●緑色の合唱団
6月、梅雨時にカエルが集まって合唱するのは、雨の日に死んだ人への鎮魂の歌を歌っているからだという。
カエルたちの歌は死者の世界に通じる道を開き、この世とあの世を行き来できるようになるのだ。
中学生らしき少女が手にしたメモ帳にはそんな内容が記されていた。
それはくだらない噂だったけれど、澄佳はある雨の日、傘を差して真偽を確かめに出かけた。
「見に行っちゃいけないって言ってたけど……でも、どうせ本当のことじゃないよね」
カエルたちは人間に歌を聴かれるのを好まないから、決して見に行ってはいけない。
もし居合わせてしまったら、なにも聞いていない振りをして、早くその場を通り過ぎること。
もし聞いていることに気づかれたら……カエルたちは死者の霊を呼び出してその人をあの世に送ってしまう。
メモを見ながら、彼女は家からそう遠くない場所にある自然公園に入っていく。
「くだらない怪談だよね。ありえない」
なのに、そう言いながらも澄佳はカエルの鳴き声を探している。
「もしも、本当だったら……」
少女の後ろに、いきなり魔女が現れたのは、そう呟いたときだった。
パッチワークの魔女は手にした鍵で少女之心臓をひと突きにする。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
澄佳は雨の中に倒れた。
そのそばに、巨大なカエルたちの群れが現れた。
いや、群れのように見えるが群れではない。人間大の巨大カエルから無数のカエルが生えた、1体の異形なのだ。
意識を失った少女をその場に残して、歌うように鳴きながらカエルのドリームイーターはどこかへと動き出した。
●雨の中の事件
「六月と言えばジューンブライドだけど、梅雨の季節でもあるよね」
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)は集まったケルベロスたちを前にそう言った。
「カエルのデウスエクスが出るんじゃないかと思って調べていたら、ドリームイーターが現れることがわかったんだ」
不思議な物事に『興味』を持って調べていた一般人がその『興味』を奪われる事件は以前から起こっていたが、今回の事件もその1つだ。
奪われた『興味』を元に現実化した、怪物のドリームイーターが現れるのだ。
「そして、その怪物が今回はカエルの外見をしているんだ」
犠牲者は、カエルの合唱が死者の世界に通じる道を開くという噂の真偽を確かめようとしていたらしい。
被害が出る前に、ドリームイーターを倒さねばならない。
「興味を奪われたのは残念ながら若い女の子だ。彼女は意識を失っているが、敵を倒せば回復するはずだよ」
彼女も助けてやって欲しいと、リーファリナは告げた。
リーファリナの後ろに控えていたドラゴニアンのヘリオライダーが、出現する敵について説明を始めた。
「ドリームイーターは、人間大の巨大なカエルから、無数のカエルが生えている姿をしています」
本体は巨大カエルであり、あくまで1体のドリームイーターだ。
その歌声は耳障りで、範囲に対してプレッシャーを与えてくる効果がある。
また、歌によって死者の霊を呼び出し、攻撃することもできるようだ。霊に攻撃されると体が麻痺してしまうらしい。
それに、死者の世界に連れ込むこともできるという。ケルベロスが本当に連れて行かれることはないが、トラウマを呼び起こす『死者の世界』を見せられてしまう。
「現場は街の自然公園です。まっすぐ移動すれば公園の中で敵と遭遇できるでしょう」
雨が降っているので、狙われた少女を除いて公園内に人はいないようだ。あえて公園の外で戦うつもりでないなら、避難活動の類にケルベロスが気を回す必要はないだろう。
「ドリームイーターは人を見つけると自分が何者かを問いかける歌を歌います。そして、正しく答えられなかった人を殺そうとするようです」
なにが『正しい答え』なのかはわからないが。
また、ドリームイーターは自分について噂している人に引きつけられる性質がある。うまく誘き出せば有利に戦えるかもしれない。
ヘリオライダーは説明を終えた。
「女の子がどうして噂に興味を持ったかわからないけど、噂の真偽を確かめるのは楽しそうだよねえ」
だから、それを利用しようとするドリームイーターを見過ごすわけにはいかないだろう。
リーファリナは最後に、ケルベロスたちへそう告げた。
参加者 | |
---|---|
七奈・七海(旅団管理猫にゃにゃみ・e00308) |
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877) |
ニケ・セン(六花ノ空・e02547) |
神宮時・あお(惑いの月・e04014) |
アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574) |
篶屋・もよぎ(遊桜・e13855) |
ルタ・ルタル(渇きの翼・e34965) |
レオンハルト・ヴァレンシュタイン(ブロークンホーン・e35059) |
●新たな時代
ケルベロスたちはドリームイーターが潜む雨の公園を訪れていた。
(「……カエルの、鎮魂歌……。……考えた、方は、とても、ろまんちすと、です、ね。……後半、のぞいて、です、が……」)
神宮時・あお(惑いの月・e04014)は心の中で呟いた。
(「……現実に、なる前に、なんとか、しないと、いけません、ね……」)
白い髪は雨に濡れて、色白の肌に張り付いている。
ゆっくりと顔を上げた先にはカエルがいた。
……もとい、カエルデザインのカッパやパーカーを着た人たちがいた。
「死者の世界と繋ぐカエルの歌、そういう事もあるのじゃろうか? この世は実に摩訶不思議じゃし仮にあっても不思議ではないが、さてはて」
頭の上にカエルの目が付いたカッパのフードからは、レオンハルト・ヴァレンシュタイン(ブロークンホーン・e35059)のまるで少年のような顔が見えている。
「件の少女はそうした興味からドリームイーターに狙われるという不運に見舞われたんじゃな。美少女を救うのは我の仕事、委細任せて事後のデートに備えるんじゃ!」
力を込めて言うレオンハルトに視線を注いでいるのは、リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)だ。
「レオンハルトのカエル合羽可愛いな……」
ポニーテイルのサキュバスは、しみじみと呟いた。
「そうだ七海もカエルパーカーを着てみな……」
かたわらにいるはずの自宅警備猫、七奈・七海(旅団管理猫にゃにゃみ・e00308)へと振り向いたリーファリナは、思わず絶句する。
猫耳の少女は狸のかぶりものをしていた。しかも甲羅が付いている。狸と河童のハイブリッド。
「はうぅうぅ、たぬかっぱ……!! 可愛い……」
崩れ落ちそうになるリーファリナへと、七海は人差し指を立てて答える。
「カエルパーカー? 甘いです。時代はたぬ河童、私がブームを作るのですよ! さぁ、リーファさんもたぬ河童に着替えるのです」
2人がじゃれあっている姿に、アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)が呆れ顔をする。
「お主は……本当にブレん奴じゃなぁ……」
そういう彼女も、やはりリーファリナとは普段から親しい仲だ。
戦闘前でも残念系サキュバスの挙動は変わらない。
「まあ、緊張しすぎるのもよくないというからね」
ひとしきり騒ぐと、ケルベロスたちは公園内を歩き出した。
「さて、カエルの鳴き声、聞こえるかな? ってね」
ニケ・セン(六花ノ空・e02547)が言った。
知識欲の強いエルフの青年は、遭遇することになるドリームイーターに興味を覚えているようだ。
「カエルさんは捌いて唐揚げにしてしまいましょうか。ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ。大きなカエルですよね」
七海がカエルの鳴き真似をしてみせる。
「梅雨と言えばカエル……リーファリナ殿の推測通りじゃが、どうも単純なカエルとはいかんようじゃな?」
「死の世界を見せてくれる奇妙なカエルがいるらしいな。どんな世界か気になるが、何が見えるんだろうな?」
レオンハルトの言葉に頷いて、リーファリナが心持ち普段より大きな声で言った。
(「……死者の世界への、道、本当に、ある、のでしょう、か」)
心の中の想いを文字に書きだしながら、あおも公園内を歩く。
「まだわからないけど、死者の世界というのが本当にあるならば、興味深いね。蛙は雨を告げる者だけれど、くだんの噂ではそれをさらに死とも関連付けているわけだ」
ニケが思案顔をした。
(「……本当に、あったら、いい、のに……」)
あおがさらに書き足す。
「ふん、梅雨の時期だからと言ってカエルのドリームイーターとはのぅ。リーファも妙なものを見つけてくるもんじゃ。なんであれ、興味を奪われた娘を助けねばなるまいて」
アーティラリィが言った。
小さな体だが、しっかり胸を張ると大きく見える。頭のてっぺんからすっくと生えたヒマワリのせいもあるかもしれない。
彼女は公園の別な場所に目を向けた。
この場にいるケルベロスは6人。他に2人が別の場所にいる。
意識を失った少女を抱えて篶屋・もよぎ(遊桜・e13855)は移動していた。
自然公園内には少なくない数のベンチが設置されている。もよぎはそのうちで、屋根があって、なるべく端のほうにあるものを探していた。
「この子は……この辺りなら大丈夫でしょう」
絶対大丈夫だといえる場所などはないが、比較的安全そうだと思える距離まで運んで、もよぎは呟く。
「行きましょう、自来也さん」
少女の代わりにサーヴァントを抱きかかえて、もよぎは仲間のところへと急いだ。
もよぎが移動しているときには、すでに噂話をしていた者たちは巨大なカエルと遭遇していた。
無数のカエルを背中に生やしたカエルが鳴き声を上げる。
呼応して、背中のカエルたちも鳴き始めた。
『ワ・タ・シ・ハ・ダ・ア・レ』
辛気くさい調べが、カエルの鳴き声に過ぎない歌が、確かにそう聞こえたとケルベロスたちは感じた。
「せっかくだから、謎解きしてみたいんだよね」
「じゃが、間違った者を殺すという話じゃから、下手に正解してはまずいのではないか?」
「かもね。正解は、倒して確かめるしかないかな」
ニケの言葉にアーティラリィが制止する。
「何者か、などとはな……何者でもないな」
「お主の正体はどう見てもカエルじゃろう、ゲコゲコ、カエルは帰るんじゃ!」
リーファリナは肩をすくめてみせると、レオンハルトがダジャレを自信満々に言い放つ。
『ゲロゲーロ』
おどろおどろしくカエルが鳴いた。
戦いが始まろうとしている頃、ルタ・ルタル(渇きの翼・e34965)は公園の入り口に立ち入り禁止のテープをはっていた。
「けっこう、時間かかっちゃった、かな」
攻撃が行われたらしい音を聞いて、ルタは呟いた。
ヘリオライダーに必要ないと言われても、気にせずにいられないのが人情というものだが、広い公園の入り口をふさいでまわるのは少々やりすぎだったかもしれない。
「カエルさんこの時期活発、よね。カエルの歌は鎮魂歌、だった、の? カエルって、雨の日のシャーマン?」
ルタもまた、興味を覚えていた。
「けど、大量発生は……お呼びで無いのよ。しかも一匹に生えているとか……うぅ。ピパですかっ……」
背中で子供を育てるカエルを思い浮かべながら、ルタは偽翼を羽ばたかせ、金色の髪に雨滴を浴びながら走っていった。
●響く歌声
最初に襲いかかってきたのは、カエルたちの合唱だった。
鎮魂の歌からリーファリナとレオンハルトが仲間をかばう。
ニケは後方からゆっくりと狙いをつけていた。
「紫陽花な気がするんだよね。紫陽花の色が変われば、下には死体が埋まってるというでしょう? それに小さい花が集まっているのにも似ているかな、君たちの姿」
ドラゴニックハンマーを砲撃形態に変えながら、彼は考える。
その間に、皆は反撃に移っていた。
あおの小さな体が、巨大ガエルに無言で接近する。鋭い蹴りが敵の動きを止めた。さらにリーファリナのつま先も敵をとらえる。
「一つ一つは小さくとも、集いし力は強大なり。無数の光よ、数多の熱よ、余の手に集いて力となれ! ……力とは、収束してこその力じゃ」
光がアーティラリィの前に集った。
敵に接近した彼女は、光をつかんでたたきつける。
攻撃の間、ニケは敵を観察していたが正体の手がかりとなるような反応はない。
「うん、やっぱり、倒してみなきゃわからないんだね」
うなづいて、彼は砲撃形態のハンマーをゆったりと振りかぶる。
「竜王の不撓不屈の戦い、括目して見よ!」
レオンハルトが扇子を鳴らすと、カラフルな爆炎が仲間たちを鼓舞する。閉じるとき、同時に爆破スイッチを押していたのだ。
煙を割って、ニケの砲撃がカエルを吹き飛ばしていた。
将来性を感じさせる七海の斬撃も敵を切り裂き、凍り付かせている。
だが、ドリームイーターはまだまだ動きを止める様子はなかった。
カエルの歌は、雨の中で不気味に響き続ける。
リーファリナは幾度目かになる攻撃からアーティラリィをかばった。歌声と共に見えざる門が開き、その向こうに荒涼とした世界が見えた。
人影が見える気がする。あれは死者の姿なのか。胸が締め付けられ、息が苦しくなる。
「アティ……大丈夫か?」
荒い息を吐きながら問いかける。
見た目にはリーファリナより年下に見えるアーティラリィだが、2人はだいたい同じくらいの年齢で、腐れ縁の仲だ。
だから彼女は知っている。友達が、見てしまうかもしれない人がいることを。
「ふん、なんともないわい。リーファこそ、あまり無理をするでないぞ」
いつも通りの様子に安堵する。
「せっかくカエルパーカーを着てきたのに、思ったより敵が可愛くないのが残念だがな……。ドリームイーターは毎度奇妙なことをしてくれる」
噂に興味を覚えた少女が事件の発端だったが、リーファリナはドリームイーターの側に興味を覚えていた。
「ともあれ、サクッと片付けて女の子を救うとしよう」
「はい~。安全な場所に移してきましたけど、早く起こしてあげなきゃいけませんね~」
呟きに応じたのは、もよぎの声だった。
「カエルさんと聞いて依頼に飛び込みましたが……これは……あんまり可愛くないカエルさんですね……!」
緑色のサーヴァントを抱えたもよぎが溜息を吐く。
「もよぎも、よろしく頼むぞ!」
言葉と共にリーファリナは超重の一撃を叩き込んで可能性を奪う。
「自来也さんは皆さんを回復してあげてくださいね~。わたしは手の平に力を込めて~、えーいっ!」
サーヴァントに指示を出しながら、もよぎは掌に集めた螺旋の力を敵に叩き込んだ。
ルタが合流できておらず、また対応力の高いケルベロスではなくサーヴァントだけが回復役を担っていることもあり、今のところ回復は手が足りなくなりがちだ。
七海は中衛で仲間を支えていた。
「結びましょう。括りましょう。人を、神を、縁を、時を――産霊ましょう」
グラビティ・チェインが無数の紐を形作る。
薄暗い雨の風景を、周囲に広がる色とりどりの紐によって鮮やかに塗りかえていく。
被害が大きいのは仲間をかばうリーファリナとレオンハルト。自来也がリーファリナへ属性をインストールしているので、七海はレオンハルトに紐を伸ばした。
虹よりもなお多彩な紐は、仲間と彼女を結びつけ、生へとくくりつける。
ルタは仲間たちのもとに駆けつけると、顔をしかめた。
「うう……単体なら平気だけど、集合体は苦手……。でも、がんばらなきゃ、ね。マコハ、回復してあげて」
ウイングキャットに声をかけて、ルタはドラゴニックハンマーを振り上げる。
正面から見ると体がふらつく。ハンマーの重さを支えきれない。
「う、うぅ、じっと見ているだけでも辛い、ぞ……」
けれど、よろめきながらも放つ蹴りは鋭く敵をとらえていた。
●カエルは無に帰る
ドリームイーターの攻撃に耐えながら、ケルベロスたちは徐々に敵を圧倒し始めていた。
あおは無言のまま、敵の体力を削り続けている。
彼女は言葉を発しない。だから、彼女が見ている物のことは皆にわからなかっただろう。
不気味な鎮魂歌が心をえぐる。
あおにしか見えない敵が、なぜ死ななかったのかと指弾する。
(「……だって、そのために、いきて、きた、のに」)
けれど面にはなにも表さず、あおはただドリームイーター2攻撃を加えた。
(「……貴方が、何者か、なんて……。……人の、夢から、現れた、何者でも、ない、じゃ、ない、ですか……」)
声なき声に魔力を乗せて、あおは敵を終焉へと導く創生詩魔法を紡ぐ。
カエルのレクイエムを凌駕する調べが敵の知覚を奪っていた。
他のケルベロスたちも攻撃を加える中、カエルは声を張り上げて歌う。
レオンハルトは呼び出された霊からあおをかばった。
「お嬢さん怪我はないかの?」
問いかけるが、答えはない。
無表情に頷いただけだ。
「うむ、無事でなによりじゃ」
それでも、レオンハルトは朗らかに笑って見せた。
「さて、そろそろ片を付けんとまずいのう。ゴロ太よ、休んでいる暇はないぞ。コンビネーションじゃ!」
主があおを蝕む歌声を切り裂いて除去したのと、ほぼ同時にオルトロスがカエルを切り裂いていた。
もよぎは小春日和のような暖かみを感じるオウガメタルを刃のように変形させた。
「しびれますよ~?」
刃には秘伝の薬が仕込んであるのだ。
敵の後方に回り込んでいた七海が黒い獣のような鉈と、ガラスの刃を持つ短刀でさらに深く傷を刻み込む。
「そろそろ、勝ちに行っちゃいましょうか」
猫が目を光らせる。
「答え合わせだね。死者の世界ももっとよく見たかったから、残念だけれど」
ニケの鎖が敵を縛り上げたところに、煌めきをまとったルタの飛び蹴りがドリームイーターの防御を崩す。
カエルの歌が、止まった。
もよぎの薬が効果を発揮したのだ。
「ふん、さっさとカタをつけるぞリーファ」
アーティラリィはその隙を逃さなかった。
当てるだけの軽い拳で牽制した隙に、リーファリナが魔術円を描き出す。
「任せろアティ! 全てを打ち砕く界の怒りよ。力の猛り、轟きをもって我が敵を討ち滅ぼさん」
数多の砲門より放たれた異形なる異界の力が敵を打つ。
その間に、アーティラリィは光を集めていた。一点に集中した輝く球が熱を放ち、降り注ぐ雨を水蒸気へと変える。
「それ、隙ありじゃ!」
つかんで叩きつけた熱球がまばゆく輝き、ドリームイーターを焼き尽くしていった。
●雨はもうすぐあがる
光の中で、無数の小さなカエルたちが散っていく。
それは、まるで花が散る姿のように見えた。
「正解、かな」
光から目を逸らさずに観察していたニケが呟く。
本体である大カエルも、そのまま消え去っていった。
「さすがだな、アティ。さて、女の子が無事だといいんだが」
「ですね。濡れちゃってるだろうから、しっかり拭いてあげないと」
リーファリナの言葉に頷いた七海は、用意してきたバスタオルを確かめる。
「うん……風邪、ひかないように、ね」
ルタが、いまだ雨のやまない空を見上げて、心配げに金色の細い眉を寄せる。
「わたしは、公園の中を直していきます。よろしくお願いしますね~」
もよぎの言葉に、あおは自分も手伝うと身振りで示した。
「ふむ。余もそちらに回るとしようかのう」
そう言ったアーティラリィにレオンハルトが近づいた。
「のう、アーティ殿。わしも手伝うから、終わったら食事でも行かんか?」
青い瞳とヒマワリが彼を見つめる。
「ふむ……まぁそれも良いかも知れんの」
微かな笑みが、彼女の口元に浮かんだ。
ふと目をそらした先では、カエルパーカーとたぬ河童が相変わらずの会話を続けていて、翼のレプリカントがニコニコしながらそれを聞いていた。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年6月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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