵺咬さま、お願い致します」
 投じたエネルギー球は、真っ直ぐにシズネへと飛び。そしてそれと交差するように、骨竜が氷翠目掛けて翔ける。
「もう、平気」
 反射で走り出そうとしたジェミを氷翠は静かに制した。
 骨も、宝玉も。多くが欠けた敵の姿は、終わりが間近であることを教えてくれる。ならば、もう。誰も、傷付いて欲しくない。
「……ごめんね?」
 絶対的に屠るより他ない相手へ詫びと共に半透明の御業の手を、氷翠は広げる。
 技は、成った。だが相打つように、氷翠自身の身も哀れんだ敵によって貫かれた。
 血華散らし、氷翠の意識が潰える。だがその凄惨な光景には目も呉れず、月音は空断つ刃を薙ぐ。
 ここで、終える。
 終わらねば、終わる。
「……護るわ。私に心を与えてくれた地球と人々を」
 凛然と宣誓し、マキナは妖精の魔力から生まれたというブーツで戦場を疾駆した。
 大人びた容姿に反し、心芽吹かせてからの年月はさほど長くなく。だからこその無垢な眼差しに己が信念を映してマキナは敵を目前に意識を高める。
 命中精度を高めた幸運招く蹴りは、強く深くドラゴン胸部の宝玉を穿ち。見上げる巨体の全身に走った罅を見逃さず、マキナは最期をシズクに託す。
「シズク、トドメはお任せするわ」
「応よ!」
 勇ましく応え、シズクは雄々しき風と成る。
 練り上げる、螺旋の力。掌に集約し、駆け乍ら前へ前へと突き出す。
 届く間際、殲滅の意思を捨てぬ宝玉封魂竜の眼が、じろりとシズクを見た。そこには圧倒的な破壊者の執念が宿っているよう。だが、シズクは怯まない。
「ここで背を向けるわけにはいかねぇんだよ!」
 刹那の空隙。
 時が止まったような感覚の果て、五人のケルベロス達は視る。
 シズクに打ち据えられた赤き宝玉封魂竜が、砂塵と消え逝く様を。

「後は、信じましょう」
 氷翠を抱え起こし、月音は自分たちの戦いを締め括る。
 二体を仕留めるのにかかった時間は短くなく、またこれ以上を望もうにも疲弊が過ぎた。
「ゲドムガサラは皆が倒してくれてるよ」
 全身に自信を漲らせ、ジェミがあっけらかんと言う。そこに潜むのは、期待ではなく確信。
 何故だろう? 脈打つ鼓動が、そう教えてくれる気がするのだ。
「服部様は無事に帰参されたでしょうか?」
「問題ないと思うわ」
 宿利を肩に担ぎ、マキナは銀華を抱く真白の不安を平らに払拭する。
「まだ残ってる宝玉封魂竜がいるかもしれねぇからな。気をつけて行こうぜ」
 殿についたシズクは今一度、戦場を振り返る。そこにはもう、新しい風が吹いている気がした。

作者:七凪臣 重傷:月織・宿利(徒花・e01366) 天見・氷翠(哀歌・e04081) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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