濡れたおっぱいは好きですか?

作者:青葉桂都

●おっぱいには勝てなかったよ……
 攻性植物に制圧された城は、今や大阪市民にとって日常の一部となっていた。
 体格のいい3人の若者が、植物の塊となった城を見上げながら、夜道を歩いている。
「これだけ鍛えたら、デウスエクスとも少しくらい戦えるようにならんかな」
 1人が言った。
 帯でまとめた白い道着らしきものを、肩に担いでいる。他の2人はスポーツバッグを抱えている。おそらく空手なり柔道なりのサークル仲間というところなのだろう。
「アホ。ケルベロスじゃなきゃ無理に決まってるだろ」
「わかってるって。言ってみただけだよ」
 言葉を交わす彼らは、この後デウスエクスの力を身をもって知ることになると、まだ気づいていなかった。
「ねぇ……誰か、来て……」
 苦しげな声が近くにある雑木林から聞こえてきた。
 一度顔を見合わせ、そして3人は雑木林へ足早に駆け込む。
 だが、見たのは予想したのとまるで違う光景。
 寄り添うように座っている女性たちが、若者たちと同じくちょうど3人。
「嬉しい……来てくれたのね。ふふ……とっても男らしい人たち……」
 口を開いたのは中央の女だった。
 裸の胸を手で覆い隠した彼女は、息を吐きだすように語りかけてくる。
 手に収まりきらない2つのふくらみは、なにかの液体に塗れていた。
「ねぇ、早くぅ……もう、我慢できないの……」
 ゆっくりと手を差し伸べて女は若者たちを誘った。
 形の良い丸みが艶やかに輝いている。3人は光に誘われるように近づいていく。
 しばし後、干からびた3人の残骸だけが、その場に残されていた。

●ヘリオライダーの依頼
「ミルラ・コンミフォラたちが調査してくれた攻性植物の活動が、続いているようだ」
 ザイフリート王子は集まったケルベロスたちに告げた。
 聞いたことがある者もいるかもしれないが、先日から大阪城付近の雑木林などで、人型の攻性植物が男性を魅了する事件が発生している。
 バナナイーターと呼称される攻性植物は、木と同化した美しい女性の姿をしている。いずれも巨乳であり、『たわわに実った果実』というべきサイズを誇っているようだ。
「男性が近くを通りかかると、豊穣の象徴とも言える豊かな胸でバナナイーターは犠牲者を誘惑する。お前たちならばともかく、一般人がその魅力に抗うことはできん」
 対象は15歳以上に限られる。魅了された犠牲者は、すべてを絞りつくされて死亡し、グラビティ・チェンを奪われてしまうのだ。
「攻性植物は集めたグラビティ・チェインでなにか新しい作戦を企てているかもしれん。バナナイーターを撃破し、犠牲者を救ってやってもらいたい」
 よろしく頼むとザイフリートは告げた。
 今回は、犠牲者が攻性植物に出会う前に先回りすることができる。もちろん、なにか余計なことに時間を費やしたりすれば話は別だが。
「お前たちの中に15歳以上の男性がいれば、囮となって敵を誘きだすことができるだろう。もしくは、犠牲者となる3人の若者をそのまま囮にすることもできる」
 いずれにしても、囮となる者は必ず必要になる。
 バナナイーターは拠点となる大阪城から地下茎で送り込まれていて、囮となった人数と同じ数だけ出現する。
 もっとも、2体目以降は最初の1体より戦闘能力で劣る。大量に出現させて一気に叩くことも可能だろう。
「囮についてだが、あまり攻撃が早いと敵は地下茎を通ってすぐ撤退してしまう。誘惑はケルベロスには効かないが、数分……3分ほど誘惑された振りをする必要があるだろう」
 その3分の間はバナナイーターも攻撃せず誘惑を行うだけなので、ダメージを受けたり死んでしまうといったことはないはずだ。
 ザイフリートはさらにバナナイーターの戦闘能力について説明を始めた。
 まず敵は、果実を投げつけて攻撃してくる。ぶつけられるだけでも威力があるが、果実が破裂してさらにダメージを受けてしまうこともある。
「他に、果実のような香りを放つ粘液を胸部から分泌し、胸を押し付けるようにしてなすりつけてくる。これには毒性があるので注意した方がいい」
 抱きしめて甘噛みすることで、体力を奪い取って回復することもできるようだ。
「女性の魅力を利用するのも立派な戦術であろうが、殺される側にしてみれば不名誉というよりあるまい。どうか、そのような死を遂げることのないよう救ってやって欲しい」
 最後に、ザイフリートはケルベロスたちへ告げた。


参加者
露木・睡蓮(ブルーロータス・e01406)
エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)
マイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)
イリュジオン・フリュイデファンデ(堕落へ誘う蛇・e19541)
榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)
桔梗谷・楓(オラトリオの二十歳児・e35187)

■リプレイ

●引きつけられる男たち
 大阪城を臨む雑木林へと、ケルベロスたちは近づいていた。
「人を誘惑する攻性植物とは、興味深いですね」
 彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)は敵が潜んでいる雑木林を見つめた。
 冷静な彼女とは対照的に、やたらとそわそわしている男たちがいた。その数、3人。
「作戦だからねー。仕方ないね」
 仕方ないと言いつつ因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)はやにさがった表情だった。
 隣では平凡そうな青年が消沈した表情を見せている。
「前回散々だったのに、懲りずにまた参加しちゃった……」
 だが、彼はぐっと拳を握った。
「いや考えるんだ、早速汚名返上の機会がきたんだと! 今度は相手のペースにならないように頑張るぞー!」
 気合いを入れ直す榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)。さらにその横では赤毛のオラトリオが真剣そうな顔を作っていた。
「なんて恐ろしいおっぱ……事件なんだ! 被害が拡大しないためにも、ここは俺が囮になってダイブ……食い止めなければならない!!」
 桔梗谷・楓(オラトリオの二十歳児・e35187)も、ところどころ本音が隠せていない。
 健全な若者たちの頭の中は、たぶん『たわわに実った果実』でいっぱいだった。
「知ってたよ。これが珍しい果実が食べられるお仕事ではないってことを」
 露木・睡蓮(ブルーロータス・e01406)はそんな3人の姿を見て呟いた。
 男性ではあるものの、まだバナナイーターのターゲットになる歳ではなかったし、彼自身興味があるのは食べられるほうの果実だけだった。
「でも果実を上手くキャッチできたらいける気がしない? ダメっぽい?」
 会話の間にも、男たちは意気揚々と雑木林に向かっている。
 その間に、女性陣の一部はこちらに近づいてきているはずの男たちを誘惑……もとい、避難させるために移動していた。
「まぁまぁ……相変わらずえっちな攻性植物ですわね……。一般男性の被害を食い止めなければなりませんわね、うふふ」
 救出対象を見つけて蠱惑的な笑みを見せたのはイリュジオン・フリュイデファンデ(堕落へ誘う蛇・e19541)だ。
 スポーツバッグや道着を持ったたくましい3人の若者たちは、ヘリオライダーから聞いていたとおりの会話を交わしながら歩いている。
 キラキラとした光が視界に入ったのか、彼らは足を止めた。
「あら、それならケルベロスにも対抗できそうかしら?」
 ツインテールの女性に微笑みかけられて、若者たちが目を丸くした。
 エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)が実際にはまだ幼い少女だと知れば、彼らはどんな顔をするだろうか。
「まぁ……逞しい殿方様たちですのね……」
 イリュジオンも陶然とした様子で彼らの太い腕をつかんで見せた。
「試してみたらどう? あなたたちの腕が、わたしたちに通じるかどうか。遠慮はいらないわよ?」
 露出度の多い服を着たマイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)が、先端だけをわずかに隠した胸を見せつけるように近づけてみせた。
「な、なら……試させてくれよ」
 力を試したいのではなく、触りたいだけだと顔に書いてある。
「ふふ……勇気のある殿方は素敵ですわね」
 耳元で囁きかけると、もう彼らは3人についていくことしか考えられなくなった。
 雑木林とは反対側にある公園で、十秒とたたぬうちに彼らは転がっていた。
「あの辺りはデウスエクス多発地帯よ。危ないから避けて通ってね。それと」
 エルネスタが彼らの前にかがみこむ。
「あなたももうちょっと頑張れば、私達の仲間入りも出来るかもね」
 そう告げて、ケルベロスたちは雑木林へ足早に戻っていく。
 囮の男たちはすでに、現れたバナナイーターへと向かっていた。

●おっぱい! おっぱい!
 雑木林には3体の美女が現れていた。
「なぁ、そこの綺麗なオネエサン。暇なら楓様と遊ぼうぜ!」
 楓はさっそくバナナイーターに声をかける。
「ええ……喜んで。なにをして遊びたいの? ……なにをしても、いいのよ?」
 フルーツのような匂いを漂わせて、彼女は微笑み返してきた。
 両腕で寄せ上げているおっぱいには全面にかぐわしい液体がこびりついていて、形の良い大きな胸がまるで輝いているように見えた。
「えー、マジで? そんなこと言われたら、天使じゃなくて狼になっちまうぜ?」
 積極的に体を寄せてくる彼女に、楓は緩んだ表情を見せていた。
「そっちのあなたたちも……見てないで、こっちへ来て……?」
 2体の攻性植物が、白兎や一騎にも呼びかける。
「そんな見え見えの罠に引っかかるほど間抜けじゃないさ」
 カッコいい声で白兎が言った。
 けれども、言葉とは裏腹に、彼の体は一直線におっぱいへと向かっていた。
「こんなけしからんおっぱいに誘われるような安っぽい僕じゃない」
 続く声はくぐもっていた。たわわなおっぱいの間に彼の顔が挟み込まれていたからだ。
「さあ、諦めて離れることだね」
 引きはがそうとするその手は、しかし何故だか吸い付いたように離れず、勝手に柔らかな双丘を揉みしだいている。
「力強いのね……ぅあんっ。ふふ、ねえ、もっと……」
 白兎の首に手をまわし、バナナイーターは彼を優しく抱きしめた。
 最後の1体に促されるまま隣に座って、一騎はうつむいていた。
 今回こそ無様な姿は見せるまいと誓っていた彼だったが、とても無理だ。隠す気の見られない裸のおっぱいが煌めくのを、とても正視できないでいる。
 ……正視はしていないものの、横目でちらちらと見続けていたが。
「だ、ダメだ……こんなの恥ずかしすぎるよ……」
 意気込みはどこへやら、真っ赤になっている彼の手に柔らかな手の感触。
「そんなに硬くならないで……固くするのは、一ヶ所だけでいいんだから……」
 バナナイーターの手がその一ヶ所に伸びてきた。もう一方の手は、一騎の手を湿ったおっぱいへと誘う。
(「ダメだよ……これじゃ、これじゃ前回と変わらないじゃないか!」)
 気を奮い立たせて主導権を奪い返そうとするが、そもそもどうすればこういう場面で主導権を握れるのか一騎は全く知らなかった。
 3人がバナナイーターと対峙してから2分が経過した。
 白兎はなんだかんだ言いつつも積極的に触りまくり、一騎はひたすら翻弄されている。
 楓は、最初は積極的にふるまっていたが、しかし一線を超えるのをためらっていた。
「本当に、触っていいんだよな? 嘘じゃないよな?」
 念を押しながら楓が手を近づけていく。
「もちろんよ……ねえ、早くぅ……」
 熱い吐息が耳元でかかる。
(「さ、触っていいのか? 本当に……?」)
 普通ならこの辺りで拒否されるタイミングだ。
 悩んでいるうちに、バナナイーターのほうが楓の手をつかみ、たわわな谷間へと導いていく。艶のある輝きを放っている肌が、掌に吸い付く……。
 けれど、楓の心は逆に沈んでいた。
「俺、姉さんに顔向けできない……格好良く報告できない……」
 柔らかで、心地いい感触。耳障りのいいバナナイーターの嬌声。
 たわわな果実との接触が気持ち良ければ良いほど、楓の胸中では大好きな姉の姿がちらつき、大きくなっていく……。
 そして3分が経過した。
「はいはーい、これいじょーはダメー」
 エルネスタは透明化した霧を生み出した。
 一騎のいるあたりが、磨りガラスを通したように見えにくくなる。
 彼女はサキュバスミストを、対象の姿をぼかして守る霧に変えることができるのだ。
 ……たぶんきっと、見てはいけないものをぼかすのにも使える、はずだ。
 少女の声を聞き、たわわなおっぱいに引き付けられていた男性陣の目線が元の姿に戻ったエルネスタへと向けられた。
「皆さんの姿はよく観察させていただきました」
 悠乃に言われ、男たちは自分たちの痴態を思い出し慌てて首を振る。もっとも、悠乃のほうは攻性植物の行動を観察したという意味で言っていたのだが。
「お楽しみを邪魔するのは恐縮ですけれど、もうお時間ですわ」
 イリュジオンに微笑みかけられて3人は頷いたものの、妙に前屈みな彼らはすぐに立ち上がれない。
「……前に見たバナナより少し発育が良くないわねえ。……でも胸の分泌液? は前の個体には無かったし面白そうだし持って帰りたいわね」
 男性陣が立ち上がれるようになるまでに、敵を眺めてマイアが呟く。
「にゃんこ、いなかったなあ……」
 猫を探して時間をつぶしていた睡蓮が戻ってきて、戦いが始まった。

●怒りのおっぱい
 おっぱいを押しつけようと迫ってくるバナナイーターの行動は、先ほどまでとあまり変わらないように見えた。
 けれど戦闘態勢に入ったその胸の雫は毒性を帯びていると聞いている。
「わーい、おっぱーい!」
 白兎が最も強いという1体の攻撃から仲間をかばった。
 単に自分が喰らいたかっただけのようにも見えるがかばったはずだ。
 猛毒の液体に冒されながらも彼はなんだか嬉しそうだった。
 白兎が攻撃から逃れたところで、悠乃が重力を操った蹴りを叩き込んで敵の足を止める。
 仲間たちも支援の技をかけ、あるいは続いて攻撃を行う。エルネスタはキラキラ光ながら再び変身していた。
 白兎が仲間たちに駆け寄った。
「うん、やっぱりこっちのおっぱいのほうが魅力的だね」
 遠慮の欠片もなく女性陣の胸を見つめる白兎。とはいえ、別にふざけているわけではなく、敵の技を劣化コピーすることで挑発するグラビティらしい。
「いいわよ、因幡。面白いことしてくれたし、たくさんサービスしてあげるわ」
 マイアは白兎へと手招きしてみせる。
 彼が瞬間移動するような勢いで飛んできた。
「わたしも手伝うよ。挟めばいいんだよね?」
 マイアの大きな胸と、18歳の姿になったエルネスタに挟まれた白兎が、嬉々として顔を押し付けてくる。
「あー、やっぱこっちのがダメージでかいやー」
 これぞ螺旋忍術が1つ、でっどこぴーの術、らしい。
 敵がなんだかイラッとした雰囲気で白兎へと向かってきた。
「私も協力してもかまいませんよ。敵の技を模倣することで精神に影響を与える技がどのような効果を発揮するか、興味があります」
 悠乃が言った。
 少なくとも、敵は白兎がそうと考えている通りの反応をしているようだ。もっとも、グラビティによる攻撃は、どんな発現の仕方をしようとデウスエクスにはちゃんと通じるということでしかないのかもしれないが。
「おら、毒喰らってんだから、いつまでもくっついてないでこっちに来いよ。うらやましい」
 楓が白兎を引き剥がして、オラトリオヴェールで回復した。
 マイアは自分の身に宿る結晶花に呼びかける。
「……ふふふ、私の世界に連れて行ってあげるわ。……さあ、Amber Mistelten。……私と共に行きましょう」
 広がっていく庭園には色とりどりの花が咲き乱れて敵を取り込んでいく。攻性植物たちは戦術的に動いてはいないらしい。不用意にまとまっていた敵は3体とも中にとらわれた。
「この曲で、――存分に狂わせて差し上げましょう」
 イリュジオンの歌声は不協和音をなし、庭園にとらわれた敵の動きを不安定にする。
 3体いる敵のうち、2体はさほど強くはなかった。ケルベロスたちの攻撃はすぐに敵を追い詰める。
 悠乃は敵を観察しながら、エアシューズを装備した足を振り上げた。
「届く範囲の世界よ、止まれ」
 体感する時間を遅らせ、自らの動きを完全に制御する。
 ゆっくりと流れる時間の中で、今にも死に瀕している敵の反応を確かめる。
 近づく死に恐怖しているようにも見えるが、それは果たして本物の感情なのか。バナナイーターたちに自意識はあるのだろうか。
 結論はこの場で出るものではないが、考えながらも振り抜いた足は敵を確実に切断していた。
 さらにもう1体もさほど時間をおかずに倒れる。
「魔力を込めたこの拳で、その体を内外から破壊する!」
 真紅に輝くガントレットでうっかりたわわな果実をつかんでしまって一騎は顔を赤らめるが、それはそれとして敵の体は内外から爆発する。
 だが、最後の1体は多少手こずることになった。
「茨の魔弾は束縛の魔弾。魔弾の御業は茨の乙女」
 睡蓮が魔弾に御業を宿して、茨を操る式神少女を召喚する。
 マイアの攻撃も敵を縛り、白兎の術が敵を引き寄せる。
 せめて1人でも道連れにしようと、バナナイーターが果実を振りかぶる。
 イリュジオンは狙われた白兎を果実からかばった。
 爆発の衝撃がさらに彼女を襲って、一歩、二歩とよろめかせる。
「だいじょうぶ、リュジーさん?」
「待ってろよ、すぐに治すぜ!」
 直撃を受けた彼女をエルネスタと楓がすぐに心霊手術で癒してくれた。
「ええ、このくらいなら耐えられますわ」
 蠱惑的な微笑みは崩さずに、イリュジオンは再び歌う。
 ビハインドのイヴが姿を消し、歌にあわせて背後から敵を襲う。
 最後の1体をケルベロスたちは圧倒し、追いつめていく。
 睡蓮は無表情に敵を見つめたまま、走る。
 あらわになった胸の毒はやっかいだと思うが、別に見えていることに思うことはない。まだ色気よりも食い気の少年だった。
「たわわな果実、食べたかったかも。残念っぽい」
 フェアリーブーツが視認不可能な速度で閃く。
 茨に捕らわれた敵は、よけることもできずにそれを受けるしかなかった。

●それでもおっぱいは不滅らしい
 戦いは終わった。
 おっぱいは去った。
「これでかいけつだね」
 幼女に戻ったエルネスタが言う。
「ええ。帰ったら、過去のバナナイーターとの差異を詳しく調べてみたいですね」
 悠乃は観察した結果を思い返しているようだ。
「いいおっぱいをありがとう。次生まれてくる時は悪いことに使っちゃあダメだよ?」
 白兎が亡骸を弔おうと近づいていった。
「弔うの? 面白そうだし、研究用に持って帰りたかったんだけど」
 舌なめずりをしながらマイアが言う。
 白兎は迷いの表情で彼女のおっぱいを見上げた。
 一方、楓は打ちひしがれていた。
「……植物にじゃなくてもっと人にモテても良いんじゃねぇ、俺?」
「あらあら。では私がしてあげましょうか? 殿方の霰もない姿を見ていたら、可愛らしくて……」
 イリュジオンが微笑みかける。
「わーい、イリュジオンさーん!」
 弔うとかなんとか言っていた白兎が即座に反応した。
「マジで!?」
 楓も復活する。さらにイリュジオンは一騎にも挑発的な視線を送る。
「いや、俺は……あくまで仕事だから!」
 恥ずかしがってそう答える一騎の視線がおおっぱいにちらちら向けられているのは、イリュジオンのみならず女性陣全員にバレバレだった。
「……ふふ、冗談ですわ」
 3人が一気に崩れ落ちる。
「おっぱいってそんなにいいのかな。わからないかも」
 睡蓮が呟いた。次の誕生日で15になれば、わかるのだろうか。慟哭の声を聞きながら彼は思った。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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